雨をついて那岐山

那岐山三角点峰から最高峰を眺める
平成20年 5月31日(土)
【天候】雨のち曇り時々晴れ
【同行】別掲


 赴任地の広島で山のMLを主宰しているOさんファミリーのオフが岡山東部は因美国境
の名山、那岐山で開かれるという。広島までは遠く、高速代、ガソリン高騰などでおいそ
れとはなかなか行けないのだけれど、ここなら参加できそうだ。久しぶりに「いっちょ、
遠出してみるか!」

 そこで色々調べてみた。集合時間が奈義町の山の家に8時45分と早いので、早朝出発
に自信のない小生、高速代節減を兼ねて前夜遅く出発、加西SAで車泊なぞも考えた。と
ころが思わぬ伏兵が現れる。それは天候。梅雨の走りで当日朝方の天候が悪いとのことだ。
おかげで集合時間が9時半と変更の連絡が入る。それなら当日出発でも大丈夫そう。最寄
の美作ICから通勤割引の利くICはと。NEXCOのHPで調べると吉川ICと出た。
では吉川まで地道を行きましょう。(^^;

 6時前に家を出る。GSやコンビニに寄ったりしてR176から吉川に向う県道を行き、
予定通り高速へ。西の方の天気はどうだろう?だが期待に反し、道場付近では晴れ間まで
あったのが、福崎辺りまで走るとルーフを叩く雨音が聞こえるほどの雨だ。ここまで来た
からには西に行くほど天気は回復基調のはずと高をくくるしかない。思いが通じたのか、
美作ICを降りた頃には小降りになる。しかしかなり降ったらしく、県道の横の川は茶色
に濁っている。

 R58に合流して山の家には8時50分頃着。どうも一番乗りらしい。(^^; Mさんに
電話を入れると前泊地の津山から移動中とのこと。そうこうしている内に、赤いMPVが
やって来た。ドアから出てきたのはSさんのお変わりない姿。北摂の高岳以来9年ぶりの
再会だ。更に9時15分頃にはOさんファミリーも到着して今日のメンバは全員揃う。後
は雨が早く止むのを祈るのみである。

 当初、鳥取側からのアプローチの予定は、雨で奈義町のノーマルルートに変更。智頭町
への移動時間を天候の模様眺めに費やして、山の家のテントの下で雑談。その間にも、ど
こやらの山の会がマイクロバスで上がって行く。大きくなったH君は少し退屈なのか、あ
ちこちちょこまかと動きずめだ。(^^; それでも1時間近く待っていた甲斐があり、空も
明るくなってきて山の稜線も次第に姿を現してくる。それではということで登山口へ移動。
舗装された林道を第三駐車場まで上がる。車5台程度が停められる駐車場の横は蛇淵の滝
への入口。轟々と下から水音が聞こえる。滝は帰りに見に行く事にして歩く準備。雨具は
暑いのでスパッツだけに留めておく。

最も上の駐車地は蛇淵の滝の横だ

 標高はもう600mを越える。辺りは伐採され原野のようだ。下山後、偶々通りかかっ
た奈義町の女性職員の方に教えてもらったら、数年前の台風の影響なのだという。当時は
倒木の嵐だったのだそうだ。
駐車地からほんの200mでB、Cコースの登山口

 一車線の舗装林道を100mほど進むと奈義町が立てた案内図があって、そこからほん
の少しでB、Cコースの登山口がある。沢を渡るとゴロゴロ石の転がる荒れた道である。
喬木は一本もなく、倒木を切った切り株だらけ。その中にヤマツツジ、タニウツギがポツ
ポツ咲いているのが彩りといえば彩りである。谷川沿いに進むBコースを右に過ごして、
左のCコースを進む。前方の山並みがまた白いとばりの向こうになったと思ったら、一旦
止んでいた雨がまたポツポツ。今までは強まったりまた弱まったりを繰り返していたが今
度はやや本格的な降りである。急いでザックカバー、傘を取り出す。暗くはないので大降
りはないだろうけれど、背負子のOさんとHクンにはつらかろう。再び先ほど分かれた林
道との出合で、とうとうOさんとHクンは引き返すことに。結局、山頂アタック隊?は3
名に減って仕舞ったのだった。(^^;

分かれた林道と又出会うといよいよ坂道

 ここから暫くは国有林の桧林で、『桧皮の森』と説明板にある。国宝や重要建造物の屋
根の桧皮をこの森で得ているのだそうだ。そういえば、幹が皮を剥がれて赤っぽくツルツ
ルした木が多い。岡山森林監督署の森林の効用を説明する林間学舎?のベンチの間を抜け
ていくと再び伐採地で、道は山腹を縫って行く。幸い雨はほとんど上がったが、無風で湿
度が高く蒸し暑い。顔の汗を拭う回数が増えてくる。雨具を着たMさんはつらそう。そん
な時に丁度タイミングよく水場が現れる。少し休憩。塩ビパイプに引かれた水は飲んでみ
ると非常に美味い。

 道は急斜面をジグザグに登って行く。向こうの山肌のガスが忙しく流れるので、しばら
くすれば視界も良くなろう。登山道横にはタイミングよく満開のタニウツギ。沢山の花を
つけなかなか美しさだ。他にはフタリシズカやマムシグサ、クルマバソウ、チゴユリなど
が主な花々だ。
今を盛りとタニウツギ

 雑木の樹林の下に入る。しばらくジグザグを繰り返し、一旦緩んだ傾斜が再びきつくな
ると、今度はササが密生する雑木林。やや涼しくなったが、傾斜が結構厳しいので汗は容
易には引かず、顔や首筋をゴシゴシこすっては歩き出すの繰り返し。ようやくその傾斜が
収まったところは尾根の突端で、ここに大神岩(標高1000m)の表示がある。ここで
も大きなタニウツギが満開である。

 大神岩は大きな一枚岩を想像するが、少なくとも地表に出っ張った部分は幾つかの小岩
が分かれた様に見える。標高1000m(以前は980mだったらしい)とあって、南の
見晴らしが良く奈義町は言うに及ばず、遠く瀬戸内海や小豆島も一望なのだというが、乳
色のガスで全く視界はない。戻る頃には晴れて日本原の扇状地の姿を拝ませてくれるであ
ろうか?

タニウツギ咲く大神岩。南の展望が良いのだが...。

 先行していた10人位の男女パーティがここで食事中だったが、ランチは山上で食べた
方が美味かろうと、腹の虫を宥めつつ、皆さんの前を失敬して先を行く。大神岩から暫く
はほぼ直線状の緩斜面だ。ハウチワカエデ、ミズナラなどの広葉樹林で、林道並みの広い
道がついている。ちょうどそこを歩いている時、いきなり日が射してきた。見上げればう
っすらと青空で、こんなに一気に天候が回復するとは。晴れてくると気分も弾んでくるか
ら不思議だ。
大神岩から清々しい雑木林を行く

 素朴なベンチと図根点の標石がある1071mの小ピークを乗っ越して、奈義町が立て
た8合目の標識辺りからはゴツゴツ石と木の根の道で、林道並みの道は徐々に細まり、や
がて雑木林の中の急勾配のジグザグ道となる。本来は直登する丸木階段の道があったよう
であるが、厳しくて敬遠されたのだろうか木や草に半分埋もれ、今歩いている迂回するジ
グザグ道が正規コースになっているようだ。『山頂まで500m』の標識も雑木の中であ
る。

 比良の権現山に似て、雑木林から急に笹原に出る。旧道と合して、ここからは一直線に
高みを目指す事となる。といっても傾斜は緩んで、GPSに依れば直線で200m足らず
だ。乳色のガスに包まれた中で薄日が差し、ウグイスがすぐ側のヤブで鳴く。足元に気を
つけるとアカモノの釣鐘型の花に気付く。

 ガスの中に道標が見えてきた。頂きに上がると木造りの建物があり、そこで食事しよう
かと思ったが、それはトイレである。右を向くと約300m先に擂り鉢を伏せた形の那岐
山最高峰(1,250m)がある。立っている十数人の登山者はマイクロバスでやって来た
山の会のメンバらしい。が、この風景、デジャブっていうのか何だかどこかで見たような。
おぼろな記憶を手繰れば、そう、比良の武奈ヶ岳の風景に似ているのだった。まずは三角
点にタッチし、後続を待つ。

 最高峰の人影が動きそうにないので、三角点横で先に昼食にする。雨がかなり降ったと
思われるのに、山頂付近がなぜか乾いているので助かる。その内にガスが晴れてきた。見
れば西の滝山方面にもいい道がついている。縦走すれば良さげだろうなあ。

鞍部から那岐山三角点峰を振り返る

 最高峰へ向う。最高峰との間の鞍部には避難小屋がある。扉は施錠されておらず覗くと
西播州の駒ノ尾にあった避難小屋と同じ構造だ。毛布も何組か置かれている。

 食事後なのでちょっと足取りが重いが、我慢して登り返すと最高峰。高み山とほぼ同じ
高さだ。直径10m位の広場には奈義町と鳥取県智頭町の立派な石造りの山名標が置かれ
ていて、記念撮影にはもってこい。当初は標高1,240mだったのが平成13年の改測で
1,255mになったと誇らしげに書かれてある。そうこうする内に大神岩で食事中だっ
たパーティが上がってきた。記念撮影のシャッターを押してあげて、入れ替わりに戻る事
にした。
那岐山最高峰

 おお?ガスがやや晴れてうっすらと下界が見え始めた。折角、大阪からやって来たのに
このまま帰すと可哀相だとでも山の神が思ったのかどうか。これでようやく早起きしてや
って来た甲斐があったというものだ。(笑) 

 三角点峰に戻ってくると、トイレ横に何やら尻尾の長い茶色の生き物がいる。あっとい
う間に姿を消したが、どうもテンかキツネだったようである。クマザサ原から下界を見物
した後、元来た道を戻る。

 視界が良ければ瀬戸内海や小豆島まで見えるという展望を今度は期待して大神岩の岩の
間をすり抜けると....。やあ見えた。かすんではいるが日本原高原が一望され、家々や溜
め池、森などがミニチュアのように広がっている。碁盤目が白く光っているのは水田のよ
うである。西方に高い山が見えるのはしかとは分からないけれど、どうも後山連山らしい。
先端の岩に乗ってしばし景色を楽しむ。

ガスが晴れた大神岩から奈義町

 こんなに九十九折れだったかなと思えるほど、九十九折れは続く。大神岩でほぼ同じ高
さだった向かいの山が頭上高く見上げねばならなくなった頃、ようやく伐採地近くまでや
ってくる。イワウチワらしい葉があるが花はない。広島ではイワウチワがないそうだが、
はてどういう加減だろうか?

 森林監督署の看板を横目に、林道にまさに出ようとした頃だ。車の音が近づいてくる。
やってきたのは女性職員の運転する奈義町所有の四駆である。来週開催されるサラサドウ
ダンの鑑賞会のしたもの職員さんを迎えに来たのだとか。「ツツジ科の木はあったけど、
花が一つも見なかったけれど」と話をすると、サラサドウダンは岡山県側にもあるにはあ
るが、鳥取県側に多いのだそうで、サラサドウダンのトンネルのようになっている場所も
あるんだとか。来週もう位置一度来ませんか?と誘われるが、うーむ、先立つものが...。
(^^;
歩いてきた尾根を振り返る。右奥が那岐山

 滑ってズッテンコロリンと尻餅をついたりなんぞしながら山道を下り、林道出合の登山口
に戻ると、もうすっかりガスが取れた風景は、遠く那岐山の姿も望めるほどに回復している。

 駐車地に帰る前に赤い鳥居を潜って蛇淵の滝を見に行く。コンクリート擬木の階段を下り
ていくと東屋がある。20m先に数段に分かれた滝が雨で水量を増した豪快な音を立てて流
れ落ちている。取り立てて目立つ滝ではないけれども、V字谷の底深くはほの暗く、蛇か竜
神が棲む雨乞いの滝と、里人が信じるに十分な雰囲気を醸し出していた。

 滝から戻れば、駐車場ではOさんがお待ちかね。Hクンは車中で遊び疲れて寝ている模様。
Mさん、やっぱり母親の顔でした。

山の家近くの車道に立つ物騒な標識

 さて、何とか天気も回復してくれて、山上から下界の風景も少し眺めることもできて、
来た甲斐があったというもの。東西ドッキングオフはこれにてお開き。また機会があれば
ご一緒を約して散会。後は帰路につくのみだが、ちょっとその前に、岡山まで来たついで
に巷ではなかなか見られないいっぷう変わったものを見に行こう。往路で気付いていたが
写真に撮る為に車を止めてしげしげと眺める。場所は日本原の演習場の東傍である。集合
地に利用した山の家も直ぐそこだ。そんなところにこんな『戦車C道』の標識。というこ
とは、演習時にこんな民間地近くに戦車が通るという事か。そういえばキャタピラの轍ら
しきものが車道に残っていて、また何のためにと思えるような、沢に下るコンクリ道など
構造上不可思議なものが所々にあるのは、自衛隊の演習に必要なものなのだろうか。昼過
ぎに那岐山山頂間近で聞いた機銃音らしい連続音も戦車の備銃なのかも知れない。まあ、
なにはともあれ、あんまり見かけないものなので記念にパチリと一枚。それが上の画像で
ある。

 帰りも節約、山崎ICまで地道を走る。田植えの済んだ青苗そよぐ美作はゆっくりと暮
れていくのでした。



■同行 しぇるぱさん、みーとさん(大加茂さんと穂高君は途中まで)

【タイムチャート】
5:50自宅発
8:50〜10:15奈義山の駅
10:20〜10:30蛇淵の滝横駐車地
10:26〜10:35赤崎西谷
10:40B、Cコース登山口
11:10〜11:15林道出合
11:55〜12:05大神岩
12:161,071mピーク
12:25八合目標識
12:45〜13:17那岐山三角点(1,240.3m 三等三角点)
13:27〜13:35那岐山最高峰(1,255m)
13:46〜13:52那岐山三角点(1,240.3m 三等三角点)
14:05八合目標識
14:23〜14:31大神岩
15:05〜15:12林道出合
15:26B、Cコース登山口
15:35蛇淵の滝横駐車地



那岐山のデータ
【所在地】岡山県勝田郡奈義町、鳥取県八頭郡智頭町
【標高】1,255m(三等三角点(1,240.3m))
【備考】 中国山地東部の名山です。山名の由来には西播の後山と
背比べをして負けて泣いたからだとか、南麓の諾(なぎ)
神社から採られたなどの説があります。山頂付近は風衝
草原で展望雄大、大山から瀬戸内海まで眺める事が出来
ます。
■日本三百名山
【参考】
2.5万図『大背』




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