秋分の日の明神平

ウシローから眺める明神平の山々(左から水無山、明神岳、前山。中央が薊岳、右は国見山の斜面)


平成20年 9月23日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】単独


 きょうは秋分の日。なんだかんだで朝起きてもどこ行くアテもなく、しかしながらいい
天気で、それならとフラフラと久しぶりに明神平へ行ってみようと、行ったなら一応、ピ
ークは踏もうと、何年ぶりかの水無山、国見山まで少し足を伸ばしてきた。団体さんの群
れにも遭わず、9年前と同様に(もうそんなになるか)ウシローで水無山、前山、三ツ塚、
薊岳、木の実ヤ塚の稜線を見ながら食事とコーヒーを楽しんできた。水無山からは桧塚が
猫が獲物を狙っているように見えるのだった。

 いっぱいの車かと思いきや、10時すぎと遅い到着でも、先着は15台ほどと少なめで
ある。準備を終えて小型の犬を連れた単独女性と相前後して出発する。左には水しぶきと
轟々たる音を立てて流れる大又川。林道上も土手から流れ出した水が流れている。これも
先日のゲリラ豪雨の加減らしい。その土手の下では、薄いピンクのハガクレツリフネが旬
を迎えている。すると、キツリフネも負けじと鮮やかな黄色の花を風に揺らせている。

 どの位前だっただろうか、台風がやって来て旧馬酔木山荘が倒壊し、その後、治水の為
の構造物や林道が出来て旧馬酔木山荘跡までは無粋になった。あれから何年経ったか、よ
うやくちょっと見には判らなくなったけれども、未だに白骨木や倒木など川や山の斜面に
はその痕跡が残る。補助ロープが渡された大又川を何度か渡渉し、キワダサコ谷を経て、
明神滝の手前で一休み。滝の全容は滝の上へと巻き上がる坂道の途中からでしか見ること
が出来ないが、耳を圧する滝音が響いてくる。ここは春にはニリンソウが咲き乱れるあた
り。間もなく紅葉と岩を噛む水の白い流れのコントラストが見られるようになる。

 白い水煙を上げる滝を横目に急坂を登り、滝上部へ出て、もう一度谷川を渡れば、そこ
から明神平までが本コースのハイライトだ。経本を折り畳むが如く、斜面をジグザグに高
度を上げていくと、辺りはヒメシャラやハウチワカエデ主体の明るい雑木林である。谷向
こうに薊岳が饅頭傘を被ったみたいな特徴ある姿を現す。頭上高かった稜線も指呼になり、
源頭近くになった沢を二度ほど渡れば植林下に出て、抜ければ水場に行き着く。

 何本か塩ビパイプで水が引かれていて、今日も豊かに水が流れ落ちている。掬って一口、
二口。美味である。この付近には四季それぞれ花があるが、今日はもうトリカブトはなく、
代わりにアケボノソウが最盛期を迎えつつある。白い花びらに散らされた緑や黒の斑点を
夜明け近くの星に見立てたという優雅な名前を持つ。名前に負けない清楚な花である。

水場で咲いていたアケボノソウ

 水場まで来れば明神平はまもなくである。時間は短いものの最後の急登をあえぐ。しか
しここは明神谷の深い谷筋から遠く音羽三山や金剛葛城の山々が見晴るかせる場所でもあ
る。秋分の日とはいえまだまだ空気中の湿気が多いようで、遠くはやや白く霞んでいる。

 意外にも明神平に人影は少ない。中年のご夫婦が馬酔木山荘の前で弁当を広げているの
みである。東屋で一息入れ、水分を補給して明神平から今日は北方向へ向う。この付近は
シャクナゲが植栽されていたらしいが全く根付かなかったようで、標識だけがシダヤブの
中に打ち捨てられている。そんなシダの荒地を行くと、まもなくハウチワカエデ主体の潅
木帯の下。結構な急登だけれど、息を整えながら適当に登っていくと裸地に出る。馬酔木
山荘の三角屋根はもう遙か下で、ご夫婦が豆粒に見える。

 ツクシシャクナゲが尾根の東北側に群落を作っている。そんな中にポカッと窓のように
樹木が切れた場所があって、猫が獲物を狙ってうずくまっている形の山が良く見える。馬
の背は大きな樹木もない笹原である。何度かお邪魔した桧塚、三重県の最高峰だ。下には
千秋谷の林道らしきものも見える。

水無山から眺める桧塚

 岩が埋まる細くなった尾根が西にやや曲ると、水無山の山頂である。山頂といっても反
対側の明神岳と似て尾根の高みというだけの感じ。三角点も無いが標高1,441mはこの
付近の最高峰である。

水無山山頂。登ると尾根の高みに過ぎない

 水無山から先は「こんな感じだったかなあ?」あんまり記憶にない。それもそのはず自
宅で調べたら前回歩いてから7年も経っているのだった。吊尾根の様な鞍部へ下る。もっ
と近いと思っていた国見山が意外に遠く高く見える。しかしもう直線で300mもないで
あろう。この付近はブナも多く、日本庭園の風情があるが、ヌタ場を過ぎればやがてのっ
ぺりした国見山の斜面。細い桧林を抜けると再び雑木の林が現れて、一登りすれば国見山
の山頂である。
久方ぶりの国見山山頂。三角点が欠けて無残

 5月にはサラサドウダンの花が咲いていたはずの丸い頂には角の欠けた可愛そうな二等
三角点標石がある。しかしほとんど展望はなく、そういう意味では国見山の名前に相応し
くない山ではある。伊勢辻山からはここを登ってきたのかと更に北に向かう稜線を窺った
り、天高尾根に入ってみたりしつつ遊んでしばらく憩った後は、食事場所に決めているウ
シログラへと引き返した。こんなのあったかなぁ?幾つかウシログラを示す案内標識があ
る。それに従って5mも行けばもうウシログラなのである。

 相かわらずの絶景である。足下はスパッと切れ落ちた20m以上の岩崖だ。そこから風
が吹き上がってくる。ザックを下ろし座り易い石に腰掛けて湯を沸かす。目の前は水無山、
前山、明神岳、薊岳の稜線。遠くに大峰の大普賢岳があり、山々が大又の谷に山脚を没す
るのが三重にも四重にも重なって見えるのが凄い。(冒頭の画像)この絶景をご馳走にし
ての昼食はまことに贅沢というものだ。ゆっくりコーヒータイムも入れて1時間ほど憩わ
せて貰った。(^^;

明神平上空の天高く秋の鯖雲。建物は天理大学小屋

 急ぐ事もなし、ゆるりと腰を上げて明神平へ。青空の下、帰りは少し、明神平の芝生で
ボケーッとする。秋の雲が見れば結構足早に流れていく。前山の方から幾組かの登山者が
通り過ぎてゆく。その後をのんびり追いかけていこう。そうしていて、私にはこんなノン
ビリ歩きがやっぱり性に合ってそうだなあとつくづく思ったことでした。



【タイムチャート】
7:50自宅発
10:05〜10:15大又林道終点手前駐車場(駐車地)
10:25登山口
10:56キワダサコ
11:07〜11:11明神滝
11:40水場
11:50〜11:55明神平東屋
12:10水無山(1,441m)
12:30〜12:35国見山(1,418.7m(二等三角点))
12:38〜13:20ウシロー(昼食)
13:40水無山(1,441m)
13:55〜14:10明神平東屋
14:46明神滝
15:15登山口
14:30大又林道終点手前駐車場(駐車地)



国見山のデータ
【所在地】奈良県吉野郡東吉野村・三重県松坂市(旧飯高町)
【標高】1,418.7m(二等三角点)
【備考】
北部台高山脈の主稜を形成する山で、明神平の北に位置
します。大又から伊勢辻山経由、明神平から水無山経由、
あしび山荘から天高ルート(台風で荒廃)がありますが、
雑木の為に展望は余り良くなく、すぐ南のウシログラか
らの景観がお勧めです。
水無山のデータ
【所在地】奈良県吉野郡東吉野村・三重県松坂市(旧飯高町)
【標高】1,441.3m
【備考】
明神平の北に位置し、国見山へ延びる尾根上にあり、明
神平周辺の最高峰です。山頂は南北に長く、ブナ、ミズ
ナラ、シャクナゲなどが生え、展望も余り良くなく桧塚
方面が垣間見える程度です。
【参考】エアリアマップ『大台ヶ原』



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