岩谷峠から地蔵峠〜踏み跡薄き自然林

地蔵峠の林道から818m峰
スケン谷ノ頭と呼んでもいい独立峰だ
平成20年10月 4日(土)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 天気に恵まれて、今日も先週に引き続き高島トレイルで遊ぶ。今回はそのトレイル中で
も随一のワイルドトレイルである岩谷峠から地蔵峠の江丹国境。踏み跡も消えたり現れた
り。それだけに、歩く人も少ない自然林は素晴らしく、コースロストのスリルを含んで、
久方ぶりに絶えず緊張感のある山行となったでした。

 桃山台駅前に6時半に集合し、例によって深草でピックアップ。遅刻することなく2台
の車に総勢8名。一路、生杉を目指す。ゲート前の三国峠登山口に我車をデポして、出発
点の古屋に引き返す。当初は地蔵峠スタートの予定だったけれど、ルートをロストしても
地蔵峠に近づいていれば林道にエスケープ出来ること、時間が遅くなれば林道歩きで車ま
で戻れる事などを勘案して古屋スタートに変更した次第。そして9時20分、まずは岩谷
峠に向ってスタートである。

 朽木山の会の古い道標のある保谷林道を針畑川の右岸に沿って歩き、保谷の出合いで右
に曲る。数年前と同様、一寸湿った感じのする林道である。幾つか支道があるが、道標が
出るまでは道なりに進む。保谷はトチノキの多い谷だが、知らぬ内に季節は移ろい、その
葉は少し黄ばみ始めている。芝栗のイガもそこここに転がっている

 ゆっくり30分近く歩くと道標が出る。ロクロベット谷の出合である。見覚えある簡易
水道施設の建物がある。ところで”ロクロベット”とは面白い名前ではないか。しかし良
く考えてみるに、”轆轤別当”即ち木地師の別当、監督者という意味なのではなかろうか。
まあ、何の根拠も無いけれど。(^^;

 さて、一呼吸置いてロクロベット谷沿いの林道へ入る。ヒキガエルのオタマジャクシが
群れていた水溜りが今日もあった。沈下道を数度渡って、林道終点からやや荒れ気味の沢
を岸伝いすると右に道標が出て、植林の支尾根に取り付くことになる。

 結構急斜面を古道の雰囲気のあるジグザグ道は登る。土地の古老の話では、昔は芦生へ
抜ける作業道だったとのことで、「さもありなん」の道の付き方である。そしてまもなく
植林は影を潜め、あたりはしっとりとした雑木林。前回はこの付近でアカショウビンの鳴
き声を聞いたのではなかっただろうか。

2年ぶりに会ったΩの木

 ホンシャクナゲも現れ、傾斜も収まってくればΩの木は近い。内田さんの著書の『京都
丹波の山』(ナカニシヤ出版)にも写真が掲載されている木だが、アシウスギと思しき本体
はもう枯れていて、ブナを始めとする色々な木がその上に繁茂しているという不思議な光
景である。今回のパーティの中にはこれを初めて見る人もいるのでここで小休止とした。

 ユズリハやシャクナゲ、足元にはバイカオウレンが生える山腹をヘつるような道を辿れ
ば、「延命地蔵経 般若心経 一石一字塔」と刻まれた自然石の立つ角に出る。近くの地
蔵峠、クチクボ峠にもある石塔と同じく、円満相を表すらしい”○”が彫られている石だ。
50kgは軽く越える石をどのような経緯で運んだのだろうか?古人の信心の深さには驚く
ばかりである。ここまで来れば今日の高島トレイルの起点、岩谷峠はもう目と鼻の先であ
る。

 峠には高島トレイルの新しい道標がある。2年前にはなかったものだ。当時歩いた南の
三国岳(サンゴク)への踏み跡は明瞭であるけれど、北の地蔵峠へはこれが高島トレイル
か?と思われるくらい、相変わらず踏み跡が薄い。芦生研究林の境であることもあって、
今までの経緯から高島市も少しく遠慮しているのだろうか。(笑)

 さて、地蔵峠まで距離は3.9km。少し性根を入れねばならない尾根のトレースの開始
だ。まずは峠の北東にあるCa800mのピークへ上がって、トレース歩きを軌道に乗せね
ばならない。幸い、この付近の尾根は沢歩きもするKさんが経験者なので心強い。どこで
も歩ける斜面、獣道みたいな薄い踏み跡らしきものを探しながら進む。ブナや杉、コナラ
などが、杉の幼木やユズリハと混生する中を、10分足らずでそのCa800mピークに立
てた。順調に尾根に乗ったようだ。

 踏み跡は明瞭なのが現れたり消えたり。概して細い尾根では、人もケモノも同じ所を歩
くから踏み跡明瞭、広い斜面はどこでも歩けるから踏み跡不明瞭。しかもテープは思い出
したようにポツリポツリとあるくらい。三重嶽近辺では嫌となるくらい過剰に結んである
高島トレイルのテープも滅多に見ない。それだけにここを歩くには中級以上の経験が必要
であろう。
地蔵峠への尾根風景

 西に811mピークのあるCa790mののっぺりとしたピークを順調に通過。その先に
オフィシャル道標(『地蔵峠2.3km、岩谷峠0.6km』)を見つける。左手は由良川の源
流のスケン谷、右は針畑川の源流。ここも中央分水嶺だ。ヌタ場を過ぎると、西にお尻の
割れ目のような丸い尾根を持つCa780mピークだ。Kさんによれば、スケン谷を遡行し
てこの辺りに上がって来た事があるという。丸い尾根は”ハートの尾根”と呼ぶらしい、
ま、そっちの方が名前としては綺麗ですが。(^^;

ブナの大木の枝ぶり

 右にグネグネ曲がったアシウスギを見る頃、地形がやや分かりづらくなる。手元の地形
図を見ても尾根筋が複雑に入り組んでいるのが分かる。しかしながら下山ではないので、
要は北東に811mピークの高みを目指せばよい。ごく短いが急斜面だ。

 818mピークはこの尾根で唯一の標高点ピークで一寸した独立峰だ。名前があっても
良さそうなくらいだが、スケン谷の源頭にあるので我々だけでも”スケン谷ノ頭”とでも
呼ぼうか。峰の南手前に登りついて、ここが頂上だと思ったら少し北の方が高い。6,7
0m進むと狭い山頂があった。木々がなければなかなかの眺望が得られるだろう。木々を
透かして三国峠が覗く。北方にはこの峰と双耳を形成しているピラミダルな800m峰も
あって、そっちへ辿れば生杉へショートカットできそうないい尾根が続いているようであ
った。

 この付近でほぼ中間地点であろう。間も良く丁度正午であるのでここで昼食タイム。頂
上付近で思い思いにどっかり座り込む。昼飯は定番のラーメン。それが美味い季節になっ
てきた。
大きな曲がり角には道標があるのだが...

 ここ818mピークでコースはほぼ直角に方向を変え西に辿ることになる。斜面を下っ
てしばらく西へ辿った辺りは、今回でも最も迷い易い地点の一つだろう。普通なら南の尾
根に出てしまうのではないか。その分岐のいい所にオフィシャル道標(『岩谷峠1。9km 
地蔵峠2.0km』)が立つが、そこからも結構ややこしい。踏み跡もなく、しばらく降り
ないと尾根に乗っているかどうかが分からないという地点なのだ。だが北東目指してうま
く降りると薄い踏み跡が現れテープも出てくる。それを見つけるてホッとする瞬間だ。そ
んな時、ふと北を望むと、眼下に林道が見えた。地蔵峠のゲートに通ずるアプローチ林道
であろう。それが遙か下に見えたのには驚いた。

地蔵峠への尾根(818m峰から地蔵峠の中間地点付近)

 ここを過ぎれば先の尾根も明快で、林道突端の北にあるCa820mの複雑な等高線ピー
クまでのしばらくは安心して歩ける。高島トレイルのテープもチラホラ出てくるので、Ca
820mピークで南に引き込まれないように注意して歩けばよい。ヤブもなくしばらくは
ルンルン気分だ。

 今年は芝栗が豊作である。あちこちにイガが一杯落ちていて、それを拾うのに忙しい女
性陣。この芝栗、小粒だが一際甘くて美味しいのだ。帰りの林道で見せてもらったが、ス
ーパーのレジ袋八分目の収穫とはすごかった。

 さて、前述のCa820mピークを越えれば、尾根の左右には林道が走りもう迷う心配も
ない。となれば最後の難関は地蔵峠にピンポイントで降り立つことだ。しかし地形図には
地蔵峠の表示はなく、多分この辺りであろうの感覚でしかない。その上、地蔵峠間近の地
形がなかなか複雑なのである。本来の尾根は南に湾曲していくのであるが、それを無視し
て北へ向わなくてはならない、しかもそこには地形図に現れない浅い谷があるのだ。その
源頭に迂回して向こう側の小さな尾根に出ると、左手およそ20m下方に林道が垣間見え
る。ならばこの尾根の尽きるまでとササの枯れた斜面を下る。幸い古いテープもある。そ
うして北へ北へと辿っていくと、これまた小さな谷があり林道が見えた。林道によくある
崖の切り通しではないので、ピンポイントではなさそうだがもう降りきることにした。そ
こは地蔵峠から直線では50m程度、林道にして150m程度、西の地点である。

ピンポイントとは行かず
地蔵峠の西150mに下山

 この降り立った所にもなぜかテープがあった所を見ると、ここから取り付く人もいるわ
けで、地蔵峠とはあながち大狂いというわけでもない。ここは寛大に正解としておきまし
ょう。(笑)

 何年ぶりだろうか。地蔵峠には勿論誰もいない。「長治谷・三国峠」の指導標も傾いて
侘しそう。その前で集合写真である。

 さて本日のバリエーション。地蔵峠の林道ゲートまで谷を歩こうという事で、高島トレ
イルの地蔵谷の取付き横から谷へ降りたのだが、これはひどい、なんとゴミだらけだ。し
かも雨で道が崩れており歩きにくい。下るに従って両岸が出てきて歩きやすくなるが、左
手に綺麗な雑木林が現れたので、そこを登ってみる事にした。対岸に小さな滝がある箇所
である。思ったより急登で手足フル回転の四輪駆動でないと上がれない。それでも小さな
支尾根があって歩きやすい部分を選って標高差50mを登ると、林道がグニャリとたわむ
箇所に出た。
こんな小さな滝があった

 林道の谷向こうの尾根は今日歩いてきた尾根だ。一際高いのが818mピークだろう。
さっきまであんな所にいたなんて想像できないなあ。なんて考えているともうゲート前。
まだ何台かの車が残っているが、どこを歩いているのかしらん。

 日が傾き、やや赤っぽくなった空気の中、デポした愛車で針畑のルネッサンスセンター
経由で古屋へ戻る。コースもロストせずになんとか無事に、予想した時間より早く戻って
これた。同行の皆さん、ご苦労様でした。



■同行 ikomochiさん、北山さん、すみれさん、たらちゃん、たるるさん、
    もぐさん、YUKINKOさん、(五十音順)

【タイムチャート】
6:30桃山台駅東ロータリー(集合地)
9:10〜9:20三国岳古屋登山口
9:51〜9:56ロクロベット谷出合(簡易水道施設手前)
10:26〜10:32Ω型の木
10:48〜10:52一字一石塔
10:55〜11:00岩谷峠
11:18道標(地蔵峠3.3km)(811m標高点北東のCa790mピーク)
12:00〜12:40811m標高点ピーク(昼食)
13:21〜13:26Ca820m台地東端
14:05地蔵峠林道西100m地点(降下点)
14:10〜14:20地蔵峠
15:20地蔵峠林道ゲート(三国峠登山口)

■今回のコースはこちら


岩谷峠のデータ
【所在地】京都府南丹市(旧美山町)・滋賀県高島市(旧朽木村)
【標高】Ca780m
【備考】 城江丹の境をなす三国岳の北側にあって、かつては芦
生への間道の一つでした。寛政年間に立てられた一字
一石塔が峠の近江側にあります。ここから地蔵峠まで
は高島トレイルの内ですが、踏み跡が薄く、テープ類
もほとんどありませんので、磁石、地形図は必携。そ
して山慣れた人と行くと無難です。
【参考】2.5万図『古屋』、エアリアマップ『京都北山2』



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