飯盛山〜春隣、平荘湖周回

平荘湖の監視所付近から平荘湖と飯盛山
平成20年 2月11日(月)
【天候】晴れ
【同行】単独


 まさにジェットコースターウェザーとでもいおうか。土曜に十何年ぶりの積雪があった
と思ったら、月曜は春を思わすポカポカ陽気。でもこのポカポカも1日だけで、又水曜に
はこの冬一番の寒さが来るんだとか。そんな貴重な陽気の一日を加古川の平荘湖周回で過
ごしてきた。というのは先週もこの地域に来ていて、播磨の守護赤松氏の城跡がある志方
城山に登ったのだが、山頂から南を望んだ時、もっこりした山が気になった。調べるとそ
れは飯盛山と呼ばれ、平荘湖の北に盛り上がる山で、やまあそさんやたぬきさんのレポが
ある。そんなことでまた出張ってきたわけだけれど、せいぜい標高200mの山並みなの
にどうしてどうして。スラブ状の岩あり、石切り場跡の石の崖歩きありとまことにバラエ
ティ豊か。わざわざ遠くへ来た甲斐がある、なかなか拾い物の山域であった。こんなとこ
ろがあるんだから日本は広い。(^^; しかも駐車場無料というのも嬉しい。加古川市、えら
い!(笑)

 山陽道三木小野ICから加古川沿いを南下する。上荘橋で加古川を渡り、標識を確認し
て平荘湖へ向かう。間もなく見えてくる水面。ウェルネスパーク方面へ右折して駐車場へ
入る。もう九分通りの混み具合なのはコンサートがあるかららしい。隣の車からも初老の
ご夫婦。お互いに目を合わせてポカポカ陽気に驚く。

 ザックを背負ってとりあえず湖の方へ。ウェルネスパークの取付け道路の前に、湖畔を
巡る「ふる里自然の道」の起点がある。軽ワゴンのタコ焼き屋が開店準備中。その横、て
っぺんに高圧鉄塔の立つ無名ピークに行くらしい小道がある。やまあそさんはこれを辿っ
たらしいが、あっさり無視。(^^; 初めてなので湖畔の景色を眺めながらポクポク行こう。

 平荘湖は湖面の面積が1平方kmという工業用水の人口湖で、一周は約5kmという。手頃
な距離なので散策やジョギングする地元の方が多い。それもなぜだか夫婦ペアの人が。(笑)
HPでたぬきさんが「山の格好をしているのは我々だけで少々浮いた感じも」と書かれて
いたが、ほんにそんな感じがする。無名ピークを巻くといよいよ升田山への取付きだ。こ
の辺りだろうと尾根筋が徐々に立ち上がる部分を目で追っていると、『升田山』と書かれ
た板が見つかる。(後で気づいたが少年自然の家が立てた道標らしい) 近くには加古川
市教委の升田山15号墳の標識があり、茂みの向こう側は小さな墓地だ。

 最初はやや急勾配。ネズミサシ、ヒサカキ、ソヨゴ、ツツジなど典型的な低山の植生。
登るにつれ、湖と周囲の山々がせり上がってきていい景色だ。それも常緑樹の林に入ると
お預けになってしまう。それからはほとんど高低差はない。この尾根筋が平荘湖の自然の
堰堤になっているのが良くわかる。

 この頃からぽつんぽつんと白い標識が目立ちはじめたのは古墳の説明板である。曰く「
升田山2号墳 6世紀から7世紀頃の円墳。益気里(やきのさと)の豪族の墓。6世紀か
ら7世紀頃の円墳云々」。しかし玄室なんかも崩落してしまっているらしく、何処が円墳
だかさっぱり分からない。盗掘で目ぼしいものは何もないということだ。

 歩くに従って、9号墳、8号墳、3号墳...と次々に古墳跡が現れる。その内に幾度
か植生が常緑樹から落葉樹主体に変わったりしながら、踏み跡が左(東)にほぼ90度曲
る地点には道標がある。直進しているのは14号墳への道で、左折すると小さなピークに
なって、踏み跡が三方にあるが、ここは一番踏まれた直進路をとる。すると一枚岩の大き
な露岩が現れた。これが最初に現れたビューポイント。振り返れば高御位山や飯盛山。左
前方には升田山らしき緩やかなピーク。右前下方には加古川が流れ、加古川、高砂市街が
広がっている。岩の上でも風はなくポカポカと暖かい。

 一旦、下った道は別当谷の分岐から登りになる。また現れた一枚岩にはロープも用意さ
れているが使うまでもない。それを一気に登りきると最高のビューポイントである升田山
の頂だ。時間がかかるので岩を掘削するのを端折ったのか、中途半端に岩に埋められた三
等三角点。休憩用なのか床机も置かれている。それにしても青空の下、360度の大パノ
ラマだ。

枡田山から平荘湖。中央が飯盛山でその右肩に志方城山が覗く

 景色を堪能したら北の尾根筋に向かおう。岩盤を進んで行くと感じのいい低木の林。酸
性の痩せ地の主、ツツジ類が多く見られるが、まもなくそれも抜け出ると、右側にバッと
広がるのは砕石場の跡地の風景だ。その垂直の石壁の突端付近を歩いて、下を覗くとゾク
ッと下半身がこそばゆくなるのは私だけだろうか。その内に左側も崖状になり、地形図で
両方が崖と記述されているのが実感できるポイントだ。木が生えてその絶壁を隠してくれ
るのが如何にありがたいことか。(^^; 砕石場への侵入を防いでいるらしい飼い犬がはる
か下に見える。ビビッているのがわかるのか、吠え声が壁に共鳴するのか耳障りだ。(^^;

採石場跡の崖上を歩く

 踏み跡は右に曲って行く。この付近からは砕石場の全貌が眺められる。おっ、あの上を
歩いてきたのか。へぇー。

 再び雑木林の中を下りていくと、突然人声が響く。登って来る人がいるのかと思いきや、
ぽっかり出たのは湖畔の周回道路で、声の主はウォーキングする小父さん二人であった。
30mも行くとトイレと監視事務所がある広場である。

平荘湖対岸から見る升田山。砕石場跡、監視所が見える

 ここからしばらくは堰堤の周回道路歩きである。見れば水面の方が市街地よりかなり高
い。決壊したら大変だなあ。などととりとめもなく考える。水面に浮かぶのは鴨。一羽だ
け黒いのは鵜だ。それが突然、水面を走り始めたと思ったら、バタバタと必死に羽ばたき
ながら空中に浮かんで湖面の中央に滑水した。体が大きいので垂直離着陸が難しいらしい。

 湖へ勢い良く流れ込む水路があるが、水は何処から来るのだろうか?加古川から汲み上
げているのだろうか。

 右側に溜め池が見えると、県道と合流する地点に出る。飯盛山に登る地形図の点線路は
県道を右に進んでカーブする手前付近にある。それを目指して200mばかりも歩くと、
目当ての登山口の標識が立っている。笹とひょろっとした潅木の間はゴミだらけだ。衣類
一式を捨てに来た輩がいる。ひどいものだ。そこを抜けた斜面の登路を見ると今度はモト
クロスバイクの轍がひどい。なんとかならないもんかねえ。

 里山らしくあちこちに曰くありげな踏み跡がある。とりあえずバイクの轍がついた道が
メインだろうと進んで行く。ブーンと唸る低騒音は裏の加古川変電所の音のようだが、猪
名川の変電所もこんな大きな音はしなかったような。(^^; 耳障りな音だ。その音から逃
げるようにスピードを上げる。笹と潅木のトンネルになってようやく音は小さくなった。

 変電所が近いので鉄塔が多い。神吉線bQ5と関電の反射板を過ぎると、次は高砂火力
線bS0が現れる。景色のいい所でそろそろ昼食でも思いながらどんどん上がってきてし
まった。相ノ山分岐もいいのだが、ここまでくれば飯盛山まであと一息だ。

 今度は姫路火力線bT1の鉄塔下を潜る。その先は小さなピークで大コースと中コース
の分岐である。中コースは洞貝山へ向かうコース。下の谷に東屋とキャンプ場みたいな施
設が見えるのは青少年自然の家のものらしい。ここまで来ると反射板を抱えた飯盛山の本
峰がようやく現れる。賑やかな人声が降ってくる。思う間もなく10名位の団体さんとす
れ違う。今日初めて遭遇する山姿の人たちだ。(^^;

飯盛山の最後の登り、関電の反射板が見えてきた

 ひとしきり登った飯盛山の頂き自体は展望があまり無く、いいのは南か北へ少し下った
辺り。北へ行けば志方城山や笠形山、西光寺山などが目立ち、南の露岩に立てば高御位山
や桶居山、明石海峡大橋から瀬戸内海や小豆島らしい島影も望める。低山なので下界から
の生活音も這い上がってくる。昼食はその露岩に陣取って鴨煮込みうどん。しばらく山頂
を一人占めしていたが、さあ、うどんを頬張ろうという段になってご夫婦が上がってきた。
残念。(笑)
飯盛山山頂北から志方城山

 下山は相ノ山分岐に戻り、自然の家方面へ降りることにする。分岐から3、4分で相ノ
山。小さなピークである。そっちへ降りてもいいなと思わせる関電巡視路などもあるが、
小コースの分岐もある。この小コース、青少年自然の家のキャンプ場付近に下りるらしい
が、立入禁止とある。自然の家利用客の御用達のコースなのだろう。ということは、大、
中コースの分岐で”中”を採用しても立入禁止となっていたということか?仮に選択して
いたら、そんな禁止プレートがあっても強行突破するだけだけれど...。(笑) とはい
え、ここは大人しく南への下山ルートを採ろう。

相ノ山南尾根の岩尾根を降りる。奥は黒岩山

 ところがこのコースがなかなかのスリルなのである。ほぼ全行程、一枚岩の岩盤ルート
なのである。赤茶けた岩は、小野アルプスの紅岩と同じ成分だろう。登るのはいいけれど、
下るのには足元に注意が要る。湖に浮かぶ”ひょうたん島”みたいな半島など足元に広が
る景色に見惚れて油断するとズルリと尻もちをつくこと必定。岩の中央付近では下山コー
スがわかりにくくなるが、白いペンキの矢印を目印にすればいいようだ。最後は潅木帯に
入って、右にトラバースするとコンクリート階段と自然の家の敷地フェンスが現れ、周回
道路と合流した所は自然の家の「高台駐車場」横である。

 ホッと一息。でももう一山、三角点をゲットして帰ろう。ウェルネスパークの裏山、黒
岩山だ。青少年自然の家前を通過して、ウェルネスパークへの取付け道路のほんの5m手
前に、その登山口がある。竹林横から一気に尾根道となる。時折、ウエルネスパークの建
物と駐車場の車が下に覗く。ここも高い木が無い岩山だ。

 標高差100m程度の低山なので10分と少しもあれば登れる。傾斜が緩くなると高圧
鉄塔近くにポツンと四等三角点の埋まる黒岩山の山頂。東西に長い山頂部分は展望が無い
が、踏み跡は西へとまだ続いている。その踏み跡につられて歩いて行くと、ここにも古墳
跡がある。(神吉山5号墳)そして山頂の西の端でまたまた露岩の上に出た。

 西側と南側の展望がすこぶる良い。特に西側は近くにこの山より高い山がないので平野
に溶けゆく尾根筋が手に取るようにわかる。その尾根筋に一筋の白い踏み跡。その先には
東屋らしき建物とその向こうの広場には記念碑と思しきものが立っているのが見える。地
形図に碑マークがあるのがそれだろう。折角だからあそこまで行くかあ。当初はピストン
の予定だったが、気がついた時にはもう岩を下っていたのであった。

 と、岩陰から誰やらやってくるではないか。あれっ?女の子連れの地元のご夫婦である。
神吉から来たというので、何処に降りられるか尋ねてみる。すると記念碑の下辺りに見え
ている墓地の辺りに出るという。では折角なのでそこまで行ってみよう。お礼を言ってす
れ違う。
黒岩山西の鞍部から黒岩山

 ちょっとした鎖場を過ぎると鞍部だ。ウェルネス方面を覗くと、20m程度下の林の中
に瓦屋根が垣間見えている。これが毘沙門堂らしい。つい、ここ降りてエスケープしよう
かとスケベ心が湧くが、エイッ!と気合一発。初志貫徹だ。(笑)

 鞍部から少々の登りで姫路火力線bS7の高圧鉄塔を過ぎる。振り返るとさっきの親子
連れが露岩の辺りで休憩しているのが小さく見えている。あんな所から降りてきたのかと
思う内に、その風景も再び笹と潅木の中である。そうしてそれこそ忽然、ぽっかりという
感じで正面に現れたのは向かって右は蔵王権現、左は不動明王と偉い眷属を引き連れた役
行者の石仏である。だが待てよ。この役行者、どこかでお会いしませんでしたか?そうそ
う、それもそのはず先週の志方城山の山頂に鎮座していた役行者とそっくりだ。というこ
とはいずれ地元の同じ石工が彫ったものだろう。願主も同じかも...。

行者山の役行者像

 踏み跡が格段に良くなったと思ったら、次に現れたのは西国札所の石仏である。黒岩山
の岩の上で東屋と思ったのは小さな観音堂で、お堂の向こう側の少し大きな立像は観音様
ならぬ阿弥陀如来だ。「???」

 ここまでくると記念碑は近い。思いの他広い芝生の中に高さ3mはありそうな立派な記
念碑は日露戦争の記念碑である。足元には神吉山の標識。標高61m。最早山とはいえな
い尾根の突端なのである。

 さて、降り口は何処だろう。歩いてきた道の一つ南よりの西国札所の石仏の並ぶ道を戻
る様に歩いて行くと南へ降りる参道を発見。走るように辿るとあっという間に墓場の横に
出てきて、民家かお寺か良くわからぬ建物の前を抜けると、東播工業高校へ通じる道はす
ぐそこである。

 ウエルネスパークへ戻る麓の道からは歩いてきた尾根筋が明快に見て取れる。神吉山の
記念碑、観音堂の建物も眺められる。車もほとんど通らぬそんな道を20分ばかり歩いて
神吉団地の中を抜け、畦道を辿ってウェルネスパークの駐車場へ戻ってくる。駐車場はど
こも満杯で駐車待ちの車が出るほどなのだった。

 ウェルネスパークにあったハイキングコース図をほぼ逆に周回した形。全山域は最高点
でも200m強の低山なのだが、意外に面白かった今日の低山徘徊。またどこか探して歩
きましょう。



【タイムチャート】
9:15自宅発
10:40〜10:48ウェルネスパーク駐車場(駐車地)
11:05升田山登山口
11:30別当谷分岐
11:40〜11:45升田山(105.1m 三等三角点)
11:55湖畔周回道との合流点
12:20飯盛山登山口
12:30高圧鉄塔(神吉線bQ5)
12:39高圧鉄塔(高砂火力線bS0)
12:45相ノ山分岐
12:56〜13:51飯盛山(216m)
14:02相ノ山分岐
14:06〜14:07相ノ山(Ca170m)
14:27少年自然の家高台駐車場横
14:33黒岩山登山口
14:45黒岩山(132.5m 四等三角点)
15:00高圧鉄塔(姫路火力線bS7)
15:02行者山(98m)
15:07神吉山(61m)
15:10墓地
15:25ウェルネスパーク駐車場(駐車地))



飯盛山(平荘)のデータ
【所在地】兵庫県加古川市
【標高】216m
【備考】 加古川市付近の農業用水となっている平荘湖の北に構え
る低山です。全山、岩がちで大きな木がなく、山頂付近
からいい展望が得られます。前衛の相ノ山から少年自然
の家横までは一枚岩の道です。
升田山のデータ
【所在地】兵庫県加古川市
【標高】105.1m(三等三角点)
【備考】 平荘湖と加古川を隔てる堰堤ともいうべき岩山です。こ
こから眺める平荘湖と飯盛山、高御位山、加古川平野は
一見の価値があります。
黒岩山のデータ
【所在地】兵庫県加古川市
【標高】132.5m(四等三角点)
【備考】 平荘湖に隣接するウェルネスパークの裏山というべき岩
の山です。低い割りに長い稜線を持ち、神吉までの派生
尾根歩きはなかなか楽しいものがあります。
【参考】
2.5万図『加古川』




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