目に青葉、海も青き青葉山

青集落付近より青葉山
平成20年 5月 4日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独


 海が見える、それも真下に見えるという山には幾つか登ったことがある。依遅ヶ尾山、
由良ヶ岳に西方ヶ岳。GWはまたまたそんな絶景を見ようと近畿百名山、関西百名山に数
えられる青葉山へ。若狭富士と呼ばれる秀麗な姿は何処からでも同定できる山だ。青葉山
はまた、花の名所でもあり行ってみたかった山。少し遠出となるけれど節約モードで行っ
てみましょう。

 ETCを装着しているなら割引を使わない手はない。良く利用するのは通勤割引。一律
割引にすればいいものを、お役所仕事で複雑怪奇な制度だが、要するに100km以内の
距離を適用時間内に走っていればいいのだ。茨木−彦根、宝塚−綾部、宝塚−山崎、宝塚
−竜野西なんぞが使える。但し、名神は京都東以遠しか割引かれないから、西宮北から割
引の利く中国道方面がお勧めだ。今回も渋滞を避けようと6時半前に家を出て、宝塚から
綾部まで2500円が1450円。後は広域農道、府道1号、R29を乗り継ぐ。高浜大
飯ICまで行けば速いのであるが、料金3250円を払うようなそんな馬鹿なことはしま
せん。(笑) おッと本題から逸脱。閑話休題。

 山峡を走る県道からR27へ合流すると、ドーンと文字通り青葉の青葉山が目に入って
くる。いいねえ。コンビニに寄ったりしながらしばらく西走し、標識に従って右折し、泰
澄上人開基の中山寺の山門前を抜けて左カーブを上がっていくと、直ぐに今日の起点に決
めた青少年旅行村の駐車場に着く。

 予報から予想されたことだけれど初夏の様に気温が高い。半袖で来て正解。でも帰りの
車道歩きが思いやられるなあ。(^^; そんな思いを胸に準備を終えて車道を西へ歩くと、
まもなく中山寺からの道が左から登ってくる。ここは北陸だけどなぜか近畿自然歩道だ。
(笑)
青少年旅行村にある案内図

中山登山口

 車道右手に大きな案内図が立っている場所が中山寺コースの登山口だ。東峰2.6km、
西峰3.3kmとある。それを確かめて小さな畑の横、ムラサキサギゴケ、キンポウゲが
花盛り。杉林とタケノコがニョキニョキ、竹林の間の道は薄暗い。急登を行って直ぐに現
れる分岐はどっちに行っても良さげ。何となく右を選んだけれど、道は左に折れてほぼ水
平の山腹道になる。ほの暗い中にシャガの花の白さが目立つ。道沿いの杉の木の幹に透明
ポリプロ容器がぶら下げてあるのは何だろう。まじない?中に入れられているのは何かの
毛のようだ。イヌの毛?鹿が嫌がるのかなあ?

 左側が開けると明るくなり、ヤマルリソウの青い小花が目立つようになる。ふと見ると
ハナイカダ。目撃するのは金剛山以来。見れば見るほど不思議な植物ではある。不思議と
いえば花姿の奇怪なのがイカリソウだ。この山の本当に至る所で見かける。ミシン糸みた
いな細い茎の何処から白、ピンクの花を咲かせる力があるのだろうか。

 ちょっとした鞍部。左から上がってくるのが高野からの道。シャガに囲まれて何やら掲
示されているので読んでみれば、高野登山口付近で熊の目撃情報が多く寄せられ、捕獲檻
を設置したので高野コースは使用禁止云々。もっとも、禁止期間は昨年末で切れているら
しいが、なんかその辺から出てきそうな。(^^;

 道の曲がり角の要所には床机が置かれて休憩できるようになっている。さすがに急斜面
の山で息が上がる。NHKのアンテナ施設の見える場所で一休み。小さなクリームパンで
エネルギー補給。

 高浜テレビ放送局アンテナ施設を右に見て、しばらくすると右手(東)が明るく開けた台
地に出る。麓の案内図に展望台とあったのはここだろう。東屋があって初めて目の前に若
狭湾が広がる。群青に船の白い航跡が鮮やか。遠く盛り上がるのは久須夜ヶ岳だろう。

展望台から若狭湾。白い航跡を引く船や大島半島
内外海半島の久須夜ヶ岳が霞む

 再び急登が始まる。またまた少し行っては立ち止まるケースが増える。汗を拭いている
とどこかでキツツキのドラミング。

 ようやく着いた祠がある広場。ここが山頂か。いや、まだまだこれは金毘羅社の祠だそ
うだ。先ほどは海側だが、今度は南の若丹国境方面が広がる。何時の間にやら大分登って
きたなあと実感する場所だ。でもまだまだジグザグの急登道が控えていたのだ。

 一旦下って細い尾根になる。木の間越し左手の鋭鋒が東峰に違いない。気がつけばイワ
カガミが咲き乱れていて、中には濃い赤、反対に白に近い物も混じっていて結構個体差が
大きいものだ。そして植生も少しずつ変化してきて、ブナも増えてくる。結構大木もあっ
て文字通り青葉繁れる青葉山だ。

馬の背の岩からR27沿いの市街と若丹国境方面の山々

こんな良いブナ林もある

 突然、大きな岩が行く手を遮る。馬の背と言われるのはここだろうか。右に巻き道もあ
るがここは岩を越えねば値打ちがない、男がすたる。もっともすたるような甲斐性もない
のけどね、と云いつつへっぴり腰で岩上に上がるとこれが大景観。南方向がバッと目の前
に広がった。でも直下はあんまり見ないことにしよう。○○が縮み上がってくるもの。(笑)

 そしてブナの幹を片手に木の根道を登り切るとようやく東峰に到達する。南にテラスの
ようになった鎖止めのある岩場の手前に東峰693mの標識があり、石段を登った先に東
権現の社がある以外は猫の額ほどの狭い空間だ。なんとその石段にフデリンドウが一輪咲
いているのを見つけた。気付かない登山者に踏まれるのではないかという場所ではないか。
例の如く行き倒れてデジカメに撮っていると、何やら飛び回る気配。東権現の社の裏に蜂
が沢山取り付いているではないか。幸いニホンミツバチらしく刺激せねば大丈夫だろう。
でも「君子危うきになんとやら」だ。早々に離れようっと。

東峰の東権現社

 さて、ここ東峰から西峰の650mが青葉山のハイライトの一つだろう。岩の稜線歩き
だ。多紀アルプスの小金ヶ岳と雰囲気が似ているようにも思うが、その尾根の幅をぐっと
狭めたような感じだろうか。海側より南の山側に岩稜は偏っていて、海側は樹木が邪魔し
て見えにくい。90度近い鉄梯子を登下し、ロープを伝って行くが、礫岩は凹凸が多く段
差もあり足場には事欠かない。でもスリルは満点だ。西峰が遠くに見えており、これは古
光山や倶留尊山に似た感じがする。岩と岩が重なった間を抜ける胎内潜りみたいな部分が
白山を開山した泰澄上人が修行をした場所なんだろうか。岩にはツメレンゲの一種らしい
小さな植物が繁茂している。

スパッと切れ落ちる稜線の岩上から望む西峰
遠くは東舞鶴と舞鶴湾

こんな鉄梯子が随所にある

 登り返しもようやく終わりに近づき、林の向こうから多くの人声が洩れてきた。東峰か
らほぼ40分。腹が減ってへろへろしながらもようやく西峰に到着だ。

西峰の西権現社。背後が展望岩
大分人が少なくなったところでパチリ

 東峰に比べて、西峰は大盛況。青葉山へは松尾寺からがメインコースなのだろう、西権
現の祠の前の狭い空間に、20人近くの人が昼食中である。ちょっと昼食場所を探すのに
苦労するが、南側の岩の端が空いていたので店を広げる事にした。直射日光に当たって暑
いけれど仕様がない。しかもなんでだか風が木々の葉を裏返して白くするほど吹くのに、
ここだけ吹いてこない。?? といっても目の前は絶景で、頭巾山や養老山などの若丹国
境の山々が瑞々しい。そこを貫くのが舞鶴若狭道だ。「高架橋とトンネルばっかりやなあ」
西の方へ目を移すと東舞鶴の市街と港。遠くに弥仙山が尖っているのが分かる。そんな展
望をアテに缶ビール。あんまり冷たくはないが、からからの喉、美味いなあ。空腹にほぼ
一気飲みだったから直ぐに効いてきた。(眠くなってきた〜)ZZzz。

 今日は自分だけなので昼食もゆったり。コーヒーを飲んだら、西権現の祠の裏の岩大展
望と聞いていたので登ってみる。途端に広がる大絶景。細工したのか、自然の形なのか、
柵の様になった岩にもたれて日本海を眺める事が出来る。内浦湾に浮かぶイカダや船、ダ
ンノ鼻、広瀬鼻、正面崎、神野浦の漁港、高浜原発などが一望され、その先は青緑色の日
本海なのだ。持参の双眼鏡でしばし楽しむ。

 あんまり長く占領していると、他の人達に悪いので適当な所で撤収。中途半端だったザ
ックを片付けよう。
西権現の社裏の岩から覗くと内浦湾のこんな大展望が

 松尾寺へは更に西側に下りていく。直ぐ左に今寺コースの分岐がある。「うっ」。今寺
に降りた方が車を置いた旅行村に近いしどっちにするか迷うが、今寺コースは地形図を見
ると林道みたいだし、ここまできたら当初通り行くべしと松尾寺へ下山することにした。
分岐のそばにある岩の前には『青葉山妙性大権現』と刻まれた祠に自然石の灯籠がある。
これが松尾寺の奥の院だろう。祠には鏡が祀られている。

 とても直行で降りることは難しかろう。でもそこは上手くしたものでジグザグに道が切
ってある。それでも所々にはロープ、鉄梯子が備え付けてあってお世話にならねばならな
い。もっとも、礫岩なので、無くても何とかなるが...。やや盛りを過ぎたミツバツツ
ジの花が赤く、地面がほの暗くなるくらいの大きなモミの木がある。

 ロープ場で嬌声をあげるハイカーなんぞを抜いて、急斜面を爪先が少し痛いのを我慢し
て降りていくと、周囲は次第に常緑樹が増えてきて、更には杉林に代わる。この頃には傾
斜が嘘のように緩み、松尾寺の奥の院の参道である事を示す石の鳥居が現れる。ゆったり
した林の下でホウチャクソウが薄緑の蕾を揺らしている。Uの字型に掘れた道は使われな
くなった井戸か何かの横を抜けて、林道に出会う。近畿自然歩道の標識。周囲は竹林。風
で竹の幹が打ち鳴らされる音が少し不気味に聞こえる。

林道出合、杉と竹林

 とりあえず林道を明るい方へと行くと、重機が置かれた道の拡張工事現場へ出た。右に
民家があるのでそちらへ向えば土産物を売る屋台が50mほど先に見える。松尾寺の境内
だ。木陰で一息入れているハイカーに混じってこちらも一息。
 
西国札所松尾寺。馬頭観音を祀る

 一息入れたはいいが、ここはまだまだゴールではない。青葉山の麓を青少年旅行村まで
テクらなくてはならないのだ。とりあえずは今寺までの道を確認せねばならない。ちょう
ど本堂前で店を出していた土産物屋に確かめて見たものの、地元の人達ではないらしく「
さあ?」というばかりで要領を得ない。そこで本堂にいるお寺関係者に聞けば、さっき通
って来た道がそれらしい。「直ぐ近くだよ」と言われたが「近くて遠いは田舎の道」だ。
(笑) 覚悟してさあ戻ることにするか。

 拡幅工事の真っ最中の道を進む。暑い。クラクラするわ。空気が乾燥しているのと、お
茶を2Lペットボトルで持参していたからいいようなものの、これが湿気の多い7月だっ
たら、とても歩けたものでなく、即、タクシー乗車だったろう。そして田植え時で農家の
人たちがちょくちょく家から出ておられたので、道を確認するのに苦労せずに済んだのも
大きい。しかしながら背後の青葉山や麓の水が張られた田、遠くに見える海を眺めながら
歩けたのは、それはそれで楽しいものがある。南から見る青葉山って富士の感じはしない
なあ。(笑) てくてく、てくてく。「小父さ〜ん。その耕耘機に乗せてってぇ(^^;」と心
で叫ぶ。約1時間の道のり。往路の中山口登山口が見えた時は正直嬉しかったことである。

 見かけた花で覚えているのをざっと列挙すればイカリソウ、イチリンソウ、イワカガミ、
エビネ、ギボウシ、キンポウゲ、シャガ、ショウジョウバカマ、スミレサイシン、シハイ
スミレ、タムシバ、チゴユリ、ハナイカダ、ヒトリシズカ、フデリンドウ、ブナ、フユイ
チゴ、マムシグサ、ホウチャクソウ、ミスミソウ、ミツバツツジ、ミヤマシキミ、ムラサ
キケマン、ムラサキサギゴケ、ヤマブキ、ヤマルリソウ。といったところか。珍しい花に
こそ出会わなかったけれども、花の図鑑みたいな山である。花あり、海あり、岩場あり。
そこそこ登りごたえもあり。文字通り”青葉”のいい山青葉山。遠征しがいがあったとい
うものだ。さあて、まだ3時前。急ぐ旅でもなし。地道で帰りますかア。

 帰ってみると半袖から先の腕は日焼けで赤くなっていました。


行程図はこちら

【タイムチャート】
6:20自宅発
9:05〜9:15青少年旅行村駐車場(駐車地)
9:20中山口登山口
9:48高野コース出合
10:06〜10:11NHKアンテナ横
10:20〜10:21東屋のある展望台
10:27
11:02〜11:04青葉山東峰(693m)
11:40〜12:50青葉山西峰(692m)
12:52今寺コース分岐
13:40林道出合
13:45〜13:52松尾寺
14:50青少年旅行村駐車場(駐車地)


◆青葉山花爛漫


▲ハナイカダ〜いつ見てもへんなの


▲チゴユリ〜いつも恥ずかしげに俯いているのです


▲イチリンソウ〜美人でしょう


▲イカリソウ(白花)〜スターウォーズか何かSF映画に出てきそう


▲イカリソウ〜裏から見るとこんな形です。普通に見えるでしょ


▲イワカガミ〜地味な花々が多い中でなかなか色鮮やかです


▲フデリンドウ〜登山者に踏まれそうな石段の際に咲いていました


▲ヒトリシズカ〜ほんと、静かにひっそり咲いています


▲ホウチャクソウ〜お寺の宝鐸に似ていますでしょうか



青葉山のデータ
【所在地】福井県大飯郡高浜町
【標高】693m(東峰)
【備考】 若狭湾の海岸線近くに盛り上がるコニーデ型の死火山で
その端麗な姿から若狭富士の別名があります。双耳峰で
古来は鋏山(はさみやま)とも呼ばれ、東峰と西峰の間
は岩場で、修行の場であった事が容易に知れます。
花が多いことでも知られる山で、イワウチワ、イカリソ
ウ等が咲き乱れます。尚、南麓に西国札所の松尾寺や中
山寺などの古刹があります。
■近畿百名山 ■関西百名山
【参考】
2.5万図『青葉山』,『東舞鶴』


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