渡岸寺の十一面観音 | |||
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国宝十一面観音(絵葉書より) |
横山岳の山開きに参加して、降りてきたのが15時前。少し時間があるので久しぶりに 高月町渡岸寺の国宝十一面観音に会いに行く事にした。 最初に会ったのは井上靖の『星と祭』を読んだ時だから、もう十数年以上前だろうか。 再び訪れた観音の里は大きく様変わりしていた。 R365から整備された観音の道を西へ進むと、大きな高床式の建物がある。観音さん が新しい収蔵庫に移ったと聞いていたから、てっきりこれかと思い、訪なうと受付に出て きた清楚な娘さん。 「十一面観音はこちらに?」 「いいえ、ここから少し行ったお寺の収蔵庫です」 若い娘を見ると直ぐ赤面するナイーブな小生、ほうほうの体で辞去する。 さて、土産物屋と喫茶店を兼ねた建物を過ぎると小さな山門がある。真宗向源寺だ。本 堂の左に受付の建物があり、去年完成したという収蔵庫はその向こうである。 従来の二倍の大きさとなった収蔵庫は内壁が総桐。自然のままで保管するのだというこ とでエアコンもない。その中に、国宝十一面観音立像と重文の大日如来坐像が置かれてい る。普通、仏像を後から拝めることなどほとんどないのだが、ここのすごいところはガラ スなどで隔てることもなく、国宝を四方から鑑賞することが出来ることだ。だから有名な 暴悪大笑面も間近に眺めることもできるのだ。像高195cm、一木彫の像は平安時代のも ので伝泰澄の作。異様に手が長いのは出来るだけ多くの衆生を助けんが為という。戦国の 世の習いでここも兵火を免れることはできず、しかも天台宗であったことから、浅井と織 田の戦火にかかり灰燼に帰するところ、住職と地元の民が死を賭して地に埋め、助けたの で我々が今、目の当たりに出来るというエピソードを持つ。 中ではもう十数人の先客が説明者の話を聞いている。一人裏側に廻って暴悪大笑面を見 上げながら、説明を聞く。奈良の聖林寺、大阪の道明寺の像もいいが、ここの観音さんは 格別で、いつ来ても少し腰を捻った姿はセクシーである。 渡岸寺の他にも鶏足寺や石道寺など湖北は観音像が多いが、西を向いているものがほと んどだそうで、やはり琵琶湖に沈む西日が西方浄土を髣髴とさせるからだろうか。外へ出 ると今しも西に傾いた日が寺を照らしている。寺の周囲にまだ田圃が残っているのもいい。 この間登った呉枯ノ峰や山本山が更に青みを増していた。 写真が撮れないので購入した絵葉書。小さな額に入れて部屋にでも飾ろう。 |