絶景かな由良ヶ岳 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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歳を重ねるほどに1年が瞬く間に過ぎてゆく。古の人はよく言ったものだ。『光陰矢の ごとし』。年に一度の蟹三昧。今年も早や巡って参りました。(笑) そういえばこの機会 を利用して但馬や丹後の山々に登るのもこれで何回目だろう。三岳山、高竜寺ヶ岳、磯砂 山、依遅ヶ尾山、竹田城址に去年は弥仙山だったけれど、ほんのついこの間のように思え る。さて、今年はどうしよう。先日は瀬戸内海だったから今度は日本海を上から眺めよう か。海繋がりでそんな気がふと浮かぶ。ならば去年も候補に上げていた由良ヶ岳はどうだ ろう。そうと決まれば早速、地形図をDLしよう。(^^; 当初は土曜か日曜か天気の良い方と思っていたが、どちらも小春日和という予報。なら ば早い方がと土曜日を選択。加うるに山へ行けば当然出発は早くなる。そうすれば高速料 金が通勤割引を使えて、往路の交通費が安くなる。宝塚からなら福知山まで1100円と 経済的なのである。(^^; 福知山、宮津間は意外に時間がかかる。R175で由良川沿いに北上して、約1時間。 まず北近畿タンゴ鉄道の丹後由良駅を目指す。案内標識に従い西に折れて集落の中を直進 すると、まもなく丹後由良荘の緑色の案内看板が目に入る。左折すると後は直線道で、単 線の鉄道線路を横切ると、前方の林の中にそれらしい建物の屋根が覗いており、由良ヶ岳 の山並みが背後にどっしりとあるのが分かる。 丹波のたぬきさんのHPを参考に、丹後由良荘の駐車場をお借りすることにする。車を 駐めて用意をしているとクリーム色の軽四輪が一台やってきた。丁度いい、一言断ってお こう。 「山に登るので少し車置かせてもらっていいですかねぇ..。」 「ここの者じゃないので分からんけど...。言うといてあげるよ」 国民宿舎へ何か届けに来たのかジモティのお母さんの優しいお言葉。(^^) 実は後で気づ いたのだが、宿舎の裏、道の突き当たりに空地がある。国民宿舎の取付け道の途中にも空 地があったのでそこも利用できそうだ。
が登山口。由良町の立てた大きな標識があって分かりやすい。そして杉林に入ってすぐ『 1合目40m』と書かれた由良町公民館の小さな標識が足元に立つ。今回は海のすぐ傍か ら登ることになるので、山の標高そのものが標高差と考えて差し支えない。その差は凡そ 600m。低山とはいえ、そこそこ登り甲斐のある山ではある。 植林はすぐにコナラ、タカノツメ、ウリハダカエデ等が中心の雑木林になって、日の光 に照らされて明るい。細い尾根に付けられた道は広くまた洗掘されて、古くから歩かれて いる様子である。地質は花崗岩質で白く、ザラザラとしていて滑りやすい。
しばらくゆるゆるとした登りを歩き、右の谷へ降りてゆく「水場への道」を分けてすぐ に猫の額みたいな平地に出る。小さめの炭焼窯跡がある。さっきの水場も近いし、流石う まい場所を選んだものだ。ここには『4合目270m』の標識もあって、やや開けている だけに前方が見通せ、望める由良ヶ岳の稜線はまだまだ目の上の方である。 一息入れて山歩再開。すぐに289m標高点横を通過、この辺りも洗掘された山道だが にわかに斜度が増し始めた。再び下枝が手入れされた植林下になると尾根上を真っ直ぐ伸 びていた山道が山腹を巻き始める。更にカギ状に折れて植林を抜けると、俄かにクマザサ やモミジイチゴなどが周囲を囲みはじめる。『一杯水』の分岐を過ぎた頃から、山道は粘 土質でぬかるんでくる上にまた急斜面となり滑りやすい。たぬきさんがここで滑ったらえ らいことになると書いていた場所だろう。おっとっと、やっぱり滑ってしまった。掌がど ろどろだあ。 尾根上の鞍部に出る。案内標識には東峰5分、西峰10分とあるが、黒マジックでそれ ぞれ倍の数字で訂正されている。(^^; 展望の良い東峰で食事としたかったのでまずは西 峰へ向かう。稜線上のブナやハウチワカエデは海からの風の所為かもう早々と全て葉を落 としている。
ら林道(上漆原和江線)が伸びてきているようで、案内板を確認すると林道終点総延長2 069mとあって、舞鶴市が遊歩道を整備しているようだ。西峰への山道の両脇のクマザ サが刈られて整備されていた理由がこれだったらしい。当然税金で造ったのだろうが、そ こまで整備する必要も無いと思うのだが...。 さて、山道は湾曲しながら高みへと向かう。手入れされ至って歩きやすい道をなだらか に登るとやがて西峰の山頂である。眺望はあまり無いと聞いてきたが、さっきの林道絡み で切り開かれて天橋立から栗田湾、丹後半島、関西電力の施設、伊根町などが指呼である。 双眼鏡で覗けば栗田湾の中央ではブリだろうか、養殖の生簀らしきものまで見える。 前述したように展望が良いと聞いた東峰で食事の予定で先に西峰にやって来たわけだが、 もう正午だし、ベンチもあることだし、天橋立を見ながらの昼食もいいだろう。というわ けで、東峰で昼食の予定はあっさり諦め、さっさとベンチに腰を下ろす。 コーヒーを沸かしていると単独小父さんがやってきた。聞けば国民宿舎手前の空き地に 車を駐めた方である。なんとこの方も大阪は寝屋川からという。東峰を先に廻ってきたと か。良い眺めだったそうだ。ウーン、楽しみだ。 日溜りでの食事を終え、展望を携帯で撮影している小父さんには失礼して東峰に向う。 往路では気付かなかったが、「絶好ポイント」と標識があって、小さな岩に登れば由良海 岸が一望の場所がある。なるほど、西峰から由良方面が見える唯一のポイントだ。 西峰からもこんもりした東峰が木の間に見え隠れしていたが、中間点のT字鞍部の標高 はCa590m。50mくらい登り返しがある。西峰みたいにだらだらと上がって行くより も斜面を「直線一気」だからすっきりくっきり。時間もかからない。とはいえ食後もあっ て、少々しんどい。(^^;
東峰には全く大きな木は無く、丈の短い草っ原の先に見える石組の上に石室がある。一 基の石灯籠と、風雪に摩滅してかろうじてその形が分かるほどに摩滅した一尺位の小さな 狛犬が左右にある。遮るものとて無く、吹きっさらしでしかも海の傍ときてはさもありな ん。だが、パグの仔犬のようで何となく愛嬌があり、これがなかなか可愛い。同様に石室 の虚空蔵菩薩の石仏もほぼ摩滅してこちらも表情が判然としない。それにしても仏教に狛 犬。民間信仰というか、神仏混交していて面白い。近在の子供達も13歳になると、ここ へ虚空蔵参りに登ってきたのだろうか。あの洗掘された道の理由はこれなのかもしれない。
それにしても文字通りの絶景が目の前に広がり予想通り素晴らしい。一面に薄緑色の日 本海が広がり、栗田湾の向こうは丹後半島だ。手前には由良の集落があり、登山口の国民 宿舎の赤い屋根も緑の中にある。由良川の河口を挟んで神野の集落。西舞鶴と東舞鶴の市 街も覗き青葉山の三角錐や弥仙山らしい姿がある。南は大江山がどんと大きく、三岳山や 磯砂山の姿も見える。ただ他にも沢山の山また山なのだが、土地勘が無い為にあとの多く ははっきりとしないままである。
も、北近畿タンゴ鉄道の水色をした1両のみのディーゼル車両が由良川を渡るところであ る。まるで箱庭のミニチュアを見ているみたいな錯覚を覚える。 そんなこんなで東峰でも20分ほど費やしてしまった。風も出てきたのでそろそろ引き 上げことにする。因みにガイド本の中には東峰を四等三角点のあるまだ500m近く東の 585m峰と記述するものがあるがこれは誤りだ。 下りは山頂直下の「一杯水」に寄り道する。登山道から20mほど横道にそれると、綺 麗な水が細い竹筒から勢い良く流れ落ちているのがそれだ。喉が乾いていなかったので飲 まなかったけれど、今思えば少し口に含んでおけばよかったかな。(^^; 杉林の付近で熊鈴の音がするのはさっきの寝屋川の小父さんだ。休憩されている間にこ ちらが先になる。日本海方面の山はいいといわれるので、湖北方面も推薦しておいた。(笑) 下りはどんどん降りたので1時間もかからない。装備を解き、車の運転席で昼食の残っ た海苔巻きを口に入れモゴモゴさせていると、くだんの寝屋川の小父さんが降りてこられ た。国民宿舎のパンフレットを貰うのだとかで宿舎の玄関へ。しばらく職員さんが出てく るのを待っている。するとまもなく女性の職員さん。こちらも駐車のお礼の挨拶をしてお こう。 丹後由良は森鴎外の高瀬舟の舞台となった土地。私が覚えているのは東映アニメの「安 寿と厨子王丸」の方だが、通りすがりにも山椒大夫云々の説明書きがあったから、ゆっく り、町中を散策しても面白そうだ。しかし、今日の目的地香住までは2時間はかかろう。 残念だがまたの機会に譲ろう。 1時間と少しで待っている絶景。少し雪が積もった時に登ると更に風情があろう。タイ ムパフォーマンスに優れた山とでも呼ぼうか。晩秋の由良ヶ岳での半日である。
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由良ヶ岳山頂からのパノラマ写真 | ||||||
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