北八ヶ岳逍遥【第1日】
         〜白駒池から高見石小屋〜
 
高見石から望む夕景の白駒池
平成19年 8月11日(土)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 昨年は南アルプス、アサヨ峰でアルプスデビューを果たした小生。さて今年は?という
わけで、初の山小屋体験を含めて、8月11日から13日の3日間、高山初心者にはお誂
え向きの北八ヶ岳への二泊三日の山旅へ出かけて来ました。デイパックより容量の大きい
ドイターの45+10Lザックも買い求め、その重さに辟易しながらも、ペルセウス流星
見物、日本最高所の野天風呂入浴、野生動物観察、コマクサ見物等、それはそれは盛り沢
山の体験をしつつ無事戻って参りました。それではその顛末記、余りに色々な事が出来し
ましたので、日にち毎になって些か長くなりますが、御用とお急ぎでない方はお付き合い
下さいませ。

 暑さ世界一じゃないか?その大阪を離れての、小生にとっては初の長期?山旅。日程が
近づいて来るに従って、ソワソワ感が募ってきます。その所為か前日は暑くて寝苦しい事
もあいまって、余り眠れずに当日の黎明を迎えます。なんと4時半起床。盆休みの渋滞を
考慮して5時35分には自宅を出ます。どちら様も同じ考えなのでしょう、豊中から乗っ
た名神、逆方向の下り線は早くも大渋滞。吹田から高槻を越えて延々と繋がる車列。聞き
しに勝る凄さです。それを横目にこちらは京都南で数百mの渋滞はあったものの、想定範
囲内で集合時刻の6:20丁度に深草BS着。Nちゃんが既にやって来ていて、程なくT
ちゃん、Hちゃんもバス停の後にある扉を開けて現れました。

 ワイワイ、ガヤガヤ。車中はこれからの期待でか騒がしい事この上なし。こちらはそれ
に気をとられているわけには参りません。ひたすら柄にもなく百km/h以内での安全運転
です。(笑)

 懸念されたのは一宮や小牧ジャンクション付近の渋滞。それも杞憂、あってもほんの1、
2km程度。ほぼ順調に進んでいきます。途中で休憩を挟み、中央道から木曽や南アルプス
を遠望しながら、風林火山の舞台、諏訪湖を左にして諏訪ICでR20へ。ついでR15
2、R299と継いで麦草峠を目指します。

 ウネウネと登る麦草峠は国道が通る場所では日本で二番目に高く2,127mもあります。
並ばせればなんと近畿の最高峰八経ヶ岳も遥か下なのです。(@o@) 余談ですが、国道での
日本最高所はR292が通る群馬・長野県境、渋峠の2,172mなのだそうです。

 さて、R299はメルヘン街道とも呼ばれる国道で、沿線には温泉も沢山ありますが、
延々とヘアピンを登り続けなければなりません。愛車もスピードが出ぬわと思いますがな
にせ標高差が1300m余りを一気に駆け上がるのです。しんどいわけです。その麦草峠
を越えて佐久穂町側へ1km程度進むと白駒池の有料駐車場が見えてきます。すぐに駐車で
きるか心配だったのですが、幸い余裕あり。ここに車を置きます。通過した麦草峠付近に
は無料駐車場もあるのですが、三日間も車を置くのですから有料の方が安全の様な気がし
て、ちょっとはり込みます。(^^;  係の小父さんに明後日まで車を置くというと、千円
とおっしゃる。3日なら千五百円と思うのですが、サービスなんでしょうか。「何処から
きたの?」と四方山話なんぞして気さくな小父さん。係員詰め所の隣に車を置いたらいい
とサービス満点です。これも女性3名の神通力なんでしょうなあ。小生の如きむさくるし
いおっさん相手ならこうはいきません。(笑)
白駒池有料駐車場、トイレあり。ここに車を置く

ワクワクと白駒池への入り口へ

 ザックがざっくり重い。しようもない親父ギャグを飛ばして馬鹿にされながら、まずは
白駒池へ向かいます。オオシラビソ、トウヒ、コメツガ等、針葉樹の森です。絶好の避暑
コースなのでしょう。砂利が敷かれた遊歩道はスニーカー履きの一般客も多く散策してい
ます。それらのハイカーに混じって、大きなザックを背負った我々は高見石への分岐の峠
を過ぎます。針葉樹の根元にはコバノイチヤクソウが沢山咲いています。イチヤクソウ類
を一時にこんなに見たのは初めてでした。

 峠を越えて下り坂になると、想像したより大きな白駒池の澄んだ湖面が現れました。間
が良く空いていた池畔の東屋で昼食です。渋滞が最悪なら高速のSAでの食事も考えられ
たことからすれば、缶ビールのご相伴に預かった事もありますが、これはもう天国であり
ます。(笑)

 時間もあるので予定通り池を一周しましょう。最深部8.6m、面積は11.4ha。
標高2,100m以上にある湖沼では最大の天然湖といわれますが、湖岸の周囲は1350
m程度なので、ゆっくり歩いても40分もあれば一周できます。観光客で賑わう白駒荘を
抜け、高見石へのもう一つの道を右にして、木道などを歩いて左回りで進みます。針葉樹
に囲まれた湖面は緑の山々や青い空を鏡のように映し出しています。見惚れながら青苔荘
まで来ると、ヤマオダマキやヤナギランが今を盛りと咲き乱れていました。

青苔荘から眺める白駒池。対岸に
北八ヶ岳の特徴を見せる中山が悠然とうずくまる

 白駒池の大きな標識。娘さん一人を連れた家族とすれ違います。そこでこちらは勝手な
がら記念写真を所望しました。「ん?」話す声に関西訛が。やっぱり関西から来られたそ
うで、聞けば麦草ヒュッテに泊ってらっしゃるとか。いいですなあ、親子で避暑ですかあ。
羨ましい。

 バードウォッチングの真似事などをしつつ一周巡ったら、少し戻って、さっき通った小
さな峠から高見石小屋への道に入りましょう。こちらの方が距離は長いですが、その分、
傾斜が緩い道です。エゾゼミの声や、コマドリでしょうか野鳥のさえずり以外は聞こえな
い、苔むした針葉樹を縫う静かな山道です。もう少しでザックが下ろせると思うと、慣れ
ない重いザックが肩に余計に喰い込み始めたように感じるのは気のせいでしょうか。やっ
ぱ、重〜い。何せ空ザックだけでも2s越えるもんねえ。デイトレッカーには考えられん。

シラビソ、コメツガが繁る中、高見石小屋へ

 丸山への道と合流して100mも下ると、高見石小屋が現れました。なんと掻き氷もあ
る瀟洒な小屋です。(入口の扉も自動で閉じますぞ)ま、何はともあれ重いザックを下ろし
ましょう。一息つきましたが、まだ日没までには些か時間がある。それでは丸山に登って、
次いで高見石にも登ってみましょうか。なんせ、丸山には三角点が置かれていて、20分
くらいで登れるのだもの、三角点フェチには見逃せない山なのです。(^_-)

 その丸山への道は良く整備されていますが、ゴロゴロ石が転がって歩きにくいことこの
上なし。しかし、総じて北八ヶ岳の道はこんな道が主であることに後で気付くことになり
ます。道はほぼ真っ直ぐ登っていきます。標高差は100m足らずですが、結構きつい。
小屋の寒暖計はなんと21℃だったのですが、それでも汗を拭き拭き、石が積み重なる山
頂東の丸山神社の小祠前に出ました。普通ならここまでですが、肝腎の三角点をまだ見つ
けてはいません。そこでゴロゴロ石を縫って針葉樹が蔽う奥へ20mばかり進むと、麦草
峠への道標の前に、お目当ての綺麗な三等三角点はありました。

丸山山頂の丸山神社の小祠。三角点へは写真の右へ

 神社前からは東に大峰の八経ヶ岳に似た白骨木の目立つ山が見えます。あれが中山なの
でしょうか。ちらりと覗くは明日のメインディッシュ天狗岳でしょうか。それにしても眺
めれば眺めるほど八経ヶ岳にそっくりの中山でした。

丸山から見る中山。奥に天狗岳が覗く

 Tちゃん差し入れの冷えたコーヒーを戴いて山頂を後にし、今度は高見石に向かいます。
小屋のトイレの前から左へ、累々と積み重なった石というより岩の数々。赤いペンキの丸
印を伝えば2、3分で最高所へ。暮れなずむ夕方の赤っぽい空気の中で360度の雄大な
展望です。北に雲を被った蓼科山、北横岳。森林の中に静まる白駒池。その向こうに霞む
のは浅間山らしい。東から南には北八ヶ岳の山々。もっこりと顔を出す鋭い山は天狗岳か
な?などと語り合いながら、遠く雲に霞む中央アルプスを望みながら心地よい風に頬をな
ぶらせ、デジカメで思い出を切り取ります。でもここでは物を落とすと、岩の間に落ちる
こと必定、もう元には戻りませんから、貴重品はヒモか何ぞで体に繋げておいた方が無難
です。
高見石から丸山。左は宿泊する高見石小屋

 高見石小屋はランプと天体観測を売りにしている小屋らしいです。泊り客は全部でたっ
たの8名ほど。1畳に2人や3人収容という、混み混みの山小屋もざらだというから、こ
れが常識と思ったら大間違いと同行の大先達に釘を刺されます。しかも夕食はなんと焼肉
定食でありました。うむうむ。

 木の階段で登る二階の大部屋は百畳位はありそうですが、今日はガラガラ。何処でも好
きな所へ寝てくださいと係りの兄さんの案内があります。で、夜しか使えない小便所に近
からず遠からずの場所に座を占めました。夕食後、布団を敷いて荷物整理をして、一眠り
します。目を覚ませば20時半。誰かが何度か起こしに来てくれたようですが、やっとの
事で行く気になりました。些か朦朧気分でデッキに出ると、天体望遠鏡がセットしてあり
ます。見上げれば降るような満天の星に天の川。まことにミルキーウェイとは云いえて妙
であります。なぜか「星の降るよ〜るは・・・♪」って、『腰振る街角』でしたっけ、い
やいや『星降る街角』なる古いカラオケのメロディが頭の奥からもれてきます。ほんとに
俗っぽい小生。情けない。

 閑話休題。もっと高尚に参りましょう。なんといっても今夜の前後はペルセウス流星群
が流れる夜なのです。首が痛いのもものかわ。見上げていれば白い軌跡を引いて流星がサ
ーッと一筋二筋。対照的にこれはゆるりと、人工衛星らしい物体が真っ直ぐ天空を横切っ
ていきます。天体望遠鏡はさそり座のアンタレス近くの木星にセットしてあります。覗く
と木星の衛星が4つほど水平に並んでいました。久方ぶりに中学時代に双眼鏡で夜空を眺
めた気分に戻りました。ほんと、宇宙とは神秘的なものです。

 ところでふと見た寒暖計の示度は気温13℃。ヒエーッ!「信じられな〜い」とはこの
こと。気がつけばTシャツ一枚の小生でありました。ブルッと体を震わせて、慌てて小屋
の中に戻ったのであります。「寒〜う」天然サウナ状態の大阪では考えられない冷気でし
た。

 少々寒いくらいでないと寝つきが良くない小生。Tシャツと毛布一枚で再び寝につきま
したが、流石に朝方は寒さで目が覚めたみたい。これも小屋の自慢の羽根布団を下ろして
被りました。大阪では考えられない光景でしょう。ブルッ、「やっぱ寒う〜」。いつしか
またまたまどろんでしまった小生でありました。



■同行: たらちゃん、然ちゃん、ハム太郎さん(五十音順)

【タイムチャート】
6:20名神深草BS(集合地)
12:55〜13:10白駒池駐車場
13:30〜14:00白駒池畔東屋(昼食)
14:35〜14:45青苔荘キャンプ場
15:05〜15:20高見石・丸山分岐
16:05〜16:30高見石小屋
16:47〜17:00丸山(2,329.6m 三等三角点)
17:15高見石小屋(第1日目泊)

■第二日目『北八ヶ岳逍遥【第2日】〜天狗岳から本沢温泉経由でしらびそ小屋〜
に続く
■花の写真集 北八ヶ岳逍遥を見る


丸山のデータ
【所在地】長野県茅野市
【標高】2,329.6m(三等三角点)
【備考】
麦草峠の南に隆起する文字通り丸い形をした小峰で、東
山腹に高見石を擁します。オオシラビソ、トウヒ、カラ
マツ、ダケカンバの林に囲まれ展望はありませんが、東
側の丸山神社の祠付近からは中山方面が望めます。高見
石から以外に麦草ヒュッテからのコースがあります。
高見石のデータ
【所在地】長野県茅野市
【標高】2,249m
【備考】
丸山の東山腹、高見石小屋横にある火山性の大きな岩石
が累々と重なった場所です。最高所からは蓼科山、白駒
池、中山、ニュウ、北アルプス、中央アルプスが望めま
す。登路は白駒池畔、白駒池駐車場と白駒池の間、麦草
峠からの3本が整備されています。
【参考】
2.5万図『蓼科』



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