霊仙山・権現山〜ミストサウナの南比良

 
栗原の村道のたもとにあった五輪塔から霊仙山
登山口のNTTの通信施設が見える
平成19年 9月15日(土)
【天候】曇りのちにわか雨
【同行】別掲


 芦生や朽木に行く時に良く利用する湖西道路。真野ICで降りてR477を”途中”へ
向って西に車を走らせると、円錐形の姿の良い山が右手に見えてくる。南比良の玄関口の
山、霊仙山である。実は東京からDちゃんが仕事で大阪へ出張だというので、歓迎オフを
しようと決まった舞台がここ。だが、当初、この霊仙山から蓬莱山まで南比良を縦走する
予定が、台風の影響か、またぶり返した湿気でまるでミストサウナの状態に辟易。おまけ
に降り出した強い雨に戦意喪失し、中間地点の権現山で引き返す羽目になったのだった。
このところ、暑さ、雨に祟られて途中撤退ばかり。でも小生には、未踏の三角点が踏めれ
ば半分目的は達成できたようなもの。そんな負け惜しみを言いつつも、下山後の大阪B級
グルメ賞味はその鬱憤もあってか、大いに盛り上がったのでありました。

 新大阪駅ホームで合流したMさんと7:49発の新快速『琵琶湖レジャー号』に乗り込
む。いつもながら満員であいかわらずハイキング客も多い。見渡すと補助席にSさん、一
般席に久しぶりだが変わらぬDちゃんの顔がある。

 京都でH・Tさん、西大津でS・Jさん、Hさんと合流して定刻どおり和邇駅着。駅前
にはもうMさんが予約しておいた近江タクシーが2台待っている。運転手さん、『栗原の
電波塔ね』と行き先を聞いただけで了解した様子。バス便がほとんどないのでタクシーを
利用する登山客や宗教施設への客が多いそうだ。

 湖西道路を潜って、妙道会の案内板を目印に進み、新しい水道施設横でその宗教施設へ
の道を左に見送って山懐を目指す。次第に道が狭くなり、左に大きく道が分岐する手前に
案内板がある。実は左の坂道はNTTの栗原無線中継所の取付け道路なのだ。権現山の登
山口へはこのまま直進するのだそうだ。今日は先に霊仙山に登るので、これを見送って取
付け道路を行く。500m先、行き止まりの案内がある。

林道分岐。直進は権現山登山口。霊仙山登山口へは
左のNTTの栗原無線中継所の取付け道路へ

無線中継所前の電柱横に霊仙山登山道がある

 標識どおり、車道は無線中継所の門前で行き止まり。タクシーはここまで。クーラーが
効いた車内から出るとやはり湿度は高い。山並みを見ると電車から見たままで、やはりガ
スがかかり、空も曇り始めている。そういえば京都までは真っ青な空だったけれど、愛宕
山の中腹より上は厚い雲の中だった事を思い出す。道も濡れた跡がある。ちょっと嫌な感
じがしたけれど、1ヶ月くらい前、打見山から金糞峠を歩いた時も中腹は猛烈なガスだっ
た。それを突き抜ければまた良くなるだろうと思い直す。

 無線施設の門の前に道が延びていて、電柱に「霊仙山登山口」とマジック書きがある。
やや細いが明快な踏み跡を辿れば、すぐにイワカガミやイワウチワが現れる。比良でも
イワカガミやイワウチワが一番先に咲くところなのだとジモティーのS・Jさん。

左が植林、右が雑木林。一本登りの急斜面だ

 雑木に代わって植林が現れると思いの外の急斜面。気温はある程度、涼しいくらいなの
だけれど、おりからの無風、多湿は消耗が激しい。実質30分程度の登りだったのだが、
10分程度の休憩を入れて涼をとりながらのゆっくり登山だ。さもありなんと今日は2L
のペットボトル持参。心置きなく水分を摂れるのはいいものだ。(^^;

 切り開かれ、ママコナが群れ咲いている霊仙山の山頂には角が欠けた三等三角点の標石。
東を見れば琵琶湖の湖面に沖ノ島が浮かび、湖東の津田山が眺められる。嗚呼、いい眺め。
だが、これが今日の天空から見た琵琶湖の見納めになろうとは...。

霊仙山山頂から沖ノ島浮かぶ琵琶湖
今日の山歩きでこれが琵琶湖の見納めになるとは...。

 吹きはじめた結構強い風と、Sさんの畑で採れたシソジュースで元気を回復して次のピ
ーク権現山へ。折角、稼いだ高度を一気に吐き出す急降下が待っている。痩せた木の幹に
縋りながら滑らぬように降りていく。ここが最低鞍部かと思ったら、その先にまだ下る所
があったりで、2、3度そんなことを繰り返すと、ようやく正真正銘の鞍部。左手は沢の
源頭のカールした地形の林。ヤマジノホトトギスが足元を飾る。振り返ると皆子山方面の
山並みが垣間見えた。

 徐々に道は遊歩道のような太さのしっかりしたものとなり、杉林と雑木の混交林を進む
と、緩斜面の小さな鞍部。平へ降りる廃道っぽい踏み跡が西から合流し、右へ曲れば権現
山登山口からの道が合流する地点に出る。どういう意味なのか、『ズコノバン』と呼ばれ
る地点である。扇ノ山にある”ズッコ”と同じ語源なのだろうか。扇ノ山の”ズッコ”は
こんもりした小山を指したが、ここは緩やかな北の斜面は杉林でその他は雑木林でそんな
イメージはない。ここで小休止だ。
ズコノバンを過ぎ、ガスに霞む権現山への急登を行く

 地形図の通り厳しい登りになってくる。道も岩がちになり、小さなジグザグを繰り返す。
そんなきつい胸突き八丁もクマザサが現れ始めたら終わりに近い。そのササを分け、傾斜が
緩んでくると、平からアラキ峠経由の山道が合流してくる。標高点で示された山頂はもう少
し先であるが、この合流点が小さな広場。誰も来ない様子なのでここで昼食とした。

権現山山頂。ついにガスは晴れず、この後、雨が...

 みんなが食べ終わって腰を上げたのを見ていたのだろうか?そろそろいいだろうと考え
たわけでもないだろうが、おずおずと降り始めた雨が、権現山の標高点を過ぎた辺りにあ
る祠に来た頃、本格的な様相を呈し始めた。稜線上で雷が鳴っても困るし、傘をさして歩
けないのもつらいしで、結局、小女郎峠までの予定を急遽ピストンに切り替えることにす
る。雨は強弱を繰り替えしながら次第に強くなる。木の葉を打つ雨音も段々高くなってゆ
く。食事の後で降りだして幸いだった。
ズコノバンから霊仙山を巻いて林道へ向かう

 『ズコノバン』からは勿論、左に採って権現山登山道を下る。霊仙山の北から東の山腹
にかけてトラバースする道だ。杉の植林帯が大半だからやや単調なのは否めない。しかし
古くからの道のようで深く洗掘され、傘をさしてゆっくり歩ける道なのが有難い。牛や馬
も歩いたのだろうか?

 ジグザグ道を降りてゆくと、杉林の遠くで沢音が響き始める。地形図を見れば滝谷と呼
ばれる谷だ。良く手入れされた杉木立の斜面を左に巻くように降りればその滝谷の流れに
出会う。ここには道標がある。

林道終点へ出た。右の滝谷の小滝には
フシグロセンノウの赤い花

 本格的だった雨もいつの間にか上がり、ハグロソウやミゾソバが咲く沢の中の石伝いに
辿ると、前方が明るくなって林道終端に飛び出す。流れには2mくらいの小さな滝が懸か
り、ピンクのツリフネソウや赤いフシグロセンノウが盛りである。バーベキューなんぞに
いいシチュエーションだなどと考えていたら、誰しも考える事は同じのようで、黒く煤け
た石が転がっている。

 草生す林道。途中の岩陰には水場がある。保健所のお墨付きが貼られ、大腸菌は皆無な
のだそうだ。飲んでみるとほんのり甘い味がした。

 NTTの取付け道路との合流点は水場からほんのすぐで、ここから往路にタクシーでや
って来た林道をテクテク歩く。単調で蒸すが、照らず、全般的に下り基調なのと駄弁りな
がら行けるのが救い。単独ではこうはいかない。良く手入れされた桧林のそこここでツク
ツクボウシが鳴きはじめ、萩にツリガネニンジンが揺れる初秋の林道である。

 妙道会の分岐付近から再び道に沿い始めた滝谷は流れを増しており、その頃にはパラパ
ラと民家が現れ始める。集落に入ると道端に何やら謂れのありそうな五輪塔。黄金色の稲
穂の向こうに霊仙山がピラミダルだ。どっしりとした栗原の集落の真ん中。涎掛けをした
石仏の横が江若バスの栗原バス停。本数は極小なのに時刻表は複雑すぎて良く判らない。
休日運行、平日のみ、土曜運休などなど。結局1時間近く待たねばバスが来ないことが分
かり、和邇駅までもう少し歩こうかという事になる。その間、H・Tさんのザックカバー
にヒルが付着していて大騒ぎに。そういえば、権現山のクマザサ原でザックを下ろした時、
茶色い蠢くものを一瞬目の隅に入れたような。それとも横断した滝谷で小休止した時なの
か。急いでズボンの裾など点検したけれど大丈夫らしい。(^^; 

 この辺りの歩きが一番つらかった。何せ車道歩き。曇ってくれていたので助かったのだ
が、炎天下ならどうなっていた事やら。栗原バス停でおばあさんから聞いた駅までの所要
時間40分をオーバーしてやっと駅到着。乗ろうと思っていた路線バスとほぼ同時刻であ
った。(^^;

 さあ、後はB級グルメ。1時間と少し電車に揺られほぼ5時に大阪駅着。ガード下の大
阪コテコテの居酒屋で『生中』!今日の疲れを癒したのでした。雨中のミストサウナ、南
比良、皆さんご苦労様でした。



■同行 さかじんさん、幸さん、だめちゃん、ハム太郎さん、ひろぴぃさん、もぐさん
(五十音順)

【タイムチャート】
7:49JR新大阪駅
8:51JR和邇駅
9:08〜9:15NTT栗原無線中継所前(登山口)
9:40〜9:50小休止
10:00〜10:10霊仙山(750.5m(三等三角点))
10:38〜10:42ズコノバン
11:25〜11:58権現山(996m)(昼食)
12:09〜12:15祠付近で折り返し(降雨)
12:20権現山(996m)
12:50ズコノバン
13:25〜13:32林道出合(権現山登山口)
13:50NTT管理道出合
14:30〜14:50栗原バス停
15:35JR和邇駅


霊仙山のデータ
【所在地】滋賀県大津市
【標高】750.5m(三等三角点)
【備考】 南比良の山々の内、名のある山としては最南端に位置し
ます。山頂部は東側が潅木帯で琵琶湖や沖ノ島、湖東平
野が望まれます。NTTの栗原無線中継所に取付きがあ
り、春はイワカガミ、イワウチワが道脇を飾ります。
 権現山のデータ
【所在地】滋賀県大津市
【標高】996m
【備考】 南比良の主稜にあって小女郎峠の東南に位置します。比
良山系の標高千m級の山では最南端になり、大阪方面か
らも眺められます。山頂部は東西にやや長く、東側は潅
木、南側はササ原です。登山路は安曇川方面は平からア
ラキ峠を経て、また栗原からは直登道があります。縦走
路では小女郎峠から約1時間の距離です。
【参考】
2.5万図『比良山』、『堅田』



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