論山〜吉備路の低山は想定外続出
 
平成19年 3月10日(土)
【天候】晴れのち曇り
【同行】別掲
福富登山口手前から論山(中央)


 青春18切符はJRのサービスの中でも出色のものではないだろうか。ことに中高年に
は無くてはならぬアイテムになっていて、グルメに山歩きにと重宝されているようである。
今回はMさんが調達したそれを使って、小生にとっては1月の赤穂市坂越でのグルメオフ
以来2ヶ月ぶりの駅近ハイク。ところが、聞いて下さい読んで下さい。楽々ハイクの予定
が想定外続出の山行となったのでした。

 まず想定外その1は地下鉄のダイヤ混乱。前回の坂越オフでは現地にコンビニが無く、
弁当が買えなかったという経験から、少し早めに家を出てコンビニで食料調達し、地下鉄
の駅に着いたら、えらく混んでいる。なんでも某駅で発煙騒ぎがあって、ダイヤが大幅遅
延とのこと。でもこれは前述の如く少し早めに家を出てきていたし、電車も既に動き出し
ていたから事なきを得る。しかし今日はそれだけじゃ収まらない。

 想定外その2は出発電車の時刻を勘違い。もぐさんの告知も確めて、乗車するJRの新
快速は7:55新大阪発であることをネットで調べ、ご丁寧に付箋にも書き込み、尚且つ
PCに貼り付けていたにもかかわらずである。なぜか頭の中は8:05出発。だから少し
早めに駅に着いていたのに7:55になっても平然としたもの。本来なら乗り遅れなのだ
が、不幸中の幸い、怪我の功名というのか、地下鉄の遅延でもぐさんも水谷さんも遅れて
いて偶然、駅で出会うことになり事なきを得る。でも問題は小生の頭の中。こりゃ、なん
だかやばいのでは?QC活動じゃないけれど、これは真の原因を調べなければ...。(^^; 
で、夜、帰宅してつらつら考えるに、目的地の和気駅到着予定時刻が10:10。どうも、
これと掲示板にあった大阪駅出発時刻の8:00とを混在させてしまったようなのだ。考
えてみれば馬鹿だねー。って、笑い事ではない。これ以外にも新快速の発着プラットフォ
ームが時刻によって違っていたりするものだから右往左往など、細かい想定外を上げれば
きりが無いのだった。とみにこの頃早合点が多すぎる。自戒、自戒。

 なおも続く想定外その3。これが最初の必殺パンチだった。遅れはたった15分じゃな
いか。なんてたかをくくったのが大間違い。列車の接続が最悪で、姫路で30分だか、相
生でまた30分だか、なんと到着は11:05と1時間も遅れる羽目になったのである。
お蔭で当初の予定は大狂い。定刻通り和気に着いていたハム太郎さんには本当に悪い事を
した。m(_ _)m だが、まだまだ想定外は続くのである。

 未知の山は取付きを見つけるのがまず一仕事。地形図を見ると、福富集落から山の内懐
に入る谷沿いの林道が南下している。まずこれであろう。和気駅を出て左に向かうと線路
を潜って南に出る地下通路がある。車道を横切り、マックスバリューの前を抜けるとまも
なく初瀬川の土手が見えてくる。ヒメオドリコソウが真っ盛りだ。橋を渡って福富の集落
の中を左手に三角点のある小山を見つつ、初瀬川の支流をまたぐ大谷橋を渡る。福富は何
だか飼い犬の多い集落で、あちこちからワンワン吠え声が聞こえる。それ以外には山陽道
の車の音だけ、梅が満開を迎えるのどかな集落である。右手のなかなか鋭い山は愛宕山で、
山陽道の高架下の手前では高校生がクラブのトレーニングの最中。ウェアには和気閑谷高
校とある。駅の向こう側の高校だ。

 高架を抜けるといよいよ論山の山並みが近づいてくる。すると厳重なコンクリ塀に守ら
れた半地下の倉庫みたいな建物がある。なんとついさっき通り過ぎた銃砲店の火薬倉庫な
のだった。銃砲店の普通の民家のような店構えだったのにもビックリしたが、それと対照
的にこちらはなんだかものものしい。

 谷沿いに地道の林道を登る。笑い始めた山々はヤシャブシやスミレがもう花を付けてい
る。そこをゆるゆると登って左に砂防堤を見る頃、右手に備前HCの私製道標が現れる。
『論山 福富登山口』とある。これでコースは間違いなし。でも「これで大船に乗った」
と思ったのは今日の想定外頻発を忘れた浅はかさ。すぐ後に今日最大の想定外が待ってい
たのである。
砂防堤横に福富登山口がある

 右の山腹に取り付いて巻きながら辿る道は、コシダが左右から被さってくる他はしっか
りしているものの、やがて石が転がるややガレた涸れ沢沿いにさしかかった頃からやや不
明瞭となる。所々にある赤テープを目印にしていたのだが、それに導かれるように右手の
支沢に入ると、その沢の右手の斜面を直登するようにテープがあった後は忽然と消えてし
まう。勿論、踏み跡も無い。尾根が見えているので強引に登りやすい斜面を選ってみるが、
その先がいずれもブッシュ。サルトリイバラも多く難渋する。これは最後のテープまで戻
るにしくはなしと、行きつ戻りつを繰返すことほぼ1時間。なかなか埒が開かない。これ
では仕様がないと確かな踏み跡のある地点まで戻ったら...。なんだ、本谷沿いに正規
の道があるではないか。それもなかなか明瞭な踏み跡が。何のことは無い。倒木でテープ
が見づらくなっているのだった。しかも右手に良く目立つテープ真新しい赤テープ。これ
が元凶。にっくき赤テープだ。(^^;

 この赤テープ誤誘導事件?が最大の想定外。出だしが遅れた上に更に1時間のロス。も
う熊山までは到底無理ということで、とりあえず展望岩と論山周辺を巡ってみようと急遽
作戦縮小。(^^;

論山とCa267m峰(展望岩)の鞍部
左は熊山旧参道、右は論山へ、手前は展望岩へ

 なんといい道。初めっから見つかっていればの思いも後の祭り。しかしこれも一興。遊
ばせて貰ったのだから。道はつづら折れに登っていく。ヤブツバキなどの常緑樹が多いの
は、やはり温暖な気候の所為であろう。そうして10分も歩けば峠で拍子抜けするほどい
とも簡単に登って来られて、先ほどの悪戦苦闘が嘘のようである。峠は三叉路になってお
り、東は展望岩(267m標高点)、西は水平道が旧熊山参道、登っていくのが論山への
道と、ここにも備前HCの案内プレートが架かる。まずは展望岩へ向かおう。左に折れて
しばらくは急登だが、間もなく落ち着くと尾根に出て、露岩の上から北方面が一望できる
ようになる。和気富士や和気アルプスの主峰、神の上山。吉井川のうねる姿が望め、和気
の町並みに山陽道や林道横の火薬庫の建物まで手に取るようで、ここが展望岩かと見間違
うほどだが、さっきのプレートには展望岩まで30分とあったにしては近すぎる。頭を巡
らせれば、ここより高い尖ったピークが目に入る。本当の展望岩はそのもう一つ向こうの
峰である。
展望岩への途中の小ピークから

 相変わらず痩せた松やネズの木が多く、下草はコシダが繁茂し、時折、ウラジロシダも
混ざる。コバノミツバツツジがもう紫の蕾を膨らませているのを見つける。なんと今年は
早いのだろう。露岩を越えると標高点ピークがついそこになり、また大きな岩が現れる。
これこそ本当の展望岩で、雑木の密生する下の谷にほぼ垂直に切れ落ちていて低山の割り
に高度感がある。絶壁の中間辺りに生えるコバノミツバツツジはもう満開で、興趣を添え
る。谷の向こうは論山の山並み、北には眼下に集落があって、山すそにある中山サーキッ
トからオートバイらしい排気音がが聞こえてくる。踏み跡は稜線上を更に続いて標高点ピ
ークを越えて下山していくようである。

 雲が徐々に厚くなっていくようで、予報より悪化のスピードが速い。風が強くなってき
たので、小さな鞍部へ退避し、食事とする。

 峠に戻って今度は論山へ。こちらも初めは急斜面。背の高い木がないので登るごとに背
後の視界が広がり先ほどまで立っていた露岩が結構大きなものだと分かる。ひとしきり汗
をかくと、傾斜はゆるくなる。何だかこの辺りの山はテーブル状を呈しているようだ。こ
れが石灰岩地帯ならカレンフェルトと呼ぶのだろう。論山とは面白い名前だが、昔、熊山
と和気の村同士が境を決めるに当たって、この頂きで論争したからだともいう。その論山

山頂は一寸した広場である他、大きな特徴も無いが、北方向に道が続いている。『論山北
尾根』と例の備前HCのプレートがある。本来は和田や奥吉原に続く尾根道らしいが、途
中で和気にも下れるらしい。同じ道を戻るのも面白くないので、こちらを使って戻ること
になる。
シダに囲まれた論山山頂

 三角点から20mも北尾根コースを歩くと、シダ原の分岐が現れる。熊山コースと北尾
根コースの分岐で、少し面食らう。熊山は南方向ではないのか?さっきの峠には熊山旧参
道とあったし。地形図を見ると論山三角点は旧町界から東へ引っ込んでいるのだ。北東側
から上がってきたので些か錯覚したのと、”北尾根”という言葉が脳裏にあったのだろう。
これもいわば想定外の一つだろう。(^^;
論山北尾根途中の裸地から熊山。奥の鉄塔の
立つ山に三角点があるが、結構遠いなあ(^^;

 相変わらずシダの茂る道で途中に現れた裸地からは、西南の熊山方面が一望である。山
と山の間にアンテナのある山が顔を見せているのが、熊山の最高峰。でもかなり遠い。低
山なれど途中に結構アップダウンがあって、骨がありそうである。この付近で踏み跡が分
岐しているが、左は小さな展望岩で途切れる。右へ下っていくのが正解。前方に見えてい
るのがCa260m峰。

 岩崖を避けて山肌を巻く道は急降下。途中、右手に降りてゆくペアの赤テープが目印の
踏み跡がある。あの憎きテープも二重巻きしてあったから、ひょっとすると、この稜線に
直登するバリエーションルートなのかもしれない。

 Ca260mピークを越えると、突然、シダが繁らない常緑樹の林になり、ヒサカキの花
のガス臭が漂う。北摂、丹波の山の春の匂いと同じだ。山に興味のない人は臭いというが、
これを嗅がなくては、低山の春山の感じがしません。(笑)

初めて見たJRの鉄塔案内標識
関電と同じくやっぱり火の用心

 再びシダが多くなって、ポンと飛び出した台地には高圧鉄塔が立つ。中国電力の高圧鉄
塔とばかり思っていたら、なんとJR所有の高圧鉄塔である。『JR西日本 万富−三石
bQ5』とある。JRの鉄塔とは。これは初めて見るものだ。ここからは鉄塔の巡視道だ
から、関電のと同様によく手入れされた道である。鞍部に下ると直進路と北へ下る道との
三叉路である。直進は和田や奥吉原へ出るが、途中の分岐からは愛宕山へも登れそうであ
る。

 ここは北に下る。小刻みにジグザグを繰り返す道を進んでいくとやがてチョロチョロ、
水の音がし始め、小さな谷の様相を呈し始める。
山陽道福富トンネル入口付近に出てきた
JR鉄塔の巡視道でもある

 だんだん車の疾走音が大きくなる。ちょうど山陽道福富トンネル入口横の取付け舗装路
に飛び出した。右に折れるとドコモやAU、ソフトバンクの携帯3社のアンテナ施設が仲
良く並ぶ前で、それを過ぎればすぐに山陽道の高架下で、火薬庫のある辻である。

 雨がぱらつき、コンクリートにポツポツ染みを作り始める。いい頃合いに降りてきたも
のだ。駅に着くと大阪方面の列車は30分後。和気の駅前商店街といってもほとんどシャ
ッターを閉めていたが、自販機で缶ビールを買って喉に流し込む。「プハーッ」

 駅前の喫茶『茶店』は健在。朝はモーニングサービスもあって、どら焼きも売るという
店。ガラス戸の向こうで高齢のおばあさん二人が椅子に座って、のんびり何やら四方山話
に興じている風である。列車がやってきた。相生、姫路と乗り継がねばならなかったが、
なんとか座れて大阪まで帰る。いろいろハプニングはあったけれど、それなりに楽しめた
吉備路の低山の文字通り徘徊でありました。皆さん、ご苦労様でした。



■同行 ハム太郎さん、水谷さん、もぐさん

【タイムチャート】
8:10JR新大阪駅発
11:05JR和気駅(山陽本線)
11:37論山の福富登山口
11:50〜12:30登路探索
12:30登路発見
12:40論山と展望岩間の峠
12:55〜13:40展望岩(267m標高点ピーク)(昼食)
13:51論山と展望岩間の峠
14:05〜14:10論山(319.3m 三等三角点)
14:22裸地
14:40Ca260mピーク
14:55JR高圧鉄塔(万富−三石bQ5)
14:59和気・和田分岐
15:10山陽道福富トンネル入口横
15:46JR和気駅

論山GPS軌跡 (罫線間隔は10秒=約300m)
 国土地理院2.5万地形図閲覧サービス、フリーソフト『カシミール』を利用しました)


論山のデータ
【所在地】岡山県赤磐市
【標高】319.3m(三等三角点)
【備考】 赤磐市(旧和気町)の南に広がる低山の中の一峰です。
どこにでもある里山ですが、植林がほとんどなく低山徘
徊に最適な山です。メインルートはしっかりしていて、
地元の備前HC(ハイキングクラブの略と思われる)が
私製の案内プレートを整備しているようですが、道が錯
綜している部分もあって、歩くにはコンパスと地形図持
参を推奨します。
【参考】
2.5万図『和気』



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