音羽山〜ノンビリ今年の山納め      

新快速の車窓から音羽山(山科付近)
平成19年12月24日(月)
【天候】晴れたり曇ったり
【同行】さかじんさん

 今年もいよいよ押し詰まってきた。そろそろ山納めの山行をというわけで、遠からず近
からず、駅から歩けるなど交通至便、初見参、適度にお手軽、出来たら眺望絶佳でという
厳しい条件?で割り出したのは音羽山。ところがこれが大当たり。人工林も少なく、締め
の山に相応しい山なのでした。

 音羽山の最寄は京阪京津線の追分駅か大谷駅。そこまでの交通経路は色々あるが山科ま
でJRを利用し、京阪に乗り換えるというのが最安ではないものの、他の経路より速くて
便利なようだ。10時くらいに現地に着くとすれば8時20分頃に家を出ればよさそう。
(早起きも不要でこりゃいいわ)

 北山方面は時雨れているようだが、京都市内は青い空。それほど寒くも無く絶好の山日
和に思える。新快速を山科で降り、京阪山科駅のプラットフォームで電車を待っていると、
この辺りに詳しく、今日、同行してくれるSさんの顔が改札口に見える。

 京津線は以前より路線が短くなったと聞いていたのでお荷物のローカル線かと思ったら、
明るい水色で4両編成の新しい電車が走っており、そんな感じは全くしない。どころか急
勾配、急カーブを快適に走る高性能な電車なのだそうだ。その電車の右前方にわだかまる
山がちょっと鉄塔林立が鬱陶しいけれど音羽山らしい。

 ”追分”。時代劇っぽくていい名前である。本来、道の分岐を表す言葉で、追分駅のあ
る周辺に東海道と伏見街道の分岐があった事に由来する。でも今は地名とは裏腹に何の変
哲もない場所だ。駅を降りると出入口の目の前に目指す『牛尾ハイキングコース』の案内
標。どっち行っていいか迷うこともない。それに従って通行量の多いR1沿いに山裾を目
指す。
追分駅前にあったハイキングコースの古い案内標
左の道路が国道1号線

 街自体は代わり映えもしないが、流石に交通の要衝ではある。名神高速が山裾を走り、
京都東ICはすぐそこだ。融通念仏宗のお寺を過ぎて名神の高架をくぐると、右に鋭角に
折れて名神沿いに小山集落へ向う車道があり、これをしばらく辿ることになる。が、道沿
いの林は不法投棄のゴミで汚い。ダンプ1、2台では足らないのではないか。ひどいもの
だ。

 小山の集落に入ると車の騒音も消え、黒い瓦屋根の旧家も目立ってくる。車1台の狭い
生活道路には『右 だいご』などという古い道しるべもあって風情も出てくる。振り返る
と愛宕山らしき山影も覗く。

 所々に立つ案内標識に導かれて流れの音がし始める。白石神社の前を抜けると、道は湿
りを帯びてしかも薄暗い。いつの間にか音羽川の流れに沿った牛尾観音の参道になったら
しく牛尾観音と染め抜かれた赤い幟が立つ。ところでこの参道は歩いていると色々なもの
に出会えて飽きさせない。最初に出てくるのが杉にぶら下げられた藁の縄。説明板には大
蛇の足とある。2月9日に大蛇を作って納めるおだとか。続いて蛙岩。確かにガマが坐っ
ているような形の岩である。他にも大師の腰掛石、経岩、大蛇塚などが次々に現れる。そ
の経岩の底深く、新幹線の音羽山トンネルが貫かれていると思うとなんだか尻がこそばゆ
い気になる。オオッ!今、揺れた!のぞみが疾走している!嘘です。

うずくまった蝦蟇のような蛙岩

 ようやく開けた場所に出た。桜の馬場と表示があって牛尾観音の駐車場にもなっており
トイレもある。Sさんによるとここでバーベキューもするそうだ。高塚山経由の醍醐への
林道もあるが車止めのチェーンが張られている。

牛尾観音への参道「思案辻」

 長い階段を上り詰めて着いた牛尾観音は清水寺の奥の院だそうだ。そういえば清水寺の
山号は音羽山。住持だろうか青い作務衣のお坊さんが作業をしている。寒暖計の示度は7
℃である。

 山道は四国八十八ヶ所と西国三十三箇所巡りの敷地横から続く。主稜に乗るまでのこの
付近が一番きついんだそうだ。確かに等高線が詰まっており厳しいが、昔ながらの山道は
それに逆らわず付けられている感じで、少し急登をしたと思ったら山腹を巻くといった、
押したり引いたりする感じといえばいいだろうか。コナラの落ち葉尾根から松葉が敷き詰
められたトラバース道を通って右に大きくカーブする所で小休止。フーッ。もう大きな登
りはないらしい。

 高圧鉄塔(堅田線bQ3)の下はこのコース初めての展望が開けるところだ。北から北
西方面の京都市街が広がり、如意ヶ岳に続く山並みには京都の冬特有の、時雨の虹がかか
っている。鉄塔の切開き沿いに下っていくテープを認める。牛尾観音への車道の途中にあ
った分岐(仙人ノ滝、音羽山)へ降りていくのかもしれない。

左が音羽山へのトラバース道。右はパノラマ台へ

 疎林を透かして鉄塔をまとった高みが音羽山だろう。深く洗掘された道を歩いてやがて
現れた分岐はどちらも東海自然歩道に出るが、左は音羽山へのトラバース道。まずは右の
パノラマ台へ向う。30mほどで東海自然歩道が走る音羽山の主稜線。更に右に採って5
0m先の一寸した台地がパノラマ台である。とはいっても左から少し飛び出た尾根が邪魔
をして文字通りの大展望というわけには行かない。琵琶湖の南湖付近が切り取られたみた
いに眺められるだけ。だが、3、4人のハイカーが休憩していて結構人気スポットだ。そ
の中にはマウンテンバイクの二人組も。道が広いから走りやすいだろう。

パノラマ台から大津・草津方面。近江大橋と帰帆島が見える

 パノラマ台から引き返して音羽山山頂を目指す。真っ直ぐ進めればいいのだが、尾根が
湾曲しながらだからこれが意外と距離がある。まあほとんど高低差がないので助かるが、
なかなか山頂横に見えている高圧鉄塔が近づいてこない。でも途中の北山城線の赤白鉄塔
(bR3)迄来るともう少し。やがて常緑樹林の下に入って石山寺方面へ伸びる自然歩道
と分かれて50m程度行けば樹林が途切れて一寸した広場となった山頂へ出る。何を固定
するのか用途が不明の機材が放置されてある。広場の中央に二等三角点。その先に眺望を
邪魔する高い木は無く、南方面以外は素晴らしい展望だ。京都市街、西山の山並みから愛
宕山、北山方面は時雨雲が覆っているものの、比叡山や皇子山のグラウンド、大津市街、
琵琶湖、草津市街などが手にとるようである。京都と琵琶湖を一時に眺めることの出来る
所はそうザラにはないとのことだ。ある意味では非常に贅沢な眺め。ここもタイムパフォ
ーマンスが非常に優れた山である。ただ、高圧鉄塔が多いのが璧に瑕といえば璧に瑕だ。

音羽山山頂。噂に違わぬ大展望台だ

 山頂は流石に風が強く、昼食は樹林下の丸太のベンチに避ける。湯を沸かしていると日
が翳る。いつの間に忍び寄ったか灰色雲からバラバラと木々を鳴らす音がする。とうとう
来たか、でも時雨にしては結構強い雨だとふとベンチを見たら、コロコロと白い物が転が
った。アラレなのだった。

音羽山山頂から京都市街と如意ヶ岳方面。左手は愛宕山
音羽山山頂から比叡山と琵琶湖方面。下山路の電波中継塔が見えている。尚、比良は雲の中でした


大谷への下山路途中から大津、湖東方面。三上山も見える

 大谷に向う北への下山路(東海自然歩道)も雑木林の中で快適だ。時折、左に京都市街、
右に琵琶湖と贅沢な眺めを楽しみながらゆるゆると下る。最近、見慣れた風景なのだが背の
高いササがここでも枯れている。原因は何なのだろうか。ちょっと気になる光景ではある。

 山頂で見えていた電波中継施設へは凡そ20分の道のりである。しばらくはその管理道
路を左に見ながら並行するが、やがて自然歩道は主尾根から西の支尾根に移るべく急な階
段道になる。周囲は杉桧の人工林になるが、枝打ちがされてあり余り暗い感じは無い。徐
々に細まった尾根はツツジなどの雑木主体に再び変化する。この付近、落ち葉が深く、石
が覆われ隠されていて気をつけていないとズルリと滑る。気がつけば左も右も相当に深い
谷だ。

 下界が近づくに従って自動車のエンジン音が聞こえはじめる。と、眼下に谷底を縫うよ
うに車道が現れた。現代の東海道、国道1号線である。自然歩道はこの国道1号線に降り
ずに「逢坂山歩道橋」と名づけられた陸橋で越える。その後は1号線の擁壁の上部に沿い
ながら西に折れて進む。ディーゼル車の排気ガスの臭気が漂う。早く抜けたいので自然急
ぎ足に。この辺りに生えている草木は可哀想だなあ。そんな中にもシロシキブが健気に実
をつけているのを見つける。

 再び自然歩道が山中へ入る鳥羽口に逢坂の関跡の説明板がある。

 『これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関』
                               蝉丸(後撰集より)

と歌われた逢坂の関。説明を読むと、下山中に逢坂山を越えてきたらしいが、どこがそう
だか未だに良く判らない。(笑)

 自然歩道はこのまま北上を続け、長等公園へ向って行く。京阪の大谷駅へはここで左に
別れ、山腹に水平につけられた踏み跡を辿るようだ。今までに道に比べれば、少し心細い
ほどの小道を200mも進んだだろうか。建物が現れた。神社のようだと気付くと、それ
は蝉丸神社の本殿で、踏み跡は本殿の裏から境内へ飛び出す形なのだった。

蝉丸神社。向って右脇から出てきた

 百人一首にも歌われた蝉丸を祭る神社のこじんまりとした境内は塵一つなく落ち着いた
雰囲気で、昔はこの付近一帯の村社だったようだ。蝉丸は琵琶の名手だったらしく、その
芸能の才能にあやかって芸能人の寄付も多いと聞いたが、チェックしそびれた。(笑)

蝉丸神社石段下にあった一等水準点

 石段を降りて鳥居前を横切る道が旧東海道だろうか。鳥居横に逢坂峠は難所だったので
牛馬が引く荷車が通り易いように轍を彫った石(車石)を敷き詰めたとかで、その石が展
示してある。そして明治時代のものらしい一等水準点の石標もあって、こういうのは歩い
て来なきゃ気がつかないものだ。そこから、老舗のうなぎやさんの幟が立つ旧街道を30
mも歩いた人家の間に大谷駅の玄関が見えたのだった。

 大谷駅は無人駅だ。でもピタパが使えた。(^^; プラットフォームに出て向かいを何気
なく眺めていて妙なことに気付く。「?」 駅のベンチの脚の長さがどうも左右で違うの
だ。大谷駅は千分の40という急勾配の真ん中にある駅なのである。逢坂の峠が如何に難
所だったのかこのことでも良く分かる。

大谷駅。珍しく勾配のある駅だ

 さて、石山方面へ帰るSさんとはここでお別れだ。本当にお世話になりました。お蔭で
楽しい山納めになりました。

 山科までは2つの駅。歩いた稜線を眺めながらJRの駅へと乗り換えたのでした。20
07年の山納め。来年も健康で歩けるようにと祈って筆を置きましょう。

『秋風の吹きにし日より音羽山 峰のこずゑも 色づきにけり』 紀貫之 古今集より



【タイムチャート】
8:20自宅発
9:52京阪追分駅
10:25〜10:28蛙岩
10:33大師堂
11:00〜11:05桜の馬場
11:13〜11:20牛尾観音
11:35〜11:42高圧鉄塔(堅田線bQ3)
11:50東海自然歩道出合
11:51〜11:54パノラマ台
12:00高圧鉄塔(北山城線bR3)
12:08〜12:45音羽山(593.2m 二等三角点)
13:05電波塔
13:35逢坂山歩道橋
13:44〜13:50蝉丸神社
13:53京阪大谷駅



音羽山のデータ
【所在地】京都市山科区
【標高】593.2m(二等三角点)
【備考】 琵琶湖を囲む山々の南部、京都と大津を画する山塊の主
峰です。山頂は北側に大展望が広がり、京都市街、琵琶
湖が一度に展望できる数少ない場所です。北麓には東海
道の難所の一つ逢坂ノ関があり、現在でも国道1号線、
東海道線、京阪京津線などの交通機関が集まっています。
【参考】
2.5万図『京都東南部』



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