靴の慣らしに明神ヶ岳
 
平成19年 3月 4日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独
樫船神社参道付近から明神ヶ岳


 今履いている登山靴キャラバンのGKも丸四年。そろそろトレッドも浅くなってきた。
それよりもソールとベロア部分を保護するシールがひび割れ。今のところなんとか支障も
なく、ソールも代えられるのだが、ええい!この際と、清水の舞台から飛び降りて新しい
靴を買ってしまった。今度はシリオ。でもあんまり高いのは買えません。(^^; でベーシ
ック421−GTX。

 新しい靴も車と一緒で慣らしが必要。そこで、軽く行ける所はと...。そうそう、丁
度いいのがあった。何故か取りこぼしていた明神ヶ岳。久方ぶりの北摂大阪地区の三角点
峰。先日、取り付きの状況も調べたばかりなのだ。(^^)

 まずは高槻市バスの中畑回転場へ。林道桜木線のゲート前の路肩を借りて駐車する。今
日は久々に自転車積載。早速下ろして準備を整えたら、車道を樫田トンネル手前の林道分
岐に戻る。もう初夏じゃないのか?と思われるくらい暖かい。しかものどかだ。ええ?ウ
グイスがササ鳴きじゃなくてもうホーホケキョと上手に鳴いているではないか。どうなっ
てるの?なんだか天変地異が起きそうな...。

 ミニサイクルだからスピードが出ない。時速10Kmくらいか。20分ほど走ってようや
く林道分岐に着く。投機禁止の看板の柱にチェーンをくくりつけて、さあ出発だ。

昇尾峠手前の林道。左に樫田トンネルが見える

「杉生bP8」の電柱横の登山口

 林道は黒柄岳のアンテナ施設の取付け舗装路。二箇所ゲートがあって、一般車は通れな
い。左は資材置き場だ。取付きについてはガイドには杉尾bP8の電柱が目印とあるが、
高槻市のオフィシャル標識があって見落としようもない。関電巡視路も兼ねた道は植林下
のいきなりの例の黒プラ階段である。一気に登って尾根に出ると左に折れて明るい雑木の
林となる。それからもしばらくは登り基調だが、何だか今日は体が重い。えっちらおっち
らっていう感じ。汗が吹き出てきた。フーッ。やがて前方に鉄塔が見えてくる。能勢線と
あるから、西京都の変電所から能勢へと繋がっているのだろう。見晴らしがよく、西には
鉄塔をいただいた黒柄岳が見える。

 一旦、高度を下げた鞍部には里山だけにやはり峠道がついている。南は樫船神社からの
道と道標にある。登り返せばすぐに傾斜は緩くなって、周囲はアカマツ、ヤマツツジやリ
ョウブ、ヒサカキの茂る林で、道は枯れた松葉に覆われている。

 この付近からは府境尾根。三角点はルートから北に10m程度入った所で、標石を中心
に円形に切り開かれた場所である。展望は全く利かないが、冬だから雑木の中を少し分け
入れば亀岡方面が望めそうである。結構、名が通っている割にプレート類は少ない。やは
り交通の便が悪いからだろうか。わざわざ、電車とバスを乗り継いでここだけ来るのもな
あ。黒柄岳もNTTの施設が出来て、もう登山の対象ではないとまで書かれたガイド本が
あるくらいである。まあ、その方が静かでいいけれど。(^^;

 万寿峠まで2.3Kmの道標を横目に三角点を後にして、展望の良い所で食事をと探しなが
ら歩いている時である。前から単独おじさんがやってきた。中畑のバス回転場に車をデポ
した時、バス停で時間を確かめていたおじさんだ。樫田トンネルの所に2台車があったけ
れど、不思議なことに遭ったのは結局、このおじさんだけであった。

 時折、ポツンポツンと現れる石の標識。よく見れば『村境』と刻まれている。この尾根
道は前述の如く現在は大阪府と京都府との境界だが、その昔はどちらもれっきとした丹波
なのである。樫田が大阪府に珍しく越境編入されたのは昭和33年。それまでは南桑田郡
樫田村だったのだ。その当時の郡内の村境を示すものだったに違いない。

 三角点から小さなアップダウンをこなして約500m。やってきた赤白鉄塔のある台地
は南向きで日当たりも良くポンポン山方面がいい景色。少し早いがここでランチタイムと
した。麗かとはこのことだろう。青い空に笑い始めた山々。ヒラヒラとモンキチョウ。梢
ではシジュウカラ。気温は20℃を越えるという。日向にいれば汗ばむほどの陽気である。
思わず昼寝してしまいそう。(笑)
能勢線bR0鉄塔からポンポン山と中畑の集落

 507m標高点は明神ヶ岳の三角点から一旦下って、もう一度登り返した辺りで、若い
桧が茂って展望無し。「どこが丹波パノラマ道なんや?」と悪態もつきたくなる頃、そう
云いなさんなと慰めるが如く左側が開けて亀岡市街が一望となり、そこには丸太のベンチ
まで用意されている。こんな場所がもう一箇所。やがて道はまた林の中である。

丹波パノラマ道の景色。愛宕山(右)や
牛松山(中央左寄り)が見える

 Y字路に出た。切り倒した木の年輪部分に中畑回転場は右とマジック書きがある。「あ
れっ?」さっきすれ違った小父さんはまっすぐ行けば回転場と言っていたような。首を捻
りつつとりあえず直進すると、100mほどで鉄塔。そこから踏み跡が下っているようだ
がちょっと勝手が違うようだ。あらためて地形図を確かめるとやはり違っていて、高圧線
のクロスする北側にいるようである。ナカニシヤの「大阪50山」に指摘があった唯一注
意する所とあった分岐はここらしい。すると小父さん間違ったことを言ったのか?分岐に
戻ってその疑問は氷解。分岐は逆Y字路。回転場から登ってくれば明神ヶ岳方面が直進に
なるのだ。人は自分を中心に考えがちだ。従って右とか左とか相対的な指示をしがちであ
り、的確に北や南などの絶対値で示してはくれないものである。人の言葉が先入観となっ
て判断を狂わせることは往々にしてあること。やはり、自分で確かめ納得するにしくはな
い。今回はその典型的な例であろう。
問題のY字路。手前方向が明神ヶ岳
黄色が鉄塔を経て穴太、白が回転場への道

 だが、怪我の功名とでもいうか、この鉄塔の台地からは丹波パノラマ道の棹尾を飾るに
相応しい大展望なのだ。小塩山から愛宕山、地蔵山、牛松山、三郎ヶ岳、亀岡盆地に保津
川の流れが一望できる。ちなみにここにある高圧鉄塔は大黒部幹線bU90という。あの
北アルプスの黒部峡谷から延々やってきたのだろうか?ちょっとロマンです。

 この付近は「枝道が多い」とガイドにあったが、関電の巡視道のことのようだ。高圧線
がクロスしているから至る所で巡視路が枝分かれしているが、とにかく道なりに進めばよ
い。少しジメッとした沢の源頭らしき平坦部に出た後は、古くから歩かれたような道が現
れる。ヤブツバキが多く、枯れ色の中に落ちた赤い花弁が鮮やかだ。

 やがてちらちらと林道が木の間越しに見え隠れしだす。少しその林道と平行に進んで木
立から抜け出すと、そこは万寿峠から100m程度南の地点である。

万寿峠南100m付近で林道合流

 万寿峠は林道森谷線と池の谷線の合流点である。この道は元々は西国札所の穴太寺への
巡礼道だったそうな。その難所はむしろここから亀岡への下り道だろう。まだかなりの標
高差がある。

 万寿峠から南へ行く林道は桜木線。林道というがそんじょそこらの県道よりよほど立派
な舗装路。小さな流れ沿いに歩いていけば、中畑の回転場へは想像したより早く、ほんの
10分程度で到着。新しい靴は心配された靴擦れも無し。試運転は上々、この分じゃ長距
離も行けそうだわい、などと装備を解いていると、自転車野郎の単独兄さんが立ち止って
こちら方向を見て、少し怪訝な顔をして府道を東へペダルを漕ぎだしていった。

 自転車を回収する為に出発点へ戻る途中、樫田の地名の元となった村の鎮守樫船神社に
寄ってみる。樫田は元々、この樫船の"樫"と田能の"田"を合わせて作られた地名なのだと
か。また参道の石段横には四等三角点があるはずなので確めてみると、保護石と例の「大
切にしましょう」ポールはあるのだが、肝腎の標識は見当たらないのでありました。
「??」
まさか近頃流行の金属窃盗ではなかろう。

樫船神社本殿

 神社の参道は思ったより長く、石段も多い。赤い鳥居を潜ってからも200mくらい奥
まっていたのではないだろうか。明神ヶ岳から南に延びた支尾根を参道に利用している。
このシチュエーションでおぼろげながら明神ヶ岳の名前の由来が分かる。この樫船神社。
祭神は大己貴命。大国主命といった方が分かりやすいが、これは江戸の神田明神の祭神で
もあるのだ。明神を祀る神社の裏山、すなわち”明神ヶ岳”なのだろう。ちなみに大己貴
命はここで船を借りて湖であった亀岡盆地を開拓したのだと伝説は云う。

 なかなか重厚な本殿。その手前に奥に見える池に向かう林道がある。登山路途中の鞍部
にあった十字路に行き当たるのであろう。神社から戻ると、能勢線bQ9らしい高圧鉄塔
が山の中腹に佇んでいるのが見えた。

 神社から右にカーブすれば樫田トンネルへの府道に出る。当初はついでに黒柄岳へ自転
車でとも思っていたが、なぜかその気力なし。(^^; 代わりにツクシの具合を確かめに某
地へ向かうことにする。今年は本当に山菜の時期が読めない。例年なら4月10日前後が
某地のツクシの旬なのに...。

 案の定。出ていない。(そうだろう、そうだろう)と得心していると、(ん?)。若い
のが頭だけもたげているではないか。こりゃあ、ひょっとしたら来週辺りかあ?また来な
ければ。ああ、忙しい、忙しい。もう、そんなソワソワする季節がやって来ました。(^^;


【タイムチャート】
8:40自宅発
9:50〜9:55中畑回転場(駐車地)
10:15昇尾峠手前の林道分岐
10:20昇尾峠登山口
10:34〜10:37高圧鉄塔(能勢線bQ8)
10:40十字路のある鞍部
10:50〜10:55明神ヶ岳(523.5m 三等三角点)
11:05〜11:35高圧鉄塔(能勢線bR0)
11:39507mピーク
11:50〜11:52中畑分岐
11:55〜11:56高圧鉄塔(大黒部幹線bU90)の台地
11:57中畑分岐
12:06万寿峠南側の林道出合
12:15中畑回転場(駐車地)

明神ヶ岳のデータ
【所在地】大阪府高槻市
【標高】523.5m(三等三角点)
【備考】 高槻市の最北部京都府との境に位置します。北の丹波側
の展望が良く、切り開きからは亀岡盆地、愛宕山、牛松
山等が眺められ、登山路は丹波パノラマ道とも呼ばれて
います。
【参考】
2.5万図『法貴』



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