雨には勝てず〜駒ノ尾から船木山
 
駒ノ尾避難小屋付近から鍋底に似た鍋ヶ谷山(左)
と船木山。後山は雲の向こうで見えない
平成19年 7月16日(月)
【天候】曇りのち雨
【同行】Tちゃん


 台風一過だが梅雨前線は居残りで、折角の3連休は芳しくない。それでも海の日は比較
的雨の心配はなさそうという予報に飛び出した播磨と美作県境。が、結局、予報と裏腹に
雨にたたられて尾根歩きは途中でリタイヤ。それでも避難小屋で雨にも濡れずに食事も出
来たし、雲海に浮かぶ三室山はなかなかの絶景だったし。それはそれで思わぬ拾い物でし
た。

 突然のオフ表明であったので、手を上げたのはTちゃんのみ。7時半に桃山台に集合し
て、中国道は山崎ICまで。通勤割引で料金は1400円と割安。何度か通った千種川沿
いの道を北上し、日奈倉山の登山口のある志引峠経由で現代玩具博物館を目印に広域農道
を走る。西に向かうに従って空は徐々に灰色。ついに雨がフロントグラスに当たり始めた
がすぐに止む。でも山並みの中腹以上はガスが流れている。いや〜な予感。

 その現代玩具博物館を過ぎてしばらくすると、鬱蒼とした植林へ吸い込まれる1車線の
林道がある。見過ごしやすい何の変哲もない林道だが、「ダルガ峰線」の表示を見つける。
ダルガ峰は駒ノ尾の北側の山だ。多分これで登っていけば良かろうと右にハンドルを切る。

 時折、パラパラと落石がある狭い道だが全線舗装の一級林道。ぐんぐん高度を稼ぐと途
中に小さな展望台もある。カーブで少し膨らんだ辺りにある案内図。あんまりよく分から
ない案内板だけれど、もう100mも進むと、ガスの漂う中に見覚えのあるトイレつきの
立派な駐車場が見えてくる。先行車は岡山bェ1台きりだ。早速準備開始。

1年ぶりの駒ノ尾登山口

 ほぼ1年ぶりの駒ノ尾の登山道、というよりこれはもう遊歩道。標高はすでに950m
強あり、山頂まで約2kmの道は300m余りの標高差である。『駒ノ尾山頂まで181
0m』などと中途半端な距離であるのは、標高を基準に標識を立てている為。エゾゼミだ
か、エゾハルゼミだかが鳴く雑木林は太い木はないが、ブナもあってなかなか清々しい。
しかし、無風なのと、今日は体調いまいちなのとで汗が一気に噴出してくる。30分足ら
ずで見えてきた東屋で早くも一息入れる始末だ。(^^;

 林道でかなり上まで上がってきているので、東屋まで少し歩くだけでかなりの高度感が
ある。東屋の窓からは重畳とした山々と山襞を縫う林道。その山々に囲まれた猫の額くら
いの平地は新田の集落だろうか。そこにも青々と水田が広がっている。北にはダルガ峰。
1年前にうどんをご相伴に預かった林道沿いの東屋が意外に近い。そこへ向かう白っぽい
車も見える。
ルンルンで駒ノ尾遊歩道のブナ林。この辺りまでは
大降りする予感はなかったのですが...

 東屋から少し歩けば中間地点だ。表土が乾いている。ここは降らなかったのだろうか。
木製の展望台のある辺りからはようやく駒ノ尾の山頂が見え始める。ゆっくり登る我々を
単独小父さんが追い抜いていった。

 ヤマボウシの白いガクが散らばる。5月頃にはサラサドウダンが咲くのだそうだが勿論
今はない。ブナ、ミズナラが林立する沢の源頭の様な地形を巻いて、下草にササが増えて
くると山頂は近い。

 ササに囲まれた山頂にはストーンサークルを模した石が環状に置かれている。先行者は
二組。さっきの小父さんと、北のスキー場から登ってこられたご夫婦だ。記念撮影なんぞ
をしていると、その内にまた雨がぱらついてくる。おかげで後山へ続く稜線にはガスがか
かり、鍋をひっくり返したような鍋ヶ谷山、その向こうの船木山はなかなか端正な姿が拝
めたけれども、後山は見えない。一息入れて後山に向かう。

駒ノ尾山頂にて

 空は明るくなったり暗くなったり。そのたびに一喜一憂である。駒ノ尾山頂でまた降り
始めた雨が小降りになり、ごく薄い日差しも出てきて、これで上がるだろうと思いきや、
意に反して逆に今度は強くなりはじめた。避難小屋の前でダルガ峰への道を分け、鞍部か
ら鍋ヶ谷山の登りにかかる頃にはなんと本降りで、ザックカバーと傘を取り出す破目にな
る。辺りも夕刻のような暗さである。それでもまだ「また良くなるかも」と希望的観測を
抱いて前に進む。というより、半分意地みたいなものだ。(笑) 

雨が降り出した中を鍋ヶ谷山へ

 ガスが懸かり易いのだろう、倒木が苔むしている。防火帯を兼ねたような幅2m位のネ
マガリタケの間の切り開きだ。それに邪魔されて普通の尾根道みたいな展望がない。時折、
雨の重みで左右から倒れこんだササが鬱陶しい。自然、視界は足元に落ちるのだが、ぬか
るみにさっきから新しそうな鹿の足跡が続いている。切り開きを外れたササのブッシュは
相当きつく、鹿にもそのブッシュは歩き難いらしい。

船木山への尾根道は中国自然歩道

 鍋ヶ谷山は意外に何処が山頂か分からぬうちに通過してしまいそうなところ。山頂に三
角点はなく、200m東の登山道横に四等三角点『粟倉』が、何でこんな所にと思える場
所に埋まっていた。

 鍋ヶ谷山との鞍部から船木山への登り返しはややきつい。標高差約100mの登り。潅
木が増えてきて、ハウチワカエデ、ブナ、ヤマザクラが目立つ。山頂近く、右(南)から
いい道が上がってきている。ガイド本にあるキャンプ場からの道だ。と、前方から男性2
人組。そのキャンプ場からピストンとのこと。こんな雨の中、物好きはいるものだとお互
い笑いあう内に、駒ノ尾方面から今度はご夫婦らしい2人組。傘無しでびしょびしょ。後
山まで行くというが、展望もないだろうし、腹も減っているしで我々の方は戦意喪失。船
木山山頂でUターンと相成った。船木山も尾根のコブみたいな山頂ではあるが、プレート
が架かっているのでそれと分かる。ガスが立ち込めて全く分からないが、高木がないので
南側の展望が良さそうであった。
雨の中、船木山山頂

 Uターンと決まればこれだけの雨。食事は避難小屋でしか落ち着いて摂れない。1時間
お預けである。(^^;

 駒ノ尾の東の1,250m峰を登っている時だろうか。振り返るとガスが切れて見事な雲
海が現れている。そこにぽっかり、島影、否、山頂が。この辺りで一番高いといえば三室山
しかない。これだけを見ればアルプスにでも来た雰囲気である。今日一番の絶景である。

駒ノ尾の東稜線から雲海に浮かぶ三室山

 シャリバテ。避難小屋が見えているのに何かしら遠い。それでもどうにか飛び込んだ避
難小屋はなかなか立派な小屋で、隅には炉が切ってあって、焚きつけの新聞もある。棚に
は枕や漫画本、何と眼鏡まで。寝袋さえあれば退屈する事はなさそう。(笑) タバコ臭
いので窓を全開にする。庇が長く作ってあって雨が降り込むことはなさそうである。

 早速、ザックからおにぎりを出して頬張っていると、船木山で会ったご夫婦二人組がび
しょぬれで避難して来た。後山まで性懲りもなく?行ってきたとのことだが、やはり何も
なかったそうだ。(笑)

 雨は時折、勢いを増し止む気配がない。その雨間を縫って先に出て行かれたご夫婦。梅
雨時の雨具の用意、次回からは忘れないことだろう。こちらもそろそろ。食後の温かいコ
ーヒーを飲んで小屋を後にする。

 雨で道は所々、川の状態。これだけ足元が濡れれば、もう構う気も失せる。やっと展望
台まで降りてきた。少しヤレヤレと気を緩めた途端である。ゴロゴロとしかも頭上で雷鳴。
空気を引き裂くバリバリという音や稲妻が閃くわけでもなかったが、展望台の周囲は樹木
も無い荒地で、思わず20mほど走って樹林の中に飛び込んだ。さっき避難小屋で食事し
ている時、ドロドロというような低い飛行機の爆音にも似た音はやはり雷だったみたいだ。

 この付近は樹林帯だから雨の勢いも大分弱まって感じられる。見ればブナの幹を雨水が
チョロチョロと流れ落ちている。天に向って広げた葉や枝が雨水を集めて、漏斗の如く根
元に流し込んでいるのだ。TVで見た覚えがあるがそれを目の当たりにしたのは初めてだ
った。

 雷の音も近づくでもなく、そのまま音沙汰もなくなる。駐車場にはまた我々の車のみ。
結局、雨は降り止まず、装備を解いているとガスまで這い上がってきて、辺りは瞬く間に
乳色に包まれてしまった。視界10mくらいか。林道を下る時もフォグランプにハイビー
ム。ガス帯を抜けるとまた明るくなり、往路では遠いなあと思った林道もあっという間に
降りてくる。かなりの雨が降ったらしく、谷川は轟々とほとばしり流れている。

 志引峠を降りると、下界は大した雨も降っておらず、やはり山の天気は変わり易いのが
良く判る。見上げれば相変わらず山の中腹から上は雲の中。雨には往生したけれど、無事
に歩けたしこれもまた一興か。Tちゃんご苦労様でした。それにしても駒ノ尾は二度とも
ガスの中。なかなか招待を現してくれない山である。


【タイムチャート】
7:30桃山台西ロータリー(集合地)
9:55〜10:00駒の尾登山口(駐車地)
10:27〜10:32東屋
10:42展望台
11:05〜11:15駒ノ尾山(1,280.7m 二等三角点)
11:40鍋ヶ谷山(1,253m)
11:52四等三角点『粟倉』(1,235.3m)
12:15〜12:19後山キャンプ場コース出合
12:20〜12:21船木山(1,334m)
12:45四等三角点『粟倉』(1,235.3m)
12:55鍋ヶ谷山(1,253m)
13:20〜14:05駒ノ尾山避難小屋(昼食)
14:08駒ノ尾山(1,280.7m 二等三角点)
14:55駒の尾登山口(駐車地)


駒ノ尾山のデータ
【所在地】岡山県英田郡西粟倉村、美作市(東粟倉)
【標高】1,280.7m(二等三角点)
【備考】 岡山県と兵庫県の県境を形成する後山山塊に属し、岡山
第二の高さを誇ります。山頂は笹原で展望が広がり、奥
播磨や奥美作の山々を一望する事が出来ます。後山やダ
ルガ峰からの中国自然歩道を利用した縦走が一般的で、
直接の登山道は兵庫県と岡山県側からがありますが、岡
山県側がより整備されており、一般的です。
鍋ヶ谷山のデータ
【所在地】岡山県美作市(東粟倉)、兵庫県宍粟市(千種町)
【標高】1,253m(点名『粟倉』1,235.3m(四等三角点))
【備考】 駒ノ尾の東にあり、駒ノ尾から見れば鍋をひっくり返し
たような山容をしています。山頂付近は潅木が疎らに生
え、スズタケに覆われています。尚、三角点は300m
ほど東よりの登山道沿いにあります。
船木山のデータ
【所在地】岡山県美作市(東粟倉)、兵庫県宍粟市(千種町)
【標高】1,334m
【備考】 後山と駒ノ尾の間にあって、駒ノ尾から眺めると、ピラ
ミダルな形をした山です。山頂からは南側の展望が良く、
播磨と美作の山々が眺められます。
【参考】
2.5万図『西河内』、『坂根』



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