観音峯山から三ツ塚北西尾根
 
今年も魅せるベニバナヤマシャクヤク
平成19年 6月16日(土)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 去年もこの時期に出かけた観音峯山。大峰の北部の主な山々を見渡せる天然の望楼のよ
うな山で、山頂近くにある展望台まで『南朝ロマンの道』と名づけられた遊歩道が整備さ
れていて誰でも簡単に登れる。小生もこれで3回目。初回は山上ヶ岳に登るつもりが洞川
への車道が土砂崩れで通行止めとなり、代わりに登ったのを覚えている。今日は梅雨の晴
れ間を縫って観音峯山から法力峠方面の三ツ塚へ出て、その北西尾根を下ってショートカ
ットし、余った時間で温泉に浸かろうというもの。三ツ塚北西尾根はバリエーションルー
ト。はてさて、どんな感じの尾根だろうか?

 虻トンネルの洞川口には観音峯山の登山口と駐車場がある。7時に家を出て9:15着。
既に駐車場はほぼ満杯。最後の空きを我が車が占める。他メンバと落ち合うのは10時過
ぎなのでいささか順調に来すぎたらしい。まずは腹ごしらえ。その後は休憩所の壁にある
南朝哀史を読んだり、カジカの鳴き声がするので、もとより見えるはずもないけれど、吊
り橋から川を覗きこんだり。その間にも大型バスが続々洞川方面へ走り去る。乗っている
人は白装束。山上ヶ岳へ登拝する人々らしい。そういえば来る時、前を走っていたセダン
がパパママストアに停車するや、白装束の人が降りたので「あれ」と思ったことだった。
戸開き式が終わって、お山も最盛期を迎えるのだ。そんなこんなで10時過ぎ、4人を乗
せた車がやってきた。これで全員集合だ。

 1台を洞川温泉センター前の駐車場にデポし、再び観音峯山登山口へ戻ってくる。10
時半、用意を整えて出発。吊り橋を渡って杉林の山肌に取り付く。フタリシズカやコアジ
サイが咲き出している。サンニンシズカやヨニンシズカまで。こりゃあ不倫のフタリシズ
カだ。(笑)

 ヤブウツギが咲く下にある観音の水を口に含んで進み、第一展望台に寄り道しながら、
徐々に高度を上げていく。尾根筋に出るまではほとんど風がない。すぐに汗が噴き出して
きた。なんだかエンジンがかからないのは昨日の酒の所為だろうか?(^^;

 神社跡まで来ると風も出てクールダウン。お歌石の間を抜けて、ハルゼミの低い鳴き声
を聞きつつ、今日は岩屋には寄らずにそのまま進む。右に回りこんで急斜面をしばらく我
慢すれば、観音平の展望台直下の稜線に出る。ロープが張られているのはベニバナヤマシ
ャクヤクが生育しているからで、ロープ際で去年の今頃は花開いていた個体も今年はまだ
固い蕾のまま。1週間程度、開花時期が遅れているような按配だ。

観音平の展望台から見る。左から大日山、稲村ヶ岳
右にバリゴヤ谷ノ頭が屹立する。手前はミオス尾

 展望台の眺望は相変わらず雄大で、目の前の弥山が大きく、大日山、稲村ヶ岳、バリゴ
ヤ谷ノ頭が屏風のようである。山襞に一本白い筋のようなのは双門の滝。西に目を移すと
金剛、葛城の山並みが意外にはっきり眺められる。双眼鏡を持ってくれば護摩壇山のタワ
ーも見えそうである。

 「ソバ見たいな葉っぱの赤っぽい変わった花がありますよ。何て云うんでしょう?」傍
らから現れたハイカーが声をかけてきた。「えっ?どれどれ?」うむ。これは見たことが
ない。帰宅して調べたらあの強心剤に使う薬草のジキタリスだとか。和名はキツネノテブ
クロとお伽話的だけれど、薬草とは実は毒草という事。お浸しなどにして食べたら大変、
中枢神経を麻痺させる毒薬なのだ。ちょいと摘まんで味見しなくて良かった。(^^;;

 先行したメンバは何処にいるのだろう?声を上げると前方の1285mピークの麓から
返答がある。聞くと例のものは数輪が花を開いているという。一寸拝ませてもらいに行こ
う。蓮のような色合いの清楚な薄紅色の花は処女の如く、決して花弁を大きく広げないの
である。

 昼食はその1285mピーク付近。丁度、東側が開けた場所がある。先程の展望台に加
えて稲村ヶ岳の肩から覗く山上ヶ岳がよく望め、双眼鏡で見れば西の覗に立つ行者の姿が
チラチラ見えるというが、生憎、乱視の小生には判然としなかった。

 腹ごしらえが済んだ後は観音峯山への稜線を伝う。雑木林の中の小さなアップダウンを
何度か繰り返す。年々道は明瞭になるようだ。あいかわらずトリカブトが多い稜線である。

プレートが賑やかな観音峯山

 観音峯山の頂は三角点がなければ気付かず通り過ぎてしまうようなピークだが、プレー
トだけはやたらに賑やかだ。去年は雨が降ってきて観音峯山から先、法力峠方面へは行か
ず仕舞いだったのを思い出す。というわけでここから先は小生にはまだ未踏なのである。

 思いの他、いい道がついている。概して北側は杉林、南側が雑木の境目を歩く感じだ。
マムシグサ、アセビ、ハウチワカエデが多い。柔らかい稜線は大したアップダウンもなく、
植林部分も多くて、そういう意味では面白みに欠ける感じ。山慣れた感じの小父さんがリ
ーダーの熟女ハーレム状態のグループが戻ってきたのも分かる。それでもハウチワカエデ
が茂る林もあって、ブッシュも無くそれなりに愉しい。Ca1360mピーク、Ca1370
mピークと淡々とこなしていく。その先が三ツ塚で、ここもプレートがないと見落としか
ねないピークである。
杉林の三ツ塚。ここには紀州わらじの会のフクロウマークがある

 三ツ塚から法力峠の方は雑木、北方向の尾根筋は杉の植林。ただ、木梶山からの北東尾
根からの下りの様な、植林ヤブではなく良く手入れされた林だ。勿論、踏み跡はほとんど
ない。杉の枯葉が分厚く溜まりフカフカだが、枝が混じっていて踏みつけると躓いてばっ
たりとなるから注意が要る。だが、なんとこんな尾根にも残置テープがある。植林だし、
直接里に下っていく尾根なので、踏み跡くらいはあっても可笑しくないが、いささかびっ
くりだ。

 しばらく北に進んで北西に転ずる。直進(北上)する尾根は1261m標高点ピークか
ら五代松鍾乳洞へ向かうのだが、最後の等高線の混み具合は半端ではない。下ってしまう
とかなり難渋するに違いない。

 植林と雑木の入り混じった尾根だ。石灰岩らしい露岩が多い部分は、岩を撤去できなか
ったのだろう、雑木のままである。雑木林の明るい林床にはヤマシャクヤクがあちこちに
見られる。成木の他に実生の2、3年生も数々見られ、シーズンはさぞかし豪華であろう。
但し、この付近、Ca1340mピーク付近が存外曲者。気をつけないと、フーッと西の尾
根に惹き込まれかねないのである。ここを過ぎれば尾根はどんどん狭まって岩がゴロゴロ
したやせ尾根に出る。苔むした岩の配置はまるで日本庭園。こんな所があるとは地形図を
見ても分からず、本当に思っても見なかった。

三ツ塚北西尾根。ヤマシャクが生え、苔むした岩が転がる

 概してテープは尾根の西端を辿るようだ。歩いている尾根の左(西)側は切り立つとま
ではいわないまでも、かなりの急斜面である。やがて雑木林はなくなって一面の杉林にな
る。尾根は不明瞭になって、周囲はだだっ広い扇状地に似たのっぺりした大斜面だ。ただ、
里に近づくに従って、ほとんどなかった踏み跡がやや明瞭になってくる。植林の作業道で
あろう。車の音や生活音も微かに聞こえはじめ、もう数百mも下れば洞川という段になっ
て、テープは直進と西へ振るものとに分かれる。どちらに行っても良いみたいで、しばら
く直進したが、やっぱりより車に近い方へと西へと方向転換。すると線香の匂いも漂いは
じめ、やがてログハウスが下方で視界に入って、飛び出した所は洞川のメインストリート
を一本南に入った町道のようである。畑仕事をしている小父さんがいたので尋ねてみれば、
目当ての墓地は飛び出した所から150mほど東にあると教えてくれる。最後は適当に降
りたので、ドンピシャとは行かなかったみたい。(^^; 西へ振らずに直進していたら、線
香の匂いもしていたから墓地に出ていたかもしれない。飛び出した町道を西に進むと、ほ
んの200mくらいで洞川温泉センター前の駐車場なのだった。

洞川のメインストリートの一つ南側の町道に出てきた

 汗を流そうとここは当然、目の前の洞川温泉へ行くに若くはない。混む事も無く適度な
客の入りだ。前回来た時にはなかったと思う露天風呂も出来ている。その露天風呂の湯船
の横にはオオヤマレンゲが植えられており、象牙色の花を一つ付けていて、弥山に登らず
とも思わぬ目の保養になる。(笑) 湯上りにはノンアルコールビールを一缶。ビールの味
と爽快感はやっぱり物足りないけれど、こればかりはまあ仕様が無いだろう。

 虻トンネルの駐車場に戻ったら、日が翳った中にまだまだ車が停まっている。今日の山
歩きもエピローグ。同行の皆さんとはここでお別れして、以前、ウチョウランを買ったこ
とのある天川川合の山野草屋に寄る。セッコクに触手が動くがやっぱりちょっと高い。で
今日はグッと我慢だ。

 夏至前で日は長く、そんな寄り道をしても明るい内に家に着くことが出来た。梅雨間の
晴天に恵まれた一日。同行の皆さんに感謝です。



■同行:すみれちゃん、たらちゃん、真心職人さん、水谷さん

【タイムチャート】
7:00自宅発
9:15〜10:10虻トンネル洞川側駐車場(駐車地)
10:30駐車場出発
10:48〜10:52第一展望台
11:20神社跡
11:45〜11:56観音平展望台付近
12:10〜12:401285mピーク付近(昼食)
12:59〜13:00観音峯山(1,347.4m 三等三角点)
13:12Ca1,360mピーク
13:22Ca1,370mピーク
13:29〜13:30三ツ塚(Ca1,380m)
13:45Ca1,340mピーク
15:10町道出合


 観音峯山のデータ
【所在地】奈良県吉野郡天川村
【標高】1,252.7m(二等三角点)
【備考】
大峰山脈の北部、山上ヶ岳の西側の支脈に属する山です。
当山中の岩屋で、南朝の後村上天皇の夢枕に観音菩薩が
立ったことから命名されたと云われます。中腹の観音平
からは、稲村ヶ岳、弥山、八経ヶ岳、頂仙岳等、大峰北
部の山々から金剛、葛城、更に紀北の護摩檀山迄望める
大パノラマが展開します。
【参考】
2.5万図『弥山』、『洞川』



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