灼熱サウナに早々撤退、加賀大日山

徳助の頭から望む。左手前が小大日山。中央の大日山や右の加賀甲へはまだまだ遠い
平成19年 8月25日(土)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 この暑さじゃ低山はとても駄目だというので、千m越えの山狙い。少々遠出だけれど、
加賀大日山が面白そうだの声に集まった8名の面々。だが、去年の浄法寺山を彷彿とさせ
る暑さに、最初からもう一つ気勢が上がらず、途中で撤退。やっぱり夏場は登山口が千m
はないとつらいことを再認識。(^^; それでも徳助の頭は踏んで一矢を報いたのでした。

 7時に千里中央集合。順調に名神、北陸道と進み、福井北ICで降りて最寄のローソン
に立ち寄る。この時点で9時半。やっぱり福井も残暑が厳しい。アイスを買って涼をとる。

 R364で丸岡方面へ進み、県道153で我ヶ谷ダム沿いに県民の森を目印にひた走る。
ダムは濁っていたが、上流まで来ると大聖寺川は岩を噛む清流だ。徐々に両側の山肌は狭
まり、真砂集落の標識に従って道を折れる。山は深まり、小さな水力発電所の管理棟や建
設会社か何かの物置みたいな建物が時折現れるだけ。所々に停まっているのは釣り客の車
らしい。道は最後には舗装が途切れて、普通車じゃ気をつけないと底を擦るような地道に
なる。ゆっくり車を進めると最奥の駐車地に出た。先着車が2台もある。我々以外にも物
好きはいるようだ。(笑)

 車のドアを開けると途端に飛び込んできたものがある。アブだ。車外に立つと車の周り
をワンワン飛び回っているではないか。大きいのは体長2.5cm、小さいものでも1cm。
眼が緑の奴はウシアブ系で、刺されると1週間位は腫れて痒い。慌てて虫除けをシャツに
噴霧し、腕や顔に塗る。目の前を飛んだ大きい奴を団扇で叩き落してみれば、これはアブ
ならず、キイロスズメバチみたい。そういえば駐車地の手前にあった建物の屋根の下に巨
大なスズメバチの巣があったなぁ。
駐車広場の説明板。奥の建物はトイレ

案内板の裏を覗いてみれば
真砂集落での生活の一端が記されている

 駐車広場には一応、トイレもあって、大日山の登山案内図もある。案内図の裏には何や
ら真砂集落に関する面白い言い伝えなどが書かれてある。曰く、死ぬのだったら夏がいい。
アブが泣く、蚊が泣く、蝉が鳴いてお経を上げて弔ってくれる云々。昔からアブは半端じ
ゃなかったようである。因みに真砂集落は山中漆器を産した木地師の集落だったらしく、
発祥は天正年間という説もある古い集落だが、平成10年に完全に離村したとかで、説明
通り今は影も形もない。

 そんなアブ攻撃や異常な蒸し暑さ、更に予定時間から遅れていることなど諸々の事情か
ら、早や一同、やや戦意喪失ぎみなのは否めないところ。それでも徳助新道を尾根に向か
って歩き始める。まもなく左手に地形図にある神社跡。薄手の金属で造った鳥居がまだ立
つが、薄暗い参道奥の様子ははっきりしない。本来はもう少し先まで林道を歩くのが正解
だったようだが、神社前から左の踏み跡に入り、建物があったらしい敷地を抜ける。石垣
と勝手口へ向かう道があったのか、飛び石のみが残る。建物は離村時に柱一本に至るまで
完全に持ち去られたようだ。

 のっけからきつい登りだが、徳助新道、意外に明確で手入れされている痕跡もある。ガ
イド本には池洞新道がメインで徳助新道はサブルートとあって明快でない部分もあろうか
と、それなら登りに使った方がと考えたのだが、そんな心配は不要らしい。アブも少し登
ると追っかけてこなくなる。こうして一難は去ったが、最大の敵、暑さは湿度の高さや無
風状態とあいまって尋常じゃない。この悪条件に体調が今一のメンバも出てきて、休憩回
数も増え、水分を摂る回数も増えてくる。こうなれば、もう大日山周回なんぞは眼中にな
く、また今度だという気になる。それでもやっぱり山登りに来た矜持は捨てない面々。徳
助の頭までは頑張ろうで合意が出来る。
登山道途中にあった巨大なブナ

 幹周りが2mはある大ブナの周りは流石に少し涼しい。斑点が抜けた白いヤマジノホト
トギスやホツツジが彩る山路の両脇にはイワウチワの群落が延々と続いており、雪解けの
春は、さぞかしそのピンクの花で埋め尽くされることであろう。それに今は影も形もない
けれど、別名カタクリ街道とも呼ばれることから、カタクリの花も無数に咲くのであろう。
雪国に一時に押し寄せる春が想像される。

 トランジスタラジオから流れる声が聞こえてくる。前方で単独小父さんが休憩中。「こ
の辺りをあウロウロしている」と言っていたけれど、この小父さんには下山時にも出会っ
たから、ほんとに林の中をうろうろするのが趣味なのかもしれない。

 少し風が出てきた頃、辺りはブナ林に変貌する。太い大物はないが、直径2、30cmく
らいのブナが斜面に多く生えて清々しい。日が翳るのを待ちかねるようにエゾゼミが、コ
ントラバスみたいに低い声で鳴き始めた。
清澄なブナ林を歩く

 そのブナ林を抜けると、丈の低い雑木の林。頭からの直射日光でムーッと暑い。それを
我慢して北東方向に登っていけば最初の標高点ピーク、徳助の頭である。

 徳助は”禿頭”だったのか?(笑) 頂は大きな木も無く日光の直射を避ける場もない。
但し、その分展望が良く、小大日山、大日山、大聖寺川の谷を隔てた加賀甲のドーム状の
山容がぐるりと取り囲む。靄がかかっているので視界はそれほど延びず、生憎、白山山系
は望めない。

 山頂に来ても風はなく、日陰も雲頼みなのでさっきのブナ林で昼食にすることにする。
小大日山方面へ少し下ったら涼しい風が吹いてきていたのだが、直射日光を避けた方がや
っぱり無難だったろう。

徳助の頭の山頂にてMさん

 やはりブナ林は涼しい。流石1000m越え、歩けば暑いけれど、じっと涼んでいれば
いつの間にか汗も引いていく。登った山道を戻る。汗だくだったはずだ、かなりの急勾配
だ。下るに従って気温が上がっていくのが感じられ、湿度も高くなっていくのが分かる。
それでもはるか下から大聖寺川の沢音が徐々に高くなってくると、少しは気をまぎれさせ
くれる。

 往きは2時間も要したのに帰りは1時間余り。時間があるので少し神社に寄り道してみ
よう。天照皇大神宮とある。鳥居を潜って10mも行くと石の鳥居で、大正10年建立。
石燈籠は昭和初期のもの。狭い境内に巨大なケヤキの木が1本。その向こうの拝殿は雪で
完全に押し潰されていたが、奥の本殿の祠はまだ無事だ。その瓦は黒でなく茶色の塗り瓦
なので、昭和3、40年代頃に葺き替えられた様子。しかし、その後の過疎化で次第に省
みられなくなっていったのだろう。完全離村の際に神様も遷座されたであろうか。参道の
石畳の隙間からキンミズヒキが一株、ほの暗い中で目立っていた。それにしても金属の鳥
居横にあった標識に書かれた『蓮覚 チの部』とは一体何の事なのだろうか?

天照皇太神宮社殿は瓦礫と化していた

 大聖寺川の冷たい水で顔を洗って戻ってきた駐車場には、途中で遭った小父さんのもの
らしい車以外には我々の車だけ。と思う間にまたまたどこから嗅ぎつけたかアブが飛び回
り始めた。すばやく車内に入った積りがアブもちゃんと御入室。しばらくアブと格闘する
破目になってしまうのである。

 途中で引き返したから、まだ時間に余裕がある。汗びっしょりの体は温泉ですっきりし
よう。幸い山中温泉は車ならすぐ近くだ。R364に出て北方向へ進めば、温泉旅館やホ
テルの看板が徐々に増えてくる感じがする。そして、山中温泉の中心街に入る手前に『湯
けむり健康村』なる道の駅がある。温泉とプールが併設されていて、『ゆーゆー館』とベ
タな名前の温泉施設の利用だけなら値段も500円とリゾナブル。ここに決める。

 なかなか気持ちいい露天風呂。湯は無色透明で丁度良い湯加減。それほど混んでもおら
ず、気持ちよく汗を落とせた。

 山、温泉、ビール。この三拍子があれば最高。と行きたいところだけれども、運転する
方に遠慮して今回はビールは遠慮。コーラで我慢だ。(^^; ついでに梨を土産に帰途につ
く。電柱に広告があって気になっていた「娘娘饅頭」が、道の駅併設のこれまたベタな『
今はやまなか』という名の売店にあった。「どんなんかなぁ〜?」って確めたら、普通の
こし餡饅頭だった。”娘”が入っている訳なんかないわねえ。(笑) 

 加賀大日山。是非とももう一度リベンジしたい山です。



■同行: あかげらさん、呉春さん、幸さん、たらちゃん、ハム太郎さん、水谷さん、
     もぐさん(五十音順)

【タイムチャート】
7:00千里中央駅ローソン前(集合地)
10:40〜10:50真砂廃村(駐車地)
12:25〜12:35小休止
12:55〜13:00徳助の頭(1,053m)
13:15〜13:40ブナ林(昼食)
14:45〜14:50天照皇太神宮跡
14:51真砂廃村(駐車地)


徳助の頭のデータ
【所在地】石川県加賀市
【標高】1,053m
【備考】
加賀大日山への登山コースは池洞新道と徳助新道が代表
的ですが、そのうちの徳助新道沿いにある標高点ピーク
です。山頂は高い木がなく、小大日山、大日山、加賀甲
等が一望でき、西には浄法寺山、冠山、富士写ヶ岳が望
めます。
【参考】
2.5万図『山中』、『龍谷』



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