桧塚〜錦秋求めて再び明神平 | |||
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何せ黄葉にはちと早すぎたものだから、今週も先々週に引き続き明神平。行き先は4年 ぶりの桧塚にしよう。ヒメザサに覆われたあの象の背中の如き稜線を又歩きたくなったか ら。そしてシロヤシオの紅葉を又見たくなったから。腰は小康状態。まあ何とかなるだろ う。 流石に晴れの特異日だけのことはある。文化の日の5時半。起床するとまだ暗い中、煌 々と月影が辺りを照らしているが、快晴を約束するかのように東の空はもう薄茜色だ。準 備をしている間に白々と空けた朝、前々回とほぼ同じ時刻に出発したのだが、最近は日曜 より土曜の方が車が多く、西名阪も渋滞ぎみ。お蔭で前々回より若干遅れて大又林道の終 点にやってくる。予想通り駐車広場はほぼ満車状態だ。それでも何とか一番端に空きがあ る。
の陽の光に黄葉が映える。たった二週間なのに、木々の色づきはうんと進んだようだ。 このコースは登山口から砂防工事の取付け道の終点までが一番つらい。その終点に生え る例のウリハダカエデの大木付近では土砂崩れ防止の金網張りの工事。何でこんな所まで と訝しく思ったワゴン車は作業員の方のだったみたい。作業の邪魔をしないように進む。 馬酔木山荘跡横の梯子を登って、これも例の如くキワダサコで休憩だ。 爽やかな音を立てる明神滝を見るあたりまで来れば、行程の半分以上をこなした感じが して少しホッと出来る場所である。明神谷の左岸を巻き登って滝の上部へ出る。薊岳の色 づいた肩が右上方に見え始める。そして明神平へ続くつづら折れの道になると、地面はハ ウチワカエデの赤、ヒメシャラやコシアブラなどの黄、ブナ、ナラ類の茶が織り成す文字 通りの綾錦だ。地面近くではマムシグサの実が赤く色づき、ガマズミらしい赤い実も転が っている。秋。山が一番華やかになる季節ではなかろうか。 一旦入った植林を抜けると水場がある。喉を潤して最後の登りをこなす。明神谷の西の 空には金剛、葛城の山並みが青い。
ない。これもまたまた例の如く東屋にザックを置き、カロリーメイトをひとかけら放り込 む。時計を見ると先々週とほぼ同じ時刻。ペースはまあまあか。一息ついて、三ツ塚方面 へ向かい、ブナの県境尾根に乗って左に折れると明神岳だ。やはりここにも誰も居ない。 桧塚方面へ向かうには前回直進した所を左へ降りる。標高差100m近くをどんどん下 る。帰路登り返す時にボディーブローのように効いてくる斜面でもある。下りきってしま うとここからが本日のメインディッシュだ。この辺りはもう三重県で、ほぼ平坦な雑木林 はブナやミズナラの別天地。あちこちにヌタ場がある所を見ると、ここは登山者の別天地 のみならず、鹿達の別天地でもあるのだろう。黄色や茶色が主体の林の中に、所々にある カエデやシロヤシオが点描のように赤いアクセント。ふと見るとヤツデかと見紛うオオイ タヤメイゲツの黄色い葉っぱが散り重なっている。 ヒメザサの間に一筋の小道のつく細長いCa1350mの高みを越えた付近が千石平と呼 ばれる台地。小さなプレートがあるだけだから気付かずに通り過ぎるだろう。ただ右に道 が折れるので少々気をつけねばならない所ではある。 前回、歩いて不思議に思った溝が現れた。千石谷と木屋谷を結ぶ峠道であった雰囲気が ある。試しに千石谷の源頭方向を覗くと、なんとなくジグザグに薄い踏み跡らしきものが 残っている。伊勢と大和を結ぶ間道があったのかもしれない。この溝からゆっくり登り返 すと1394mピークに立つ。ここで道は左へ折れる。桧塚奥峰の姿も木々の間から間近 に捕らえられるようになる。
桧塚奥峰の斜面が見えてきた。Ca1420m、三重県の最高峰だ。明神平から来れば桧 塚より先に何故”奥峰”と思うかもしれないが、三重県側から見れば桧塚の奥に位置する 山なのだ。”山の名付けに劣勢”の大和側からすれば”千秋峰”と呼ぶ方がすっきりする かもしれない。(笑) その奥峰の最後の登り。ヒメザサの中の踏み跡を辿れば、左斜め前には木梶山や高見山。 背後には後にしてきた明神岳や前山が徐々に顔をもたげて来る。その横、水無山、国見山 が存外ピラミダルだ。
んだ白い岩屑の転がる舳先に出れば...。来て良かったと思う瞬間である。ライオンが 寝そべっているような形で桧塚が蟠っている。やや黄色みを帯びた笹原が毛皮。山腹は茶 色や黄色、紅色のグラデーション。ちょうどいい日に来たもんだ。 先着者は5名ほどの壮年パーティと中年ご夫婦のパーティ。ご夫婦は松阪から来られた とのことで、これから明神平に向かうという。こちらとは逆コース。お別れして桧塚に向 かう。
桧塚奥峰と桧塚との間の稜線は何時来ても気持ちいい。ヒメザサが繁るなだらかな稜線 に踏み跡が一筋二筋。抜けるような青空の下、澄んだ空気に心も洗われる感じがする。 桧塚の山頂はブナなどの雑木に囲まれた狭い笹原。綺麗な三等三角点がある。しかし展 望は奥峰ほどではない。従って登山者も少なく、やってきてもそそくさと奥峰に引き返す。 でも笹原に座って一息つくと風もなくポカポカと暖かい。ほんとに寝入ってしまいたくな るなあ。(^^;
やおら立ち上がって戻ろうとすると、山頂の東側へもテープがあって細い踏み跡がある。 少し辿ると地形図どおりにすぐ急斜面になるが尾根を辿っていけるようだ。後で調べると 千秋林道が台風で通行不可となった際、その代替ルートとして整備されたらしく、121 4mピークには私製標識が、ヌタハラ林道の登山口には登山届の箱も置かれているという。 さて、笹原のプロムナードを楽しみながら、昼食場所を探していたら何時の間にやら、 奥塚まで戻ってきてしまった。混んでいるだろうと敬遠したかったのだが、やっぱりここ が最高なのだった。(^^; 幸い、標識の架かった白い枯れ木の斜め下に空きがあったので 陣取る。ストーブを出し、水を沸かしながら聞くともなく聞いていると、三重県からの登 山者が多いようだ。やはり三重県の最高峰というネームバリューの成せる業かなあ。(笑) 山頂北側の大展望を楽しみながらのラーメンは美味い。木屋谷を隔てて今年の初春に登 った木梶山の尾根、高見山から三峰山、修験業山、栗の木岳、局ヶ岳への山並み。更に奥 には住塚山、兜岳、鎧岳、古光山や倶留尊山、大洞山に尼ヶ岳と連なる室生から曽爾にか けての山々、更に更に、風力発電の青山高原までうっすらと眺められる。右に頭を巡らせ ば迷岳、白倉山、古が丸山だ。光線の関係で複雑な襞まで一目瞭然である。南東には池小 屋山に連なる台高山脈主稜。ギザギザと大普賢岳、弥山などの大峰山脈。ざっとあげても これだけの山名が上がる。まことに見飽きない風景だ。 ところでここ奥峰に良く似た笹原は谷を挟んで南側にもある。うっすらと獣道も見えて 手が届けばナデナデしたい感じがするが、あれがヒキウス平だろうか。あそこも歩けば別 天地だろう。 |
桧塚奥峰より北方の大展望を望む |
後ろ髪を引かれる思いだけれどそろそろ戻ろう。やや傾いた日の光を受けながら、やっ ぱり千石平には気付かず、やっぱり明神岳への最後の登りは予想通りきつかった。(笑) 少しでも負荷をかけないように斜めにステップを切りながら登る。フーッ。 明神平ではやっぱり東屋で小休止。そうしてやっぱりカロリーメイトを一齧り。 「おっ?」 見れば水無山の斜面を降りてくる団体。こりゃうるさくなりそう。撤収!お先に失礼しよ う。(笑) 明神平から下っていると、大きなザックを背負って登ってくるパーティにちょくちょく 出くわす。もう既に3張りのテントが張られていたが、この分では10張りは下らないこ とになろう。明日も好天というし、最高の幕営コンディションになる違いない。 何とか今回は濡れた岩に滑りもせず下山してくると、ご苦労様な事に金網張りはまだ続 いていて、手持ち無沙汰の作業員のお兄さんが迂回路を示す。指し示す先のコンクリート の法面の上には、なんとコンクリの作業道があったのだった。フーンこうなっていたのか。 妙に感心。 下りは早い。午後三時過ぎ、1時間位で駐車地到着。歩いている間、腰に特に違和感も ない。じっと同じ姿勢を続けるのが良くないみたい。これからもせいぜい歩くかあ。快晴 に恵まれた台高での錦秋の文化の日の一日。天気に、季節に感謝だ。
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