春立ちぬ五峰山界隈
 
平成19年 2月 6日(火)
【天候】晴れ
【同行】単独
ようやく姿を現した角尾山


 立春の週末は急な野暮用が出来て山へは行けず。げにストレス溜まるわい。(笑) そ
こで、その時に行こうと思っていた五峰山(ごぶさん)へ、天気もいいので有休を取って
行ってきた。ポカポカ陽気に低山なのに汗だく。それでも静かな里山の魅力は捨て難いも
のがあるのでした。

 中国道の滝野社ICで降り、まずは名刹光明寺を目指す。光明寺は所謂、観応の擾乱で
足利尊氏と直義の兄弟が争った光明寺合戦で有名。また新西国三十三ヶ所の札所でもあり、
今尚、塔中を幾つも抱える大きな寺である。その寺域を示す石柱横の金剛池のほとりに駐
車場がある。

 当初は光明寺の駐車場から登るつもりだったけれど、その途中で「扇山コース」と書か
れたオフィシャルの道標を見つけ、折角なのでここから登る事にしたのだけれど、これが
曲者であった。ササに隠れた踏み跡を辿るとそこは新しく建設された車道の擁壁の下。し
かも横の民家の人だろう、踏み跡にイチジクの苗木まで植えてある。挙句に車道の柵を越
えなければならない羽目に。だが何のことはない。さっきの車道の高架を潜れば階段があ
って、そこから巡視路に取り付けるのだった。どうも車道の建設でコースが分断された様
子。早急に道標は設置し直すべきでしょう。(笑)

扇山コース入口。実際のコースは
高架を潜った向こう側です

 さて、正規コースに戻って登り始めるとすぐに高圧鉄塔。いい展望にもかかわらず春霞
が白く薄いベールを垂らし、視界が延びない。10分もえっちらおっちら登れば少し大き
な岩が現れた。良く見れば錆びて赤茶けた鎖が付けられている。たぬきさんが探したとい
う行場の岩か?『東の覗』かな?それにしては可愛い岩で高さは3mも無かろう。ちょこ
っと巻けばすぐにその上に立つことが出来る。でもそこからの展望はなかなかのものであ
る。色々な生活音も上がってくる。そんな中に電化製品回収車のスピーカー。「中古バイ
ク回収〜」ていうのはよく耳にするが、「中古トラクター」というのは田園ならではであ
りましょう。(笑)

 大岩を過ぎるとトラバース道で、岩に彫りこまれた「山121」の標識などがある。や
がて現れた分岐では左に目立つテープがあるのでそちらに進めば、斜面を10m程度、ト
ラバースして直登する関電巡視路に出合う。そのまま登れば二つ目の高圧鉄塔(加美町
2)だ。

 鉄塔下は十字路になっている。コンパスで確認し西へ向かう。コンクリ柱石が対で立て
られている。常緑照葉樹でやや薄暗い部分を抜けて、低いササが生える小台地に二等三角
点はある。西宮労山などのプレートが2枚。展望無しの地味な山頂である。五峰山は宿尾
(ふとお)・明星が辻・経(きょう)の尾・大岩・弥木揚(やきあがり)の五つの峰から
なるというが、どれがどれだか解らない。しかも三角点のある峰は「扇山」といい、五峰
山の最高点でもないからややこしい。なんでここに二等がと思うくらいなのだが、まあ、
それは置いておこう。
ササに囲まれた五峰山三角点

 保護石で囲まれた三角点にタッチして東の高圧鉄塔に戻り、今度は北へと進路をとる。
少し下ると伐採地に飛び出した。谷を隔てて光明寺のある峰や北西に角尾山方面らしきピ
ラミダルな姿が望める。すると梵鐘の音がゴォーン。空気を小刻みに振るわせる。

 どこからかサクッサクッと森を手入れするような音が聞こえてくる。山仕事でもされて
いる人がいるんだろうか。道はグーンと谷の斜面に落ち込み、関電の名物プラ階段も落ち
葉に隠れて分からぬくらい。水の涸れた谷から今度はきつい登り返し。さっきのサクッサ
クッという音が大分近づいてきて、上から聞こえてくる。登り詰めるとそこは光明寺の裏
参道。音の正体はおじいさんが熊手を持って道を清めているのだった。

 墨がかすれた古い看板には『かわらけ投場』とある。現在のかわらけ投場は本堂の東側
の方にあるので、ここは古い投場なのだろうか。巡視路は参道を横切って上に見える鉄塔
に延びて行き、丁度ここは十字路である。光明寺の本堂裏の光明寺合戦の本陣跡から尾根
を西にとれば、ここで合流するとは後で知ることとなる。おじいさんとしばし話をして、
西へ向かう。

 林道ほどもあるいい道。まもなく現れた三叉路には『三角点』と書かれた道標もあって、
何もしんどいめをして谷を昇降せずとも、五峰山の三角点から西に向かっていた踏み跡を
辿ればここに出られたようだ。後の祭り。でもまあええかぁ。(笑)

 道はほとんど水平で山腹に平行して付けられている。どんどん進めば鞍部に出て、ここ
は変形の十字路だ。

高倉尾根の取付きの峠。角尾山へは矢印方向

 西へ進めば岡崎方面、東は光明寺地区へ出る昔は良く歩かれた道のようだが、光明寺地
区への道は今ではほとんど廃道のようである。角尾山へは正面のササの茂る狭い尾根が取
り付きで、これが高倉尾根の始まりに違いない。やっと山道らしくなる。(^^; 

 最初はササ混じりの小道だが次第に岩がちの楽しい道になる。その分、地味が痩せてい
るのだろう、杜松や赤松が多い。コシダもそこかしこに繁茂している。マツタケ山の印だ
ろうか、所々に立つ黄色いビニールの旗を付けた細い支柱が目障りだ。そこを辿っている
と、「ピーヒョロ、ピーヒョロ」。見上げればやたらトンビが多い。その黒い影が目前の
地面をさっと横切るのが分かるほど。変な闖入者に驚いているのかも...。

高倉尾根。岩場もありまるで日本庭園だ

ジャンクションピーク付近から高倉尾根
左奥が五峰山

 272m標高点ピークを過ぎる辺りからが高倉尾根の核心部だろう。遠くから見れば、
松を適度に配した日本庭園の趣き。岩尾根が目立ってきて、所々トラロープも準備されて
いるけれど、それほど危険な箇所はない。こんな調子で2、3の無名ピークを越える。

 ミツバツツジの枝が張り出して少し歩き難い部分もあるけれど、平坦なのでどんどん歩
が進んで見る見る内に赤白鉄塔が近づいてくる。岩がちの斜面を登り詰めると、そこは所
謂ジャンクションピークで、案内標識が立っている。東へは引尾山を経て八王子池方面の
尾根、南は裏参道へ、すなわち今歩いてきた高倉尾根だ。角尾山への案内は無いが、西へ
も明快な道が続いている。しかもジャンクションピークからは途端に道が広くなり、尾根
上の露岩からは鉄塔が少し煩いが、歩いてきた高倉尾根や五峰山などが指呼に眺められる。
そうして小ピークの北側を巻いて、ロープを掴んで再び尾根上を進む内に、左からいい道
が上がってくるのに気づく。岡崎町方面から上がってくる道であろう。山頂まで500m
の標識も現れる。角尾山のメインルートはこちらなのかもしれない。やがて、「あと20
0m」の標識を見て最後の登りを喘ぐと、露岩の埋まる角尾山の山頂にたどり着く。

角尾山山頂

 明らかに人為的に積まれた石垣があり、それを越えた岩の間に三等三角点と傍の金属製
のポストのような箱には登山ノートが入れられている。その横の岩の上に立つ。なるほど
360度のパノラマである。どちらを向いても遮るものが無い。視界がクリアなら播但の
山々のみならず、北摂の山々や瀬戸内海まで望めるはずが、残念ながら春を思わせる陽気
の所為で霞んで遠くがはっきりしない。それでも数曽寺山塊の大坂山や金城山、三草山や
西脇市街、直下を流れる野間川の流れや、車道を走るミニチュアのような車が眺められて
眺めを独り占めできるのだから楽しい。とても350m足らずの低山とは思えない。コー
ヒーの湯を沸かしながら堪能する。

角尾山から北東側。遠くに数曽寺山塊が霞む

 食事を済ませたならジャンクションピークへ戻る。この間際まで下山路をどう採るかま
だ決めかねていた。東にはこんもりした引尾山がおいでおいでをしている。それに惹かれ
て八王子池へ降りてしまえば長い車道歩きがいやだし、さりとてこのまま行かぬのもなあ
といった具合。幸い、現地点と引尾山は間にアップダウンはあるものの、標高差はほとん
どない。そこで引尾山までピストンしてから高倉尾根を戻り、光明寺を散策して下山する
のも良いかと思案する。そうと決まれば早速行ってみよう。すぐに赤白鉄塔直下だ。播磨
線bP48。どこかで見たような。そうだ、数曽寺山塊を横切っている高圧線である。そ
うだったのか!(笑) 

 道は関電の巡視道だけに素晴らしい。よく手入れされている。鞍部へ下ったり登り返し
たりを二度ほど繰り返せば次の鉄塔。ここもなかなか眺めが良く、上下激しい高倉尾根や
なだらかな台形状の五峰山が指呼の内。そしてここからもう一度登り返せば巡視路の横に
ひょっこりと四等三角点標石がある。ただし展望は松や杜松に囲まれて全く無い。

 引尾山は光明寺合戦で足利尊氏が本陣を置いた場所といわれるが、そんな名誉ある?山
にもかかわらず、目立たずプレート類も一切無く簡素だ。でもこんな山もいい。山頂風景
をデジカメに納めて、汗を拭き、お茶で一息ついたら引き返そう。

こんもりとした引尾山

 行きには見当もつかなかった山々も歩いてみると、あれが角尾山、あれは引尾山と分か
って面白い。Ca290mの小ピークからは、引尾山の南に八王子池と堰堤も見え、272
mピークまで戻ってくるとまたまた光明寺の梵鐘が響く。こんもりした老杉が茂っている
辺りであるのが遠目にも良く分かる。さらに五峰山の北の伐採地も確認できる。朝にはあ
そこに居たのだと思うと、ほのかに感慨みたいなものも湧いてくる。帰路は基本的に下り
だから早い。いつの間にやら分岐標識のあるほの暗い峠に戻ってきた。

 光明寺の本堂は大正年間に再建されたものだが、堂々とした鎌倉様式の建築。その裏手
に光明寺合戦の直義方の本陣が据えられたとのことで、竹矢来や例の釜の蓋を上から見た
足利氏の紋「二両引き」を浮き出させた矢立も置かれて古戦場の雰囲気をかもし出してい
る。

 本堂に別れを告げてかわらけ投場のある展望台のベンチで一休み。花蔵院など塔頭の間
を歩いて急坂を下れば見晴台を兼ねた駐車場で、後は車道を下るのみである。

 15分くらいで駐車場。「ん?」。車に戻って装備を片付けていた時だ。ない。手帳が。
「あれっ?さては」。光明寺の「かわらけ投場」のベンチでおやつの大福餅を頬張って休
憩した時、置き忘れたに違いない。早速、駐車場まで車で戻り、心臓破りの坂を登って「
かわらけ投場」へ。案の定、ベンチに手帳がポツンと置かれているのに安心する。「ああ、
しんど」。

 まだ2月だというのに春霞のぽかぽか陽気。誰にも会わない静かな里山巡り。それにし
ては三角点三つゲット。おいしい山歩きでした。


【タイムチャート】
8:30自宅発
9:50〜10:00金剛池駐車場(駐車地)
10:10高圧鉄塔
10:25〜10:30高圧鉄塔(加美町bQ)
10:32〜10:35五峰山(258.4m 二等三角点『光明寺』)
10:37高圧鉄塔(加美町bQ)
10:50〜10:51旧かわらけ投場(裏参道出合)
11:00奥ノ谷コース分岐
11:10〜11:13272m標高点ピーク
11:32奥ノ谷・光明寺地区コース分岐
11:50〜12:35角尾山(343.8m 三等三角点『熊ノ尾』)
12:51奥ノ谷・光明寺地区コース分岐
13:02〜13:04高圧鉄塔(播磨線bP49)
13:08〜13:11引尾山(279.2m 四等三角点『下新田』)
13:27奥ノ谷・光明寺地区コース分岐
13:39〜13:41Ca290mピーク
13:51〜13:52272m標高点ピーク
13:59奥ノ谷コース分岐
14:09旧かわらけ投場
14:12〜14:35光明寺
14:50金剛池駐車場(駐車地)



五峰山のデータ
【所在地】兵庫県加東市
【標高】258.4m(二等三角点)
【備考】
加東市滝野町の北側に台形状を呈して盛上がる山塊の一峰
です。播磨高野と呼ばれる新西国札所の光明寺があり、又
街道を扼する位置にある為、しばしば合戦の舞台となり、
なかでも観応の擾乱における足利尊氏と直義の光明寺合戦
は有名です。尚、南の麓は播磨中央公園、西の麓に滝野温
泉『ぽかぽ』があります。
角尾山のデータ
【所在地】兵庫県西脇市
【標高】343.8m(三等三角点)
【備考】 五峰山の北に位置する独立峰です。山頂には人為的な積み
石があり、光明寺の奥の院か砦が築かれていたような雰囲
気があります。また、潅木が伐採されていて、360度の
大展望が広がります。
【参考】
2.5万図『西脇』


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