天ヶ岳〜北山の代表的コースを歩く
 
平成19年 5月 3日(木)
【天候】晴れ一時にわか雨
【同行】別掲
雨上がりの靄がかる薬王坂。祠には石仏


 ちょくちょくと山歩きし始めてかれこれ10年位になるだろうか。でもほとんど歩いた
事のないのが狭義の意味での京都北山。というのは杉の植林地帯というイメージがどうし
ても先入観としてあるからだ。でも今回案内していただいて眼からウロコ。認識新た。北
山を歩く人はここから始めるといわれる天ヶ岳は雑木のなかなかいい山でありました。

 集合は9:15、京都地下鉄の国際会館駅のバスターミナル。豊中から電車で北山とい
うと一寸遠く感じるが、7:50の阪急電車に乗れば間に合うので、いつもよりよっぽど
楽なのだ。(笑)

 久しぶりの阪急京都線。烏丸で降りて地下鉄に乗換え、終点が国際会館。地上に出ると
バス乗り場は夥しいハイカーの行列が。「こりゃあ、凄いわ」しかもよく見ればみんな大
原行のバス乗り場前だ。そんな中にあかげらさんの顔があり、初対面のひいさんと挨拶。
しばらくするとかなぶんさん、なのさんと”ポレポレ”のメンバが集まってくる。

 超満員の客を乗せてバスは高野川に沿って鯖街道を遡る。これって朽木へ行く際によく
お世話になる国道だよなあ。そう考えるとなんだか親近感が湧いてくる。本来なら30分
位だろうが、世の中GWの真っ只中。大原近くで渋滞に遭遇したおかげで終点の小出石公
民館まで50分を立ちっぱなし。山よりしんどいアプローチである。(^^; おまけに本来
は一つ手前の小出石バス停で降りればよいものを、誰もボタンを押さぬものだからバスは
素通り。もっとも、狭い一車線の道に大きなバスが停車して降車に時間をかけるのもと運
転手さんも降車案内を端折ったようだ。(笑)
小出石バス停角には石仏を祀った祠
木の燈籠が京都らしい

 2、300m戻ってお地蔵さんの祠のある辻を折れる。こちらはR477。花背へ抜け
る国道である。山々は明るい緑。ふもと近くは見事な北山杉だ。道端の鈴なりの白い花は
ハクサンハタザオらしい。国道ながらも車も少なく道は一ノ瀬橋、二ノ瀬橋を渡って左に
カーブしていく。すると右の植林の中に天ヶ森の登山口がある。思い出した。1月だった
か。そうそう、廃村八丁へのアプローチだった。久多峠越の凍結が見込まれたのでこちら
を通ったのだった。その天ヶ森の取付きから凡そ300m。左に下りる林道風の道が天ヶ
岳のアプローチ道。真心さんはここでお待ち。テクテク歩いているのがバスから見えたの
だが、我々には気付かなかったという。

 川原ではバーべキューの準備を始める家族連れがいる。橋を渡った植林の下であらため
て準備。バスからこっち、相前後していたパーティも三々五々通過していく。我々もその
後を追う。

シャクナゲ尾根の登り口

 天ヶ岳、『大原の里十名山』の七番目なのだそうだ。通称シャクナゲ尾根の取付きに、
賑やかに道標がある。地形図を眺めると、尾根に出るまでは急斜面。取付きがほぼ標高3
00mであるからほぼ200mを一気に登らねばならない。でも昔ながらの道は旨く斜度
を殺してつづら折れにつけられている。そしてその良く歩かれていること。きっちりと踏
み固められている。順調に高度を上げるに従って植林も雑木林になり、遠くでツツドリの
鳴き声。艶々した葉っぱのイワカガミも現れて、いい雰囲気になってきた。
「いいねえ、いいねえ」
思わず口に出る言葉だ。

 急斜面に少し我慢をして最初に現れるピークが490m標高点。そろそろ目当てのシャ
クナゲが現れ始めてもいい頃だ。と、眺めればあるある。革質の深緑の葉っぱ。葉裏に褐
色の軟毛がなく、大峰とは違ってホンシャクナゲのようだ。でも何か一つ物足りない。そ
う、花が無い。あれっ?と思っていると、ようやく姿を現した花は文字通りチラホラとい
う感じでしかない。去年はこんなものではなかったとあかげらさんが嘆く事しきり。残念
ながら今年は裏作のようである。しかも時季を少し逸した感のある花姿だ。こんな痩せた
土地に毎年花を咲かせるのはやはり無理がある。そして時季をピタリと合わせるのも至難
の業だ。毎日監視しているわけにも行かずこればかりはどうにもならない。今日は花があ
るだけ良しとしようではないか。(笑) そのシャクナゲも植林された桧か杉の幼木の日当
たりを良くする為か、かなりの大物も伐採され放置されていて少しばかり痛々しい。

やや時季を逸していたシャクナゲ

 見晴らしのいい所で休憩しようと物色する内に関電の高圧鉄塔が立つ場所へ。南側が伐
採されて開けていて、シャクナゲ尾根の登山口で左を流れていた谷川の源流が深い谷を刻
み、その向こうに焼杉山が聳えている。真心さん曰く「植林ばかりで余り面白みの無い山」
なんだそうだ。鉄塔には山城北線bX0の標識があり、あの高圧線にぶら下がれば古知谷
まで一直線だなあ、などと馬鹿な事が頭をよぎる。ここも10名以上の団体さんが昼食中
ということで先へ進む。

 528m標高点を過ぎ、関電巡視路の火の用心標識の分岐を後にする。顕著な尾根は徐
々に高さを増す。シャクナゲ尾根はまだまだ続き、チラホラ咲きの薄ピンクの花は尾根上
よりもヒトの入らない斜面に多い。そうしてようやく604mジャンクションピーク。と
いっても道は頂上を通らず左(南)を巻いて西側に分岐があり、竜谷大のYH倶楽部の道
標が立つ。南へ行けば江文峠経由で大原。何となくそちらへ引き込まれそうな三叉路なの
は百井方面にはカギ状に戻る感じとなるからだろう。そして右に折れてしばらく行った小
尾根に乗る辺りで小休止とした。

 その先はミツバツツジが咲く岩がちな尾根道である。虎ロープが用意してある部分もあ
るが、その時、上の先行者から声がかかる。なんと石の上にマムシのお出まし。特徴ある
マダラの紋は体長40p位か鎌首もたげて動こうともしない。こんな乾いた所で遭遇する
とは。

 岩尾根のしばしの急登を終えると、後は柔らかい新緑のトラバース道。時折、北が開け
て山並みが見える。これが北山の特徴なのか、目立つ高みは無い。ただアンテナ施設を戴
く山だけが少し際立った感じである。何という山だろう?

柔らかい若葉。天ヶ岳山頂手前にて

 もう一つ。北山は地形に特徴がないことが特徴とでもいうのか、逆説的に云って地形が
複雑。天ヶ岳の山頂近くもそう。直登すればいいようなものを、山頂から一旦遠ざかる感
じで百井の分岐で別れ、左に尾根を乗っ越して小さな鞍部に下り、更に小尾根上を半円を
描くように山頂にやってくるのだ。丁度、アルファベッドの”C”を描く感じである。こ
こまで思いの外長かった。北斜面が杉林、南斜面が雑木林の山頂ではもう1時近いのにま
だ数組のパーティが食事中。空きを見つけて我々も少し遅い昼食。涼風が駆け抜けて気持
ちがいい。
賑やかな天ヶ岳山頂

 後半は道標に従って南尾根を鞍馬へ下るコース。それ程急な所もなく楽な下山路だ。し
かし、それだけ距離は長く単調と思う向きもあるかもしれない。そのうちに日が翳りだし
た。昼食時から雲が出てきたとは思っていたけれど、それがまさか降り出すとは。622
m標高点ピークの東を巻く頃、最初はポツッポツッとあるかなしかだった雨粒は、突然の
雷鳴の後は勢いを増し、三又岳辺りではやや本格的となる。直ぐ近くで雷鳴も聞こえ始め、
杉林枝から水滴が滴り始めたので、もう我慢ならず雨具の用意である。

 三又岳は何処がピークなの?道標の柱に記述が無ければ、全く誰も気付かないであろう。
静原へ抜けるT字路があるはずなのでつけられた名前だろうが、それにも気付かず。むし
ろ、戸谷峰の北の静原へのT字路が明瞭だ。その戸谷峰も目立たぬ小さなピークである。

戸谷峰

 雨はようやく上がって、谷沿いには霧が湧き始めてきた。経塚を左に見て薬王坂への最
後の下りはやや急。雨上がりなので滑らぬように注意する。

 薬王坂は最澄が鞍馬で彫った薬王如来を比叡山に持ち帰る時、ここで薬王が出現したこ
とに因むなどと諸説があるそうだが、いずれにしても鞍馬と静原を結ぶ古道。今は東海自
然歩道に指定されているが、いにしえには幾多の僧や雅人が歩いたに違いない。かの牛若
丸も通ったのだろうねえ。(^_-)

 雨上がり。白い靄が流れる様は古道とあいまって幽玄の世界。戸谷峰から尾根を降りて
いる時、谷筋に湧いていた霧の漂う高さに下ってきたみたいだ。大きなモミの下の岩には
古い祠。うーむ、本当にタイムスリップしたような錯覚を覚える幻想的な雰囲気。これも
京都の持つ良さの一つでしょう。

薬王坂は古道の雰囲気がプンプン

 薬王坂の出口には八幡社かなんぞの小さい社があり、直ぐ目の前はやや雨で増水した鞍
馬川が流れ少年達が魚釣りをしている。その川を渡れば鞍馬街道の街道筋だ。観光客がた
むろする柴漬屋や土産物屋が並ぶ道を南へ向かう。見上げれば雨に洗われた新緑が輝いて
いる。

北山の足”叡電”これは新車『きらら』
座席が窓に向いている

 鞍馬寺の前を過ぎて、大きな天狗が置かれた小さな広場の奥にあるのが叡電鞍馬駅。大
きな民家かと見間違うばかりの建物だが、古い電車の先頭部と車輪が置かれているので駅
と分かる。

 叡電は恥ずかしながらこの歳になって初めて乗る電車。(^^; 昔、京福、今、京阪の子
会社。駅員さん曰く先発の電車は座席がもう埋まっていて立つ覚悟なら乗って下さいと。
出町柳までは30分かかるそうな。次発は15分後に出るらしいので、ならば待つことに
しよう。次発は残念ながら次の電車は座席が窓に向いた新車(パノラミック電車『きらら』
ではなかった。実は立つ覚悟で乗れば『きらら』だったのだが。

 結構満員の客を乗せて、沿道の青葉に染まりつつ電車は南へ向かう。たまに電車もいい
ものだ。出町柳で京阪に乗りかえる。京阪四条駅で京橋へ向かう面々と別れ、更に阪急十
三駅で他のメンバともお別れし、心地よい疲れを残して家路に着く。北山への認識を新た
にさせてくれた今日の山歩き。ポレポレの会の皆さん有難うございました。


■同行 ポレポレの会の皆さん(あかげらさん、かなぶんさん、なのさん、ひいさん、
    真心職人さん)


【タイムチャート】
7:30自宅発
9:05〜9:20京都地下鉄国際会館駅バス停(集合地)
10:10小出石公民館前BS
10:17小出石BS
10:33〜10:40天ヶ岳登山口
11:07〜11:11490mピーク
11:40528mピーク
11:57高圧鉄塔(山城北線 bX0)
12:05604mジャンクションピーク
12:15〜12:20小休止
12:45百井分岐
12:50〜13:40天ヶ岳(788m)
14:07622ピーク
14:16三又岳(Ca580m)
14:46戸谷峰(525.0m 三等三角点)
15:13437mピーク
15:23〜15:25薬王坂
15:40叡電鞍馬駅


 天ヶ岳のデータ
【所在地】京都市左京区
【標高】788m
【備考】 京都北山を代表する山の一つで、交通の便も比較的良く
北山入門のトレッカーが最初に踏む山です。北山には珍
しく雑木の山で、とりわけ東尾根はホンシャクナゲが多
く、春にはピンクに染まります。鞍馬や小出石町からが
代表的なコースです。
【参考】
2.5万図『大原』



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