人形浄瑠璃のこと
 
平成18年10月22日(日)
天候:晴れ時々曇り



 大阪府能勢町に浄るりシアターという施設がある。町制50周年ということで、今年は
人形芝居のサミット&フェスティバルが開催されるとの事。しかも日曜に開催されるフェ
スティバルは、なんと無料だという。それを聞き込んだ山仲間3人と出かけることにした。

 浄るりシアターは能勢町の役場に隣接する施設。宿野だから毎年登る剣尾山の南西側の
麓になる。開場時間に合わせて9時45分頃に会場に着いたのだが、駐車場にはもう多く
の車が置かれている。徳島県勝浦町から来たバスもあって、これは出演者の車のようであ
る。

 実は人形浄瑠璃。いつだったか学校に行っている時分に、一度、鑑賞会の催しがあって
見たような見なかったような。非常に記憶が曖昧糢糊としている。だから、今回は少し興
味津々。以前ならこんな辛気臭いもの(浄瑠璃関係の人、申し訳なし)と思っていたもの
だが、これもそれなりに齢を重ねたということか。

 浄るりシアターは立派な建物(冒頭の画像)で、500人はゆったり見物できる劇場で
ある。ほぼかぶりつきに席を取る。やがて派手な縞模様の幕が開き、司会の笑福亭鶴笑が
袴姿で現れて、まず笑いを取って進行させていく。今日は9団体が出演。淡路の三原、丹
波の和知、徳島、讃岐、佐渡、大阪、亀岡など、各地から集まった団体が競演する。「と
ざーい、とーざい」の掛け声の後、嫋々とした太棹の音色。そうして人形の艶っぽいこと。
最近、歌麿なんかの浮世絵にも、何ともいえない艶っぽさを感じるのだが、隠すエロティ
シズムの凄さ、これはどぎついだけの現代のそれなどの比ではないと思われるのだが如何
だろうか。

 事前に配られたアンケートには、どれが一番良かったかという質問もあったが、いずれ
も甲乙つけがたい熱演であった。なかでも大阪の乙女座は途中で鳴り物のテープが中断し
た為に最初からやり直すというハプニングまで。そして、とりわけ目立ったのは淡路の三
原中学校の郷土部が演じる、戎舞と生写朝顔話の大井川の段。よく通る澄んだ声でとても
数年しか訓練していないとは思えぬ美声であった。




 しかしながら、人形浄瑠璃といっても千差万別なのには少々驚いた次第。人形浄瑠璃と
いえば文楽人形を思い浮かべ、それのみが人形浄瑠璃なのだと思いがちだが、そうではな
い。三人で操作するものもあれば、一人のものもあり、山車の上で演じる小さなものもあ
れば、ほとんど頭(かしら)のみのものもある。いずれも元々は、収穫を終え、一息つい
た農民たちの娯楽から発祥したに違いない。従って、お里・澤市しかり、山椒大夫しかり
で涙物というか本来分かりやすいストーリーなのだ。そして共感し、ともに悲しみ怒るこ
とで、ひと時、浮世の憂さを晴らしたのであろう。この辺りは農村歌舞伎と相通ずるもの
があるのだろう。出演後のインタビューの中では一様に高齢化と後継者不足を嘆いておら
れたが、自治体も支援して素朴な民俗芸能を残してもらいたいものである。

 短いの経験だったけれど、人形浄瑠璃、なかなか面白いものだと感じた次第。また来年
も機会があれば覗いてみたい、そんなことを思ったフェステバルの半日だった。



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