和気アルプス小春日和
 
平成18年 1月15日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】別掲
烏帽子岩への尾根道から神ノ上山


 厳しい寒さが一段落。土曜からの久々の本格的な雨も止んで、好天が予想される日曜日。
今年初の遠征?は青春18キップを使って、岡山東部の和気アルプスである。

 新大阪駅へ午前6時集合というわけで、まだ明けやらぬ午前4時半起床。コンビニへも
寄りたいので5時半に家を出る。夜明けまでまだ1時間半余もあって、まだ真っ暗だ。地
下鉄の同じ電車にもぐさんも水谷さんも乗っていて、予定通り6:21発の快速に乗車。
大阪駅、三宮駅で幸さん、のりかさん、なかいさんと滞りなく全員集合。ワイワイガヤガ
ヤ、同席の乗客の方にはさぞかしご迷惑だったことであろう。この場を借りて陳謝。って、
誰も読まないか...。(^_^ゝ

 姫路乗換えの後、和気駅には8:50に到着。駅員1名のローカル駅だ。駅前にはタク
シーがなんと6台も客待ちしている。でも、この電車から降りた人で乗る人は見当たらず、
運転手さん四方山話に興じている。駅前に一本、道はあるが駅前広場なんていう粋なもの
はなく、目の前の喫茶店の『茶店』というそのものズバリのベタな名前が目を引くのみ。
ここは大判焼まで売っているのだった。
金剛川に架かる富士見橋から
和気町のシンボル和気富士

最上稲荷の参道を兼ねる和気富士登山口

 50mも行けば金剛川に架かる橋に出る。向かいには富士というには余りに可愛らしい
和気富士。橋はその名も富士見橋という。和気富士の西の麓沿いに進むと、まもなく右に
路地が延び、「和気富士健康つくりの路」なる道標が角に立つ。最上稲荷だろうか、赤い
鳥居が二つ三つ。すぐに小さな社。傍らには和気アルプスの案内図。山頂まで500mと
ある。その案内図横から階段道が登っていく。昨夜来、かなり雨が降ったと思われるのだ
が、土壌が流紋岩質なので水はけが良いのか、湿っているなという程度である。山腹を巻
きながらどんどん登れば15分ほどで山頂へ出る。戦国期、ここには城が置かれていたそ
うだが、今は四等三角点が置かれ、ソファーに似た窪みのある岩やテレビの中継局のアン
テナが目立つ。展望は雑木のおかげでそれほど良くはない。むしろ、和気富士から竜王山
へのハイキング道を少し下った烏帽子岩と呼ばれる露岩の上が素晴らしい。眼下にボコッ
と飛び出した権現岩。和気の町が南流してくる吉井川と金剛川の出合に発達した町だとい
うことが分かる。川沿いにはJR山陽本線。ガタガタ車輪の音は今しも走っていく三両編
成の電車のものである。北を望めばこれから歩いていく神ノ上山や竜王山など和気アルプ
スの核心部の山並みが広がっている。それにしても露岩が至る所に目立つ低いながら荒々
しい山々である。それぞれに名前がついているらしく、それも穂高、槍、涸沢にザイテン
グラード、チンネ、スラブなど仰々しい名前がつけられているのだ。(笑) 命名した人の
洒落心が楽しい。

和気富士の北の岩から和気の町

 シーズンはマツタケ山で立入禁止だとか。道理でアカマツが目立つ。コシダの茂る中に
ミツバツツジやヤマツツジなどのツツジ類も多く、4月頃は赤紫に染まるのが目に浮かぶ
ようだ。因みに和気町の町花はツツジだそうな。

 明るい疎林の中を進む。薪が積まれ、斜面に整然と列を成すレンガが目立つのは観音山。
8月1日の夜、『和』の火文字が山腹に浮かび上がるそうで、レンガはその火床らしい。
その斜面からの展望もよく、交通公園の小さなサーキットと和気ドームが眼下に良く目立
つ。そうして馬の背のような岩を登ると小さなピーク。なるほど小さなプレートにある名
前も『岩山』だ。

観音山の火床。『和』の”口”の部分の
上の部分に当たります。左は吉井川

 扁平な板状に割れた石がザクザクと重なる感じの稜線にきわめて明快な道がついている。
清々しく明るいのがいい。周囲のマツは何れも細く、高さもせいぜい2mくらいか。右方
向の木立を透かせて穂高山のバットレス。なかなか凄い。其処だけ写真で切り取れば、本
物のアルプスといってもいいほど。もっとも生えている木々は無視してだが・・・。(^^;

 進行方向を北から東に変えて『前の峰』、『間の峰』と細い尾根歩き。細かいアップダ
ウンがあって、結構歩き応えがある。次第に大きなドーム状の岩を被った山が近づいてく
る。遠くから見ると坊さんの頭みたいだが、登ってみるとなんと大きな一枚岩。『穂高山』
の前山だそうだ。更に進んで『穂高山』から『涸沢峰』に到る。この涸沢峰から竜王山に
繋がる吊り尾根が素晴らしい。折角なのでこれは行って見ねば。涸沢峰にザックをデポし
て竜王山へピストンすることにする。

涸沢峰。右の吊尾根が竜王山へ繋がる

涸沢峰から眺める竜王山とバットレス

 ネズミサシが目立つ稜線である。20m位下るとあとは暫く細い吊尾根の上の道。険し
いかと思えたが存外、楽である。振り返れば、穂高山から涸沢峰へと続く稜線が見られ、
タオルを振ると、涸沢峰でザックの番をしているのりかさんが反応するのが見える。左手
には文字通り、エメラルド色の宗堂池。竜王山に近づくに従って、再び急登となるが、短
いので喘ぎは少ない。狭い山頂には四等三角点と朽ちかけた小祠があって、竜王山らしく
瀬戸物の白蛇が置かれている。南方向にある明快な踏み跡は、由加神社辺りにでも下って
いくのであろう。デジカメに山頂風景を収めて引き返す。左(西)方向に小竜王ルートが
分岐していたが、これもなかなかよさげな道である。

竜王山への稜線から穂高山(左)と涸沢峰(右)

 涸沢峰に再び戻って神ノ上山を目指す。急傾斜をグーンと下る。最低鞍部にはプレート
が掛けてあって『キレット』と表示されてある。

 ザイテングラード分岐でザイテングラード組とそのまま組の2班に分かれることになっ
た。勿論小生は「そのまま組」である。

 分岐を過ぎると、今までの明るい林とはうって変わってヒサカキやツバキが多い薄暗い
照葉樹林の斜面となる。思えば神ノ上山全体がこんな感じで、植相の変化が面白い。トラ
ロープ箇所を左へ。数分で帰路に利用する鷲ノ巣岩分岐に出る。左へ神ノ上山の山腹を巻
くように進めばザイテングラードからの道が左から合流してくる。だらだらした斜面を登
れば、まもなく木立の向こうが透けて明るくなってきて、あっけなく神の上山である。

 山頂はのっぺりしていて、何の建物か物置のような建物と二等三角点。展望は意外によ
く今まで眺めることが出来なかった北方の風景が広がる。そこはなだらかに波打つ高原状
の牧歌的な風景が展開し、中国山地が隆起準平原の古い地形を形成しているのが分かる。
 その奥遠く、白く雪化粧が霞んでいるのは那岐山らしい。南は和気の金剛川に沿って和
気の町並みを眼下に、熊山を中心とする山塊が屏風のように居並び、その奥に青いのは小
豆島の山並みだろうか。

神ノ上山で昼食。奥に三角点が見える

 数パーティが既に昼食中であったが、割りに広いので南西の部分に空きを見つける。ザ
イテングラード周りの水谷さん達は、まだ到着していないものの、背に腹は変えられず、
お先に失礼して昼食にすることにした。そして、食後のコーヒーを沸かしている頃、よう
やく水谷さんや遅れれてもぐさん、なかいさんが到着である。皆さん、大汗をかいていて、
えらく大変だったらしい。折角登ったのを殆んど吐き出して、一から登り始めたのに等し
いのであったそうだ。きっと、鵜飼谷からザイテングラード経由で登る人が大半で、2グ
ループに分かれた分岐からわざわざ降りてまでザイテングラード経由で登り返す人は珍し
いに違いない。(笑) でも、これで負荷的に少し物足らなかった方には堪能できたそうだ
から結果オーライだったのでは。(笑)

 下山は鷲ノ巣岩経由で山の学校方面へ。鷲ノ巣岩分岐まで戻って今度は直進する。東平
尾根ルートの分岐を過ごし、緩い傾斜を降りて行くと、今度はチンネスラブルートの分岐
に。ここは大人しく鷲ノ巣岩方面へ。するとまた、照葉樹林のほの暗い中からマツ主体の
明るい林に変わった。

 鷲ノ巣岩へは下山路から別れて左へ少し。そして岩上に立つ。古い錆びついたリングが
打ち込まれてある。その先、急激に落ち込む崖はスリル万点。ヒョイと下を覗いてみると、
背筋が何となくこそばゆく、○○が縮み上がるのが分かる。(笑) 左手にチンネスラブル
ート。岩の急斜面尾根だ。なかなかよさげ。と、そこを登る3名ばかりのパーティが目に
入る。
「今度行ってみたいね」
「うん、うん」
鷲ノ巣岩。左の高くなった岩上に
人がいるのだが、わかるかな?

 コシダ、ウラジロシダが茂る尾根を下って左に折れる。尾根を直進する踏み跡があるが
こっちを辿っても面白そうだ。ジグザグ道は深く洗掘されたようになり、周囲の木々が少
しうるさくなるが、右から小さな谷が現れると傾斜も緩みだす。南向きで左右の山肌が風
を防ぐ為に暖かいのか、早くもミツバツツジの赤紫に膨らんだ蕾が一輪。

 左手に木立を透かせて古色蒼然たるアスレチック用具が置かれた広場が見えた。回り込
むように広場に出る。『山の学校』と呼ばれる所らしい。見上げれば峨々たる鷲ノ巣岩や
チンネルートの尾根が白い。しかしまあなんでこんな所に遊具を置いたのか、結構不思議
である。ところでチンネルートの取り付きはどこなのだろう。『山の学校』の横に林道が
あったし、その取付林道を南へ下原集落へ戻った池の横にも、山へ向かう道が数筋あった
が...。後日、和気アルプスの主のFさんのHPを検索したら、やはり山の学校横の林
道を進むようであった。

 享保時代の六地蔵が並ぶ昔ながらの墓地を過ぎると、まもなく下原の集落で和気中学校
の立派な校舎の横へ出てくる。日当たりのいい土手には二、三輪だけれど、はやオオイヌ
ノフグリの青い花が咲いている。季節は着実に移ろっているのだ。

 その中学校をグルッと巻いて、金剛川沿いの車道へ。角の食料品店でのりかさんは地酒
購入、小生は向かいの自販機で無性に飲みたかった缶ビール。
「プファー!、美味い!」

 車道は危ないので川っぺりを歩くことにする。鷲ノ巣岩や竜王山をはじめ、縦走した和
気アルプスの山々の麓。歩いてきた稜線が見えて感慨ひとしおなものがある。由緒あり気
な天台宗の寺院安養寺や由加神社の前を過ぎて、橋を渡れば和気町役場で、街中を散策気
分。立派な民家沿いに流れる、金剛川から引いた用水の中に大きなモクズガニがいたのに
は驚いた。閑谷高校前を横切り、気がつくと栄町商店街。往路に合流して、左すれば和気
駅であった。

 大阪方面行きの電車は40分待ち。のんびり行きましょう。で、こうなれば待ちきれま
せん。ホームで反省会と称して一次会。実情はといえば即ち日本酒の利き酒会。あっとい
う間にさっき買った一升瓶は残り少なくなったのでありました。(笑) それでも物足りな
い面々は大阪駅で二次会と繰り出す。以前、忘年会に使った2時間飲み放題食べ放題の店
で再び気炎を上げたのでした。

 小春日和の1日。「これぞ低山の醍醐味」を味わわせてくれた和気アルプス。今年もい
い山に巡り会えますように。皆さん今年もよろしく。


■同行: 幸さん、なかいさん、のりかさん、水谷さん、もぐさん、(五十音順)


【タイムチャート】
5:30自宅発
6:00〜6:21JR新大阪駅発
8:50〜9:00JR和気駅
9:06和気富士健康つくりの路登山口
9:24〜9:27和気富士(172.8m 四等三角点)
9:42〜9:50烏帽子岩
9:54〜9:57観音山(Ca140m)
10:12岩山(164m)
10:25前の峰
10:29間の峰
10:36〜10:38穂高山(Ca200m)
10:43涸沢峰(Ca210m)
10:53〜10:56竜王山(223.2m 四等三角点)
11:04〜11:08涸沢峰
11:25鵜飼谷分岐
11:32ザイテングラードルート分岐
11:48鷲ノ巣岩分岐
11:50ザイテングラードルート出合
11:52〜13:08神ノ上山(370.3m 二等三角点)
13:15鷲ノ巣岩分岐
13:18東平尾根ルート分岐
13:20チンネスラブルート分岐
13:26〜13:30鷲ノ巣岩
13:49〜13:55山の学校
14:00和気中学校
15:00JR和気駅


神ノ上山(和気アルプス)のデータ
【所在地】岡山県和気郡和気町
【標高】370.3m(二等三角点)
【備考】 岡山県東部、山陽道に広がる低山域、和気アルプスの最
高峰です。和気アルプスは花崗岩と成分的には良く似た
流紋岩でできており、侵食と風化によって、荒々しい風
貌を示しますが、神ノ上山は高原状でなだらかです。地
元の方の尽力で登山道はよく整備され、しかも、選択コ
ースによって、初心者から上級者まで楽しめるので、近
年、人気が出てきました。
【参考】
2.5万図『和気』



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