若杉原生林春再び

平成18年 5月6日(土)
【天候】曇り
【同行】別掲
芽出しが遅れている若杉原生林の入口
昨年の画像と較べてください


 去年の5月5日、初めて訪れた若杉原生林。兵庫県、鳥取県、岡山県にまたがる中国山
地東部の起伏の緩やかな氷ノ山後山那岐山国定公園の中にあって、『森林浴の森100選』
にも選ばれたブナの森だ。去年は新緑が溢れるほどであったのに、今年はやはり春の訪れ
が遅く、いまだ早春から抜け出せていない様子であった。それでも鳴き交わす野鳥の声に
生命の息吹を感じつつ、山菜を少し頂いてのてんぷらは楽しく且つ美味でありました。

 渋滞を懸念して、早めに出発、帰阪しようと午前6時桃山台集合。江坂駅発では2番目
に早い電車に乗る。今年も早いもので夏至までもう1ヶ月半。6時といえば真っ暗だった
のが嘘のように明るい。青空も覗く。何とか天気も持つであろう。定刻6時、2台の車に
分乗して勇躍出発。中国道を西へ、途中、なかいさんをピックアップ後、快調に飛ばして
山崎ICを降り、最寄のファミマで休憩。確か去年もここで小休止だったはず。(笑)

 揖保川沿いに北上。西進して千種川沿いに移り、千種のスキー場の中を道なりに登って
行けば出発地点の峰越峠に出る。荷物を降ろし、小生ともぐさんはここで荷物番。原生林
入口の駐車場へ車をデポしに行ったメンバーを待つ。夏日になるとの予報だったから、今
年初めて半袖の装いでやって来たが、なんのなんの。風が強く予想以上に寒い。青空を期
待していたのに、時折薄日が射す程度で灰色の雲が足早に来たっては過ぎ去っていく。林
道の切通しの斜面を見れば残雪がある。足元には今盛りの土筆。思えばここは標高100
0m。とはいえ、今年は季節の歩みが2週間は遅れているような。

峰越峠の源流探勝ツアーコースの入口

 峰越峠の旧道の東屋横が源流探勝ツアーコースの入口。説明板等はかすれて字が判然と
しないが、コース自体は定期的に整備されている様子で、クマザサが刈り取られている。
ヒノキの植林の下をしばらく急登すると、道は小さくうねるような軽やかなアップダウン
を見せるようになり、右側が雑木林となる。でも芽出しは遅く、ほとんどが芽を膨らませ
たか、新葉をほんの少し展開しかけた程度。その中にあって、ムシカリだけが亀に似た葉
を小さく広げ、タムシバの花の白さが際立つ。やがてアシウスギと灰色がかったブナの幹
が目立ち始めるが、地面はフカフカの絨毯のよう。その中に芽生えたブナの実生を見つけ
る。あちこち頭を巡らせば、そこかしこにあるではないか。水溜りにはヒキガエルの卵塊
もあって、遅いとはいえ、季節は着実な歩みを怠ってはいないようである。

芽を出したブナの実生

 天児屋山の取付きでもある江浪峠の分岐にやってくる。今日は、メインが山菜てんぷら
パーティなので、去年、お地蔵さんを見ていることもあって、敢えて江浪峠に踏み込まず、
先を急ぐことにしたが、この江浪峠は兵庫県、岡山県、鳥取県の3県の境界にあって千種
川の源流域であり、中央分水嶺の中の峠でもある。昔は頻繁に使われたであろう峠越えの
道は、今ではチシマザサのヤブに覆われた廃道と化し、その存在位置に較べて不遇の峠で
ある。一旦開鑿されたものの、地勢や人や物の動きに合わなかったのだろうか。

 さて、道は今までは兵庫県と岡山県の県境尾根だったのが、これから先は岡山県と鳥取
県の県境に変わる。すぐに前回昼食の場であったおおらかな伐採斜面。くらますが大きく
座り、未だに雪を戴いた氷ノ山や扇ノ山が広がるのだが、今一くすみがちなのは天候の所
為ばかりとは云えまい。

 2本ある林道の内、最初の林道を横切って1124m標高点ピークへ登り返し、遠くに
若杉峠上の東屋が見えてくる頃になると、やや薄日が射し始める。灰色の雲に覆われた時
は小雨も覚悟してやや気分も暗くなりがちだったが、明るくなると気分も明るくなるから
不思議。ミヤマカタバミもうっすら開花し始めている。

 廃屋と化した作業小屋のある2つ目の林道から右のヒノキ林の斜面に入る。腐った雪が
残り、倒木もあって、やや踏路が不明瞭な部分もあるが、良く探せばテープがある。登り
切ると前方に東屋が見え、直下に若杉峠のお地蔵さんの祠がある。

若杉峠の東屋から歩いてきた稜線を眺める

 油を使うから万一雨が落ちてきては具合が悪いので、東屋で宴会の予定だったのが、吹
き渡る風が予想以上に強い。仕様がない。高みに囲まれた峠に降りることにする。降りる
と予想通りほとんど風がなく絶好のシチュエーション。幸い上がってくるハイカーも少な
いので、迷惑も少ないであろう。でもお地蔵さんにはご迷惑かな?あとでコシアブラのて
んぷらを一つお裾分けしておこう。

 喉が渇いた。とりあえず缶ビールを1本。現地調達のコシアブラの芽の他にナス、玉葱、
ピーマンなど、各自持参の食材を取り出す。出色は呉春さんの手掘りタケノコ、他にフキ
の煮たのも出たっけか?のりかさんこだわりの蒙古の岩塩、なかいさんのセリ、故郷自慢
のユズ味噌なぞも出てきたりして、200ccの油でなんとか皆の食欲を満たせたかどう
か。最後はてんぷら粉をつけずに揚げたりもして、ワイワイと騒がしさに、さぞかし近所
迷惑だったに違いない。

てんぷらパーティの始まり〜ぃ

コシアブラの若芽のかき揚げ。緑が美しい

 空模様を少し心配したけれど、幸い雨は一滴も降らず、無事、宴会も終了。帰路はおと
なしく、峠から南に延びる遊歩道。ブナ林の中の気持ちのいい道だ。ブナには甚だ迷惑だ
ったと思うが、抱きついたりなんぞして。自分ではまだまだしらふとの認識なのだが、後
日、戴いた写真では顔は”猩々”とはかくやとも思える相貌。やっぱり少しいい心持にな
っていたらしい。ブナに陳謝。m(_ _)m

 沢近くに咲くサンインシロカネソウも今年はまだ固い蕾のみ。ネコノメソウの種類では
イワボタンと思しき黄色い花が目に付く。(本当はポケット図鑑には載らない何とかいう
種類だとか。忘れました。)

ブナに抱きつく

ブナの自然林。まだ若葉もなし

 遊歩道の分岐を合わせながら岩がちな道は南へ下っていく。岩を噛みながら流れる吉井
川の源流(吉野川)を左にすれば、駐車場はすぐそこである。

 遊歩道を歩く人の姿もチラホラと去年に比して格段に少なかったが、それにしても今年
は芽出しが全国的に遅いのを実感したことだった。それは帰宅して山行記をひっくり返し
てみれば歴然であった。期せずして去年と同じアングルで撮った若杉原生林の入口の写真。
較べて見て、季節の歩みの違いがこれほどとは。とはいえ、むせ返る様な新緑の季節も間
もなくであるに違いない。

 帰路は大茅スキー場方面に出て、駒ノ尾の岡山県側の登山口や日名倉山の鐘を遠望しな
がら、少し遠回りして山崎へ戻る。中国道は普通の連休最終日の上り線程度の込み具合。
渋滞約十数キロといったところだ。でも”いらち”の我々は渋滞を嫌い、神戸三田で降り
て千里中央まで一般道。1時間半程度の所要だったから余り変わらなかったみたい。(笑)
そしてGWの仕上げは千里中央の居酒屋での打ち上げ。宴は果てしなく続けたいところだ
けれど、懐や健康と相談して、良い子たちは9時前にお開きとしたのでした。

 季節の恵みも賞味できたし、GWの掉尾を飾るに相応しい山歩きだった。若杉原生林の
春再び。同行の皆さん、有難うございました。


■同行 呉春さん、なかいさん、のりかさん、水谷さん、もぐさん、レオさん(五十音順)

【タイムチャート】
6:00桃山台駅西ロータリー
8:30〜8:45峰越峠
9:40江浪峠分岐
10:55〜10:58若杉峠
11:05〜11:10東屋
11:15〜12:30若杉峠(山菜てんぷら宴会)
13:35若杉原生林駐車場


若杉原生林のデータ
新緑眩し若杉原生林周遊』を参照下さい
【参考】
2.5万図『西河内』



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