豊中市内三角点ぐるり探訪

平成18年 5月14日(日)
【天候】晴れ一時曇り
【同行】単独
中山池から待兼山を望む


 山好きの人の中には、自分が住まいする市や町にある三角点を全て巡っている人がおら
れる。小生もそれにあやかって、居住地の豊中市にある三角点を巡ってみた。高い山はな
いけれど、それなりに面白いものだった。尚、豊中市の最高峰『島熊山』と唯一の二等三
角点『三本松T』については、過去の山行記があるのでそれを参照ください。(^^;

 さて、ここで三角点についての薀蓄を一つ。言わずもがなではあるけれど、三角点とい
っても何も三角形をした点ではない。地図作りは三角測量で行うので、その基準になる点
を"三角点"と呼び、通常、花崗岩のような固い石が標識として置かれている。更に三角点
には一等から四等まで等級があって(五等もあるらしい)、標石も一等は18cm角、二等
と三等は15cm角、四等は12cm角と差がある。ちなみに一等標石は長さ94cm、重さは
なんと90kg。設定の多くは明治大正時代になされているから、それらのほとんどは"強力"
と呼ばれる人夫が運んだのであろう。なぜ、等級差があるかといえば測量の大本となるの
が一等三角点だからである。以下に、地図の総元締め国土地理院の資料を上げよう。

等級
設置間隔(面積)
設置間隔(距離)
972
内、補点650
1点/1500ku
補点は1点/500ku
1点/45km
補点は25km
5,056
55ku
8km
32,699
8ku
4km
64,557
2ku
2km
合計
103,284


 従って、一等三角点の本点はほぼ大阪府の面積に一つあるくらいの頻度なのだ。現に大
阪府内には本点は俎石山だけである。尚、三角点の標石を破損した者は、測量法によって
2年以下の懲役または百万円以下の罰金に処されるから念の為。

三等三角点『浜』のある高川小学校正門

 まずは、一番近くの三等三角点『浜』へ。ここは以前に豊中市立高川小学校の校庭の隅
にあることを確認していた三角点。10時前に校門の前に行ったけれど、門が開いていな
い。どうしたものかと塀の外から三角点を覗くが、有ったはずの白い標識もなく、三角点
も見えない。亡失したのだろうか?
草に埋まる三等三角点『浜』

 校門へ戻ると、バレーボールだろうか、折りよくPTAの若いお母さん方が校門の錠を
開けるところ。便乗させてもらって、早速、校庭を横切って、かつて三角点があった場所
へ急ぐが、「あれ?」 ない。そんなはずはとあちこち探すと、ようやくありました。竹
と石で小さな石庭みたいなものが造られていて、その中に保護石ともどもほとんど埋まっ
ていたのだった。学校なのだから、もう少し大切にしてもらいたいというのが偽らざると
ころである。

 さて、続いて『加島』へ。市道神崎刀根山線を道なりに南下する。阪急宝塚線の高架を
潜り、R176の交差を過ぎると、道は西向きに変わる。阪急神戸線も潜って庄内温水プ
ールを過ぎた辺りが大島町二丁目である。点の記に記載されている付図を見ると、所在地
はこの付近とある。GPSも三角点まで150mの表示。路肩に車を止めて、市道をGP
Sの指示方向に歩く。塩野義製薬の寮の前を通り過ぎるとすぐに遊歩道がある。付図にあ
る緑道とはこれらしく、1930年まで使われていたという外島樋門跡の記念碑があって、
緑道は水路を埋め立てて造成されたものらしい。その緑道を南にたどると左(東)側に畑
と作業小屋。「なるほど。ふむふむ。点の記の地図通りやなぁ」当たり前ですわね。(笑)
右に新しい無縁仏を供養する石のお地蔵さん。その向かいにデーンと保護石4個とともに
コンクリートで固められた三角点があった。証拠写真を撮ったら、お次は『利倉』だ。

三等三角点『加島』

 更に神埼刀根山線を西に行くと阪神高速池田線の側道との交差点。なんだ、時々お世話
になるコーナンの向かいではないか。(笑) ここから北に向かい、名神豊中ICを越えて
今度は内環状線を西へ向かう。猪名川を渡ってすぐの交差点(角にファミレスあり)を北
へ。まもなくこんもりした雑木の帯が現れる。旧猪名川の堤跡らしい。ところで猪名川は
尼崎市と豊中市の境をなす川。なんだかこの辺りが豊中市内だとは少し不思議な気がする。
そんなことを考えている間に点の記にあるグリーンサイドマンションの横に出てきた。適
当な所で車を降りる。車道の横が旧猪名川堤に沿う遊歩道で、『利倉』の三角点はこの遊
歩道沿いのグリーンベルトにあるはず。ところが簡単に見つかると思いきや、存外、見つ
けるのに手間取る。雑草に覆われてそれらしいものがないのだ。行きつ戻りつ。散歩して
いる人も怪訝な顔。決して怪しい者ではありませんです。はい。

三等三角点『利倉』のある遊歩道

 仕方がない。GPSがこの付近と示す辺りのグリーンベルト上をゆっくりとスイープす
るが如く辿ってみたら、"十字の刻み"がやっとのことで見つかった。分からないのも道理。
石標は上に出っ張ってもおらず、地面と同じ高さ。雑草に隠れ、しかも表面が苔でも生え
ているのか妙に薄緑っぽい。こりゃあじっくり探さないと見つかるはずはない。もちろん
例の「三角点を大事にしましょう」なんて白い注意標識もない。近所の人もこんなものが
隠れているなんて知らないだろうなぁ。尤も、興味のない人には「それがなんじゃい」と
云われるのがおちであろうが。(画像は標石を撮る為、少し雑草を掻き分けてあります)

雑草に埋もれた三等三角点『利倉』

 内環状線を豊中方面に戻る。次は『桜塚』に向かうつもりだったけれど、阪神高速の下
を行けば『箕輪』が近い。『箕輪』はこの時点で再設中ということだったのだが、どうな
っているのか確かめに行くのも良かろうと気が変わり方向転換する。

 『箕輪』は阪神高速の橋脚下に存在していたらしい。点の記には阪神高速の最寄の橋脚
番号が記してある。「池521」。ちょうどその橋脚前に誂えたようにコンビニ。お茶を
買おうと思っていた矢先だし、駐車場も借りられてこれは都合が良かった。

 お茶を買って、早速、"現場"に行ってみると.....。案の定、もう撤去されている
のか、そこには痕跡はおろか、なーんにもなかったのである。(笑)

三等三角点『箕輪』は再設中

 さて、今度は本当に『桜塚』。ここは以前に訪れたことがある。GPSを買った当座、
指示通りに進んで見つけることができるか試しに来たことがあるのだ。場所は大曽公園の
中。確か藤棚があったことを覚えている。『箕輪』から南に戻り、走井交差点で東に折れ、
豊中市内の中央部に向かう。いい天気なので公園の中は孫を連れたおじいさんや近所の子
供たちとお母さん連中で賑やか。その間をまっすぐに藤棚付近に向かうとこれはすぐに見
つかった。大きなシラカシらしい木の下である。頭が飛び出していると危険だからか、こ
れも保護石もろとも地面と同じ高さにコンクリートでがっちり固められている。ちと可哀
相だ。
三等三角点『桜塚』

 公園には昭和16年に開設されたことを記す市長中川種治郎銘の記念碑があるが、その
時期に何か記念の大会でもあったのだろうか。近くに大阪放送局と記されたコンクリ支柱
や古い欄干みたいなものが残されているのが少し気になった。この『桜塚』を写真に収め
たところでもうお昼間近。一旦、昼食に家に戻ろう。午後からは『瀬川』通称、待兼山だ。

 最初、自転車で行くつもりが邪魔くさくなる。車で行くとなると気になるのは駐車地だ
が、ここは探訪にちょいと時間がかかるかもと思案。そうだ。待兼山のある阪大の横が新
しい市立豊中病院でそこの駐車場を利用したら安い。(1時間100円だったか) とい
うわけで、病院地下の駐車場に車を置かせてもらうことにする。

 古今集に「津の国の待兼山のよぶこ鳥なけど今来といふ人もなし」
新古今集に「夜をかさねまちかね山の時鳥雲井のよそに一声ぞきく」
続後拾遺集に「明くるまで待ちかね山の時鳥けふもきかでやくれんとすらむ」
その名前から、数々の歌に詠まれた待兼山。大きなワニの化石が出土した事でも有名であ
ろう。それが今は大阪大学のキャンパスの中となり、南に中央環状線と中国道が走るとい
う変貌ぶりである。その大阪大学も道が広げられ、建物の数も増え緑も多くなっている。
柴島口から理学部、基礎工学部棟を見て、付属図書館から生協の食堂の横を左に折れ、旧
イ号館横を北に出ると、ゲートがあって、昔のまんまの弓道部の小屋がある。その前の道
は切り通しになっていて西に延びている。
「?」
何だか遊歩道のようだぞ。スポットライトみたいな腰位の高さの黒い柱が所々にある。そ
して枝道も多い。西へと辿るとゲートが次々に二つ。休日だからか何れも閉まっていたの
だが、横にエスケープできる箇所がある。周囲は典型的な北摂の雑木林の佇まいで、元気
のないササの中にモチツツジのピンクが良く目立つ。道を高みへと登っていけば、おのず
と待兼山の山頂に出る。クロアゲハが舞う小さな裸地の広場の中央にぽつんと三角点。丸
い棒が転がっていたので立てておく。雑木林の中なので無論、展望はない。しかしその静
寂さがいい。道はまだ西に延びていたので辿ると、医療短大部の跡地に出て、博物館準備
室の建物の前に出るのだった。

 山頂に引き返して今度は違う道を辿ると、阪急石橋からの通学路に出たが、ここも門が
閉まっている。怪しまれるのも嫌なので、誰も居ない隙に門柱から飛び降りた。(^^; 管
理の皆さん、すみません。

待兼山山頂の三等三角点『瀬川』

周囲は遊歩道が整備されている

 帰りは中山池の周囲を散策、待兼山会館や学生会館をぐるりと巡って理学部前に出る。
校門を出ると車の騒音をはじめとする都会の喧騒がワッと身の回りを包む。キャンパスの
中は意外に静かなのだなと今更ながら思うのだった。

 病院前の池に鷺が一羽、じっと羽を休めている。入院しているのだろうパジャマ姿の小
父さんが、これまたじっとそれを眺めている。その周囲だけ時間が止まっているようだっ
た。話の種にと巡った豊中市内の三角点。たまにこういうのも面白いものだ。

 尚、豊中市の最高峰『島熊山』と唯一の二等三角点『三本松T』は別に山行記があるの
で今回は割愛しています。

【タイムチャート】
計測していません


■追加

懸案の三等三角点『芝』へ


豊中市内の三角点のデータ
点名等級標高(m)所在地備考
加島三等
1.9
大島町3−380中央緑道
利倉三等
4.9
利倉西2−65猪名川公園横
三等
2.7
豊南町東1−68高川小学校内
箕輪三等
蛍池西町1−292再設中
桜塚三等
32.8
北桜塚4−47大曽公園内
島熊山四等
115.7
新千里西町2−4豊中市最高峰
三本松T二等
50.6
東寺内町13寺内公園内
FK740復興
101.7
新千里東町3−9千里中央公園展望台
瀬川三等
77.0
待兼山町1通称「待兼山」
10三等
133.8
新千里北町豊中市内最高点

☆『島熊山』については『豊中にもある三角点の山〜島熊山
☆『三本松T』については『豊中にあった二等三角点『三本松T』
 を参照下さい
【参考】
2.5万図『伊丹』、『大阪西北部』          



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