大坂山〜数曽寺の低山ワールドで遊ぶ
 
平成18年11月12日(日)
【天候】曇りのち晴れ
【同行】別掲
大坂山稜線から見る数曽寺山塊
矢印が昼食の鉄塔台地


 播州の三草山を登っていると、西北方向に白く露岩の目立つ山塊が目に入る。数曽寺と
呼ばれる山塊で、マイナーながらなかなか面白い所だという。先達の山行記を参考に、皆
さんと出かけることにした。そして実際に歩いてみると、手垢もついておらず、想像以上
に面白いところで、和気アルプスや、高御位山よりも静かで野性味たっぷりの風情が満喫
できるところでもあった。それにしても、手や腕はあちこちに擦過傷。その夜の風呂では
少々沁みました。(笑)

 いつものように桃山台駅の西に集合して、中国道は滝野社ICから東へ。三草山への登
山口とは反対方向に折れる。山口地区の公民館横を少し上へ行くと路肩のやや広い部分が
ある。

 西高東低の冬型と聞いていたけれども、車外へ出ると、存外、風もなく暖かい。北側の
山が風を防いでくれているのかもしれない。早速準備を終えて数曽寺池を右手に、「宙色
のたね」と名づけられたオーガニック料理の店(休業中)の横を登っていく。この辺りは
別荘地のような風情だが、定住している人も多いようだ。やがて二叉路。右手の山の中へ
分け入るような舗装道を採ったが、実は直進が正解だったみたい、とは後で気づくことに
なる。
こちら側の岩稜から隣に見える岩稜へ

 飼い犬がうるさい建物を過ぎると、道は狭くなり、前方に物置小屋風の建物が茂みの中
に見える辺りで斜面に上がっていくような階段道。売れない敷地のアプローチなのだろう
が、とりあえずそれに取り付く。するとすぐにスラブ状の岩が現れた。表面が剥離してザ
レたいやな表面だし、斜度も結構ある。西にも同じような岩があり、そちらの方が上部ま
で続いていて登りやすそうなのだが、そちらに移るには真ん中に溝状の谷がある。そこで
谷は上へ行けば浅くなるだろうと30mほど登ったら、今度は藪で道が無い。しかも西の
谷は逆に上に行くほど深くなっているではないか。こりゃ駄目だと諦めて岩を下るが、足
を滑らすと下まで転げそうでこれが怖かった。(^^; やっとのことで戻って、更にシダと
茨の茂る谷を冷や汗もので横切り、ようよう隣の岩へ。そうしてゾウの背かカバの背に似
た岩の上部の草付に出ると、幸い踏み跡発見。これは186m標高点を通過する本来の取
付きから上がってくる道らしく、それと合流できた事で、のっけからどうなることやらと
額に汗したことだったが、ほっと一息だ。そうなればようやく眼下に広がる景色を愛でる
余裕も出来たというものだ。三草山と水を満々と湛えた昭和池。雄岡山、雌岡山の向こう
には明石海峡大橋の塔まで見えて、快適、快適。ただ、さっきの犬がまだ吠えているのが
耳障りだが...。
 
Ca240m峰へのスラブ岩から
カルデラのような三草山

 大きな木が見当たらない。生えているのはウバメガシ、アリドオシ、イヌツゲ、サルト
リイバラ、ノイバラ、ミツバツツジ、コシダの類。それらが左右から好き勝手に枝をのば
すが、南側の斜面はそれほど生えこんでもいず何故だか歩きよい。それに比べて北側は木
の背も若干高く、ブッシュに近い感じである。が、踏み跡は細いが割りにしっかりしてい
るのが救いだ。

 Ca240mの尖ったピークには何故かケルンが積まれてある。そしてこの辺りが今日一
番のハイライト。遮るもののない広い岩稜をミニ甲斐駒のような298m峰へ向かって登
る道だ。岩には背の低いマツが生え、まるで石庭の趣き。そして298m峰の南西尾根は、
やまあそさんが云う「ゼブラ尾根」。草付きの小尾根とざらついた砂の谷らしい。振り返
るとCa240m峰が美しく、西には深い廻谷があって、沢を堰き止めた池の水面が緑色を
呈している。その時、俄かに日が翳ったと思ったら、北東の西光寺山辺りは白いベールの
中。にわか雨に包まれているようである。

298m峰へ快適な岩稜を行く

298m峰付近から歩いてきた稜線を見る
中央はCa240m峰

 298m峰の北側は、今までとは打って変わってシダの藪状。ウラジロやコシダが茂る
人一人がやっと通れる位の隙間を、立ち木を掴みながらどんどん下る。ただ、朽ち果てた
立ち木も多いのですぐに体重をかけると危ない。要注意だ。目印は要所に古いテープがあ
る程度。木々が行く手の邪魔をして距離の割りに歩くのに時間がかかる。

298m峰から北の尾根は
鉄塔までずっとこんな感じ

 次第に尾根が狭まってくる。小キレットがあると聞いていたけれども、それは298m
峰の北の鞍部にあった。ざれた土で、そこだけ尾根が極端に狭くなり幅は30cm程度。キ
レットの間隙は1.5m程度でも両側が傾斜なので、飛び降りて着地に失敗するとちとヤ
バイ。(^^; 何とか通過すると今度は登り。Ca320mへの登りだ。これをこなすと、鉄
塔もだいぶ近づいてきて、三角点のある『上三草』の峰も見えてくる。

 しばらくは平坦道。シダの藪はきついが尾根を外さねば問題はない。ちょっとした高み
の『上三草』へはその藪っぽい踏み跡を一登りする。一坪ほどの切り開きに四等三角点が
ポツンとあって、測量ポールもまだ残っている。ところでここで珍しいものを発見。潅木
の枝に、丹波や播磨で知る人ぞ知る大柿氏の赤いプラプレート。「山口から尾根通しに登
って大坂山へ行く」と説明書きがある。今日の予定ルートとほぼ同じだ。やっぱり来てる
んですねえ。(笑)

 三角点から鉄塔までもほとんど平坦。但し、雑木が茂って足元が分かりづらく、倒木な
のかサンキライの蔓の所為なのか、足が引っかけてもんどりうって前のめりに倒れてしま
った。その拍子に向う脛をしこたま打ちつける。
「痛っ!!」
おかげで2、3日足が腫れて今でもまだ痛いのだった。(^^;
点名『上三草』の峰(左)と鉄塔

 鉄塔は播磨線bP65。草が刈り払わた跡がある。巡視路があるはずと探すと、東の谷
と西の方向に、往路から思えばアメリカのフリーウェイと見まごうばかりの道があった。
そして、北方向の展望がすこぶるよろしいと聞いていたが、確かに素晴らしい展望。目の
前に大きく根を張る大坂山。これは双耳峰だ。その尾根筋もなかなか魅力的。その向こう
は西光寺山で、ピラミダルな独立峰は高山らしい。笠形山も顔を出し、そんな景色を眺め
ながらの昼食タイム。もう湯気が恋しい季節だ。ラーメンが旨い。

 数曽寺峠へはさっき探した関電の巡視道が下っている。なんと快適な道だこと。先にも
書いたように登ってきた道とは雲泥の差。綺麗に刈り払われた幅1mのハイウェイだ。お
蔭であっという間に鞍部の数曽寺峠へ到着してしまう。

 通称、数曽寺峠には、地形図にはないが北の西脇市比延側からもいい道が上がってきて
いて、戦前のものらしい「兵庫縣砂防指定地」なる古い石標が立っている。昼食を食べた
鉄塔から見たとおり、数曽寺の主峰大坂山へはここから登れるはずだが、プレートらしき
ものは何もなく、テープが幾つか潅木に巻かれているのが目印らしい。少し分かりにくい
が、10mも行けば尾根上に踏み跡が現れる。

 最初はほぼ平坦で踏み跡もしっかりしている。こんな所にと思うような場所にコモウセ
ンゴケの紅葉した群落もある。やがて大きな岩稜がまたまた現れた。ここもゾウの背かカ
バの背みたいで、ふりかえれば一気に視界が広がって、さっきまで昼食を食べていた鉄塔
なども指呼である。

 この岩稜を登り切ると、途端に傾斜が増し始める。踏み跡は細く、雑木の密度も濃くな
って、しかもアリドオシ、サルトリイバラの類が歩きにくくさせる。そしてここでもウバ
メガシが多く、中にドングリを実らせているのがあって、それを見るとやっぱり樫の仲間
だったのだと得心がいく。目印のテープはここも要所のみだが、市界尾根なので頭に赤く
ペンキが塗られたコンクリ杭が埋まっているので目印になるし、尾根が非常に明快なこと
もあって安心だ。西峰の肩まで来ると、踏み跡は東に方向を変える。この辺りは北側がい
い展望で、比延の集落や遠くに笠形山の特徴ある姿や千ヶ峰付近の山並みが見渡せる。ち
ょっと驚いたのは、西峰の肩に出ると途端に踏み跡がはっきりしてきたこと。登ってきた
ルートの他にルートがあるのだろうか?探してみたが判然としなかった。

大坂山は双耳峰。本峰は右

 西峰からは雑木のトンネル。一旦少し下がって、小さな露岩を階段状に登っていくと、
難なく小さな切り開きになった大坂山の山頂である。山名板が二つ三つ。数曽寺山と書
かれた姫路の山の会のプレートもあって、山名は確定していないようである。山頂から
の展望は南方向以外は立ち木に邪魔されて芳しくない。その南側からは三草山、清水寺
の御嶽山、遠く六甲から帝釈山系、大船山などが眺められ、西日を受けて瀬戸内海が光
るのも美しいものである。尚、山頂へは登ってきた踏み跡の外に、東の馬路から上がっ
てくる縦走路と、赤白鉄塔の尾根に向かう踏み跡の二つがあった。

大坂山山頂の切り開き

 15分ほど小休止をとって下山にかかる。この時、踏み跡が北西から南西に変える辺り
(往路で東に方向が変わる地点)で、気がつかない内に北尾根方向に直進してしまうから
要注意。(目印のテープあり)それ以外は例の「ゾウの背」の露岩が見えるからその方向
に降りて行けば良い。風が出てきて北から黒い雲が近づいてくるが、パラッときただけで
通り過ぎた。

 再び数曽寺峠に降り立って山口方向へ。こちらには所々に関電の色褪せた「火の用心」
マークがある。ということはこの道は関電の巡視路に使われている道。安心、安心。(笑)
 しかし、横を流れる数曽寺川の上流に当たる流れは、大きな石のごろごろした川原で、
時たま溜まり水みたいなのが現れるがすぐ伏流してしまう。その川原が道の代わりのよう
な部分もあるので、大雨が降れば道はたちどころに形状を変えてきたに違いない。峠にあ
った古い砂防指定地の印がその証左だろう。でも今は穏やかなコナラやリョウブが色づく
いい散歩道だ。その途中には、大坂山から南の赤白鉄塔に出てから下る道の合流点はきっ
とここなのでは?と思える枝道も2箇所ある。何だか探検したくなる。右に古い砂防堰堤
を見てしばらくした頃、林道なのか砂川の原なのか分からぬへんてこりんな場所へ出て、
最後はそこから100mほど歩けば、数曽寺池の周回道路に飛び出した。

数曽寺谷の道は巡視路を兼ねた快適道

 澄んだ数曽寺池を左に、「宙色のたね」の前を過ぎると駐車地は直ぐそこ。近くの畑で
は地元の方が野菜の手入れに余念がないのだった。

 因但国境付近を歩いたというメンバーからは初冠雪の便り。対照的にこちらは南向きの
所為かぽかぽかの山行き。やはりこれからの時期は雪嫌いの小生にとっては南の山に限り
ます。(^^; それにしても、なかなか面白い山域。これからもちょくちょくお邪魔させて
もらおう。でもハンターは大丈夫かな?そっちが心配だなあ。ともあれ、お付き合いくだ
さった皆さん、有難うございました。



■同行 呉春さん、水谷さん、もぐさん(五十音順)

【タイムチャート】
6:30自宅発
7:00桃山台駅西ロータリー
8:05〜8:15山口地区公民館北(駐車地)
9:05〜9:10岩尾根(小休止)
9:18Ca240m峰(ケルン有)
9:37298m標高点峰夕暮山
9:46小キレット
10:04Ca320m峰
10:30〜10:33点名『上三草』(299.0m 四等三角点)
10:42〜11:20鉄塔の峰(播磨線bP65)(昼食)
11:39数曽寺峠
12:15〜12:20ゾウの背(岩稜)(小休止)
12:35〜12:52大坂山(450.0m 三等三角点)
13:35数曽寺峠
14:11林道出合
14:30山口地区公民館北(駐車地)

鉄塔(播磨線bP65)台地から北方を眺める
■数曽寺山塊GPS軌跡(罫線は10秒=約300m 国土地理院地形図閲覧サービス、
             フリーソフト『カシミール』を利用しました)  先頭へ



大坂山のデータ
【所在地】兵庫県西脇市、加東市(社町)
【標高】450.0m(三等三角点)
【備考】 播州三草山の西に位置し、鋸の歯のような山々の連なっ
ているのが目立つ数曽寺山塊の主峰です。数曽寺山塊は
500m以下のマイナーな低山帯で、訪れる人も少なく
その分、静かな山歩きが楽しめます。但し、標識がなく
要所にしかテープがないので、十分注意が必要です。大
坂山は双耳峰で、山頂はやや潅木が繁っていますが、東
から南の展望が楽しめます。登路は数曽寺峠や馬路など
からです。
【参考】
2.5万図『比延』



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