大坂山と金城山
         〜再び数曽寺の低山ワールド
 
平成18年12月10日(日)
【天候】晴れたり曇ったり
【同行】もぐさん
大坂山から数曽寺峠への下山路から金城山


 加東市と西脇市の境にわだかまる数曽寺山塊。最高点でも500mに満たない低山域だ
が、R379を走っていても分かるように至る所に露岩が顔を見せ、やせ尾根やピラミダ
ルなピークも多く、想像以上に高度感がある。しかもあまり知られておらず静かで、おま
けに南向きだから暖かく、今の季節の陽だまりハイクにはうってつけ。先月に初めて歩い
たのだけれど、またまたお邪魔することにした。

 高速を使えば豊中からほぼ1時間。7時に集合して、コンビニで食料調達なんぞしなが
ら、前回と同じく山口地区の公民館近くにやってくる。前夜の雨をもたらした低気圧が通
過した後だから、寒いのかと思いきやポカポカあったかい。そういえば吉川辺りでは猛烈
な霧だった。

 早速準備を終えて数曽寺谷沿いに北上する。実は予めはっきりした予定など決めていな
かったのだ。やって来る車中で粗々決めたのは、とりあえず関電の巡視道で尾根に上がっ
て大坂山を目指し、後はその時のシチュエーションで決めることにしようということだけ。
これも単独あるいは少人数で歩く気楽さだ。数曽寺池のほとりを進んでいると瀟洒な民家
の中からムク犬が時ならぬ闖入者に驚いて吠えかける。確かに怪しい2人組だあ。(^^;

数曽寺谷へは数曽寺池の周回路から左へ入る

 池の周回路から左の林道へ入るのが数曽寺谷の道だ。前回歩いた時、数曽寺峠までの間
に巡視路の分岐が2箇所あったのを覚えている。今回は最初に現れたbP67鉄塔への巡
視路をコースに採用する。ちょうど大坂山の南に派生する尾根に乗るルートだ。幾度か涸
れ沢の中だか道だか分からぬような所を通って30分。やっと巡視路を示す火の用心標識
が現れた。が、「?」 誰が書いたのか標識に前回には無かった「尾根」、「峠」のマジ
ック書き。只の覚書ならいいけれど、変な整備だけはしてもらいたくない。

播磨線bP67への巡視路入口(右)
左は数曽寺谷の道

 流石に関電ルート。低いササや松の枯れ木が多いが倒木が切断されていたりしてよく手
入れされている。階段には例の黒いプラ階段。それより古くに作られたらしい木の階段も
あるが、これは朽ちて留め金だけが土中に埋まっている。驚かされるのは雑木の生命力。
台風か何ぞで根こそぎ倒れているのに、わずかに地中に残った根だけで、梢を天に伸ばし
ているソヨゴやイヌツゲがある。やや荒涼とした風情の中を左に曲って支尾根の末端に取
り付き、露岩を巻いたりして一気に登れば260m等高線付近の尾根の上で、前方には3
24m標高点ピークが地形図通り露岩をまとって鎮座している。東も開けて、眼下の仏谷
や三草山の風景が広がる。あっ虹が。数曽寺谷に局地的な時雨があったのだろう。雲間か
ら覗いた日の光に鮮やかだ。

西隣のbP66鉄塔尾根に虹が出る

 しばらく休んで尾根を北上する。想像以上の快適ルートだ。西にはbP66の鉄塔尾根
を隔てて、先月歩いた299m三角点がある尾根が続いている。やはり尾根はいい。気持
ちよく登りついた324m標高点ピークからは南の三草山と昭和池が良く眺められる。と、
小さな岩稜に錆びた短い鎖が出てきた。片方がコンクリートに固められていて、関電の手
で造られた事がわかる。ここで一旦、鞍部に降りて登り返す。赤白鉄塔がグーンと近づい
てきた。
赤白鉄塔への岩尾根。奥がCa400峰

 ブーンと唸りを発する高圧線。赤白の高圧鉄塔(播磨線bP67)の下は広場になって
いて弁当ポイントには最適な場所だ。その鉄塔の北側はまだいい道が続いていて、このコ
ース最大の岩稜。遠くから見れば(大丈夫かいな?)と心配になるが、行って見ると存外
何とかなるものだ。ここも関電が準備した長さ5m位の錆びた鎖が斜面に垂れているが、
お世話になるほどでもなく、足元に注意さえして居れば大丈夫。次いでCa400mピーク
の手前の露岩に登る。ここは小さな展望台。東には清水寺のある御嶽山や新興宗教の巨大
な甍。南には明石海峡大橋の橋脚や雄岡山、雌岡山がはっきり見え、家島群島らしい島影
も確認できる。西南の加古川だか高砂辺りの臨海工業地からは火力発電所だか盛んに煙突
の煙が上がっている。そんな景色を愛でていたら、どこからか「バーン、バーン」と大き
な音が響き渡る。銃声?そんなこともなかろうが...。やや胸に一抹の不安。

 Ca400mピークは小さな岩の頂になっていて、ピークを越える踏み跡とピークを左に
巻いていく道とがある。最初、ピークに登る道を進んでみたが、余り踏まれていないから
ヤブっぽく、しかもどうも谷に下りていく道のように思えて、より明瞭な巻き道の方を方
向転換。ところがこの道、大坂山からどんどん逸れて行くではないか。そして決定的な『
火の用心bP66』の標識。さては隣の尾根の鉄塔へ続く巡視道なのだなと気づく。当た
り前だろう。巡視するのにわざわざ山頂を極める馬鹿もいないわなあ。(笑)

赤白鉄塔の北、Ca400m峰の南
にある鎖付きの岩尾根

 西に見えるbP66の鉄塔への尾根道もなんとも魅力的なんであるが、「ここまで来た
らやっぱり山頂を踏みたいね」って訳でまたまた引き返す。(^^; と、またたまたバーン、
バーンと連続音が響き渡る。「スワッ!やっぱり、銃声?」それにしては音が一斉に過ぎ
る。クレーンか何かで鉄板でも移動させているのかも。音の大きさも変わらないので動き
はないようだ。なら、安心だけれど、一番怖いのは何といっても人間様だからなあ。

 色褪せた赤テープがある。踏み跡は一旦数m下るがすぐに鞍部で登りに変わる。ところ
が、今までの巡視道とは月とスッポン、提灯に釣鐘。俄然ヤブっぽくなる。シダの繁茂す
る中を薄い踏み跡を探して、行く手を阻むイヌツゲ、ウバメガシなどの手強い枝と格闘し
ながら、サルトリイバラやノイバラにちくちく刺されるのもお構いなく前進することにな
る。蜘蛛の巣まである。クソッ。「誰だ?ザックを引っ張るやつは?」振り返ったらソヨ
ゴの枯れ枝だ。枝に向かって怒る。「チャイッ!チャイッ!」

 そんな中にも粘土質の黄色い土に覆われた裸地があって、小さな水溜りはヌタ場となっ
て鹿らしい足跡と木の幹に体を擦り付けた跡がある。

大坂山への最後のアプローチは
こんな調子でヤブっぽい

 こうなると、薄い踏み跡でも見つかるとハイウェイに思えるから不思議。何となく雰囲
気で獣道を探しながら進めば、見覚えの大坂山山頂だ。ここにも下山と書いたテープと、
真新しい切り口を見せる雑木がある。やっぱり何か整備中なのだろうか。

 11時と早いけれどここで食事しながら午後のコースの相談だ。馬瀬コースを採るのも
いいけれど車道歩きがなぁ。bP66鉄塔尾根も車に近くなっていいけれどヤブを戻るの
もなぁ。と色々思案投げ首だったけれど、そうだ数曽寺山塊のもう一つの三等三角点の山、
金城山が良さげとやまあそさんのHPにあったっけ。新しい山頂も踏めるし石仏も見たし
で結局、金城山ピストンに決定。そうと決まればコーヒーを飲んで早速出かけましょう。

 大坂山から数曽寺峠へは先月、ピストンに用いたコース。唯、ここは小さな露岩や岩稜
があるので濡れていると滑りやすい。北の空は暗い灰色。日が時折射すと淡い虹も見え、
その雲がこちらへ流れてきていて、雨粒もぱらついたが、幸いカバの背と呼ばれる岩稜は
乾いていたので助かる。

 数曽寺峠に立つ火の用心標識にもマジック書きがある。巡視路入口にあったのと同じも
のだ。うーむ。いったい誰だろう?

 そんな詮索はさておき、一休みの後は峠から北の西脇方面へ。うす暗い杉林の中で、杉
の梢が風で擦れあってギィーギィー不気味な音を立てる。下っていくとこちらも同じよう
に沢が道の所がある。やがて雑木に変わると明るくなって、気分も明るくなるから不思議。
やがて真新しい道標が立つ金城池分岐だ。地形図で云えば110m標高点付近。金城山へ
はここを西に折れるのだが、その先に石仏があるというので行ってみる。金城池分岐から
50mくらいか。右手奥の雑木林の中に廃屋みたいな物置が現れてくると、辻に小さな祠
が置かれている。その祠の中には道標を兼ねた小さな石仏。天保時代のものらしい。仏前
にシキミが置かれていたから、今でも世話する人が居るらしい。

天保14年の銘のある石仏の彫られた道標

 倒れている西脇市教育委員会の古い道標に書かれているのは『金城山すそうじハイキン
グコース』の文字。『比延農協2610m?』とうっすら読める。昔、ハイキングコース
として道標を立てたが、お役所仕事の常、いつしか忘れ去られた感じ。廃屋の方向にも一
筋、忘れ去られたような道があって、こちらには『塚口新池裏山コース』とある。やまあ
そさんによればゴールデンバレーゴルフ場にある池なのだそうだ。

 金城池分岐に戻って今度は西へ歩く。澄んだ水が流れる沢の流れを2度越える。林道く
らいもある幅広の道は落ち葉の絨毯で、再び日が射し明るくなった中で濡れた表面が黄金
色に光っている。古い炭焼き窯の跡が一つ二つ。やがて斜面の植林下になると俄然暗く、
道もやや不明瞭になって、ピンクのPPテープを目印に進むことになる。単調な植林歩き
を我慢して登りきると再び雑木の林で、このコースの最高点の金城峠?に到達する。ここ
にも真新しい道標がある。北向きに切開きがあって、これが金城山への登山路だろう。

 最初は胸突き八丁。落ち葉と土でズルズルと滑るので立ち木を掴んで登らなければなら
ない。幸い立ち枯れの木が少なく助かる。50m程、一気に登って尾根に出ると、ここに
もまたいい景観が待っていた。小柄な松が疎らに生えるやせ尾根は日本庭園の趣だ。前方
のこんもり山はCa280m山。その奥、左に湾曲した尾根の先に目指す金城山。振り返れ
ば大坂山。やはり数曽寺山域の盟主に恥じない堂々とした姿で蟠っている。

金城山への明るい道

 Ca280m山には例の西脇市教委の古い道標がある。その先も今でも時折整備されてい
るような鉈目の入った頗るつきのいい山道である。コシダが繁り、落ち葉に覆われた小道
は尾根を忠実にトレースしていく。東が開けた辺りでは西光寺山や西寺山、高山方面が望
める。その内に尾根は左に湾曲して行き、頂上直下でややきつい他はルンルン気分で登れ
る。小広く平たい山頂は間もなくであった。山頂は雑木で見晴らしが利かないが、西側に
出ると素晴らしい眺めである。アンテナ山の周囲に西脇市街。加古川が大蛇の如くくねり、
遠くには雲をかぶった笠形山や千ヶ峰。七種山がちょこんと顔を出している。
 
小広い金城山山頂。三角点と
最高点金城山と書かれた古びた標識がある

金城山山頂北西から西脇市街
左はアンテナ山

 西の展望地から三角点へ戻る手前で、三種の梵字が彫られた石板が無造作に置かれてい
るのを見つける。やまあそさんによれば麓のお寺の三尊を表す種子(しゅじ)だそうだ。
昔はここに建物があったのが、松尾山の高仙寺みたいに麓に下りたのかもしれない。その
ように考えれば、山頂は人の手が加えられたような、やや不自然に平坦な雰囲気がある。

 来た道を戻る。下りは少し苦労するかもと思った金城峠への斜面も、思いの外あっさり
クリア。一息ついて金城池分岐の辻へ戻り、後は数曽寺峠から山口へやや単調な谷道を南
下するだけ。前回来た時にはまだ紅葉、黄葉を纏っていた木々ももう裸木である。振り返
れば目立つ赤白鉄塔。朝はあそこに居たのだと思うと、今日も結構歩いたんだとちょっと
感慨無量である。車の側まで戻ったら気団が入れ替わったのか空気が少し冷たくなってい
た。

 まだまだ遊べる数曽寺山塊。(また近い内に来させて貰います)。やっぱり手や腕は傷
だらけ。でも心で挨拶して今日も無事下山できた事に感謝。渋滞せぬうちに帰阪しましょ
う。


【タイムチャート】
7:00自宅発
8:15〜8:25山口地区公民館北(駐車地)
8:59関電巡視道(播磨線bP67)
9:20〜9:26324m標高点尾根の南(Ca260m)
9:38〜9:41324m標高点ピーク
9:58〜10:05赤白鉄塔(播磨線bP67)
10:13〜10:25展望岩
10:35Ca400m峰
10:53〜11:43大坂山(450.0m(三等三角点))
12:24〜12:29数曽寺峠(Ca180m)
12:44金城池分岐
12:46〜12:50石仏(110m標高点)
12:53金城池分岐
13:08〜13:14金城峠(仮称)(Ca200m)
13:25Ca280mピーク
13:48〜13:56金城山(399.3m(三等三角点))
14:26〜14:30金城峠(仮称)
14:43金城池分岐
15:00数曽寺峠(Ca180m)
15:12関電巡視道(播磨線bP67)
15:43山口地区公民館北(駐車地)

■数曽寺山塊GPS軌跡...谷沿いの遊歩道は弱電波の為、途切れています。
 (罫線は10秒=約300m 国土地理院2.5万地形図閲覧サービス、
  フリーソフト『カシミール』を利用しました)  先頭へ


金城山のデータ
【所在地】兵庫県西脇市
【標高】399.3m(三等三角点)
【備考】 数曽寺山塊の北部に位置する低山です。以前、西脇市の
ハイキングコースが設置されており、現在も明確な踏み
跡が南の点線路の峠から登っており、快適な尾根歩きが
出来ます。麓の寺の奥ノ院でもあったのか、山頂に梵字
の刻まれた石板が置かれています。
【参考】
2.5万図『比延』



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