紀泉高原日溜りハイク
         〜俎石山から泉南飯盛山
 
平成18年 1月22日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】みーとさん、もぐさん
提灯講山付近の尾根の裸地から飯盛山


 青空からの柔らかい日差しに、土曜は雪模様という予報は完全な肩透かし。「朝起きた
ら銀世界やで」と子供に予言?していた手前、完全に信用をなくしてしまった。「どうし
てくれるの。気象庁さん」(笑)

 そんな午前中、何気なくパソコンでメールチェックしていると、もぐさんからメール。
曰く、「紀泉方面の低山徘徊は如何?」 当方も日曜の行き先候補に挙げていた泉南飯盛
山も踏破する予定との事で、早速、諾メールを送る。

 明けて日曜。肌を刺す冷気は鋭いけれど、風もなくいい天気。薄暗い内に家を出て、集
合場所の南海本線箱作駅へは予定通り7:55着。改札前ではもうもぐさんが待っている。
みーとさんも同じ電車だったと見えて、今日のメンバーが揃う。みーとさんとは久しぶり。
遅い、新年の挨拶。(笑)

 早速、もぐさんの車で俎石山の登山口があるスカイタウンの桃の木台へ移動だ。造成中
の赤土が目立つ新興住宅地を上がっていく。初めての場所はえてして登山口を見つけるの
に手間取るものだが、車道の要所に「林道」と表示してあって分かりやすい。

 造成地の最上部にある国民保険健康センター「サンヒル阪南」。建物の玄関を過ぎた辺
りに臨時の駐車場に使われているらしい大きな空き地があり、そこに車を止める。眼下は
海。関空から淡路島、神戸、六甲、明石海峡大橋と、手に届くような近さである。山上か
らの展望が楽しみになってくる。
爼石山登山口へはサンヒル阪南の奥の広場
から延びる林道を進む

 サンヒル阪南も力を入れているのだろうか、この空き地には親切にも案内図と登山口の
標識が設置してある。(サンヒル阪南のフロントで登山道の見取り図が貰えるらしい)そ
れに従ってコンクリート舗装の車道を登り、Uの字に折れてしばらくすると左に山道が見
つかる。人の出入り分だけ開けられたフェンスを抜け、道なりに行けばすぐに小さな沢が
現れる。正規の道は左に一旦折れ、小さな橋を渡るのだが、ここは沢の流れを渡って向こ
う岸に出る方が近道。正規の道も結局は渡渉地点の向こう側へ戻ってくることになる。

 右に谷を見ながらつづら折れに高度を稼ぐ。といってもそれほどきつい登りはない。「
自然と本の会」という地元のボランティアらしい団体が設置した私製の案内や、植物名称
を記したプレートが随所にある。常緑樹が多く、冬枯れしたツル性植物が脈絡なく絡み合
っているので、暗くやや荒れた印象だ。そんな中にポツンと「杉の献木」を記念する真新
しい石碑を見る。なるほど近くに径40cm位の杉の木がある。

俎石山北東の稜線へ、手入れされた道を登る

 まもなく地形図にもある池を過ぎる。氷は張っていない。何時の間にやら今度は左に小
さな谷が現れるが、伐採木で作った丸木階段を上がっていく間に消えてしまうと、辺りは
コナラ主体の落葉樹の林に変化する。同時に沢の源頭の緩やかな地形に変わり、左にゆっ
くりカーブすると尾根が見えてきた。と、異な物が前方に。背の高いコナラの梢から垂れ
下がったブランコが三つ。ブランコ広場と案内図にあったのはここらしい。童心に帰って
試しに腰掛けてみる。ロープが長いので「ゆらーり」長い周期で揺れる。梢がしなるので
怖くなって早々に降りる。(^^; 少し離れた場所にある柴の囲いは、穴に板を渡しただけ
の簡易トイレ。簡単なテーブルもあって、何だか子供時代の秘密基地みたいな..。(笑)

 テーブルが置かれた辺りはもう尾根。はっきりした道がつけられていて西に向かってい
る。まもなく右手に大阪湾。伐採木を利用したベンチが置かれている。「シダの坂道」と
名づけられた坂を下れば左手にはどっしりとした紀泉アルプスの主峰の雲山峰。

 ジャンクションピーク(392.1m)という名には見覚えがある。3年前は鳥取池の
キャンプ場からここへ上がってきたのだった。左手には木の間隠れにようやく俎石山、大
福山が姿を現す。ここに建つ「陸軍省」「由良要塞地区」と刻まれた石柱はこの付近一帯
が戦前は立入禁止であったことを示す。深更にでも降ったのか、アラレが窪みにこぼれて
いる。

 ここから大福山までは一度歩いた道なのだが、東山形山、中山形山、西山形山などの表
示は以前にはなかったような。それらを辿るが如く、巻き道とは別に稜線沿いに新しく道
がつけられていて、試しに歩いてみると頂からの眺めが良い。そこから俎石山はすぐで、
まずは前回も登った頂上北展望台へ上がってみる。青い空の下に広がる箱作から関空、り
んくうゲートタワーや遠く六甲を眺めながら、小腹押さえに三笠饅頭をパクリ。

爼石山北の展望台から大阪湾に浮かぶ関西空港
市街地右にりんくうゲートタワーが見える

 俎石山は大阪府唯一の一等三角点本点の山。なぜここが本点なのか良くわからないが、
飯盛山や沼島、有田市沖の地ノ島や沖ノ島も眺められるからだろうか。

 雲山峰を左手に、カクレミノ、ヤシャブシ、ヤブムラサキ、シロダモなどなど、木々の
名前を教えてもらいながら、平坦な道を進む。途中、寄り道した葛城二十八宿の第三経塚
跡は、ただの小岩の集まりにしか見えない。(笑) そうこうする内に、もうハイキングル
ートの交差点みたいな大福山だ。ここは俎石山、井関峠、札立山と三つのルートが交差す
る。その大福山の山頂は3年前に訪れた時よりも整備が進んでいる。「大福山」と刻まれ
た元禄年間の古い石柱はそのままだけれど、真新しい石灯籠が建立され、多奈川方面を見
晴るかす側に伐採木で作ったテーブルとベンチが置かれている。ササユリが咲く辺りもネ
ットで囲われ保護されている。和歌山方面は札立山方面に少し下がった所に、もっといい
展望地があるともぐさん。なるほどテーブルが置かれた展望地があって、和歌山市街が一
望できる。

 大福山から札立山へは南側の尾根を歩くので、風もなく、うらうらと陽が当たって本当
に暖かい。葉を落としたコナラとモチツツジの目立つ尾根で気持ちいい。振り返れば大福
山や、籤法ヶ岳の山並みで、籤法ヶ岳の展望台には人影がちらついている。

奥辺峠から大福山(左)、籤法ヶ岳に連なる稜線

 ぐっと下った鞍部が奥辺峠。沢沿いに降りて行く淡輪コースが分岐する。景色もよく、
ちょっとした広場になっていて立派な山桜、未だにみっしり赤い実をつけた柿の木がある。
テーブルも置かれていたので、早朝出発でお腹も空いた我々は、早いがここで弁当タイム
とした。食事の間にも、ちょくちょくハイカーがやってくる。和歌山在住の方々のいいハ
イキングコースになっているようだ。
明るい奥辺峠。左は六十谷、右に降りると淡輪
洞穴のように見えるのが札立山への道

 食後のコーヒーの後は後半戦の開始である。まずは奥辺峠からの登り返し。これが昼食
直後の体に応える。
「ああー。しんどー」
この付近からしばらくは紀泉の国境尾根。大阪府と彫られた石標が所々に埋まる。地元の
ボーイスカウトが設置したのか、木に掛けられた小鳥の巣箱。その一つを覗いてみると、
敷き詰められた木の葉。何が棲んでいたのだろうか?

 10分ほど歩いて六十谷への分岐がある小さなピーク。「見返り山」とプレートにある
だけあっていい眺め。歩いてきた山並や和歌山方面が手に取るようである。

 ここで道は南から西へ方向を変える。落ち葉折敷く広やかな道は林道ほどもある。大き
なアップダウンもない里山歩きである。途中にある鳴滝峠は古い峠のようで、深くえぐれ
た道は淡輪から鳴滝へ抜ける昔からの間道があったらしい雰囲気がある。

札立山への稜線からは南に和歌山市街が広がる。
光をはじく紀ノ川と紀三井寺の山が街の左に

 もうそろそろ札立山と思う頃に、ちょこちょこ偽ピーク。その中に札立東山というのが
あってここからの眺めも特筆物。和歌山方面が今までよりも更に手に取るようである。青
霞む生石高原、有田沖の島々、淡路島、紀三井寺の山。和歌山城、片男波海岸、紀ノ川に
立つさざ波までもキラキラさざめくのが分かるほどだ。そして右に緩やかにカーブした先
が本物の札立山であった。数年前は藪っていて、三角点も草の中だったと聞くが、地元の
ボランティアのご尽力で整備が進み、ここも今では山の中の交差点。直進すれば平井峠や
鳴神、南海の紀ノ川駅へ出られるということだ。札立山とは面白い名であるが、どうも米
相場に関係する名前らしい。そういえば俎石山近くに旗立山という名の山があったから何
か関係があるのか知らん?それにしては和歌山方向は開けているものの他の展望は今一つ
であるなともう一つすっきりしなかったけれど、実は相場情報を早飛脚に託し、ここはそ
の中継点であった由。なるほど、これで腑に落ちた。というわけで一息ついて、飯盛山方
面からグループが来たのをしおに先に進むことにする。

札立山の三角点。飯盛山へはここから
折り返す様に北へ

 札立山から飯盛山へは、札立山の三角点から折り返すように杉林の中を行く。一転、ヒ
ヤッとした冷気が身を包んで寒い。逢帰ダム方面へ下る道を次々に二筋見送る。なだらか
な道だとガイドにはあったが、なだらかだったのは初めだけ。今回のルートで最も頻繁に
アップダウンがあったのでないだろうか。こんもりした飯盛山が視界に入ってくる。しか
し、道は弱々しいササの中をまだ下っていく。やっと下げ止まったと思ったら関電の黒い
階段の急登。こんな繰り返しで北方向を目指したのだけれど、高圧鉄塔紀ノ川線bQ0を
過ぎる頃だったろうか、膝の調子が余り良くないとみーとさん。下りで違和感があるとの
こと。飯盛山からみさき公園ルートは下りの長丁場。ちょっと不安なので、飯盛山手前で
エスケープして、勝手知ったるシブ谷経由で淡輪方面へ下るという。相談の結果、みさき
公園へは一度歩いたことのあるというもぐさんも、みーとさんに同伴することになり、初
踏破の小生のみ失礼してそのままみさき公園へ単独行ということになる。

 淡輪・孝子分岐はT字路だ。右に折れて飯盛山方向へ暫く進むと、まもなく淡輪分岐が
現れる。膝を痛めたみーとさん達は、ここでシブ谷を畑方面へ降りることになった。幸い
もぐさんの電話で加茂ちゃんと連絡が取れ、林道まで迎えに来れるようだ。無事をもぐさ
に託してお別れする。

 別れて1分位だろうか。繁みの奥から話し声が聞こえると思えば、一寸した広場に飛び
出した。岬町の教育委員会の説明板には千間寺跡とある。戦国末期、秀吉の紀州攻めで灰
燼に帰したとの事だが、未だに瓦、壺などが出土するとある。鳥居があり、広場の中央に
は注連縄が張られた井戸らしきものもあって、昔、寺の伽藍でもあったような雰囲気であ
る。話し声の主は広場の横の土手に座った女性ハイカーのグループだった。

 飯盛山へは説明板の横から登る。すぐに明るくなって、多奈2火力線bQ2の鉄塔が現
れ、石仏が祀られた祠の置かれた山頂広場に出る。途中の鞍部からは、かなり登り返さね
ばと思われたが、存外、楽なものだった。山頂は遮る物がない大展望である。北は泉州平
野から沖合いに浮かぶ関西新空港の島、淡路島、友ヶ島、遠く神戸から明石海峡、六甲ま
での大パノラマ。東は雲山峰をはじめ、重畳と続く和泉山脈。南に霞むのは和歌山の生石
高原辺りだろうか?設置された景観図と見比べながらしばし楽しむ。

飯盛山山頂から南西。深日、多奈川の
港の向こうは紀伊水道と淡路島

 みさき公園へは山頂の北側の明快な道。"飯盛り山"と名づけられただけあって、山頂直
下はややきつい。ジグザグを切りながら高度を下げていくがすぐに落ち着く。痩せたササ
が下草の明るい雑木林や、暗い常緑樹の間を抜けたり。裸地に出て周囲を見渡せば、低山
帯ながら結構山深く、地形も複雑で分かりにくい。飯盛山の全体の姿を眺めたく思いなが
らも雑木が邪魔をして、いいアングルがなかったが一箇所いい場所があった。なるほど飯
盛山とは言い得て妙でピラミダルだ。どこかのHPに「頂上の鉄塔が仏飯に立てた箸のよ
うだ」とあったように思うが正しくそんな感じがする。

 飯盛山までは頻繁に道標があったけれど、こちら側はめっきりと少ない。しかし、道は
ほぼ一本道でテープもあり明快である。それほど大きなアップダウンもなく、「マツタケ
山につき11/30まで立入禁止」の札と白いPPテープが目立つ中を歩く内に提灯講山
を過ぎる。プレート類など何の目立つものもなく、どこが山だか全く分からない山である。
ここまで来ると飯盛山まで直線で1.7km。姿も大分遠くなったが、みさき公園まではま
だまだ。いい加減、飽きてきた頃だ。前方でまた話し声がする。左へカーブするとパァー
ッ視界が開けた。ベンチが置かれた展望台があって、そこで初老の団体さんが休憩してい
るのだった。ここも素晴らしい展望で眼前に海が広がり、みさき公園の観覧車が良く目立
つ。しばらく見とれていたいところだけれど、北西風がまともに吹き付けるので寒く長居
が出来ない。早々にお暇することにした。

 西に和歌山へ向かうR26を行きかう車の列。その向こうにノーリツ鋼機本社の風力発
電のプロペラも眺められる尾根を降りて行くと、子供の声が下から上がってくる。ようや
く登山口もすぐ其処と思う内に、白い今風の瀟洒な民家が見えてきて、カーブミラーとフ
ェンスの間に飛び出した。
泉南飯盛山のみさき公園登山口

 さて、駅はどっちだ?とりあえず右に行く。すると民家の向こうに観覧車が覗いている
のが見えた。あとはそれを目指して降りて行くのみ。10分ほどで「みさき丘団地口」の
バス停に出、左に折れればみさき公園駅はすぐであった。

 紀泉アルプス4座、海を見ながらの陽だまりハイク。全行程15kmに及ぶ長丁場だった
けれど、快適な一日。みーとさんたちも無事、加茂ちゃんと合流した由。有難うございま
した。
「ありゃ?先発の区間急行、出てしもうた...。」次は3:12の特急。25分待ち。
「まあ、ええかぁ」(笑)


【タイムチャート】
6:20自宅発
7:50南海箱作駅
8:10〜8:15サンヒル阪南
8:22爼石山登山口
8:46〜8:50ブランコ広場
9:00〜9:05ベンチのある展望台
9:26 ジャンクションピーク(392m)
鳥取池コース出合
9:50〜9:55俎石山(420.0m 一等三角点)
10:20〜10:26大福山(427m)
10:53〜11:40奥辺峠(淡輪・六十谷分岐)(昼食)
11:50見返り山(Ca330m)
12:12鳴滝峠
12:33〜12:42札立山(349.3m 三等三角点)
13:10高圧鉄塔(紀ノ川線 bQ0)
13:30孝子・札立山分岐
13:35淡輪シブ谷コース分岐
13:42〜13:44泉南飯盛山(384.5m 三等三角点)
14:12提灯講山(198m)
14:24〜14:26展望台
14:35岬町登山口
14:46南海みさき公園駅


札立山のデータ
【所在地】大阪府泉南郡岬町、和歌山県和歌山市
【標高】349.3m(三等三角点)
【備考】 岡山県東部、山陽道に広がる低山域、和気アルプスの最
泉州と紀州の境をなす低山です。その昔は大坂と和歌山
を結ぶ商いの道の中継点であったといわれます。ヤブ山
であったのが、最近、地元の方々によって整備され、和
歌山方面の展望が特に優れています。
泉南飯盛山のデータ
【所在地】大阪府泉南郡岬町
【標高】384.5m(一等三角点)
【備考】 紀泉アルプスの中でも円錐形をした独立峰です。山頂は
360度の大パノラマで、六甲から大阪湾に浮かぶ淡路
島、有田沖、生石高原と見飽きることがありません。登
路はみさき公園、孝子、淡輪の他に、距離がありますが
雲山峰からも周回可能です。
俎石山、大福山のデータ
  俎石山・大福山〜時雨の紀泉アルプス周回を参照ください
【参考】
2.5万図『淡輪』



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