大段谷山〜灰野から佐々里峠
 
平成18年 6月 4日(日)
【天候】曇り時々晴れ
【同行】水谷さん、もぐさん
爽やかな雑木林に囲まれた
大段谷山(オオダン)山頂

 巨樹の森から抜け出て、トロッコ道で戻ってきた灰野。昔は数軒の民家があり、茶店ま
であったというが、今は小さな神社と家の土台の石垣にそのよすがを残すのみ。まだ10
時過ぎなのだが、道標のところから少し奥に入った辺りで早めの昼食を摂る。自然のBG
M、灰野谷の流れの音が心地よい。

 道は地形図の点線ルートとはだいぶ異なっているようだ。沢沿いに行かずに、まもなく
西の斜面を登り始める。かなりの急傾斜だが、ジグザグを切っているので楽。所々にアシ
ウスギも見られる。といっても、さっきまで巨神の森に居たから、もう一寸やそっとでは
大して驚かない。

 次第に沢音が小さくなっていき、道は尾根まで一気呵成に上がるのかと思いきや、途中
で山腹をトラバースするようになる。途中には斜面から水が染み出して、ザレて荒れてい
る部分もあるが、概して歩きやすい。周囲はよく手入れされた杉林である。すると、左は
るか下だった灰野谷が一気に近づいてきて、またまた沢沿いの道になる。沢との合流地点
は、岩を舐めるように水が流れる場所で、大トチノキがあって、傍には炭焼き窯跡も見ら
れ、テン場にも向いた場所だ。そして暫くは沢を遡行していく。どこからやってくるのか
沢沿いの左の杉林の中から踏み跡が合流。古い道標があるところを見ると、これが本来の
沢道なのかもしれない。

 このまま沢を遡るなら、813m標高点辺りへ出てしまいそうなので、西の尾根に登り
たいねと言っていたら、その先でほんとに尾根を登る道がついていた。道をつけた杣人と
同じ考えを持ったんだなぁと思うと少し感激だ。(笑) ここも急斜面なのでジグザグ。一
気に100m以上高度を上げたろう。結構、きつかった。

 尾根に出ると想像したとおりいい道があって、『芦生古道復活 平安中学高校』のプレ
ートがある。京大演習林事務所がある須後の近くに行く尾根通しの道らしい。本来はこち
らが本道だったのがいつしか廃れて、灰野へ行く道がメインになっていたのを復活したら
しい。『ハイキング不適当』の文字も消してあって、こちらも良さげだ。

板(ばん)とり跡のある木

 再び尾根下をトラバースする道。板とり跡のある大杉の切り株が現れた。『板とり』と
は、大木を伐採して運び出すのが大変なので、背負っていけるだけの大きさに縦方向に柾
目板を切り出した跡である。生活の知恵なのだろうなぁ。その先には水場。昔、由良川で
獲った魚を運ぶ際にここで水替えをしたというのだが、今は水が滲みだしている程度で、
とてもそんな芸当は出来なさそうである。
芦生古道はよく洗掘された道だ

 そんなトラバース道も徐々に高度を上げ、斜めに突っ切る感じで尾根に乗り上げた。分
岐には大段谷山への道標が立てられている。直線距離で800mほどだ。せっかくの機会
なので、二日酔い?なのか少々疲れ気味の水谷さんを残し、もぐさんと二人でピストンす
ることに。道標には「ハイキングには不適」とあったが、テープも適度にあり、顕著な尾
根なので迷うような所もない。ササが枯れた斜面を登ると、大きな板取りの跡がある大杉
が立っている。

 どこかで雛鳥が鳴く声がする。見上げると、ブナの枯れ木の3mばかりの高さの辺りに
丸い穴が開いていてそこから洩れてくるのだ。するとキーキー甲高い警戒音が梢の上から
降ってくる。アカゲラらしい。親鳥が雛の危機を助けんと精一杯の努力だ。よしよし、小
父さん達は何もしないから大丈夫だよ。(笑) 巣から離れてもしばらくは親鳥が後をつけ
てくる。この親心、人間も見習うべし。

オオダンへの緑なす清々しい尾根

 大段谷山はその手前の無名ピークの方が標高が高いという面白い山。ただ大段谷山から
先はゆっくりと落ち込んでおり、三角点を置くにはこちらの方が都合が良かったのかもし
れない。山頂は山名標識と3、4枚のプレートが架けられただけの静かな場所。測量用の
白い目印も放置されたまま。木々に囲まれて展望はないが、清々しく気分のいいところだ。
山頂から先は綺麗な雑木林で、テープ類や踏み跡はないが、下草のブッシュもなくどこま
でも歩いていけそうに見えた。

 往復40分。大段谷山から戻ってくると誰もおらず、水谷さんは先に出発したらしい。
古道は813m標高点ピークの西側を巻く。ここでもアカゲラが営巣していて、雛を守ろ
うと、親鳥がけたたましくどこまでも追いかけてくるのだった。

 流石に足がやや重くなってきた。ちょっとした登りも些かつらい。(^^; そんな時、林
の中から湧きだすようなエゾハルゼミの鳴き声や、緑の木々の中にトチノキの大きな白い
花が浮き出ては、頑張れよと応援してくれるみたい。

 古道歩きもついに終盤。佐々里峠を縫う府道を走るツーリングのバイクの音が遠くから
聞こえてくるようになる。見れば右手が開けて眼下にアスファルト道が木々の間からちら
ついている。その向かいは品谷山だ。あの尾根を辿って廃村八丁まで歩いたことが昨日の
様である。

 この道で最も高い840m標高点ピークは裾を巻いてくれるので助かる。抜けるとまも
なく往路の小野村割岳分岐。10分ほどで佐々里峠の駐車地である。数台に車が増えてい
て、水谷さんは車中で昼寝であった。

 山小屋にOさんは不在だったという。よく出没するという広河原の喫茶店にもいない。
先夜、弔い事があるといっていたから京都へ帰ったのであろう。無事下りて来た事は後で
連絡しようともぐさん。梅雨前の天気に恵まれた2日間。久々に男のみで芦生を堪能して、
タニウツギの峠を後に車上の人となったのだった。

広河原の喫茶店で見かけたホオノキの花

■「赤崎中尾根〜巨神の迷宮の森へを見る

【タイムチャート】
10:10〜10:30灰谷(昼食)
11:10〜11:20小休止(730m標高点ピーク南東200mの沢付近)
11:35〜11:40芦生古道出合
11:45〜11:50板取り跡の木
11:50大段谷山分岐
12:10〜12:15大段谷山(795.0m 三等三角点)
12:35大段谷山分岐
12:39813m標高点ピーク
13:00小野村割岳分岐
13:15佐々里峠


大段谷山(オオダン)のデータ
【所在地】京都府南丹市美山町
【標高】795.0m(三等三角点)
【備考】 灰野から佐々里峠に抜ける古道が走る主尾根の西に位置
する山です。分岐には道標があり、”ハイキング不適”
の標識がありますが、テープもあり、尾根を外さなけれ
ば大丈夫です。当山までは清々しい雑木林で、板取り跡
のある巨樹もあります。尚、当山から先は踏み跡があり
ません。
【参考】
2.5万図『口坂本』



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