弥仙山〜黄金色の落ち葉道
 
平成18年11月25日(土)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】単独
於与岐から見上げる弥仙山


 今年もカニの季節がやってきた。そして毎年恒例のカニ喰い旅行の機会を利用して登る
北近畿の山。今年は丹波と丹後を画し、そのピラミダルな姿が目立つ弥仙山。たぬきさん
のHPに依れば『改心の道』の雑木林が良いという。

 いつもは帰途に山に登るのだけれども、今年は天気の加減で行きがけの駄賃でもないが、
往路で寄ることにした。しかしこれが遠かった。しかも下山してから宿泊地の久美浜まで
がまた遠かった。(^^;

 そういうわけで、いつもは昼に出発なのが8時前に家を出る。ETC割引を利用して福
知山まで高速。R28に出て北上するが県道への分岐が分からず。「ありゃぁ?」舞鶴の
市街地が見えてきた。引き返して路肩に寄って道路地図に見入る。どうも変。これはジモ
ティーに聞くにしくはなしと、最寄の釣り餌屋で聞けば、すぐそこの交差点を曲れという。
何のことは無い。道路地図の分岐の交差点名が間違っていて「黒谷」となっていたのであ
る。正しくは「上杉」。昭文社の地図を持っている人は注意です。老婆心ながら...。(笑)

 釣り餌屋のおばさんの言う通り、上杉の交差点を東に曲ると、角に酒屋。左折して次の
大きなY字路には古い案内板があり、ここを右へ。すると前方に尖峰が天を突くのが見え
てくる。なるほど丹波槍といわれるだけはあるなぁ。(^^) 更に次のY字路も右へ進む。
丁度、辻では昔懐かしい移動スーパー(生鮮物を積んだ四輪トラック)が開業中。集落の
おばさんたちが出てきて魚を買うついでの四方山話で盛り上がっている様子だ。

 川沿いに進む内に道は細まって一車線となり、大又の最奥の民家を過ぎると轍の掘れた
地道になる。中央が盛り上がっているので、擦らぬようにゆっくりと車を進める内に、車
10台は優にとめられる広場が現れたが、先着のRAV4が1台、ポツンととまっている
きりである。
弥仙山の登山口の駐車場から。
右が小谷林道、左が水分神社への道

 真直ぐ川沿いに延びているのは小谷林道。帰りはこれで戻ってくる予定。近畿自然歩道
に指定されている道は左の川沿いで、弥仙山まで2.4Kmとある。角には『霊峰登拝六根
清浄云々』と刻まれた石標と可愛い石仏が置かれている。そこから見える鳥居が水分神社
で、大エノキはもう葉を落としているのに境内のイチョウは黄金色に真っ盛りであった。

フカフカの落ち葉道から右の山道へ

 水分神社から落ち葉の絨毯を100mも行くとまた鳥居があって、谷川を渡って山道が
大ムクノキ横から右手に登っていく。於成神社や山頂の金峰神社への参道なので非常に明
快な道だ。面白いことに1町、2町と刻む代わりに「○百米」とメートル表示の石が10
0m毎に置かれている。左側の宮ノ谷の流れに沿う杉林の中の緩傾斜の道端には、ミカエ
リソウだろうか虫食いだらけの葉を持つ下草が生える。流れは時に小さな滝を懸け、サワ
サワと水音を立てる。中でも二筋に分かれたナメ滝はなかなか優美なのだが、こんな小さ
な流れにも砂防堰堤が築いてある。

 「大本教開祖修行の滝」は降りて行かねば見えないようで、水量からそれほど大きな滝
でもなさそうなので水音だけ聞くことにしてパス。そこからすぐに於成寺古跡の案内板が
出る。猫の額くらいの荒地だけれども風雅な建物でもあったのだろうか。礎石だったよう
な石も草に埋もれている。その古跡から右に折れると参道らしく苔むした自然石の石段が
現れた。ここで一気に高度を稼ぎ、登りきって左に曲れば於成神社の建物前である。

 修行の山らしく蔵王権現が祀ってあるというこじんまりした本殿の左から、更に山道は
続く。大きなトチノキの聳える石段道付近は、にわかに岩がちとなる。外見よりもゆった
り登れるなあと思っていたが、そうは問屋が卸さない。(笑) ご多分に漏れずこの山も
丹波の山でよく見られるように頂上近くで急登となる。汗を拭きながら登ると造林公社の
17石標が埋まる山頂西側の稜線である。テープは無いが、西の尾根には何となく切り開
きがある感じだ。500mばかりで三角点があるらしく、西峰とガイドには記載されてい
る。辺りは植林帯から抜け出て雑木の林。ブナ系は早々と葉を落とし、今はリョウブやコ
ナラ系の黄葉が主体で明るい。

 直角に折れて山頂を目指す。といっても、直接山頂には行かずに北側を巻きながら登る
気配。日の光を浴びて黄葉が透き通っている。音といえばカサコソと落ち葉を踏む自分の
足音のみ。静かだ。やがて、『改心の道』を示す道標が現れて、日置谷分岐を過ごすと山
頂直コースと山頂直下コースに分かれるが、どちらを採っても山頂に出るらしい。近そう
なので直コースで。50m程で金峰山神社の建物が見えてきて、明治12年の石灯籠と日
露戦争出征記念の碑が立つ山頂である。
弥仙山山頂の金峰神社

 先着のご夫婦が居る。もう食事を終えて出発準備。なんと大阪から来られたそうだ。駐
車場の車の主ですかと尋ねたら、その方はさっき降りて行かれたとの返事である。

 誰もいない山頂で食事の準備。架けられた数十枚の絵馬がカタカタと風にあおられ音を
立てている。好物の焼き鯖寿司の食事を済ませて、コーヒー片手に狭い山頂を一周。展望
が良くないと聞いていたが、立ち木が葉を落としているので、ある程度は望むことが出来
てなかなかのもの。ことに北の東舞鶴、西舞鶴の市街が近く、港に浮かぶ船や桟橋なども
見えて、十数年前に一度登ったことのある五老山は指呼。そして弥仙山の神様が高さ比べ
をしたという青葉山。ここから見る青葉山は意外にダルである。西には大江山。南に見え
る高い山は何だろう。三岳山か長老ヶ岳かちょっと判然としない。

 汗が引いて寒くなってきた。余り長居もしていられないので山頂に別れを告げ、『改心
の道』の道標に従って下る。山頂直下が急なのではじめはジグザグ道。それも南に向かう
稜線に出れば、左に新しい鹿ネットが張られた平坦道となる。途中にあった鮮やかに紅葉
したカエデは見事であった。

改心の道分岐。日置谷へは右下へ

弥仙山山頂直下の紅葉

 歩くに従って左手近くにアンテナ施設のある山が垣間見え、時折、青葉山方面がちらち
ら顔を覗かせる。この辺りからが、たぬきさん推奨の雑木尾根散歩なのだ。ほとんど登り
返しはなく、ゆるゆると下っていくだけの道の両側は、黄葉の盛りを迎えた木々が柔らか
い日の光を浴びて輝いている。小鳥の鳴き声と、落ち葉を踏みしめる自分の足音、それに
時折、カサッとなるのは木の実が落ちる音。本当に静かだ。

弥仙山南尾根の黄金色のプロムナード(1)

 四等三角点『於与岐』は尾根のちょっとしたコブにあって、登山道から東側へほんの数
m離れた場所なので目立たず、普通は気づかないだろう。コブに立ってみると標石から東
にも下って行く踏み跡がある。展望も無いので小休止するでもなく、先を急ぐ。

弥仙山南尾根の黄金色のプロムナード(2)

 こんもりとしたピークを登った道は571m標高点ピークの西を巻きながら南下する。
10分も歩いた小さな尾根の先に日置谷分岐はある。地形図にあるとおり、のっぺりとし
た台地状を呈していて、その中に刻まれた皺のような小さな尾根筋だ。「弥仙山2.4km、
於与岐2km」と道標があって、左に行けば日置谷、右に折れるように下れば於与岐。いず
れも『改心の道』となっているが、改心の道とは本来、君尾山から繋がる昔の修験の道な
のだそうだ。さて、ここで一息。お茶で喉を潤し、少し早いが「おやつ」の草餅をほおば
る。
日置分岐谷分岐
於与岐へは右、日置谷へは直進

 於与岐に向かって暗い桧林を降りていくと、道は次第に南側の山腹を巻き始める。今ま
でに比べれば細く、山腹道だから大雨でも降れば消えそうな箇所もある。道から見れば南
側(左)の谷筋はなかなかに広く深く、てっきりこちらに降りるものとばかり思っていた
けれど、道は尾根筋に上がってすぐに右の斜面の植林の中を下り始める。北側のほの暗い
杉林を透かして下方が明るくなっているのは林道らしい。急斜面をジグザグに切った道を
降りて行くと砂防堰堤も現れ、林道横を谷川が流れている。それに架かる丸木橋を渡れば
セメント舗装の林道に合流だ。道標は何も無く、手掛かりはそばに立つ京都府の保健保安
林の標識の脚にテープが巻かれているのみ。知らずにこちらから登ろうとすると見過ごす
かもしれない。
小谷林道との合流地点。矢印の道を降りる。
標識の脚にテープあり

 横を流れるのは小谷というらしい。しばらく下って右から林道と共に合流するのは大谷
とのこと。下るに従って賑やかになっていく流れを音を聞きながら、やがて於与岐の簡易
水道施設までブラブラやってくると前方が俄かに明るくなって、駐車している車の屋根が
見え、先着していたRAV4のご夫婦が丁度エンジンをかけ、目礼しながら出ていかれた。

 駐車場には他に車もなく、結局、小生をいれて登山者は3組のみだったらしい。黄色に
染まる晩秋の弥仙山は静かの一言。大阪近郊じゃ、こうはいくまいなあ。さあて。久美浜
までもうひとっ走りするかぁ。

【タイムチャート】
7:50自宅発
10:40〜10:50大又登山口駐車場(駐車地)
11:12大本教開祖修行の滝
11:15〜11:17於成寺古跡
11:20於成神社
11:50〜12:15弥仙山(664m)(昼食)
12:35〜12:36点名『於与岐』(576.2m 四等三角点)
12:45571m峰
12:54〜13:00日置谷分岐
13:10林道小谷線出合
13:25大又登山口駐車場(駐車地)



弥仙山のデータ
【所在地】京都府綾部市
【標高】664m
【備考】 丹波と丹後の国境、現在の綾部市と舞鶴市の市界に聳え
る丹波槍とも呼ばれる三角峰で、周囲に高い山がない為
良く目立ちます。山頂に金峰神社があり、昔の修験の山
であったことを示しています。山頂からの展望は、立ち
木の為に思うに任せませんが、冬は木の間越しに青葉山、
大江山、舞鶴湾などが見渡せます。『改心の道』と名づ
けられたコースが地元の方々によって整備されています。
■関西百名山
【参考】
2.5万図『丹波大町』『梅迫』




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