春冬同居の湖北路逍遥
 
平成18年 4月 9日(日)
【天候】曇りのち晴れ
【同行】別掲
赤坂山の案内図もスッポリ雪の中


 春の湖北を楽しんでみようというオフ。カタクリをはじめとする花々、炭を作るために
独特の形になった「やまおやじ」を見に行こうという呼びかけに集まったのは7名。2台
の車に分乗して、春爛漫を迎えた大阪を後にし、一路、湖北を目指したのである。しかし、
湖北の里はようやく遅い春を迎えつつあるのに、山々はまだまだ厳しい冬の姿。残念なが
ら当初の縦走は早々に諦めて、雪中ハイクに切り替え。でもそのおかげで「やまおやじ」
の林をたっぷり楽しみ、意外な花にも出会え、おまけにカモシカの出迎えまで受けるとい
うハプニング続出の1日となったのでした。

 順調に車は走り、湖西のバイパスを降りてコンビニで食料調達を兼ねて休憩。朝日を浴
びて、間近の比良の山々がきれい。中でも堂満岳がピラミダルで、蓬莱山はまだ結構残雪
を乗せている姿が印象的である。

 白髭神社の前を通り抜け、高島市内に入る。リトル比良の山並みの向こう側に蛇谷ヶ峰
が大きな山容を見せるが、雪は目立たない。ところが、前方にたたなづく湖北の起伏には
白いものが...。それは近づくに従って流石に尾根筋にはないものの、日当たりの悪い
谷間はそれを覆うほどの残雪なのがはっきりしてくる。大阪では桜も満開を迎え、暖かく
なったのに...。この冬の雪の量は半端じゃないようだ。(大丈夫かいな...?)一
応、アイゼン、スパッツは持ってきたけれど、本来、雪嫌いの小生である。(笑)

 マキノ名物、メタセコイアの並木道はまだまだ冬の装いで、寒々とした風景だが、周囲
のぶどう園では、春を迎える手入れの最中で、肥料を撒く農家の人の姿も見られる。梅、
山桜も花を開き、楓の枝先も芽だし間近、うす赤く色づいている。まことに瑞々しく、春、
冬同居するムラの風景は美しい。


【雪中ハイク】
 さて、車1台をマキノの温泉施設近くの駐車場にデポした後、もう1台で黒河林道を三
国山登山口に向かう為、北上する。ところが、白谷温泉を過ぎ黒河林道始点にやってくる
と、無情にも通行止めの標識が行く手を遮っているではないか。車はここに置くしかない。
1時間半程度の時間のロスは否めない。まあ行ける所まで行ってみようというわけで準備
する。近くを流れる谷川からは豊富な雪解け水を集めてか、轟々と流れの音が響いてくる。
「やっ?」ポツポツと時雨も降り出した。

黒河林道の今津側起点に駐車
前方に通行止の注意書き

土砂崩れ現場
この辺りには雪は少なかったのだが...。

 雑木林の中のまっすぐな道を突き当り、左に折れる。右手は八王子川の支流の谷である。
と、雪が道の半ばを覆う箇所が現れる。雪が柔らかく、雪庇もあるので注意が要る。踏み
抜かぬように先行する水谷さんの足跡を忠実にたどる。ところが、今度は土砂崩れ現場。
幅は10m位だが、木も根こそぎ倒れ、今も何かの拍子にコロコロと小さな石が転がって
くる。振り仰ぐと斜面は赤土と大きな石がむき出し。復旧はハイキングシーズンに間に合
うだろうか。現場を注意しながら乗り越えていくと、それから先は、アイゼンが必要とい
うほどではないが、ほとんど雪に隠された道だ。その上にはポツポツと鹿の糞がある。鹿
に齧られたらしい跡がついた木もある。雪は斜面から流れ落ちて溜まったようで、雪面が
谷側は斜めになっており、足を滑らせれば深い谷に落ちる危険な箇所もある。その雪の表
面に人工的な筋がつけられているのは、2、3日前にスキーか何かを履いて歩いた人がい
るらしい。

谷に架かる橋を渡る面々。林道は雪の下

 橋を渡ってジグザグ道にかかる。黄色いカーブミラーが林道がそこにある目印。適当に
ショートカットをしようと雪の斜面に取り付くと、これが意外に悪戦苦闘。やっとのこと
での林道復帰に、かえって余分な労力を使ったりすることとなる。それでも遠かった高圧
鉄塔が徐々に近づいてくることで、高度を稼いでいることが分かる。振り返れば山の端か
ら琵琶湖の霞む姿が望め、向かいの稜線のブナらしい林が均一な高さに揃ってきれいだ。
足元の雪面には夥しいブナの殻が散っていると思えば、周囲にいつの間にかブナの木が増
えている。その根元の周りはポッカリと雪解け穴だ。

 真新しい木の建物が見えてきた。トイレだ。ようやく三国山の登山口に着いたらしい。
と、その近くに横たわる丸太。いや違った。よく見ればなんと赤坂山の案内標識の上部で、
すっぽりと雪に隠れているのだった。してみれば、雪の深さは2m近いことになる。
「ひえー!」一同、口をあんぐりである。

 11時。早いがお昼。右手に三国山の山頂が見えているが、1時間以上はかかりそうで、
雪中ハイクはここまでにして、午後の部は「やまおやじ」を主役にしようということに衆
議一決だ。早速、雪の消えた小さなこぶに陣取る。

 朝の灰色の雲も取れ青空。日が射して一気に暖かくなってきた。雪も表面はシャーベッ
ト状に柔らかい。標高の高い所では硬かった木の芽も、下界に下るに連れ若葉が膨らむ。
黄色いピンポンのようなダンコウバイ。下向きにはにかむように咲くキンキマメザクラ
ピンクのショウジョウバカマ。見つけてはデジカメに収める。往路で崖上になかいさんが
目ざとく見つけていたイワウチワの花。その場所に戻ってきて、カメラに収めたけれど、
これはピンボケ。(^^;

 午後1時過ぎ、林道基点に戻ってくる。先週汚れた山靴も雪できれいになった。(笑)


【やまおやじ】
 駐車場にデポした車を回収後、まず、カタクリの情報。ピックランドで尋ねたがまだ開
花には早いという。それではと目指したのは「やまおやじ」の林。先導する水谷車はR1
61の湖北バイパスから逸れて、狭い車道にと進む。止まった所は分譲中の別荘用地であ
る。ポツポツと新しいセカンドハウス風の家が建っているが、大半は未整地の林。見ると
あるある「やまおやじ」。北摂でいう「台場クヌギ」で、炭の原木として株元で一度伐ら
れたクヌギである。20年位を経て太くなったところでまた伐採を繰り返すのだ。伐られ
た為にゴツゴツした不定形な形で大きくなった株元から、株立ちとなって幹を空に伸ばす。
中には直径1mもありそうな主のようなものや、中心が空洞になって、動物の住処になっ
ていそうなものもある。小生は見なかったけれど、大きな野うさぎが居たという。ここで
もマメザクラが花をつけ、イチヤクソウも目に付く。カンゾウが芽を出していたので、切
り取ってもらって持ち帰ることにした。帰宅して夕餉のアサリの酒蒸しに放り込んだら、
癖もなくまことに美味かった。

「やまおやじ」太さを較べて下さい(笑)

【赤坂山(今津)】
 続いて向かったのはビラデスト今津への県道。ここはかつて近江坂という古道が若狭へ
通じており、大御影山や滝谷山への取り付きでもある。

 それへ向かって酒波谷沿いに走っている時である。沢山の人がしゃがんで居るのに出く
わす。それぞれみなさん一眼デジカメに三脚、レフ板を持っている。何事ならんと見てや
れば、指導員に率いられ、野草の花を撮影している一行である。対象の見覚えある小さな
花はサンインシロカネソウだ。コンパクトデジカメではなかなかピントが合わない代物。
近くではスミレサイシンの薄紫の花も見つかった。それにしても皆さん熱心だ。思い思い
の構図をものにしようと、一様に生き生きとした目をして、まるで少年少女に戻ったよう
である。

 先に出発した水谷車を追ってビラテスト今津方面へ進む。時折覗くの琵琶湖と湖北の平
野が美しい。道の両側はオオイワカガミだらけ。花期はさぞかし壮観な眺めに違いない。
ワインディングロードを駆け上がり、ピラデスト今津の建物が見え始めた頃、下ってくる
水谷車に出会う。一人300円なりの協力金がいるので戻ってきたとのことだった。

 帰路が混みそうなので早めに切り上げようと、今日はここで一応お開き。残った我々3
名は、折角なので登ってくる途中で見つけた案内に従い、三角点を踏んで帰ることにする。

 雪が残るU字形に掘れた道は近江坂と呼ばれる古道の一部なのかもしれない。イワカガ
ミに覆われたその道をたどっていくと、小さな尾根筋には所々に丸木の土止め兼用の階段
が残り、ビラテスト今津によって手入れされている様子だ。そうして高みを目指していけ
ば指導標から100mほどで、ビラテストが立てた木柱とともに三等三角点があった。

今津の赤坂山山頂。画像では見えないが
中央奥に琵琶湖と竹生島が浮かぶ

 赤坂山。といってもこちらは今津の赤坂山で点名『深清水』。赤松に囲まれた静かな場
所だが、木の間から北の展望が良く、これが三角点が置かれた理由だろう、湖北の平野と
琵琶湖に浮かぶ竹生島、赤坂山、三国山の向こうに雪を深く戴いた横山岳らしい高みが見
える。山頂からは今津方面へやはりU字形に掘れた道らしきものが下っている。さっきの
道の続きらしい。やはり近江坂のように思われるのは、車へ戻って麓へ降りている最中、
標識があって、近江坂の文字が読めたからだ。近江坂は近江の今津から若狭の三方へ抜け
る道である。その三方方面では能登野から三十三間山に登った際に少し辿ったのだった。
一度、近江側も歩いてみたいものだ。

【カモシカ】
 車中で「今日は色々あったねえ」「バイカオウレンも発見できてラッキーやねぇ」など
と一日を振り返っていた時である。今日の多彩さを締めくくるような出来事が起こる。助
手席に座った小生が何気なく見上げた車道の山側の斜面に何やらうごめく黒い物体。
「おおっ?カモシカやっ!カモシカやっ!」
これで二度目の遭遇である。慌ててさぐるポケットのデジカメ。がこれがなかなか取り出
せない。すぐ逃げ出すと思ったら、幸い件のカモシカ君、振り返ってじっとこちらの様子
を伺ってくれている。写すのは今だ。若いオスのようであまり大きくはない。それにして
もあんな斜面、よく歩けるものである。1分位動かなかったが、危害が加えられる恐れが
ないと思ったのか、悠々と上へと歩いていく。そしてまたこちらに首をかしげ、茂みに消
えていった。それを見届けて、車は里へ下り、春霞の中、西に傾いた夕日に鈍く光る琵琶
湖を左に、今津の地を後にしたのである。
ビラデスト今津への車道の崖に
姿を現したカモシカ

 三国山の雪のおかげで、春と冬が入り混じった湖北をあちこち逍遥した多彩な1日。ゲ
ップが出ますなあ。(笑) 同行の皆さんありがとうございました。

■同行 呉春さん、幸さん、なかいさん、のりかさん、もぐさん、水谷さん(五十音順)

【タイムチャート】
7:00桃山台駅西ロータリー(集合地)
9:05〜9:15黒河林道入口(駐車地)
11:00〜11:25三国山登山口付近(昼食)
13:03黒河林道入口(駐車地)



三国山のデータ
貴公子花紀行〜赤坂山・三国山、百花繚乱」を参照ください
赤坂山(赤坂川原谷山)のデータ
【所在地】滋賀県高島市
【標高】475.2m(三等三角点)
【備考】 有名なマキノの赤坂山とは異なり、ビラテスト今津への
車道沿いにある山です。独立峰という感じではなく、尾
根の突端という感じですが、北から東の展望が良く、三
角点が置かれた理由が分かります。ビラデスト今津が周
辺を整備しており、大きな案内標識があります。
【参考】
2.5万図『駄口』



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