初詣かねて長峰山から摩耶山
 
平成18年 1月 3日(火)
【天候】晴れたり曇ったり
【同行】単独途中から谷口さん
長峰山頂(天狗塚)にて。背景の右が摩耶別山
鞍部に摩耶ロッジ、左手のアンテナ群が摩耶山


 年末の寒さも年が明けると一息ついたようで、穏やかな三が日。今年の初山行は初詣も
かねて摩耶山へ。

 何だか年々正月らしさが薄れていくようだ。電車も空いていて、晴れ着で着飾った女性
も皆無。ダークな上着ばかりが目立つ普段の連休となんら変わりはない車内風景。そんな
なかにもポツポツとハイカーの姿。これもいつもと一緒。

 阪急六甲駅はキムチ鍋オフ以来だ。まずは登山口を探し当て?ねばならない。駅の東側
から車道を北へ向かう。この街中を徘徊し登山口を探すのが一苦労なのだ。山で道を探す
より難しい代物。(^^; 飲食物を仕入れに立ち寄ったコンビニで尋ねたりしながら、六甲
登山口と大層な名前のついた交差点を西に折れると、まもなく六甲川。川沿いに北上して
斜めに交わる車道に移り、暫くすると前方に寺。右に別れて北上する道との辻に「長峰山
登山口」と書かれたオフィシャル道標を見つけ一安心。北にある厳島神社が良い目印だ。
「フーッ。」

 この辺りから結構な坂道が始まる。Lか2速に落としているのか、横を通った車が大き
なエンジン音を残して過ぎていく。マニュアル車での坂道発進は一寸真剣にならざるを得
ない、それほどの勾配がある。六甲学院を左に見て坂はますますきつくなる。そんな先に
「神戸八景伯母野住宅街」の石碑を見つけた。
「市街地を抜け登山口まで来たら、長峰山への半ばは過ぎたようなもの」とどなたかの山
行記にあったように思うが、正しくそんな感じがする。手元のGPSの計測では標高26
5m。もう200m位登ったのか。道理で汗が出てきたわけだ。一息入れる。

伯母野山住宅街の碑
碑の左手の道を突き当たると登山口

 主のいない家が多いようだ。表札はあるが敷地は荒れ放題。神戸八景と呼ばれた洒落た
感じとは大違い。景色はいいものの、こんな坂のきつい所には車がなければとても住めそ
うにはない。そんな住宅地の間を山肌に突き当たると右に折れて林道風の広い道。大きな
鉄杭の車止め。

 左手に明瞭な太い踏み跡を見送って、松蔭女子大の敷地内へ。私有地内に立ち入って、
これでいいのかなと訝しく思うくらいだが、突っ切ると右に高圧鉄塔が立ち、横に案内図
と杣谷峠への道標を見つけることができる。

 カサカサと落ち葉が鳴るいい山道。左奥に砂防堰堤が見える小さな沢に塩ビパイプで導
かれた小さな流れ。これがガイドにある水場らしい。沢を横切って離れるのかと思いきや、
道はグッと戻って堰堤の横を高巻いて行く。ヤブツバキを主とする常緑樹とツル性植物の
繁茂する、やや暗い道は少し荒れた印象を受ける。そして一本調子の登り基調は、正月で
鈍った体には些かきつい。また鉄塔が現れた頃はやや平坦になるが、再び山腹の登り。

 こんな時、単独は気楽。いつでもどこでも小休止。六甲線bXの高圧鉄塔付近では、と
うとうザックを下ろす。振り返れば
「あらっ!いつの間に?」
と驚くほどの大展望。神戸港が一望で、まもなく開港を迎える神戸空港も指呼なのである。
標高はもう475mと表示。

 ササの伐採地に出る。所々に雑木が植林されている。麓にグリーンベルト構想云々と表
示があったから、その一環として神戸市が整備しているのだろうか。お陰でここからの展
望も一押しであった。

 ササの伐採地を過ぎると再び雑木の中の道となるが、尾根に出たのか急登も終わって楽
になる。木々の間からは六甲の主稜線。ところが途端に冷たい風が強く吹き抜けるように
なって寒い。足元には残雪が現れる。凍った箇所もあって下りでは気を使う。そんな寒さ
にもめげず、アセビやミツバツツジは来るべき春を待って、もう花芽を準備している。

 粉雪がちらつく中、小さなピークを2つ越える。すると狭い尾根道の向こうに岩が立ち
はだかる。天狗塚らしい。それへ登ろうと思った瞬間、人の気配。「こんちは」と挨拶し
て何気なく顔を上げて驚いた。なんと谷口さん。本当に奇遇。お互いに顔を見合わせる。
もう2時間も無線運用していたのだとか。その間、現れたのは小生含めて2名だったそう
な。

天狗塚から記念碑台方面
表六甲ドライブウェイがうねる

 長峰山の山頂にある天狗塚には四等三角点が埋められているが、その展望は特筆物。六
甲の中の展望台といっても過言ではない。東にケーブルの山上駅。記念碑台、凌雲台と続
く六甲主脈。眼下にうねる表六甲ドライブウェイ。西に杣谷を隔ててオテル・ド・摩耶の
瀟洒な建物とアンテナを戴く摩耶山。南は神戸港から阪神間が一望。何時までも眺めてい
たい所だけれど、何せ寒風吹きすさぶ寒さには閉口。谷口さんと互いに記念写真を撮り合
って岩を降りることにした。

 そろそろ食事時。風を避けるに適当な場所を探しながら進む。急なアップダウンが結構
ある。この辺りから現れ始めたクマザサ原が綺麗だ。オリエンテーリング用らしい標識の
立つ分岐を左へ。鉄塔横にベンチを見つけ、ここで食事も良かろうとザックを下ろすが、
風が強く断念。そうこうしている内に、眼下にロッジ風のトイレが現れ、そこはもう杣谷
峠でありました。ということは峠手前で右手に見えたこじんまりした岩峰はシェール槍だ
ったようだ。ドライブウェイを横切る。穂高湖付近は盆地になっているので幸い風が弱い。
日溜り求めて、徳川道の起点付近で食事とした。

 さて、帰路のコースはどうしよう?今日は長峰山、摩耶別山、摩耶山とピークを巡って
みようということだけを粗々決めていただけで、帰路に関してはこれといって決めてはい
なかった。そこで谷口さんの意見で天狗道を布引滝方面へ降りればどうかということにな
り、当初は「ロープウェイで下山してもいいかな」などとお気楽に考えていたのが、結局、
なかなか歩き応えのあるコースとなったのでした。(^^;

雪のアゴニー坂。摩耶夫人の像がある

 ドライブウェイを西へ5分ほど。自然石を積んだような階段が見えてくる。登り口に摩
耶夫人らしい30cm位の立像がある。アゴニー坂。顎に膝(knee)がつく位の急坂で
あることから名づけられたというのは冗談。(笑)しかし、凍った雪が油断すると危険。
アイゼン装着も考えないではなかったが、登りでもあり何とかこらえる。登りきると右手
奥にササに囲まれて神戸水道局の施設があり、その辺りが摩耶別山の標高点であるようだ
った。そのまま道なりに進むと、丁度、天上寺の裏手になり、水道局の施設への取付け道
路と合した右手に裏参道がある。石で出来たカエルの置物に「若がえる」とある。とりあ
えず撫でておこう。(^^; 天上寺は創建が飛鳥時代に上るという古刹。摩耶夫人を祀ると
いう珍しい寺であるが、惜しいことに昭和51年に火災に遭い、今の建物は再建されたも
の。その真新しい本堂の前の広場は南西方向が遮るものとてない展望台。須磨アルプスや
淡路島、明石海峡大橋が広がる。夕陽が落ちる様はさぞや西方浄土を彷彿とさせるに違い
ない。法道仙人の像の前を通って北方向を眺めようとしたが、木立が邪魔をし、猛烈な風
で帽子が吹き飛ばされてしまう始末でとても長居は出来ず。早々に引き返す。

天上寺境内。奥の山が摩耶別山

 天上寺を出て広い道を行くと、摩耶ロッジ(オテル・ド・摩耶)。途中に長峰山や先程
歩いてきた尾根が一望のビューポイントがある。更に圧巻は掬星台の展望台。記念碑台よ
り展望は良く、阪神間は言うに及ばず、播磨方面や対岸の泉州方面まで眺められる。流石
に風が強くて寒い為か人影はまばら。光る石の散りばめられた歩道を歩き西へ向かう。強
風で運転休止かと思ったらロープウェイは運行しているのだった。

摩耶山への遊歩道から案外鋭い長峰山

摩耶山の掬星台より大阪方面を見る

 サンテレビやNHKのパラボラ施設を左に見て降りて行くと左手に高みが見えてくる。
ササに囲まれた鬱蒼とした中、道が錯綜しているが、高い方へと向かう内に丸い小さな広
場に出て、少し離れてポツンと三角点が見つかる。摩耶山の三等三角点だが、最高点にあ
るわけでもなく、更に展望も得られず、訪れる人は少ないらしい。

猿田彦神社。ここから約20m東に三角点がある

 三角点から西へ20mも戻ると、猿田彦大神を祀る祠がある。祠の下は大きな岩「天狗
岩」があるとのことだったが、それらしい岩は気づかなかった。それにしても六甲は天狗
にまつわる名前が多い。これから降りる道は天狗道。長峰山の頂は天狗塚。天上寺の開祖
は法道仙人。周囲には怪異な岩もあちこちにあるので、山林修行する、所謂、修験者たち
が多く徘徊したのであろう。それを天狗と見誤ったのだろうとは、説明書きにある謎解き。
「うむ、うむ。」納得。

 摩耶山の最高点を辞去して、六甲全縦走路でもある天狗道に向かう。下る直前、北側が
開け、黒岩尾根のアップダウンの向こうに丹生山系が起伏しているのが眺められる。

 最初は自然石の階段。下るに従って岩がちのゴツゴツした道は赤松とツツジが多くなか
なかいい雰囲気。蛇行しながら地蔵谷への分岐のある鞍部を抜ける。すると今度は南が開
けた岩のテラスがある。北風も遮られポカポカとしていい弁当ポイントである。

 アップダウンが結構あるが、向かいに並行して走る黒岩尾根はもう少し厳しいそうだ。
ヤブツバキが多い小さなピークを巻くと学校林道との分岐。続いて稲妻坂。台風で荒れた
芋谷の改修工事現場を抜けると、なるほどつづら折れの道である。ここまで来るともう展
望はなく、ひたすら前へ進むばかりだが、再び左手が明るくなって、谷を隔てて世継山の
上に建つ欧風の建物は夢風船の山上駅である。

 森林公園・黒岩尾根コースとの出合を過ぎると、谷あいに屋根が見えてくる。市ヶ原に
着いたようだ。バンガロー風の廃屋が荒れた感じを醸す。やがて右から生田川が近づいて
きて、トイレと自販機、数脚のベンチが置かれた桜茶屋に着く。

 あけぼの茶屋、紅葉の茶屋と数軒の茶店が続く布引谷の谷あい。水は意外に薄青色に澄
んでいる。夏は子供らの歓声が谷あいに木霊する所。やがて神戸水道局の敷地内に入ると
布引貯水池が見えてくる。布引断層の説明などを読みながら、年末に訪れた千刈ダムより
先に明治33年に完成したという布引ダムの横の階段を下りると布引渓谷。生田川は岩盤
を割って深い渓谷を刻むが、所々で滝を作る。それが布引滝だが、上で堰き止められて水
がほとんど流れていない。
「これじゃぁ、小便滝やなぁ」

布引滝(雄滝)水がありません(笑)

 新神戸オリエンタルホテルの特徴ある高層ビルが見えてきて、この辺りまで下ってくる
と散策客も多い。なんだか箕面の遊歩道を思い出す。句碑も到る所に。そんな時、
「ん?」
目を疑った。雌滝近くだったか、谷に張り出してなんと民家が!大震災の時はよほど怖か
ったんではなかろうか。しかも断層の上だ!肝っ玉の小さい小生なぞ、とても住めたもの
ではない!(笑)

 その民家への取付道路がある砂子橋を渡ると、遠くから電車の発車のベルの音。降りて
来た所は新幹線の新神戸駅の裏である。だが、ここからがまた難路。なにせ都市空間は車
優先社会だから歩行者は思った通りに歩けないのだ。迂回したり、とてつもない歩道橋を
渡って、ようやく三宮駅に着く。

 初詣を兼ねた六甲散策。腹ごなしのつもりが終わってみれば充実した歩きとなった。お
付き合い下さった谷口さんに感謝。今年も無事に歩けますよように。帰宅したら足の付け
根が少々痛いのでした。(笑)


【タイムチャート】
9:00自宅発
10:00阪急六甲駅
10:32〜10:36神戸八景伯母野住宅碑(265m)
10:40長峰山登山口
11:05〜11:08高圧鉄塔(六甲線bX)(475m)
11:38〜11:45長峰山(687.8m 四等三角点)
12:03〜12:07高圧鉄塔横のベンチ
12:15杣谷峠
12:25〜12:50徳川道の穂高湖側起点付近(昼食)
13:05摩耶別山(717m)
13:10〜13:15とう利天上寺
13:30〜13:37掬星台
13:45〜13:50摩耶山(702m 三等三角点(698.6m))
14:00地蔵谷分岐
14:30学校林道分岐
14:55地蔵谷・森林公園コース分岐
15:05桜茶屋
15:45〜15:50布引滝(雄滝)
16:16阪急三宮駅


長峰山のデータ
【所在地】神戸市灘区
【標高】687.8m(四等三角点)
【備考】 六甲山系を刻む杣谷の東に延びる尾根上の一峰です。山
頂に天狗岩と呼ばれる岩があり、登ると六甲山中の展望
台と思える程の360度の大パノラマが展開します。三
角点はその岩上に置かれています。
摩耶山のデータ
【所在地】神戸市灘区
【標高】702m(三等三角点 698.6m)
【備考】 六甲山系西部に位置し、摩耶夫人ゆかりの天上寺が山上
にあることが山名の由来です。南の展望が良く、掬星台
からは神戸港、大阪湾、淡路島、明石などが一望できま
す。布引から登るのが一般的ですが、ロープウェイが通
じており、観光地としても知られています。尚、標高は
摩耶別山(717m)の方が高く、三角点も最高点にあ
りません。
■関西百名山
【参考】
2.5万図『神戸首部』



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