金剛山〜名残雪の丸滝谷遡行

平成18年 4月 1日(土)
【天候】うす曇
【同行】別掲
雪の残る上の丸滝の脆い岩壁を登る


 金剛山は丸滝谷に行かないかとのお誘い。はて?聞きなれない名前に、小生は「そこは
何処?、貴方だーれ」状態。集合場所が水越峠手前の石筆橋とのことなので、手元のダイ
ヤモンドトレール地図を広げると...。ありました。石ブテ谷の支谷である石ブテ東谷
の、そのまた支谷である。実は他にも候補地を考えていたのだけれど、ここは勝手知らな
い者があまり手を出さない領域だ。この機会を逃すまい。急遽、方向転換。案内して頂く
ことにした。(^^) 結果は金剛山にまだこんな所があったのかと思える秘境?(笑)。 滝
で足を踏み外して水しぶき。岩登りでは古いトラロープが切断したり等のあわやというハ
プニングも続出。最後の笹を握っての道なき急登などもあって、何はともあれ無事が何よ
り。中々気の抜けないコースだったのでした。

 今まで金剛山は西からのアプローチばかりで北からは初めて。水越トンネル西口に車を
止めるのは、大和葛城山に青崩から登って以来である。8時ジャストに到着。もう路肩に
数台の車があり、準備している間も幾台かの車が水越峠へ向かっていく。金剛バスもやっ
てきた。日祝だけ運行する路線バスらしい。
石筆橋。太尾尾根の起点だ

 まだ誰も来ていない。石筆橋を確認しうろうろする。何だかフェンスに中に『重石境』
と刻まれた石標を見つける。ガイドにある重石とはこれらしいが一体なんだろうな?この
辺りでは、昔、水争いをしたというから、その名残なのだろうか。

 一匹のビーグル犬が足元に近づいてきた。白い髭のおじさんが四駆から降りて身支度。
うちにも犬がいるので、聞けば9歳の雌だとか。一緒に山登りするらしい。それでピンと
きた。やっぱり金剛山に詳しい奈良の爺爺さんだった。そんな話に興じていると、他の皆
さんも一台の車に集合してやってくる。

 今日は囲炉裏に属する皆さんとご一緒。囲炉裏のHPでよくお名前を目にするどんかっ
ちょさんもご一緒である。ひとわたり自己紹介を終えて出発。水越川に架かる石筆橋を渡
る。欄干がガードレールだ。左手にログハウス風の民家を見て、コンクリート舗装の林道
を進む。間もなく太尾尾根コースの分岐を左に見送る頃、右に深い石ブテ谷が次第に現れ
てきて、向こう側にも林道が走るのが分かる。砂防ダム付近には東屋もある。

 やがて石ブテ谷は石ブテ尾根によって東谷と西谷に分かたれる。東谷に架かる橋を渡る
とその先からは清流沿いの山道である。石筆橋の辺りで標高は400m。今日は久しぶり
に凡そ700mの標高差をこなすのだが、ゆるゆるとした登りでその実感がない。しかし、
この後、一気に借金を返す羽目になるとは、未だ知る由もない小生なのである。

金剛山では稀な雑木主体の清澄な石ブテ谷

 所々、窪みには先日の雪が消え残っている。そんな中でも木々の枝先は薄赤く若芽が膨
らみつつある。ヤマネコノメソウが小さな花を付け、雪の下からフキノトウが顔を見せて
いる。せせらぎの音も気のせいか弾むように聞こえる。本格的な春の足音を聞く瞬間であ
る。
残雪の中に健気にフキノトウが

こんな連瀑が続く

大峰の奥駈道に見紛うばかりの回廊もある

 
 この辺りはもう沢自体が道。流れを何度も渡り返しながら、歩きよい場所を探していく。
中尾ノ背や勘助屋敷に向かう沢に懸かる滝を見物して先へ進むと、徐々に傾斜も増して、
小さな滝が連続するようになる。小瀑ながら、水に濡れ、苔も生えているから侮れない。
ズルッと滑ると、打ち所が悪ければ非常に危険だ。メンバーのお一人が踏み外した。幸い
ザックがクッションになって事なきを得る。一瞬、小生を始め言葉をなくす面々である。

 谷の突き当りを右に折れて、すぐに左の谷に折れ返す。そうして左の奥まった岩壁に白
い襷を垂らしたような小滝を見る。近くの小枝に下の丸滝(東の丸滝)と小さなプレート。

 下の丸滝から更に遡ると、やがて左手に岩壁が現れる。上の丸滝であるが、こちらもチ
ョロチョロと申し訳程度の水。落ちるというより伝っているという表現の方がピタリとく
る。ただし高さは10m以上はありそうである。見上げている間にもバラバラと岩のかけ
らが落ちてくる位、風化が激しく、ロープがなければとても上がれそうにないが、幸いト
ラロープが用意してある。落石に気をつけて、一人が登った後に次のメンバーという具合
に薄く雪がへばりついた崖にトライしていく。あまりロープに身を任さずに、靴をやや蹴
り込みながら上がる。直登ではなくやや斜めに上がっていくのと、足掛かりも存外しっか
りしているので、滝の苔むした岩を登るより楽。といっても足を滑らせば、下手をすると
命はない。慎重に、慎重に。次々にクリアするが、レオさんが登り始めたら、危ない!1
m近く落ちたのではなかったか。古いロープを固定していた針金が腐食していたらしく根
元からスッポリ抜けたようで、危うい所であった。

 登り切ると今度は泥地獄が待っていた。流れは無くなり、雪が溶けて水分を含んだ土と
急斜面が行く手を阻む。そして源頭では道もなくなった。とはいっても弱い笹と細い潅木
だけなので何処でも登って行けそうだが、傾斜がきついのと、土が主体なのでよく滑る。
朽ち枝も多く、運悪く手にするば「ボキッ!」。なんとか笹の根元を数本握ってかろうじ
て難を逃れつつ、左の植林境を目指しトラバース気味に進む事にする。その植林境には踏
み跡らしいものがあり、テープもあって聞けば中尾ノ背コースなのだという。そこから凡
そ10m登ると明快な道に出た。石ブテ尾根道との出会いで、頭が壊れた黄色の境界見出
し標と赤プラ杭がある。小休止して長くなった隊列を整える。

 この出会いからは一転、植林のゆるゆるとした斜面。登りきった所で左から明瞭な道が
合流していて、二人の中年ハイカーと出会う。後で教えてもらったが、ここが六道の辻と
呼ばれる場所で、ガンドコバの林道やダイトレ道からの分岐道と合流する場所であった。
大仰な名の割りには気づかないで通り過ぎてしまうような所だ。右に折れて、植林の中の
最後の一登りすれば大日岳に到着である。途中に「Hさん安らかに」と刻まれた小碑を見
る。

 頂上はちょっとした広場。多くのハイカーが思い思いに休んでいる。寒暖計を見ると気
温11℃。あったかい。あら、見覚えある犬が...。石筆橋で出会ったビーグル犬だ。
小父さんのにこやかな顔もある。石ブテ谷の西谷を遡行してきたそうである。

 転法輪寺の方へ向かう道は多くの人が歩くのでまるでぬかるみ。足を滑らせるとこれは
大事だ。靴もドロドロ。(^^; そんなことで足元に注意が向いているうちに、なにやら前
方からザワザワと喧騒が聞こえるようになる。今日は好天なのでえらく人が多いのかなと
いぶかしく思っていたら、なんとトタン屋根を叩く雨だれの音。飛び出した所は転法輪寺
の庫裏の横の路地なのだった。

 流石に多くのハイカーがたむろ。その間を売店で飼われている、あのボンレスハムみた
いな犬が餌を求めてうろうろしているのだった。売店の前には雪で作った山があるが、こ
の暖かさでだいぶ小さくなったとのことであった。

 食事は国見の山頂広場で摂ることにしたが、足場が悪い。練成会が建てた舞台のような
建物が空いている。パーティの中には練成会のメンバーが2人も居ることだし、よかろう
ということで使わせていただく。

 ところで金剛山でいいのは売店があること。値は少々張るがやむをえない。1L入りの
ビール大缶2本を買ったが、あっという間になくなった。(笑)

 帰路は前述の中尾の背を降りる予定だったとのことであったらしいが、ビールをしこた
ま飲んだ連中も居るので(実は小生もなのだが (^^;  )大人しく青崩道を下る選択と
なる。セトまでは黒栂道と同じであるが、その先は小生は初めてである。

 水分道や鞍取坂の道を分けながら、ゆるゆると下る尾根道である。途中、大和葛城山の
ビューポイントがある。

青崩道途中から大和葛城山が美しい

 下るに従って雪も消え、薄紫のショウジョウバカマの群れを愉しみながら歩く。時折、
右手(東)に顔を出すのは石ブテ尾根でその向こうが往路の丸滝谷である。山主が設置し
た立ち入り禁止のフェンスを過ごす頃になると、国道を走る車の音が聞こえ始めるが、垣
間見える民家の屋根はまだまだ遥か下である。それ程、左の小峠谷や右の石ブテ西谷は深
い。その内に往路で眺めた堰堤が視界に入ってくる。杉林を抜けるとそこは石ブテ谷の左
岸の林道。トイレは直ぐそこである。
石ブテ谷左岸の林道に出てきた

 河内ワインのワイナリーへ向かうという皆さんとはここでお別れ。並んでいた車も少な
くなっている。スリル満点の金剛山のバリエーションルート。皆さんお付き合い有難うご
ざいました。

■同行 グリーンさん、こごせさん、越路さん、どんかっちょさん、のりかさん、
    りょうさん、レオさん(五十音順)

【タイムチャート】
6:50自宅発
8:00〜8:45石筆橋(集合地)
10:24〜10:26下の丸滝
10:37〜10:56上の丸滝
11:25〜11:35石ブテ尾根道出合
11:40六道の辻
11:50〜12:00大日岳(1094m)
12:10〜13:16山頂広場(昼食)
13:50〜13:53セト
14:10鞍取坂分岐
14:45水分橋


金剛山のデータ
       青葉輝く金剛山』を参照下さい
【参考】金剛葛城自然歩道ダイヤモンドトレール地図



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