駒ノ尾〜ほんのちょっぴり秋めいて
 
平成18年 8月26日(日)
【天候】曇りのち時々晴れ
【同行】単独
林道ダルガ峰線からガスに包まれた駒ノ尾


 真夏の間はどうしても高い山に眼が行き勝ちで、東の方に向かう事が多かったけれど、
今日は久しぶりに西方面へ。向かうは以前、若杉原生林へ向かう際に気になっていた後山
連山に属する駒ノ尾。気が向けば北か東、いずれかの三角点峰にもと目論んでいたが、事
は思いもかけない方向へ。そしてお山は先週とはうって変わって涼しく、さしもの酷暑の
夏も遠のいて、ちょっぴり秋めいた感じがしたのでした。

 兵庫県西部。屈指の清流千種川沿いに北上する。川原では太公望達が自慢のカーボンロ
ッドを振り立てて、鮎を追っている。加西付近から思わしくない空模様となり、雨粒も落
ちてきて気勢を削がれる。どうしたもんかと思案投げ首。まあ、駄目ならば若杉を歩くの
もいいだろうと、とりあえず現地までと車を駆ってきたけれど、鍋ヶ谷渓谷に入るとやや
空も明るさを取り戻したようだ。駒ノ尾登山口と書かれた看板前には数台分の駐車場があ
り、東屋もある。勿論、誰も居ない。
標識は立派だが、取付きが少し分かり難い
千種側の登山口

 登山口の大きな標識の割りに、取付きは草むしている。朝露なのか先般の雨の所為なの
か、ズボンの裾はぐっしょり。右手の沢沿いの、杉の若木が植わる細い平地を探るも、は
っきりした道は無く、左の1m程度高くなった土手に上がるとはっきりした小道がある。

 ほの暗くじめじめした道である。左右に小さな流れ。今にもヒルが首をもたげてきそう
な感じで気持ち悪い。少しおっかなびっくりで杉林を少し進んでいく内に、左から沢音が
近づいて横を流れるようになった。このまま沢沿い?(いややなぁ)と思う間もなく、道
は沢を横切って左の山腹を巻くように伸びる。(あな、嬉しや)

 ところでこの道、地形図上では林道と交差するはず。登山口の右手に林道があったので、
てっきりそれと交差するのかと思いきや、行けども全くその気配は無い。帰宅してGPS
のトレースで確認すると、地形図の点線路の北300m辺り、丁度、池の表示付近から取
りついているのだった。地形図の点線路を歩いていると思ったのは錯覚。但し、駒ノ尾の
北尾根上の中国自然歩道との合流地点付近では、二つは重なるから、ちとややこしいのだ
った。(笑)

山腹を巻くような千種側の登山道。

 テープを追って、若い杉林の中の道は時折、下から大きな沢音が聞こえるが、谷底へ降
りる気配は無く、山腹を帯の様に巻いていく。山仕事道を兼ねた古くからの道らしく、知
らぬ間に高度を上げて行く感じであまり疲れない。日差しも無く涼しいけれど、湿度がか
なり高い。そうして小さな沢が近づいてくると巻き上がるようにジグザグに斜面を上がる
ことを、二回ほど繰り返す。

 途中、まだかなり高く見えた稜線も、ササが出て来る頃には余程近い。やがて乳色にか
すんだ中に疎らな杉林の影がにじみだしてきて、にゅーっと道標が現れた。峠に着いたら
しい。木を転がしただけの手頃なベンチが一つ。水分補給の一休み。

 北方向はダルガ峰へ1850m、南方向は駒の尾へ950mとある。ダイトレのような
いい道がついているが、これは中国自然歩道なのだそうだ。そしてここは大海里谷とある。
北にはその名を採った四等三角点峰『大海里』の高みが見えている。先によって行こうと
も思ったが、とりあえず駒ノ尾が先決だろうと、南へ向かうことにする。

 南への道はすぐに左に折れて50mほどの一気の登り。1211m標高点ピークである。
登りつくと後はほぼなだらかな広い尾根道で、本来ならスズタケが密生していたのであろ
うが、道の分だけ綺麗に刈り込まれて歩きよい。ちょうど、釈迦ヶ岳の旭口の取付きに似
た感じである。そのササの中を南に向かっていると、時ならぬ法螺貝を吹き鳴らすが響い
てくる。そうだ、後山一帯は本来修行の山なのである。それにしても濃いガスの中から湧
き出すような音は少々幻想的ではある。

避難小屋の前
駒ノ尾山頂はここから右に少し入る

駒ノ尾山頂は濃いガスの中で展望皆無

 ガスは益々濃くなり、その中から現れた大きな建物は駒の尾の避難小屋。道が左に90
度折れる所である。駒ノ尾の山頂は自然歩道から少し離れており、笹原の中につけられた
やや登り勾配の道を進むと、ぽっかり空いた山頂広場である。後山付近の登山路の説明板
と、東西南北を刻んだ石柱は日時計もかねたものらしい。離れて二等三角点。そこに先着
の法螺貝を持った4人の小父さんグループ。姫路からやってきたそうだ。醍醐派に属して
いるそうで、若い頃は全国を巡ったというが、近頃は地元近辺の行場を歩いているそうな。
曰く、森羅万象須らく陰と陽があって、山も例外ではない。駒の尾の登山道も兵庫県側は
"陰"なのだそうだ。で、今日も岡山県側から登ってきたという。

 そんなこんなで、大峰の話などとり止めもなく話していたのだが、その内、下で煮込み
うどんを作って食べるが、時間があったら一緒に食べないかと誘ってくれる。このところ、
当地は午後は雷雨だとも。ガスで展望も見込めず、雨の心配もあって山頂で長居をするつ
もりも無かったので、お誘いは嬉しいけれども、如何せん、車まで戻らねばならない。
「いや、大丈夫や。そっちまで車回して乗せて行ってやるさかい」
林道が繋がっているそうな。それならば、何等問題無し。一も二も無くお言葉に甘えるこ
とにした。(^^; かくて話はまとまり、小生も岡山側へ下ることにする。

 再び小父さん曰く、こちらは"陽の道"。確かに、笹原が収まると、ブナやミズナラ、ナ
ナカマドなどの明るい疎林となる。兵庫県側と違ってよく整備され、これはもう遊歩道だ。
これも小父さん曰く、故橋本竜太郎が首相になり、お金を地元に落としたお蔭なのだとい
う。兵庫県側は皆無であった登山者が三々五々登ってくる。やはり岡山県側がメインルー
トなのだろう。
幻想的なブナなどの雑木の林(岡山県側)

 幻想的な乳色の霧が流れる中に、ナナカマドは早くも色づいた葉をつけた枝もあり、ヤ
マジノホトトギスの白い花も散見される。が、何よりもススキが赤茶色い穂を出し始めて
いて、厳しい残暑の折でも、確かな足取りで季節は移ろい行くのを感じ取ることが出来る。
その内、パラパラと雨が降り出したが、幸いすぐに止む。展望台の表示があり、一つ目は
木組の櫓。さらに下った所にあったのは立派な東屋である。

 まもなく木の間越しに、舗装車道が見え隠れし始めた。と思う間に立派な木橋が現れて
登山口のこれまた立派な駐車場に出た。標高差は200m程度。初心者向けの森林浴ハイ
キングコースだ。駐車場には水場もあるが、飲めるかどうかは分からない。

トイレ、駐車場完備の岡山県側の立派な登山口

 小父さん達の車はまだ新車の香りがするアルファード。これに乗って林道ダルガ峰線を
北へ15分ほど走る。一車線の新しい舗装路だが、落石が至る所にあるのがちょっと気に
なるところではある。ダルガ峰のすぐ下に当たるという場所にトイレ完備のこれも新しい
東屋があって、小父さんたちはここで煮込みうどんを作るのだという。先客の家事連れが
焼肉の準備中であったが、横を空けてもらって、早速準備を始める小父さん達。おっと、
缶ビールが出てきた。肴は瀬戸内で捕れたタチウオやアジのから揚げ。ウインナーやウニ
クラゲも。豚肉と焼肉のタレを鍋に入れ、だしの代わりとする小父さん。焼酎の麦茶割り
も頂いて、うーん、鼓腹撃壌!腹いっぱい。ちなみにここにも水場があって、冷たい水が
出ている。これは飲めるかも。
東屋で宴会開始

 驟雨が過ぎると、東屋の木製デッキ下から涼風が駆け抜ける。キリギリスが鳴き始めた
が、風はもう秋を感じさせる雰囲気。駒の尾を見ると、鞍部の展望台が眺められたが、7
合目以上は雲の中で、これは最後まで晴れなかった。

 ”ダルガ峰”とは良く云ったもので、車窓から広がる景色は台地状を呈してさしたる起
伏もない。やがて林道は若杉に続く峰越峠へと向かう林道と合流。右に折れると、ちぐさ
高原のスキー場の中を抜けて、中河内の方へ降りていくのは若杉の時に経験済み。さらに
2、3分も下ると、駐車地点の東屋がそこにあった。

 午前中の陰気で今にも泣き出しそうな雲行きとは打って変わって青空が覗く。小父さん
たちは一っ風呂浴びて帰るという。小生も後ろをついていく事にする。

「エーガイヤちぐさ」で一ッ風呂

 どんどん下って千種町の中心部。千種川を渡って日名倉山の登山口のあるR429に少
し入ると「エーガイヤちぐさ」がある。露天風呂は無いが、空いていてほぼ貸切状態。し
かも300円とはリズナブル。小父さんにここでも「ビックル」をおごってもらう。何か
ら何まで到れり尽くせり。本当に有難うございました。m(_ _)m この場を借りてお礼申し
上げます。

 その後はエアコンのよく効いた休憩室でダベリング。ETCの通勤割引狙いの時間調整
も出来て好都合であった。(何せ宝塚−山崎間が2600円のところが1400円なのだ)

 初秋の山で思わぬ余禄に預かった後山連山。残念ながら展望は叶わなかったけれど、こ
れはまた来いというシグナルだろう。(^^; 秋晴れの日に今度は縦走してみましょう。


【タイムチャート】
7:15自宅発
9:30〜9:40千種町登山口(駐車地)
10:29〜10:34中国自然歩道出合の尾根(Ca1,120m)
10:441,211m標高点ピーク
10:55避難小屋
10:58〜11:18駒ノ尾山(1,280.7m 二等三角点)
11:55東粟倉側登山口



駒ノ尾山のデータ
【所在地】岡山県英田郡西粟倉村、美作市(東粟倉)
【標高】1,280.7m(二等三角点)
【備考】 岡山県と兵庫県の県境を形成する後山山塊に属し、岡山
第二の高さを誇ります。山頂は笹原で展望が広がり、奥
播磨や奥美作の山々を一望する事が出来ます。後山やダ
ルガ峰からの中国自然歩道を利用した縦走が一般的で、
直接の登山道は兵庫県と岡山県側からがありますが、岡
山県側がより整備されており、一般的です。
【参考】
2.5万図『西河内』、『坂根』



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