秋色の古光山で激登降を愉しむ
 
平成18年10月14日(土)
【天候】曇りのち時々晴れ
【同行】呉春さん、たらちゃん
古光山の痩せ尾根から。
後古光山と高原道路が見える


 初めて曽爾高原を訪れたのはいつだったろうか。ちょくちょく山へ出かけ始めた駆け出
しの頃だった。ススキの原をかき分けて、亀山峠に登り、ふうふういいながら二本ボソに
行き着いて、たまたま一緒になった地元の小父さんから、目の前に広がる山々の名を聞い
たことだった。大洞山、尼ヶ岳、局ヶ岳、三峰山、鎧岳、兜岳、住塚山、国見山などなど。
その中にあって、鋸の歯のようにギザギザとした山容の山が、それだけポツンと飛び離れ
た感じで盛り上がっていたのを覚えている。当時はその記憶を留める程度であったのだが、
大洞山や三峰山などに登る度にその山が目に入り、次第に気になる山の一つになったのだ
けれど、何度か行く機会がありつつも今日に至ったという次第。週末は久しぶりの晴天。
それではご案内しよう。

 同行を申し出てくれた呉春さん、たらちゃんを乗せて、8:30に榛原駅発。R368
は暫く見ぬ間にトンネルが完成して、随分走り易くなっている。もっと時間がかかるかと
思っていたのに、小一時間もせぬ内に農免道路の分岐だ。「みつえ高原牧場」の標識を頼
りに左折する。草刈作業を前に休憩中の小父さん達に道を聞きながら、最初の分岐を右に
曲る。(こんな山の中にこんなええ道いるのかな)と思えるほどの二車線の快適路を進め
ば赤い牧場舎が見えてきて、左手に目指す古光山の連山が現れるが、晴天のはずが何故か
上部は濃いガスの中である。台地の上に立つ牧場管理事務所らしい建物の下を、左に折れ
る一車線の林道。これが大峠に向かう旧道だろう。牧場付近の案内図看板が目印だ。その
道に入って300mほどで取付きの大峠にある「ふきあげ斎場」前に出た。今日は葬儀も
無いらしく斎場の出入り口にはチェーンが下ろされている。斎場前はT字路。少し広まっ
た路肩を借りる。
大峠の「ふきあげ斎場」が取付き

 先着は誰もいない。今日も静かな山行になりそう。(^^; 準備を整えて斎場出入口の横
(道標が立っている)から山道に取付く。斎場の建物の敷地から離れた途端の急斜面。し
かも直登で湿った土の斜面ときているから、油断するとズルズル、ベッタン。手頃な潅木
を掴みながら高度を上げていく。もう林道沿いの電柱があんな下にという位、あっという
間に上がってしまう。杉林になって今度はジグザグ。そこには古光山0.9km、後古光山
1.7kmの道標が立つ。

 道は一旦、たわんで再び胸突き八丁の急斜面。今度は一転、岩がちの道である。登り始
めて40分弱。やや小広い台地に出る。なぜだかホオズキが群落を作っていて、赤く色づ
いた実が目立つ。周囲はミズナラやアセビ、ツツジの雑木林。早くも色づきはじめたハウ
チワカエデもある。その先の高みで小休憩。てっきりここが南峰と思ったらとんだ勘違い
だった。

 本当の南峰(五峰)は、休憩した峰の少し先の岩峰で、山名板が立つ。残念ながらガス
が流れてほとんど展望がない。時たまガスの切れ目から曽爾村の家並や農地が覗く程度。
晴れていればかなりスリルがあるだろうに。

北側の痩せ尾根から見る南峰(五峰)

 この辺りは岩の痩せ尾根で、木々が繁っていなければ南峰同様、かなりの高度感とスリ
ルがあるだろう。人の声がするので足元に注意しながら振り返れば、男女2名の人影が南
峰の頂に望まれた。

 四峰、三峰、二峰はどれだかはっきりしない。それらしい高みは一つ二つあったけれど。
気がつけば雑木の茂る本峰に着いていた。縦長の山頂は雑木が繁って展望はない。山名板
の横で記念撮影していると、南峰方向から賑やかな声。次に向かおう。

古光山山頂にて筆者

 ガイド本にあるように直進する踏み跡もテープもあるが、フカタワへは山頂の三角点の
手前5m位の所にあるテープが沢山巻かれてある所を降りる。そして、ここが今日一番の
難所。随所にロープもあるが、ほとんど立ち木にすがらねば降りることが出来ない直降の
コースだ。岩がちの所あり、土の所あり。雑木が適度に生えているので助かるが、なけれ
ば一寸つらいだろう。

 杉林の中に入ってようやく急坂は終わりを告げる。道標のある所で小休止。
「フーッ」。地形図を前もって眺めて、(かなりのもんだろう)と予想はしていたけれど、
聞きしに勝る急斜面だった。しかも結構長かった。地形図を見ると高低差は約200m。
大峠から登って折角稼いだ高度を全て吐き出してしまったことになる。道標にも「急坂注
意」と書かれてあるから、ずり落ちたりする人も少なくないのだろう。

 杉林の小休止した所から100mも進めばフカタワで、典型的な峠のイメージだ。南は
牧場、北は曽爾へのエスケープルートが走る。後古光山へは直進だ。気持ち良い雑木の林
を縫って進み、やや左に回り込むと、やたらロープだらけの岩場に出くわした。ロープに
体が絡め取られそう。(笑) 現に呉春さんがクモの巣ロープにストックが引っかかった
りなんぞして悪戦苦闘。やたらロープを垂らせばいいというようなものでもないであろう。
せいぜい2、3本もあれば十分なのだが。
フカタワから後古光山の急登
ロープがからまります(笑)

 岩がちの急登はまだまだ続くが、思うほど大したことはない。小さな露岩が手頃なとっ
かかりとなって登りやすい。ぐんぐん高度は上がって先程まで歩いてきた古光山が顔を出
し始めた。と思う間もなく後古光山の狭い山頂に出る。

 ガスが晴れていい展望だ。曽爾高原には沢山の人出らしく駐車場は満杯。大洞山、尼ヶ
岳から学能堂山、三峰山などが居並んで、乾いた風とあいまって清々しい。ここで食事も
考えたが、通り道なので適地を求めてもう少し先に進むことにしたが、結局、山頂から凡
そ100m先の、道がカーブしてやや膨らんだ部分に落ち着くことにした。座り込むと待
っていたかのように正午のサイレンやらチャイムが下界から鳴り始めた。

 一時間ほど大休止して尾根を更に北へ向かう。こちら側は急傾斜部分は木の階段が整備
されている。しばらくは雑木の中だが、右に草むした林道が現れる頃、豁然と目の前が開
け、二本ボソ、倶留尊山に曽爾高原が広がる。ススキの原に雲の影がくっきりと。足元に
は時期外れのエイザンスミレが白っぽい花を咲かせている。

後古光山の北尾根から曽爾高原
右に亀山、中央に二本ボソ、その奥が倶留尊山

 道は林道風の道と合流し、ススキがたなびく尾根道となる。右下には舗装された車道が
伸び、数台の車が止められている。左右はヒキオコシや黄色いキク科の花が目立つ。

 「これは何の木園」への小道は自然に帰っている。植えつけされた木々もほとんどが枯
れたのか保護用の丸木の木組のみが残っているだけの物が多い。植えっぱなし、やりっぱ
なしのお役所仕事の典型である。でもまあこの方がいいか。本来の自然に戻るのだから。
左に地名か建物か良くわからぬが「小屋」と書かれた道標を過ごして、Ca770mの尾根
屈曲点のピークへ進む。杉、ヒノキ林となって、東に向きを変え、やがて斜面は木の階段
となる。これが結構長い。数百段はあるのではなかろうか。とっとこ降りていく内に車道
が通ずる長尾峠。向かいには亀山への道がある。

 車道を右(南)に折れる。ここから曽爾高原は指呼で、亀山や二本ボソに登る白っぽい
人の姿もはっきり見える。ヘリの爆音に空を見上げたら、曽爾高原のススキ原の光景でも
報道するのだろう、新聞社かテレビ局のヘリらしかった。

 舗装林道には結構花が咲いているもの。センブリやゲンノショウコ、ツリガネニンジン
ナギナタコウジュ、アキノキリンソウに、名前が分からぬ黄色いキク科の花が乱れ咲いて
いる。右に上がっていく道を過ごして、左を採って進む。後古光山からの尾根筋の下を戻
るように進んで、二車線の立派な道路に合流する辺りが長尾の集落。ぽつぽつとある民家
は櫛の歯を引くように廃屋になっていて、それを知ってか知らずか、主のいない庭でウメ
モドキらしい木が鈴なりにつけた赤い実を秋の日に輝かせているのみである。日陰にハガ
クレツリフネがフワリと浮かんでいる。

 やがて前方の斜面が草原になれば高原牧場の敷地内になる。時ならぬ人声に、斜面で草
を食んでいた肉牛が怪訝な顔をこちらに向ける。背後には後古光山が三角の鋭い山容を見
せて美しい。牧場は古光山の南側斜面に広がっているので、学能堂山や三峰山のボリュー
ム豊かな姿が一望で、ベンチも置かれている。
高原牧場の車道から端正な後古光山

 なんだかんだと喋りながら歩いている内に、赤い屋根の牧舎が左に近づいてきて、大峠
への分岐道もすぐそこである。大峠には我々以外にもう2台の車。おりしもご夫婦が降り
てこられた。

 時間もあるので、みつえ温泉姫石の湯で汗を流して帰ることにする。何度かその前を通
ったことはあるが、いまだ寄ったことがない道の駅に併設の温泉である。アルカリ単純泉、
さらっとした透明の湯であった。

 かなり日も短くなったようで、榛原に着く頃にはだいぶ日の光も赤っぽくなっている。
距離は短くも、中身の濃い古光山で遊んだ一日。同行の皆さん、お疲れ様でした。


【タイムチャート】
6:35自宅発
8:10〜8:30近鉄榛原駅前
9:05〜9:15大峠(ふきあげ斎場)(Ca730m)(駐車地)
9:54〜10:00五峰(南峰)南のピーク
10:02五峰(南峰)
10:25〜10:35古光山(952.7m 三等三角点)
11:15〜11:18フカタワ南100m(小休止)
11:20フカタワ(Ca760m)
11:48〜11:53後古光山(892m)
11:57〜12:42後古光山の北100m(昼食)
13:08Ca770mピーク(尾根屈曲点)
13:13長尾峠(Ca710m)
14:10大峠(ふきあげ斎場)(駐車地)

古光山パノラマ画像
秋色帯び始めた後古光山から眺める古光山。左に南峰が覗く



古光山のデータ
【所在地】奈良県宇陀郡曽爾村、御杖村
【標高】952.7m(三等三角点)
【備考】 室生火山群に属し、倶留尊山の南に位置する山です。倶
留尊山付近から眺めると、五つの峰が鋸状に波うってい
るのが望まれ、その姿通りの劇登り、劇下りが続きます。
全山、ほぼ自然林と展望に恵まれ、室生から布引、台高
山系の山々が望めます。
■近畿百名山■関西百名山
【参考】
2.5万図『倶留尊山』



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