西六甲お手軽ピークハント
               〜鵯越から市ヶ原
 
平成18年 1月 8日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】単独
鍋蓋山の中腹から菊水山
右のガレの稜線が城ヶ越


 前回に続いて今回もメジャー山域の六甲山。前回は摩耶山から市ヶ原へと下山したのだ
が、帰宅してエアリアマップを広げてみて、市ヶ原の西の六甲全縦走路に三角点ピークが
並んでいるのに気がついた。全縦はとても真似出来ないけれど、そのルートを一部切り取
って、菊水山、鍋蓋山、再度山とお気軽ピークハントと洒落てみましょう。

 前日。最寄り駅までどの位かかるものやら、また、料金はいかほどか調べようとWeb
検索。すると、なんと神鉄菊水山駅に該当する駅はないとの回答。
「ええっ?」
更に調べたら、昨年(平成17年3月)に閉鎖されていたのだった。各停でも停車する電
車が限られているという冷遇された駅は、一日乗降客が10人程度という信じられない秘
境?駅でもあったのだ。さてアプローチをどうするか。一つ向こうの鈴蘭台駅からも道が
あるが殆ど車道らしいのでパス。電車賃も安いだろうし、一つ手前の鵯越からに決定。た
だ、歩行時間は30分の増加である。

 3両編成の鈴蘭台行の普通電車。鵯越駅も自動改札の鄙びた無人駅。小生含めて2、3
人のハイカーが降りた。初めての場所は得てしてまごつくものだが、ここではそんな不安
も杞憂。踏切を渡って左へ廻ると、六甲全縦路はこちらの標識がある。一間幅程度の路地
を駅の裾を縫う感じで進むとすぐに小さな児童公園。神鋼主催の「西六甲縦走受付」のカ
ードが風に揺れている。右は荒れた感じのイヤガ谷。山裾を忠実に巡るように雑木林の中
を歩く。ウォーキングをする初老の方々がチラホラ。

 10分もすると車道に飛び出した。右は烏原貯水池でここは左(北)へ進むと、まもなく
神戸市水道局の烏原ポンプ場が見えてくる。そのポンプ場を過ぎた辺りで車道と別れ、右
に降りていく小道に入るのだが、ようやく山道かと思ったらさにあらず。また車道に合流
する。横を流れる烏原川には綺麗な水が流れている。この付近の地下には新幹線の神戸ト
ンネルが走っているのだが、川の下にトンネルなんて何だか不思議な気がする。

 山麓バイパスの高架橋を潜る。鈴蘭台の下水処理場の施設を右に、坂を登って行くと神
鉄の線路が山手に見えてくる。烏原川に架かる橋の手前に菊水山駅への取付道。
「平成17年3月24日をもって休止云々」と張紙。これだけ最寄に何もない駅も珍しい。
離れて民家と思しき家が数軒あるが、利用者はせいぜいハイカーか、処理場の従業員位な
ものだろう。

旧菊水山駅を電車が通る

 この辺りまでやって来ると、前方にパラボラアンテナを戴く菊水山の山頂が現れる。石
井ダムの白い壁を左にして、また橋を渡って神鉄のトンネル横でようやく山道。でも階段
である。(^^; 少し登った辺りでタイミングよくベンチのある小広場に出る。兵庫登山会
の「あと900m」の標識がある。後から考えれば丁度いい場所に休憩場所があったもの
だ。ここから先、標高差200mの階段の急登が延々と続くのだ。(笑) そうとも知らず
にベンチにザックを下ろし一息。今日初めてお茶を一口。暑い。ヤッケを脱いでザックへ
仕舞いこんでおく。

 丸太階段でまっすぐ登っていく道。直ぐ顎が出る。体がかなり鈍っているのかなと悄然。
でも、あとで地形図を見るとかなりの急斜面なのだった。(^^;; 登るに従って、疲れを
忘れさせてくれる眺め。右手に菊水ゴルフ場のグリーンが広がり始め、背後には全縦路が
走る須磨アルプスや高取山が見え始める。
「しかし、きついわぁ」
汗もドッと。山頂のパラボラアンテナもまだまだ遠い。

 一旦、緩んだ勾配も、花崗岩の石がゴロゴロ転がる辺りからまたきつくなり、またまた
現れた階段に辟易する頃、踊り場がある。好展望。ここでこれなら山頂はさぞかしと思え
てきて、力が湧いてくる。ここまで来ると山頂は直ぐ。えっちらおっちら、目の前にデー
ンとパラボラアンテナ施設が2棟と大きな記念碑が立つ山頂広場に着く。10人近くのハ
イカーやジモティが景色を愉しんでいる。

 兵庫県民局のパラボラアンテナの下は展望台になっている。西から南が一望され、歩い
てきた道筋も追うことができる。直下には神鉄の線路、ゴルフ場、石井ダム。雄岡山、雌
岡山も直ぐ近くだ。
広い菊水山山頂。市民の山だ

菊水山展望台からの眺め。一番奥から鉄拐山、
横尾山、高取山と鵯越方面

 ここで食事とも思ったけれど、まだ少し早いかな。鍋蓋山まで1時間の距離らしいので
先へ進むことにした。北方向に進むと、すぐに鈴蘭台方面との分岐。アンテナ施設の取付
け道路を下っていくらしい。あまり面白くなさそうなコースだ。その後、更に降りると山
頂付近を巡る周遊路と交わり、暫くは雑木林の中のゆっくりと下っていく道が続く。それ
がゴロゴロと岩がちに変わると左手に中里町の新興住宅地を眺める馬の背に変わる。城ヶ
越だ。そうしてこの快適な道筋も、露岩の小ピークを過ぎる頃からぐんぐん下り始める。
それに比例して、前方の鍋蓋山の端正な姿がだんだん高くなってゆく。

城ヶ越手前から端正な鍋蓋山

「オイオイ、もうこの辺でええやろ」
と思わず道に話しかけたくなるほど下ってゆく。それ程、有馬街道(R428)の通る天
王谷は深い。とどめは金属の階段。左に折れて、橋を渡ると長坂堰堤で堰き止められた水
面は真っ白く、完全に凍っている。

 微かだった車の騒音が一気に大きくなると天王吊橋だ。下は天王谷と今は国道となった
有馬街道。橋の長さは30m位だろうか。ハイカーの為に架けたとしか言いようのない橋
である。(^^; 

 対岸の鍋蓋山の登りはさっきとはうって変わって鬱蒼とした常緑樹の中である。初めは
傾斜のきつい直登だが、やがてジグザグを切るようになり、これは菊水山に比べればよほ
ど登り易い。そして登るに従って、植相も常緑樹から落葉樹に変わりはじめ、またまた露
岩が目立ち始めるが、神戸東線bWの高圧鉄塔までやって来ると傾斜も緩み、振り返れば
菊水山。荒れた垂直に近いガレ場があるが、あの近くを歩いていたのだろうか?一寸びっ
くり。偽ピークみたいな小さな岩のピークを過ぎ、風化した岩とアカマツの目立つ中を1
00mも行けば鍋蓋山の山頂に飛び出した。丁度、団体さんが昼食中で賑やかである。

 こちら鍋蓋山も南側は大展望である。菊水山よりも東なので、神戸の中心部が指呼の間。
大阪から堺、泉州にかけての海岸線。友ヶ島。近くは神戸空港、ポーアイ。オリエンタル
ホテル、ポートタワー、ホテルオークラ。今しも一隻のクルーザーが白い航跡を引きなが
ら入港してくる。沖には貨物船がゆっくりと。カップラーメンを啜りながらゆったりと眺
めを愉しむのもおつなものであった。

鍋蓋山山頂から神戸港とポーアイ
奥に神戸新空港の島が見える

 満腹の後はこれまたゆるりとコーヒーブレーク。やおら後片付けをして午後の部へ。六
甲全縦路を東に向かうと直ぐに七三峠への分岐で、徐々に高度を下げながらの尾根歩きが
続く。珍しく植林帯。MTBにも最適の道らしく、自転車野郎にも幾人か出会う。洞川湖
・再度公園分岐を二度過ごして、鍋蓋山から20分位でベンチも置かれた修法ヶ原分岐だ。
近くに再度山の取付きがあるはず。ベンチにザックを下ろして地図を確認すると、修法ヶ
原方面への道から点線路がある。右の山側を注意しながら修法ヶ原方面へ再度越を歩くが、
要領を得ずに車道まで出てしまった。首を捻りながらもう一度探すべく引き返すと、「神
戸市界77」と彫られた石杭が埋まる所に踏み跡があるではないか。試しに辿ると少し荒
れ気味なもののいい踏み跡。そのまま登っていくと間もなく台地に出て、高みへ進めば神
戸市道路公社の基準点の埋まる再度山の山頂であった。

基準点が埋まる静かな再度山山頂

 小さな山名プレートが1枚だけの、雑木に囲まれた静かな山頂からは南にもう1本、踏
み跡がある。大竜寺へ降りる道であろうと下ればすぐに大岩。大杉大天狗の岩とあり、こ
こでも天狗が出てきた。(笑)(摩耶山の項参照

 踏み跡は次第に参道となり、豊姫大御神と名づけられた岩や役行者の石像が現れた後に
は、四国八十八ヶ所の石仏が並ぶ石畳となり、自然に大竜寺の境内に紛れ込むことになる。
弘法大師が入唐前に訪れ、無事帰国後に再び訪れたことに由来する再度山を山号とする大
竜寺は中風除けのご利益があるという。これは参っておかねばなぁ...。(笑)

 長い石段を降りていくと「毎日登山発祥の碑」なるものが道脇に立っていてユニークだ。
ぶらりと道に導かれていけば、自ずから立派な山門の前。森林公園方面からやってくるド
ライブウェイに飛び出すことになる。バス停があったので眺めれば、これまた冬季は運休
なのだった。(エスケープ考えていたのにねぇ...。(苦笑))

 ドライブウェイを横切れば市ヶ原方面で、前回歩いた天狗道から摩耶山へ続く道である。
再度東谷沿いの林道に出ると、すぐに高雄山への分岐があったが、「今回はもうええかぁ」
とパス。ピークハントと銘打つ割には相変わらず軟弱な小生である。(^_^;

 もっと遠いかと思っていたら、意外に近い。神戸トンネルの排気口を右に、林道から分
かれて谷沿いの山道を進めば、見覚えのある桜茶屋横の川原であった。後は前回と同じ道。
紅葉の茶屋の軒先に巨大なスズメバチの巣を見つけたりしながら、今日は布引滝には寄ら
ずに下界へ一目散である。二度目なので三宮までも迷わずに。山手幹線を跨ぐ巨大陸橋も
エスケープできた。

紅葉の茶屋の二階の軒先に見つけた
巨大なスズメバチの巣

 相変わらず三宮付近に来ると山姿が場違いな感じがする。(笑) と同時に、歩いた充実
感と、また下界へ戻ってしまったという落胆感?も。かくも複雑な中年心ではある。(笑)

 帰途の特急電車からの車窓。西宮の奥、冬枯れた六甲の山腹は小雪にけぶっていました。


【タイムチャート】
8:45自宅発
9:58神鉄鵯越駅
10:24旧神鉄菊水山駅前
10:39〜10:41兵庫登山会標識前のベンチ
11:05〜11:15菊水山(458.8m 三等三角点)
11:41天王吊橋
12:03〜12:07高圧鉄塔(神戸東線bW)
12:10〜12:50鍋蓋山(486.2m 四等三角点)
13:09〜13:15修法ヶ原分岐
13:23〜13:24再度山(470m)
13:33〜13:43大竜寺
13:54桜茶屋
14:50阪急三宮駅


菊水山のデータ
【所在地】神戸市北区
【標高】458.8m(三等三角点)
【備考】 六甲山系の西の外れにある小ピークで、昭和10年、楠
公600年祭の時に、松を菊水の紋様に植樹したことか
ら、本来の大角木山から菊水山に変更されたとのことで
す。低山にもかかわらず、山頂からは阪神間は言うに及
ばず、明石海峡大橋、淡路島、友が島、紀泉の山々まで
大パノラマが展開します。
鍋蓋山のデータ
【所在地】神戸市北区
【標高】486.2m(四等三角点)
【備考】 天王谷を挟んで菊水山の東に位置する小ピークです。ガ
イドには展望無しとありますが、こちらも南方向の展望
が良く、特に神戸港、ポートピア、神戸空港、大阪湾方
面は菊水山よりも優れています。
再度山のデータ
【所在地】神戸市中央区
【標高】470m
【備考】 摩耶山の西、鍋蓋山の東にある峰で、弘法大師が入唐後
に、再び登ったのでことの由来します。南側にある大竜
寺の奥の院という感じが深く、山頂直下には亀石と呼ば
れる大岩があります。山頂は雑木に囲まれ展望はなく、
登路も踏み跡程度です。
【参考】
2.5万図『神戸首部』



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