雨にも負けず甘南備山
 
平成18年 3月12日(日)
【天候】雨
【同行】単独
三角点峰から春雨にけぶる甘南備山を望む

 前日の好天から、一転、朝から雨。前日は鉢植えの植え替えなど、細々と雑事にまぎれ
ていたから、今日の播磨の山の予定を期待していたのだけれど、早朝早々と中止の連絡。
「雨降ってるねぇ」
「こりゃー、無理やねぇ」

 雨の一日もいいものだけれど、あまり寒くは無くなったし、傘をさして散策できる所で
も探そうと、ガイド本をパラパラめくる。で、目に飛び込んできたのが南山城の甘南備山。
200mそこそこだけれど、一人前に二等三角点を持つ山である。

 ふらり、10時半の出発。少し道が混んでいる。途中、目に付いたコンビニで弁当と飲
み物を仕入れて、R1からR309へ。かみさんの実家のお墓があるから行き慣れた道だ。
雨が強くなってきたが、ここまで来たら「ええい、ままよ。」(笑)

 西田辺ICを越えてすぐ、左の車道に入る。取付きが判らず、グルッと廻ってJR奈良
線の線路を越えてしまった。これは行かぬと戻って一休寺の酬恩庵。個々からも行けるは
ずなのだが、狭い道が入り組んで判然とせず。地図を見直して、薪小学校を目指すことに
した。『薪』とは面白い名であるが、能の『薪能』の発祥はこの地であるという。

 最初からこうすればよかったのだ。薪小学校を巻いて左に折れると突き当りが川。左に
京奈和道の高架がある。橋を渡ると一本道の農道。デイパックを担いだ単独小父さんが傘
をさして前を行く。「こんな雨降りに物好きな。」って、我が身を忘れて一人ごちる。

 山の麓に駐車場が見えてきた。6、7台は駐車できそうだが、勿論誰も居ない。もうお
昼なので、車の中でカーラジオを聞きながらの昼食だ。

甘南備山への薪の登山口
右は旧道で、左が管理車道

 まずは案内地図で粗々に道を覚える。ゲートから直ぐに旧道というのが別れていくが、
とりあえずは車道で芝生広場方面へ進む。木立の上から人の声が降ってくる。大きくカー
ブすると、そこは芝生広場で東屋に避難して、熟年パーティが宴会しているのだった。目
刺か何か、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。

 広場を過ぎた右手に「きんもくせいの小径」という標識があり、斜面を上がっていく小
道を発見。所々、擬木で作られた階段を登れば車道に合流する。蕾をつけたレンギョウが
植えられたその車道をしばらく行くと右に小さな池と木橋を認める。道標は『竜王の森、
吉やんの滝』とあるが、池横の斜面を擬木階段が上がっているので、そちらを上がると、
またすぐに車道に出た。何のことはない。旧道はみんなショートカット道だった。(笑)

大津越の峠。左手前が最高点への尾根道
右奥が三角点峰への道

 車道を行く場合は左へ進むらしいのを右にとって進むと小さな鞍部に出た。大津越と呼
ばれる峠である。ここには三角点峰方向を表す道標があり、これを確認して、左手の小さ
な尾根をあがる小道を登る。神社へ向かう尾根道である。クヌギやコナラなどの広葉樹の
落ち葉が敷き詰められいい雰囲気だけれど、雨で少し滑るのは仕様がない。左手には車道
がちらちら見える。農道で車で追い抜いた小父さんとすれ違う。三角点峰へ行くのかな?
『峰の森』の分岐を左にとれば玉垣が右手に現れて、へつるように進めば山頂に出る。

最高点への尾根道。散歩に最高です

 ちょっとした広場。これは甘南備神社の境内だからであろう。南のR307へ降りる山
道があり、その横に展望図付の案内板がある。京田辺市街方面が望めるようであるが、勿
論、雨だから視界は延びない。広場の先は薪へ降りる石段があり、これが神社への本参拝
道であろう。その先に旧甘南備寺の跡があるのは後で知った。因みに薪までは1.2kmと
ある。

 甘南備神社の方へ行ってみよう。こじんまりした小さな神社である。が、由緒は正しく
式内社で今昔物語にも記述があるとか。祭神は天照大神他。

 神社の裏手が高みになっている。最高点はここだろう。数m登ったそこは変哲もない小
さな切開き。でも不思議なのは変なプレートが立ち木に架けてあること。『交野山−サン
ドイッチ山 313.2m−甘南備山』とある。
「へぇ?サンドイッチ山?」
聞いたこともない山だ。いや。待てよ。以前、低山徘徊派のMLで話題になっていたよう
な。それで後日、低山徘徊派のMLに投稿すると、どうも交野山の東の三角点ピークのこ
とだと教えて頂く。畜産団地の中なので推して知るべしだとか。それなりの覚悟がいるら
しい。(笑)
甘南備神社。裏手が最高点で
謎のサンドイッチ山の標識がある

謎のサンドイッチ山標識

 大津越の鞍部に戻る。次は三角点峰への尾根道である。といっても広い遊歩道。滑るの
とぬかるみに気をつけて歩く。緩やかな道を200m、少し盛り上がった辺りの道沿いに
二等三角点がある。北方面が開けていてゴルフ場のグリーンが望めるが、目を引いたのは、
丁度盛りの梅林。尾根沿いに紅梅、白梅が植えられていて、その中に黄色い花が鈴なりな
のはサンシュユらしい。尾根の突端は藤棚で、天気がよければここからの展望もよく、枚
方方面が指呼らしい。東には甘南備山の本峰が意外に端整にうずくまっている。

二等三角点『甘南備山』
奥に見える道が梅の尾根筋

 下山は峠まで戻るつもりであったけれど、北西方向に道が伸びており、地形図を調べる
と駐車場方向へ戻れそうなので、そのまま進むことにする。すると、また展望の良い藤棚
があって、『ヒノキの小径』と書かれた道が北方向へ分岐しており、こちらを採る。

 最初は雑木林だが、次第にヒノキの若木の林になる。赤白に塗られた高圧鉄塔が木の間
越しに見える横を抜ける。突然、「ギャァーッ」と大きな鳴き声。カケスらしい。更に、
それをかき消すように更に近くで大きな鳴き声が「チョットコイ、チョットコイ」。コジ
ュケイ。つがいのようで、鳴き交わしながらヒノキ林の斜面を次第に遠ざかって行った。

 極く小さな二つの沢の合流点。それらを渡る。やがて下方に何か白い砂らしきものが敷
き詰められた中に竹が間隔を空けて整然と植わっているのが目に入ってくる。それは農道
と山道が交わるT字路の向こう側で、農道とは笹囲いのような塀で仕切られている。間近
に見て分かった。本場山城の筍を採取する竹林だったのだ。落ち葉一つ落ちていない日本
庭園みたいな感じがする。しかも肥料の匂いが微かに漂う。これだけ手入れしないと、あ
の刺身筍は食せないのである。高いはずである。

本場山城の筍の竹林。綺麗です

 砂地をサラサラと流れる小川に沿って農道を進む。立入禁止の札がそこかしこ。それは
そうだろう。筍泥棒が出るわねえ。「車通行禁止、歩行者のみ通行可」という注意書きも。
筍の季節はあらぬ疑いを持たれぬ様、ここには足を踏み入れない方が無難かもしれない。
(笑) やがて、両側がやや開けて野菜畑になって、「登山道」の石標の立つY字路に合流。
右に折れて20mで出発地の駐車場である。

 もう1台車が増えている。ひょいと覗くと30歳前後のお兄さんが居眠りの最中だった
が、雰囲気に気づいたのかむっくり起きて、途端にこちらと目が合いギョットしていた。
雨は相変わらず止まず。春を呼ぶ雨の中の甘南備山散歩でした。


【タイムチャート】
10:30自宅発
12:15〜12:30甘南備山駐車場
12:35『きんもくせい』の道
12:45竜王の森の池
12:48峠(大津越)
12:55〜13:05甘南備山最高点(雄山)(217m)
13:08峠(大津越)
13:10〜13:17甘南備山(206.7m、二等三角点)
13:25『ヒノキ』の小道
13:35竹林のT字路
13:40甘南備山登山口駐車場


甘南備山のデータ
【所在地】京都府京田辺市
【標高】217m(206.7m 二等三角点)
【備考】 河内と山城の境近く、木津川の南に盛り上がる里山です。
古来から神奈備山とされ、山頂には甘南備神社が鎮座し
ています。また、平安京の朱雀大路の真南に当たってい
ることから、都造営の目印になったとされます。今は道
標も完備され、東の麓にある一休寺で有名な酬恩庵とセ
ットにすれば、ファミリーハイキングに最適です。最寄
り駅はJR学研都市線京田辺駅です。
【参考】
2.5万図『田辺』



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