浄法寺山〜この暑さは何だっ!
 
平成18年 8月20日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲
冠岳山頂から浄法寺山


 盆の山行の仕上げに、涼しげな山を軽〜く。というわけで企画された福井の浄法寺山へ
の山歩。ところが当初の思惑はまったく外れて、大変なことに。その暑いの暑くないのっ
て。それもそのはず日本海に進んだ台風10号くずれの熱帯低気圧に向かって、南風が吹
き込んだ為にフェーン現象が起きたようで、当日の福井の気温は、県庁所在地では鳥取に
次いで全国2位の36.6℃。浄法寺山の標高は1000mを越えるとはいえ、取付きは
標高500m弱。よくまあ無事に降りて来れたものです。(笑)。もういや。(^^;

 今年は北陸づいていて、またまた福井。今回は福井北ICから永平寺町へ。しばらく九
頭竜川を遡ると浄法寺の集落がある。この集落から登山口のある浄法寺山青少年旅行村ま
でが少しやっかい。青少年村の小さな表示があるのだが、集落内の道は狭く、入り組んで
いてすこぶるややこしい。なんとか的川沿いの取付け道を見つけて上がっていくが、この
道も非常に狭いので注意が要る。対向車に注意しながら15分も上がっていけば青少年旅
行村の建物が見えてくる。

 高台にある管理事務所の下に炎天下の駐車場。
「暑いっ!」
車を降りての第一声。今回は出発地点の標高が低い。この暑さ、相当ヤバイかも...。(^^; 

 浄法寺山の登山口の清水小場。永平寺町の名水の第一番目に選ばれている湧水。雪解け
水が地下にしみ込んで数年経たものが湧き出したものだろう。非常に冷たく、味に癖がな
いこの水には、後刻、大いに助けてもらうことになるとは、この時、知る由もない。

永平寺町推薦の清水小場の湧水
大いに助かりました

 その清水小場の登山口からのコースは、冠岳直登コースとツツジガ原経由コースの二つ
がある。我々は冠岳直登コースを登りに選択。水場から右に林の中に入って進む。むしむ
しとした湿気を感じながら、草の生い茂る中を歩く。間伐材で作られた階段道はいきなり
の急登だ。しかも南向きの斜面で風も皆無ときているから始末が悪い。少し歩いただけで
汗はだらだら、体もだらだら。地図を挟んだ透明ファイルで顔を扇ぎながら進むが焼け石
に水。ふと前に目をやると、おっと、呉春さんが良い物を持っていた。団扇だ。早速借り
てはバタバタと扇ぎまくる小生。タオルで顔を拭くしりから吹き出る汗。めがねが曇るや
ら、汗が目に入って痛いやら、もう散々。それでも高度は一気に上がって、キャンプ所の
東屋が眼下に小さく、振り返れば九頭竜川の名前通りに、竜がくねる如く蛇行する姿が見
え始める。整然と碁盤の目のような青田が綺麗だ。
冠岳直登ヘ向かう面々。
最初は軽口も出ていたのですが...。

 その急登も標高620m付近に来ると、やや楽になって潅木の中の道になる。イワウチ
ワ、ササユリなどもあって、花時には一斉に咲き出すのかなと、その光景が目に浮かぶ。

 再びの急登。露岩混じりにトラロープも現れてくる。再び噴き出す汗、汗、汗。である。
そんな急登もようやく尽きて、木々の間から空の明るみが見え始め、話し声が聞こえたと
思ったら、道標が見えてきた。展望所とある。おお。日本海だ。その展望はそこから2分
ほど東へ進んだ冠岳の山頂でも素晴らしいものがあった。

 冠岳の山頂は歩いている分には尾根の高みとしか見えず、道標がなければ見過ごすとこ
ろ。ベンチも置かれていて一服するには最高なのだが、なにせ今日はサウナ風呂。それで
も何とか時たま少し風が吹いてくれる。凍らせたペットボトルから、融けた分を飲み干し
て人心地つく。「フーッ!生き返る。」そのお蔭で景観を愛でる余裕も少し出る。涼しげ
な風景は北の日本海。海岸線が白い波にスーッと隈取られているのが手にとるように見え
る。そういえばここから近い所に三国湊がある。かつて北前船で賑わった港。その船頭が、
この浄法寺山の稜線を見て、目印にしたというのか居場所を知ったに違いない。東の方角
で一番に目を引くのは丈競山であろう。避難小屋があるのですぐに分かる。そこから浄法
寺山への稜線。女性的な柔らかい曲線である。

 冠岳の山頂を10mも下った所で、ツツジガ原コースとの出合いのT字路。浄法寺山へ
は2.1kmとある。右に折れて一気に数十m下る。鞍部には張り出した岩があって、展望
台になっている。岩へ登ると下から風が吹き上げてきて心地よいが、いいのはそこだけ。
日向になっている道端のイワウチワなど、葉を丸めて弱りきっている。それでも、ブナ林
が現れると木陰はまだ涼しい。

ブナ林が現れた。浄法寺山山頂はもうすぐ

 二つほど小さなピークをこなす。チシマザサが増え始めた。ホツツジが特徴ある花を咲
かせている。ここでもアサギマダラがヒヨドリソウの上を舞っている。巻き上がるように
して、ようやく潅木の林に出れば日差しも翳る。が、なぜかやたらとアブが多くなる。し
つこく纏わりつくのを団扇で追っていたが、ついにチクリと手首に痛み。見れば緑色の眼
をした2cm位の奴が腕時計の横にへばりついておる。息もつかずにエイッっと一叩き。す
ると口から吸った血を吐いて潰れよった。これはいかん。備え付けのポイズンリムーバー、
簡単に言えば所謂、自分の「口」なのだが、慌てて注入された痒み成分を吸い出す。

 疲れもしばらく忘れてそんな下らぬことをしていると、前方でまた話し声。それに近づ
いていくと、ぽっかりと丸い小さな広場になった山頂に飛び出した。かなり下まで露出し
た二等三角点と、円形の木製展望台がある。ここまで来ると丈競山南峰の避難小屋は指呼
で、小道が尾根を忠実にたどっているのが見え、丈競山北峰の山頂の道標らしきものも見
える。ガイドには途中にヤブとあったが、そんなこともないようだ。暑さで体力を消耗し
なければ、往復1時間弱だろうから、全山ササ原のような丈競山南峰に行ってみたいとこ
ろだ。展望台に上がると、展望図があって、土地勘のないものには便利だ。丈競山の北方
に目立つ山は富士写ヶ岳。山の切れ目からは小松市の運動施設らしい白いドーム。加賀市
街から日本海の海岸線。それに向かって九頭竜川が流れ込む。東に見える白山は生憎、雲
の中。手前はスキージャム勝山のゲレンデと法恩寺山。大日山に鷲ヶ岳。荒島岳。南に福
井市街。なかなか贅沢な眺めだ。(下のパノラマ画像参照)

浄法寺山山頂。二等三角点が見える

 喉はカラカラ。水を飲まないと助六も喉を通らない。(^^; 500mlも一気に飲んだか
な?ようやく落ち着いた。それにしても山頂でも風がほとんど吹かない。どうしたことだ?
これは?

 まあ、なんだかんだ言っても、じっとしていると汗も引く。さて、下山。帰りは下りだ
から、往路の様なことはあるまいとたかをくくったが運の尽き。下山の存外つらいのは白
山三ノ峰で実証済みだろうに。虻地獄を過ぎた所である。日向に出た途端、暑いわ、暑い
わ。熱気に下界は白く煙っている。そして冠岳の登り返しは想像以上のボディブローだ。
たまらずT字路で一休みしてツツジガ原コース。暫くは水平道。だが、チシマザサの草い
きれがモワーンとまとわりついてくる。数十m毎に立ち止まって涼をとる。そんな道にも
1箇所、涼風が間断なく吹き通る場所があった。思わずそこにへたり込む。座ればもう立
てないんじゃないかと危惧しながら。(笑) その間、まきたさんが白い花を見つける。ミ
ヤマウズラだそうな。これも立派なラン科の植物である。

 「ヨッコラサッ」掛け声をかけてやっとのことで立ち上がる。暫く平坦路は続く。右に
丈競山がちらちらと。そうしてまもなく「びんつけ地蔵」である。地蔵とあるが、祠の中
身は不動尊。その下辺りからチョロチョロと水が出ている。昔は水場として使われたらし
いが、今は濁って水量も少なく使えないようだ。

黒岩への下山路から冠岳

 びんつけ地蔵には道標があって、旅行村まで0.9kmとある。(ほう。ゴールまで1km
を割ったか)それを見て元気が出る。左に直角に折れ、ササに覆われた道を進むと再び直
角に折れる箇所があって、ここにも道標。しかし、なんと旅行村まで1.2kmとあるでは
ないか。
「舐めとんのかい」
思わず悪態もつきたくなる。しかもここからは、往路に勝る岩混じりの急降下道。ふんだ
んに補助ロープも現れる。そして降るに従って岩が折り重なるようになってきた。無風。
草いきれ。三ノ峰も最高に暑くて、長く疲れたけれども、今日はそれにも勝る暑さだ。太
陽に炒られ、岩はそれぞれ熱を持って、触ると熱い。直下に旅行村のバンガロー施設が見
えているのだが、いっかな近づかない。もうへろへろ。「助けてくれ〜」(笑)

灼熱の岩場。人間石焼が出来るぞ

 ゴロゴロ石が無くなった辺りは少し平坦で、見上げれば「黒岩」らしい大きな岩がせり
出しているのが見える。それにしても、今日は何だか変だと思ったら、蝉の声を聞いてい
ないのだった。

 延びた雑草が被さる中を抜けて、やっとのことでキャンプ場の上部に到達。もういいだ
ろう。最後のお茶200mlを飲み干す。今は使われなくなった草ぼうぼうのテン場の中
の車道をどんどん下る。探検道と書かれた看板。ところが20mも行けば、もうバンガロ
ーの横に出る。どこが探検道や! 付近は車道が錯綜しているが下へ降りていけばいいだ
ろうと、手当たり次第に行けば間もなく駐車場の横に降り立った。
「ハァ〜。着いたぁ〜

 管理事務所の壁際にコカコーラの赤い自販機があるぞ。と近づいてみれば無情にも故障
の断り書き。がっくり。事務所の小父さんに確かめてみる。
「自販機ないんですか」
「ここにはないなぁ。そこの湧き水飲んだらええやろ」
そうだった。清水の小場。そこには先着のまきたさんと上半身裸になった水谷さんが涼ん
でいた。

 まずは、塩をふいた顔を洗う。次いで頭。タオルを濡らして首筋に当てる。
「ヒヤーッ。生き返るぅ。」
ペットボトルに水を汲んで、一気飲み。また一気飲み。フーッ。

 誰も彼もグッタリした顔。「もう山はええわ」てな顔だけれど、一週間もすれば、性懲
りもなくまた同じことをしているのだろうな。熱中症一歩手前の浄法寺山。何はともあれ
無事生還です。(笑)

 ところで、結局、どれだけ水を飲んだのだろう。ザックに持参が2L。小場で飲んだの
が凡そ1L。帰りにコーラ0.5L。帰宅してビール0.5L、お茶0.5L。都合4.
5L。如何に細胞が萎びていたか分かろうというものである。 皆さん、お疲れ様でした。



■同行 呉春さん、まきたさん、水谷さん(五十音順)

【タイムチャート】
7:00千里中央(集合地)
9:58〜10:03浄法寺山青少年旅行村(駐車地)
11:15〜11:16展望所
11:18〜11:30冠岳(838m)
11:45〜11:46展望所
12:34〜13:16浄法寺山(1,052.8m 二等三角点)
14:02冠岳T字路
14:25びんつけ地蔵
14:50キャンプ場上部
15:00浄法寺山青少年旅行村(駐車地)
16:03温見峠(Ca1020m)



浄法寺山のデータ
【所在地】福井県吉田郡永平寺町、勝山市、坂井郡丸岡町
【標高】1,052.8m(二等三角点)
【備考】 福井平野の周辺部を囲む山々の内の最高峰です。全山雑
木の山で、山頂近くはブナ林が形成されています。山頂
は360度のパノラマが広がり、蛇行する九頭竜川や荒
島岳、白山、富士写ヶ岳や日本海の荒波も見晴るかせま
す。
【参考】
2.5万図『龍谷』



浄法寺山パノラマ展望画像
浄法寺山山頂展望台よりのパノラマ展望。白山は生憎、八合目以上は雲の中でした。

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