岩籠山〜尾根コースでインディアン平原
 
平成18年10月 8日(日)
【天候】雨のち曇り時々晴れ
【同行】別掲
インディアン平原から岩籠山(右のピーク)


 本年10月最初の山は敦賀三山の中で登り残した岩籠山へ。先週に訪れる積りが、芳し
くない予報で順延。ところが今週も想定外の冬型気圧配置。敦賀の空は次々に北からやっ
てくる灰色雲から無情の雨。しかし思いが天に通じたか、歩く内に雨も上がって青空が広
がり始め、山頂ではそこそこの大展望。風の音だけが聞こえるインディアン平原も楽しん
で、自然林に囲まれた爽やかさに身も心も洗われたのでした。

 敦賀三山は敦賀半島の脊梁を形成する西方ヶ岳、江若を隔てる野坂山地の主峰、野坂岳
と今回の岩籠山を指す。前2つに較べると知名度には劣るが、なかなか面白い山だそうだ。
桂川SAで時間調整をしながら、深草BSでたらちゃん、ハムちゃんをピックアップ。一
路、北陸へ向かう。風は強いがなかなかの晴天。伊吹山も頂上まで姿を見せていて、これ
はいい天気かもと期待を抱かせるが、やはり湖北から北は日本海型気候。空は一転曇り空。
西や北のあちこちに虹がかかりだす。という事は雨が降っているという事。柳ヶ瀬を越え
る頃にはとうとうワイパー作動が必要なほどの雨に。この時点で疋田からの沢コースは諦
める事にする。

 ICを出たバイパスを進み、最寄のコンビニで食料調達。次々と黒雲が北からやってく
るけれど、まだ9時前だ。とりあえず尾根コースに行ってみて、雨が降り止まなけりゃ、
岩籠山は又今度にして、頂上に避難小屋があって、濡れずに食事ができる野坂岳に廻って
も良かろうと腹を括る。

 エネルギー研究施設の案内を目印にして、西野神の交差点を南下すると自然に県道21
1に出る。道路標識に「山」の表示。これでOK。すると前方に異様なものが出現。「す
わっ!大魔神」ではないけれど、身長10mはあろうかという大案山子である。「なんじ
ゃ、こりゃぁ」口紅をつけている割に胸がないので「これはニューハーフ」なる珍意見も
出る。(笑)
大きな案山子?岩籠山の稜線をバックに

 山集落に入ると黒河川沿いの狭い道になる。少しうろうろしたが、目標の赤い橋を目
指して進むと、集落が途切れた先にそれらしき橋。渡ると20台は優に停められる駐車
場が見つかった。しかし車は皆無。まっ、この天気だ。当然か。

 雨も幸いタイミングよく上がる。準備を終えて、さて、まずは取付きを探さねばなら
ない。今度は鳴谷川第二堰堤が目標。こういうこともあらんかとGPSにその位置を入
力済み。すると、ここから南東方向300mと指示が出る。右に延びる小道はその先で
途切れているようで、散策道と表示のある川沿いの舗装路がアプローチだろうと定めて
進むことにする。

駐車場の横の朱塗りの橋(鳴谷橋)の
散策歩道が取り付き

 何か変なものが散策道の両側に立っている。うらぶれた案山子やおたふくの面まである。
すると、これから先は私有地立ち入り禁止の標札。これに惑わされて、正直者の我々は迂
回の為に左の道に進んだが、竹やぶを抜けると再び集落に出て、車の中で打ち合わせ中の
おじさんに聞けば、さっきの道を進んで良いらしい。そりゃあそうだろうなあ。川沿いの
林道風の道だもの。どうもこの辺り、「どんきち」と面白い名の、探偵ナイトスクープ風
でいうならば「パラダイス」の持ち主の敷地内らしい。竹やぶの中には怪しげな休憩所も
あって不思議な空間。先の標識は記念樹を痛めたり、商売物を失敬する輩が出没すること
の自衛だったようだ。我々はそんな不届き者ではありません、念の為。(笑)

 さて、引き返してまた川沿いに行く。『山神王』と刻まれた石。放置されたイノシシ罠
らしい鉄檻は府庁山でも見かけた物と同じだ。こんな所にもと思う場所に田圃があって、
左からも広い道が合流し、その先に目指す鳴谷第二堰堤が現れた。手前に架かる鉄橋を渡
って堰堤に上がる。この頃から再び雨。スパッツをつけるなんぞしたが、風も強く、杉檜
林に入ってもまだ雨が落ちてくる酷さなので、ザックカバーに傘もさす。行くのはいいが
山頂付近は高い木もないらしいから、この風雨だと難儀しそうだなどと、つらつら考えて
いると、たらちゃん曰く、ハムちゃんが無類の晴れ女なのだそうな。小生も僭越ながら晴
れ男の異名を欲しいまま?にするが、やはり、天の神は即ち天神様?。即ち菅原道真で男。
やっぱり女性好きだろう。ならばとハムちゃん先頭に進んで行くと、あらら、本当に雨も
上がってきたから不思議なもんだ。(笑)
深く洗掘された道は昔ながらの道のようだ

 次に現れた鳴谷堰堤の向かって右を登ると、ようやく本格的な山道にかかる。取り付き
には雑木に赤いプラスチック札が隠れるように懸かるのみ。それ以外に一切、道標はない。
しかし、道は非常に明瞭で、取りつきさえ分かれば迷う心配はない。しかもほどよい傾斜
に大して疲れることもなく高度を稼ぐことが出来る。洗掘された部分もあって昔から良く
使われていた道ではないかと思われる。周囲は赤松も多く、ソヨゴ、リョウブ、コナラ、
ミズナラ。いい雑木林。名も知らぬキノコも雨上がりでニョキニョキと顔をだしているが、
クモの巣が顔にかかるのが少し邪魔であるなあ。

 地形図ではCa610mの等高線の辺りは舌の様に広がっているが、やって来てみると確
かにアカマツに囲まれた小さな広場。小休止するには最適だ。雲の動きから判断して、し
ばらくは雨も大丈夫なようだ。水分補給のついでにザックカバーも傘も片付ける。

 道は南から東に振り出す。前方に夕暮山らしき稜線も現れる。小さなリンゴみたいな実
が地面一杯に転がる。手にとって齧った人がいて、やっぱり渋かったそうだ。(笑) そう
して松林を抜けると地形図で調べたとおり、山頂部手前の急登がある。緑のロープが渡し
てあるが思ったよりきつくもなく、距離も短い。やや道幅が狭い程度だ。やがて、潅木帯
から抜け出すと、そこは広々とした笹とススキの原である。南方向の斜面を少し登る道は
防火帯も兼ねているのか綺麗に刈り払われて歩きやすい。薄茶に銀色の混じったススキの
原が風に波打っている。その間を歩けば、日本庭園と呼ばれる夕暮山の高原状の稜線だ。
視界がパッと広がる。西に大きく野坂岳。北に西方ヶ岳に蠑螺ヶ岳。敦賀湾にはフェリー
も浮かぶ大展望。南には地形図にもある反射板とこれから歩く岩籠山が眺められて、期せ
ずして喚声が上がる。
夕暮山の稜線付近から敦賀市街と敦賀湾
左に西方ヶ岳が見える

 夕暮山の四等三角点は稜線道上にポツンとあって、なんでその先すぐの高みに置かなか
ったのか不思議なくらい。高みは展望地なのだろう、踏み跡が延びている。

 遠くに見えた反射板も歩けばほんの10分足らず。強風に曝される音がする。速い雲の
流れに、反射板が大きく揺れているような錯覚に陥る。これは北陸電力の疋田通信施設。
風がなければ眼下の敦賀湾を眺めながら弁当を食べるに最適な場所なのだが、今日はとて
も火もおこせない。先に進もう。

 関電の巡視道によくあるような黒いプラ階段を降りて、林に入る。周囲はブナ林。なか
なか大きなブナの木があるが、誰だろう、幹に悪戯書き。ひどい輩がいるものだ。そのブ
ナ林の中の鞍部が疋田からの沢コースの出合。ここにも大きなブナが数本、すっくと佇立
している。その下にある道標によれば、インディアン平原まで30分だそうだ。

沢コースとの出合はブナ林の中

 山肌をヘつるように少し下り、又登ってを繰り返す。アキギリやアキチョウジ、白いセン
ブリ、リンドウ。俄かに秋の花が増えてきた。何を間違ったかオオバキスミレが一輪、黄
色い花を咲かせているのにも遭遇した。

 小さなアップダウンを繰り返す。頂きにご神体のような岩を乗せた山が右手に近づいて
きて、てっきりこれが岩籠山だと思ったら違うらしい。しかし、麓に「山神王」と刻まれ
た石もあったように、昔から例えば水乞いの山として崇められ、神が岩に籠るという風な
ことから山の名前が付けられたとしたら、こちらの方が正当な岩籠山かもしれない。

明るいブナ林の中、岩籠山への道を行く

 さて、左に現れたピークに登る分岐に出る。岩籠山に登る道だ。ほんの20m位登れば
360度見渡せる山頂に着く。山頂は狭く、中央にかなり露出した三等三角点。というこ
とは土が流されて、今測れば、標高が低くなっているんじゃなかろうか。(笑)

 それにしてもいい景色。先程の夕暮山の稜線に加えて、西南には琵琶湖と思しき水面。
南遠く一際目立つのは伊吹山に違いない。その右に霞むのは霊仙山か。東は越前から奥美
濃の山並みだろうが、はっきり同定できないのが残念だ。その手前がインディアン平原。
一面の笹原で、吹きぬける風にまるで波のようにそよぐ。その笹の間から白っぽい奇岩が
オブジェのようにニョキニョキと突き出ている。それが西部劇映画に出てくるアリゾナか
コロラドの岩を連想するのだろう。まあ、そういわれればそんな感じだが、奇観には違い
ない。

 岩籠山からは二筋の踏み跡が降りている。登ってきたのと違う方を採ってインディアン
平原へ向かう。山頂の迂回路と合流して潅木のトンネルを抜けると、目の前にさっきの笹
原が広がる。笹が被っているが鹿道のような踏み跡は明瞭。それを伝って最も多く岩がか
たまって石庭のような部分へ行ってみる。肩まで被るような所もあるが、笹が濡れていず
に助かる。
インディアン平原の笹原を行く

インディアン平原の奇岩

 ここも大展望だ。しかも岩の間は芝生のような草付でここも食事に最適なのだが、やっ
ぱり強風が吹きぬける。振り返ると岩籠山に単独の人影が認められた。今日はじめて見る
人影である。

 岩の上に乗って記念撮影なぞした後、昼食の場所を求めて引き返すことにした。さっき
の人影とすれ違う。滋賀から来たニコニコ顔の単独おじさんだった。疋田から来られた由
だが、沢はそれほど増水していないとのことであった。

 食事はどうせ誰も来ないだろうと岩籠山の丁度南の道端に風を避けて。「ん?」熊鈴の
音。誰かやって来たのかと思ったら、さっきの小父さんが岩籠山経由で戻っていく後姿な
のだった。

 ゆっくり食事を取って13:00きっかり帰路に。往路には人っ子一人会わなかったの
に、登山者数組とすれ違う。天気が回復基調なので登って来られたのだろう。

 いつの間にやらうす暗くなってきた。見上げれば北からまたまた黒雲。風に乗って雨粒
が飛んでくる。敦賀湾の海岸線も白く波立っているのが見える。林の下へ入ろうと少し急
ぐことにした。

 往路と同じ場所で小休憩して下ったのだが、意外に早く沢音が聞こえ始めた。気がつか
なかったが、往路より水量が増えていたそうだ。

 杉の手入れをしている地元の小父さんに挨拶して、林道を右にとって集落の中を歩いて
みる。どこか見覚えあるなぁ。なんだ往路で道を聞いた場所だ。北を望めば海が見える。
そんな風光明媚な山の集落。分岐を左にとってゲートボール場を横切り、どんきち村の休
憩所を経て駐車場へ戻る。

 我々の車の他に軽が1台。乗っていた地元の小母さんが尋ねる。「何処から登ったか」。
敦賀山の会の人々が整備したと聞くが、地元の人も余り知らないコースなのか?それにし
ては誠にいいコースでありました。

 空を仰げば灰色の雲は何処へやら。抜けるような青空だ。終わりよければ全てよし。爽
秋の若狭の山は又来いよと呼んでいるようでした。



■同行 たらちゃん、ハム太郎さん(五十音順)

【タイムチャート】
6:20自宅発
7:15深草BS
9:05〜9:10敦賀市山区駐車場
9:30〜9:35鳴谷川第二堰堤
10:30〜10:35Ca510m尾根の台地
11:12夕暮山(720.4m 四等三角点)
11:19〜11:20北陸電力疋田反射板
11:26市橋コース出合
11:50〜11:53岩籠山(765.2m 三等三角点)
12:06〜12:20インディアン平原
12:25〜13:00岩籠山南(昼食)
13:15市橋コース出合
13:20北陸電力疋田反射板
13:25夕暮山
13:55〜14:02Ca510m尾根の台地
14:42鳴谷川第二堰堤
15:02敦賀市山区駐車場



岩籠山のデータ
【所在地】福井県敦賀市
【標高】765.2m(三等三角点)
【備考】 敦賀市の南方、野坂岳の東にあって、野坂岳、西方ヶ岳
と共に敦賀三山の一つです。全山雑木の山で尾根筋付近
はブナ林が残り、山頂からは360度の大展望が得られ
遠く伊吹山や琵琶湖の姿、北は敦賀市街から日本海、東
には越美の山々が霞みます。また、山頂東の台地はイン
ディアン平原と呼ばれ笹原の中に奇岩が顔を出し、ちょ
っと、日本離れした風景が展開します。
【参考】
2.5万図『敦賀』『駄口』



岩籠山パノラマ展望画像
ススキたなびく日本庭園からこれから歩く稜線を望む

■岩籠山GPS軌跡 (罫線は10秒=約300m 国土地理院2.5万地形図閲覧サービス、
           フリーソフト『カシミール』を利用しました) 先頭へ

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