新緑の東丹生山系
  〜稚子ヶ墓山から金剛童子山
 
平成18年 5月 4日(木)
【天候】晴れ
【同行】単独
旧R428取付きから新緑の稚子ヶ墓山


 いい天気。どこか行きたい。でも早起きは億劫。しかも渋滞が気になる。何か三代話め
く展開だけれど、それなら近場の丹生山系はどうだろう。西半分はこの間歩いたから、今
日はR428で区切られた東半分(勝手に東丹生山系と呼んでいます)を歩くことにしよ
う。

 中国道は今日も宝塚東トンネル先頭で渋滞。そのあおりで、R176のバイパスも混ん
でいたが、それ程遅れる事もなく、宝塚ICから中国道、阪神高速と乗り継いで箕谷IC。
R428に入って北に進み、トンネルを越えて1分ほど走ると右手に池が見える。池を過
ぎた辺り、潟~ワボシの空倉庫の向かい側に2、3台の車が置ける小さなスペースを見つ
ける。
旧R428と思われる取付き

 ガードレールに太陽と緑の道の標識と兵庫登山会の道標とがとりつけてあり、「稚子ヶ
墓山まで1.5km頑張れ」と書かれてある。周囲は里山、コバノミツバツツジの薄赤紫の
花が満開で素晴らしいのだが、御多聞に漏れずここにも粗大ゴミが散乱している。嗚呼、
公徳心の欠如、ここに極まれり、だ。

 国道と別れて狭い舗装路を進む。旧R428だったらしく道脇に古いカーブ標識が立っ
ている。まもなく右手にはさっきの池、釣り客が何人か釣り糸を垂れている。池は双坂池
と呼ぶらしいが、ミツバツツジが水面に揺れてなかなか風情がある。池を半周した所で、
縦走路は山の中に入っていく。石がゴロゴロ転がって沢か道かはっきりしないような道で
ある。何かの参道であったような感じもする位、広い道だが椿をはじめとする照葉常緑樹
が多くうす暗い。暫く我慢しやがて左へ曲る普通の山道となる。この辺りは明るく、まる
で最盛期を迎えたコバノミツバツツジの回廊。夥しい花筒が地面に散り敷かれている。山
が明るいと気分まで明るくなるから不思議だと思うのも束の間、また周囲は常緑樹の森。
道はほぼ水平に山腹をへつるように伸び、行き着いた所は無動寺分岐。道標に手書きで『
危険な道』と書かれてある。国道を横断するからか、それとも崩れた箇所でもあるのだろ
うか。
縦走路はミツバツツジの花回廊

 無動寺分岐を過ぎると、道はどんどん登りだす。それと共にヤブツバキの木が多くなり
始め、道のいたる所に真紅の花が落ちている。エンジンがかかっていないのか、坂道にや
や体が重い。その所為で汗が額を濡らし始めた頃、傾斜も緩んで猫の額ほどの小さな広場
に出た。丹生山系最高峰稚子ヶ墓山の西峰。兵庫登山会の大きな標識と、山名由来が記さ
れた説明板。それに三等三角点が埋まる。但し展望はない。三角点の傍に枯れた松、それ
ウグイスカグラが2、3本あって薄赤い星型の花をつけているのみである。しかし静か。
小休止。コンビニで買ったミニミニドーナツを一個。

稚子墓といわれる西峰にある塚

 そこから凡そ1分の東峰にある稚児墓は南西方向のみだけれど展望が良い。今日も黄砂
の影響があるようだが、六甲全縦の高取山、菊水山、鍋蓋山が並び、淡路島や瀬戸内海も
うっすらと姿を見せる。そして、新緑の薄い緑で覆われた山々が美しい。

 ところで、この辺りも椿が多いけれど、稚児墓伝説とは何か因縁があるのであろうか。
椿は花がポロリと落ちるので武士階級には嫌われたというが、どうしても落とされた稚児
の首を想像してしまう。

 稚児墓を過ぎると道はどんどん下り始める。今日は小生の前に誰も歩いていないらしい。
そろそろ蜘蛛の活動の季節だ。糸が顔に纏わりついて鬱陶しい。一度緩くなるがまたどん
どん下りだし、行きついた所がT字路。グリーンスポーツホテルへ下る道があり、35分
と道標がある。ここは左に折れると小さな谷筋。水に濡れたごつごつした岩混じりの道で、
ヒキガエルの鳴き声があちこちで低く響く。「まむし注意」の気になる注意書きもあるが、
まだこの時期大丈夫だろう。いや待てよ。数日前、どこかでヤマカガシを見たのを思い出
した。(^^;

 降りきるとオフィシャル道標が立つ原野分岐で志久峠越えの古道との出合である。さっ
きから『肘曲り』の標識が目立っていたが、この付近をいうらしい。縦走路はここで志久
道を利用する。志久道は摂津と播磨を結ぶ古道で、『志久』は「宿」の転訛といわれる。
広いが大きな石がゴロゴロ転がる歩きにくい道だ。けれども小鳥が鳴き、ミツバツツジが
咲き乱れる感じのいい道である。少しずつ再び高度を上げながら10分も歩けば、花折山
分岐に出る。
ガラガラと荒れた志久道

 直進方向を示すテープには花折山と書かれている。が、ロープで通せんぼがされている。
縦走路の標識にも花折山へとあるので素直に左へ折れたが、沢状のぬかるみ道を抜けると、
ひょいと車道に飛び出してしまった。
「あれれ?」
前述の如く、縦走路標識も花折山へとあり、地形図にも点線路は山頂を通過しているのに
狐に摘ままれた気持ち。どうも今の縦走路は地形図通りではなく山頂を迂回しているよう
だ。先程の分岐まで戻ろうかとも考えたが、車道出合に花折山方向を示す板切れがあるの
に気づく。

 一寸不気味さを感じさせるほど、手入れ皆無の暗い植林帯。しかし道は明確。テープ完
備。しばらく水平道だが山頂寸前は急登。一気に登り切ると雑木に囲まれた小広場で、四
等三角点が中央に置かれた山頂である。南のみやや開けていて展望があり、その南方向と
西方向に踏み跡がある。西方向は先程の”通せんぼ”に出るのだろう。花折山という綺麗
な山の名前とは些か趣を異にするようで、山頂風景をデジカメに収めて、直ぐ下山だ。

あまり名前と一致しない花折山山頂

 再び車道出合。ポクポクと車道を歩く。この車道は鹿見山の通信施設へのものらしく、
車が通らない。すぐにゴルフ場のグリーンが見えてきた。でもここで考えた。車道歩きに
嫌気がさしたのだ。このまま金剛童子山へ歩くか。引き返して、後で車でアプローチする
か。うーん。幾度か行きつ戻りつしたけれど、結局、ここまで来たからにはと歩き始める。
丁度そこへタイミング良く、ジモティの小父さんが金剛童子山方面へ歩いて行くのと一緒
になったからなのではあるが...。(笑) 金剛童子山の麓をグルッと半周したけれど、
黒甲越まで行く気は起こらず、最初に見つけた取付きへ結局は戻ったのだった。戻るのは
つらかったが、まあ、初めてバイカツツジの花が見られたし良しとしよう。(笑)

金剛童子山取付き

 ゴルフ場が尽きた辺り。フェンスと枕木を重ねた遮蔽物の隙間にテープが巻かれていて、
覗くといい道が延びている。地形図の点線路だ。山桜の花びらが舞う中を進むと、すぐに
分岐がある。右に登る小道にテープ。真っ直ぐ進む方が点線路らしいが、山頂へは右の道
のようである。ヒサカキやヤブツバキの茂る中をぐんぐん登る。そして丸く禿た様な台地
の中央の、一段小高くなった土盛りのような部分にある三角点を見つける。GPS表示は
高度567m、三角点まで76cm。「おお正確や!」と声を出したところが、誰も居ない
と思いきや、隅で小父さんが一人座り込んで本を読んでいるではないか。近くの柏尾台に
住む小父さん、昔は良く山を歩いたそうである。長年に渡った連れ合いの看病は大変だっ
けれども、亡くなると淋しいものだと述懐しておられた。こんな四方山話が聞けるのも里
山の良さだろう。それにしても金剛童子山。昔は砦があったということだが、その名前の
由来は何だろう?
小高い塚の上に金剛童子山の三角点

 展望は皆無だが非常に静か。松の枝の風音、カケスの声。チゴユリやスミレが咲きこぼ
れ、日当たりも良いのでここで昼食をとり、戻る事にする。

 車は全くといっていいほど通らないのだが、往路に躊躇した如くやっぱり車道歩きは疲
れる。慰められるのはミツバツツジが満開なこと。ゴルフ場のグリーンを右に眺めながら、
車道出合から再び山の中へ戻る。車道の途中で垣間見えた花折山は存外、円錐形をして端
整である。

 丹生山系も丹生山や帝釈山は人手が多いけれど、こちらは格段に少ない。祝日にもかか
わらず、数人のジモティらしき人以外には遭わない。しかし嫌なものに遭遇した。なんと
もうオオスズメバチが直ぐ側をホバリングしていたのだ。あぁ、いやだ、いやだ。

 帰路の稚子ヶ墓山の登り返しはちときつかった。(^^; というわけで稚児墓のある東峰
で小休憩。爽やかな風で涼を摂って双坂池へ戻る。

 旧道横の田圃では水を張って田植えの準備。ツバメがスーイと水面をかすめた。新緑ま
ぶしい静かな里山歩きでした。


【タイムチャート】
8:15自宅発
9:35〜9:40双坂池横(駐車地)
9:50稚子ヶ墓山取付き
10:10無動寺分岐
10:17〜10:26稚子ヶ墓山(596.3m 三等三角点)
10:29〜10:32稚子墓
10:40グリーンスポーツホテルコース分岐
10:50原野分岐(肘曲り)
11:00花折山・志久峠分岐
11:15車道出合
11:20〜11:23花折山(573.8m 四等三角点)
11:27〜11:30車道出合
12:10金剛童子山取付き(この間少しうろうろ)
12:20〜13:00金剛童子山(565.3m 三等三角点 昼食)
13:05金剛童子山取付き
13:26車道出合
13:46原野分岐
14:10〜14:21稚子墓
14:25稚子ヶ墓山
14:43稚子ヶ墓山取付き
14:50双坂池横(駐車地)


稚子ヶ墓山のデータ
【所在地】神戸市北区
【標高】596.3m(三等三角点)
【備考】 東丹生山系の盟主とも呼べる山です。戦国時代、秀吉が
播州三木城の別所長治を攻めた時、別所側についた明要
寺を焼き打ちし、稚児達も殺害されたのを村人が哀れに
思い、塚を造って弔ったのが名の由来と云われています。
三角点のある山頂は展望が思うに任せませんが、塚のあ
る地点からは南が開け、瀬戸内海から須磨アルプスなど
が眺められます。
花折山のデータ
【所在地】神戸市北区
【標高】573.8m(四等三角点)
【備考】 東丹生山系にあって、稚子ヶ墓山の東に位置します。稚児
を弔う花をここで手折ったことに由来します。南側がやや
開けている他、展望はよくありません。
金剛童子山のデータ
【所在地】神戸市北区
【標高】565.6m(三等三角点)
【備考】 東丹生山系の花折山の東に位置します。花折山と同様に展望
はよくありませんが、ピークハンターが多くやってきている
ようです。西側の麓が兵庫カンツリークラブゴルフ場になっ
ています。
【参考】
2.5万図『神戸北部』



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