天国と地獄の道を楽しんだ丹波養老山
 
平成17年 6月12日(日)
【天候】うす曇り
【同行】別掲
養老山山頂


 土曜日に梅新のビアホールで開催された街オフと称する飲み会。その酒の席でひょんな
ことから丹波と丹後の国境にある養老山に登ろうということになった。酒の上の席だから
内心、半信半疑。しかし、早速送られてきたNさんからの地図付きのメール。そして翌日
起床して念の為に電話したら、皆さん行く気。
「ヒェーッ!」
眠気で大した予備知識を仕入れることもなしに用具をザックに詰め込む。半分寝ぼけ眼だ。

 養老山といえば岐阜県の山がまず思い浮かぶが、京都府にもあったとは寡聞にして知ら
なかった。因みに養老山とは北の舞鶴側からの呼び名で、綾部側からは「高尾」と呼ぶそ
うで、もともと雨乞いの山だったらしい。

 7時、千里中央の例のローソンで待ち合わせ。定刻、参加者5名が全員出揃って、水谷
さんの車で出発。早い!。2時間もかからずに取付きの市志林道の路肩である。 市志集
落の中はほんの一車線の狭い道だが、曲がりなりにも舗装がしてある。けれど、
集落を過ぎると沢沿いの地道となり、更にその先はコブシ大の石が転がるやや荒れた感じ
になる。大分、奥に入って、ようやく沢沿いの路肩が広くなった所が現れた。

駐車した林道付近の風景

 前日の雨、草深い所もあるというのでスパッツをつけて準備完了。林道を奥に向かって
進む。湿度は若干高いものの涼しい。おりしもウツギが満開、そして何と言ってもエゴノ
キの白い花が道に散り敷いて白く変わるほどである。まもなく市志林道の支線を左に分け
る。周囲は倒木や切断された木が放置されていて、何となく荒れた印象の杉林だ。やや広
い盆地様の場所に出る。右手と左手に真新しい砂防堰堤。小さな沢が三方から集まってき
ているのだ。関電道はここを左に折れて尾根に取り付くのだが、確かにここは初めてだと
分かりづらく直進するだろう。『やまごルート』をトレースする我々も林道を直進する。

正規の登山道は左の砂防堰堤方向へ。
直進すると・・・。
すぐに林道はこんな草むす状態に

 さて、この『やまごルート』である。なんでわざわざミスルートをトレースするのかと
いえば、とあるものを見つけんが為なのである。そしてこの林道からが本日のアドベンチ
ャーコースの始まりだ。すぐに林道は早晩廃道の運命にあるかのごとく、雑草の蔓延る草
深いものとなる。けれど、まだ6月上旬で草丈が低いのが救いである。尤も、先頭を行く
水谷さんは蜘蛛の糸に悩まされたみたいだが...。二番手以降はその悩みがないので大
いに助かるのである。

 その林道もまもなく終端となり、倒木を乗り越えると小さな沢で、橋代わりの倒木が1
本渡してあるが、これが滑って危ない。案の定、少し滑って沢へ飛び降りた格好となった。
その沢を越えた先は急峻な斜面である。45度以上あったのではなかろうか。土と石混じ
りで滑ること滑ること。しかも倒木が多く手がかりとなる雑木もない。ズルッと行けば下
まで転がり落ちそう。久しぶりに緊張しながら、眼に入る汗の痛みもものかわ。所々にあ
る切り株に掴まって比較的斜度の落ち着いた部分を選りながら登る。ほうほうの態で漸く、
小さな尾根筋に這い上がる。
「フゥーッ、やれやれ」
632m峰の西の激斜面に悪戦苦闘

 尾根に出ると傾斜はやや収まったが、今度は倒木だらけ。右に左に避けながら高みを目
指す。ヤマツツジが盛りを迎えていて朱色が綺麗、誰かがサンショウの小枝を手折ったか、
強烈な「木の芽」の香り。目に付いたナガバノモミジイチゴの黄色い果実、クサイチゴの
真っ赤な果実を頬張りつつ、2度ほど小休止を取って汗を拭き拭き、南に迂回しながらや
っとのことで632m標高点ピークに立つ。植林の中の茶色に変色した倒木が目立つ山頂
は殆んど展望はないけれど、小広く、休憩には格好の場所だ。

やっと登った632m峰

杉林を透かして北東側に見える、山腹に赤白鉄塔が立つのが養老山らしい。その赤白鉄塔
からの高圧線を目で追うと、北方向に高圧鉄塔が見えた。その下には巡視路があるはずな
ので、まずはそこを目指して北尾根を下ることにする。

 北には踏み跡があって、杉林を緩く下っていくと巡視路の火の用心看板を見つける。そ
の前に、遊歩道と見まごうばかりの関電巡視道が。632m峰への登りに較べれば、天国
と地獄、月とすっぽん、提灯に釣鐘、雲泥の差がある。なんだこりゃぁ

 すぐに高浜線bR4の高圧鉄塔。ウツギ、ヤマボウシが満開、ことにヤマボウシはまる
で純白のセーラー服の襟のようだ。そうしてその先は雑木のトンネルである。 

 大きく下ると見えた鞍部もそれほどの事もなく、少し登り返すと先ほど目立った養老山
の中腹の赤白鉄塔(高浜線bR3)。ヤマツツジの目立つ山頂直下のやや傾斜の強くなっ
た斜面を少し頑張れば養老山の山頂だ。が、
「ん?」
三角点がない。ふと前を見ればもう少し高い所が...。小さな偽ピーク。丈の低い潅木
を縫って本当の山頂に立つ。
養老山の稜線から意外に端正な632m峰

 小さな円形の切り開きの中央に二等三角点と山名プレートが1枚。南方面のみが見晴る
かせる。向かいの山腹に林道が走っているのが見え、軽トラ1台が白いミニチュア。その
奥には君尾山や頭巾山、長老ヶ岳などが見えているのだろうがよく分からず、南西方向に
鎮座する632m峰が意外に端正なのが目立つ。(^^; 東方面は先ほどの偽ピークの方が
よく見える。
「おおっ?海だ!」
岬があって、その先には小さな島も。小浜湾方面で、端正な三角の山はどうも久須夜ヶ岳
らしい。青葉山は養老山本峰の陰に隠れているようであった。

養老山から東方面は海が見える。
中央奥は久須夜ヶ岳らしい

 昼食は適地が見つからず、結局、鉄塔近くの鞍部まで戻って登山道から少し内に入った
コナラやウリカエデの林の下で摂ることにした。ここは谷からの風が上がってきて涼しい。
どこからともなく野鳥の声。

 食事を終えて、後は関電道をルンルン気分。養老山と632m峰の鞍部で左(南)へ折
れるのにやや注意するくらいだろうか?bR4鉄塔付近で後にも先にも今日唯一の人に会
う。昆虫採集だとかで、ジモティのお爺さんを案内人に、大きな四つ手の布を持参したお
じさんであった。

 632m峰との出合を直進する。こちらは雑木主体で、花も結構多い。ヤマシャクヤク、
イナモリソウ、タニウツギ、ヤマボウシ、アマドコロ、イチヤクソウなどなど。そして、
ササユリも意外に多く、幾つかは蕾を付けている。山菜ではウド、ギボウシ、ワラビ、コ
シアブラなどが目立つ。

 いい尾根道だが、木が茂って展望は思うに任せないのが玉に瑕。それでも一部、北に開
いた場所があって、舞鶴湾と東港。引揚記念公園のあるブリッジがよく見えた。というこ
とで多分この辺りも戦前は民間人立入厳禁だったに違いない。

舞鶴湾と東港が見える

 bR6の鉄塔を過ぎ、所々にある短い急坂をこなして峠に出る。右の舞鶴側は踏み跡は
あるが、草深くなっていてあまり歩かれた様子がない。尾根上の巡視路はそのまま直進し
ていくが、左に折れて林道を目指す。

 左に632m峰を見ながら徐々に下っていく。尾根道ではなく、尾根より若干下がった
山腹道で、左手は植林の深い谷である。その谷が浅くなってくると、前方に案外早く砂防
堰堤が目に入ってきた。左に折れれば往路の橋である。野ブキ摘みやトカゲの子と遊びな
がら10分も歩けば駐車地である。

 ひょんなことから決まった養老山行き。目当てのものはタイミングを逸して、見られず
じまいだったけれども、正規ルートを外して久しぶりにちょっと緊張の時間を過ごしたり、
変化のある里山歩きであった。それにしても、地方の里山はまだまだ植生が豊かだなと実
感した養老山でした。


■同行: nanaさん、のりかさん、水谷さん、もぐさん(五十音順)


【タイムチャート】
7:00千里中央ローソン前
8:45〜8:55市志林道(駐車地)
9:00市志林道支線分岐
9:08橋(正規道分岐)
9:15急斜面取付き
9:30〜9:35尾根に出る(小休止)
9:50〜9:55尾根Ca550m付近(小休止)
10:15〜10:26632m峰
10:34関電巡視路出合い
10:37関電鉄塔(高浜線bR4)
10:53関電鉄塔(高浜線bR3)
11:02〜11:10養老山(665.4m 二等三角点)
11:25〜11:55鞍部の南(Ca570m付近)(昼食)
12:05関電巡視路出合い
12:21関電鉄塔(高浜線bR6)
12:30〜12:35峠(Ca460m)
12:48橋(正規道分岐)
13:03駐車地

養老山のデータ
【所在地】京都府綾部市
【標高】665.4m(二等三角点)
【備考】 綾部市と舞鶴市の市界、即ち丹波と丹後を区切る山稜の
一峰です。山頂からは、やや茂っていますが、東に小浜
湾。南に頭巾山、君尾山などが望めます。また尾根上を
関西電力の巡視路が走っており、胡麻峠を起点に丹波、
丹後、若狭を区切る三国岳を含めて快適な縦走が愉しめ、
途中、北に舞鶴湾も望めます。
【参考】
2.5万図『東舞鶴』



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