貴公子花紀行〜天女花と蘭、らん、ラン♪
 
平成17年 6月18日(土)
        19日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲
サルメンエビネ


【第1日】小川谷から広高山

 集合時間の午前6時。いつもの様に千里中央のローソン前。メンバーが集まってきた。
法香さんにお誘いいただいていた広島遠征一泊オフの出発だ。目的地は山口県境に近い吉
和冠山。広島支部?のととろさんのロッジにお邪魔し、研さんの案内で前後2日にわたっ
て花ハイクを楽しもうという趣向。内弁慶?の小生、近畿圏外へは去年の大山以来まだ二
度目。(オネショせえへんやろか?)(爆) と要らぬ心配をしていたけれども、結果は想
像をはるかに超えたもの。ランが6種にオオヤマレンゲやサラサドウダン、広島県の絶滅
危惧種のヤシャビシャクなどなど。梅雨の晴れ間にも恵まれて、広葉樹の滴る緑の中で花
三昧でありました。

 中国地方の山々はまだまだ”すれて”いない山が多く、カタクリなど、京阪神や関東の
山々ではとっくに希少化した植物がまだまだ豊富だという。その中にあって、吉和冠山は
ネットで調べるとオオヤマレンゲやラン等が咲く、凡そ広島の山好きで知らぬものは無い、
もし知らないのならそれはモグリだと言われるほどの名山らしい。さて、どんな花とご対
面といくか楽しみ。そんな思いを秘めながら、水谷さんのワゴンで中国道を西下し、11
時、吉和ICで研さんの車と合流する。

 研さんとは年末の虚空蔵山、ととろさんとは数年前の氷ノ山以来。久闊を叙した後、今
回のルート説明を聞く。それによれば今日は花のルート、明日はメインの登山ルートを案
内していただけるそうだ。2台の車に分乗した面々、早速、冠山に向かって出発する。

 R488は国道とは名ばかりの離合もままならぬ狭隘な道。中津谷川をしばらく遡り、
毛鉤専用釣り場のある辺りで左の林道へ折れる。鎖のゲートがある。自然保護の為、開け
る鍵は廿日市市の吉和支所に4つしかないのだという。その貴重な一つでゲートを開ける。

 林道は左手に見える廃屋を過ぎるとまもなくダートとなり、小川谷に沿い山懐へ潜り込
んで行く。小さな沢にはワサビ田もあり、大きな葉を持つヤグルマソウ、フキ、ウドが豊
富な自然豊かな谷だ。その林道の終端が今日の登山口。狭い空き地には先行車が2台置か
れている。
シラグチ谷の取付きから深い森へいざ出発

 登山口には「熊注意」の看板が山深さを表している。中国地方随一の熊の山地。単独じ
ゃ、一寸遠慮というところ。準備を済ませて自然林の中へずんずん...。と行きたい所
だが、丁度、昼食時。シラグチ谷の沢に下りてまずは腹拵えをしておく。

 もっとヤブっぽいのかと思えば丸木階段が整備されていて歩きやすい。でも森自体には
あまり人の手がはいっていないとのこと。苔むしたブナやミズナラ、サワグルミに絡みつ
くイワガラミやツルアジサイの白い花。シダが繁茂し、キク科のニシノヤマタイミンガサ
の大きな葉が目立ち、エンレイソウには大きな緑の実。プラスチックで作ったのではない
かと見まごうリョウメンシダ。確かにほんのそこからクマでも出てきそうな雰囲気はある。
広高山方面との分岐に出る。研さんによれば、広高山へ登った後、またこの分岐に戻って
くるそうな。所謂、周回ルートだ。ここを左に折れてシラグチ谷の沢沿いに進む。

 沢を何度か渡る。ハウチワカエデだろうかカエデ科の高木とヤブデマリらしい潅木の群
落があって、その白い装飾花が満開。その真っ只中を行くと、雪で根元が一様に曲がった
痩せた杉の林に出たが、人工で植えたものではなく、地元では八郎杉と呼ぶアシウスギの
一種なのだそうだ。

目が洗われる程の緑一色だ

 中津谷川源流と書かれた標識が草に埋もれた中に立つ。ただし、水らしいものは見えな
い。そこから鬱蒼とした林の中を進めば、松の木峠からの冠山登山道に飛び出す。やや左
に進んだ辺りにオオヤマレンゲが咲いているというので行ってみる。登山道から10m位
外れると、天女花といわれるだけあってフワリと白い花が数輪浮かんでいる。女性陣に言
わせると、馥郁とした香りが漂っていたそうだけれど、小生は花に鼻を近づけてやっとそ
れがわかる始末。(^^; この間、皆さんひたすら撮影モードに没頭でありました。

太田川源流の碑

 今度は太田川源流の碑があるというのでそちらへ。こちらは登山道から30m程度、枝
道に入った所で、小さな沢状になっているのだが、伏流になっているのか、生憎、ここに
も水は一滴もなかった。
画面奥は冠山、左は寂地山・広高山、
右は松の木峠のY字路

 登山道へ取って返して、冠山とは逆の松の木峠方面へ歩く。至る所に緑の実をつけたカ
タクリ。春はピンクに染まるらしい。ここは明日も歩く道で、流石にメインルートだけあ
って、頻繁にハイカーがやってくる。しばらく進むと大きな沙羅の木が目印の寂地山・広
高山との分岐点のT字路に出る。左(南)に折れると松の木峠、右(北)に曲がると寂地
山への縦走路だ。しばらくこの辺りで植物観察した後、広高山へ向かう。丁度、山口県と
広島県の県境を歩くことになる。この付近にも山口県で唯一のオオヤマレンゲがあるのだ
が、こちらはフェンスで保護してあるものの、蕾がちらほら見られるのみだ。

 小さな湿地や笹薮こぎもあり、メインルートに比べれば流石に薄いが、しっかりした踏
み跡がある。大きく下った先の小さな鞍部には小川谷へ抜ける踏み跡が分岐し、広高山を
ピストンした後はまたここへ戻ってくることになる。この付近からは今度は島根県と広島
県の県境となる尾根である。ミズナラの巨木を過ぎて、右手に冠山の姿を木の間越しに見
ると、次第に尾根らしくなる。やがてその尾根も広がりだして広高山への最後の登り。思
ったよりもきつい。クマザサが現れて、一気に噴出した汗を拭き拭き登りついた所が山頂
と思いきや、そこは山頂へ連なる尾根で、本当の頂へは右に折れて100mばかり進まな
ければならない。大きなサラサドウダンは花が散りかけ。その先の小さな岩が重なった場
所にプレートがあった。その中には「日本の分水嶺 JAC広島」と書かれたものもある。
しかし展望はほとんど皆無で三角点もない。僅かに北東方面だろうか。冠山と瓜二つの山
が見えている。大神ヶ岳というのだった。

潅木に囲まれた広高山山頂

 休憩。そこへおもむろに出てきたととろさんの抹茶茶碗。あっ、思い出した。氷ノ山で
の出来事。そうだ。あの時も抹茶を頂いたっけ。(^^; なんともいえない苦味と甘みであ
る。

 さて、暫く憩った後、小川谷への分岐に戻って、東に向かう。やや薄い踏み跡はすぐに
明瞭になり、左に谷を見下ろしながら山腹を巻くようにたどっている。16時半を過ぎて
やや暗くなってきた。下り基調の道をやや急いでたどれば、10分ほどで往路の丸木の階
段に合流。そこから駐車地までは5分とはかからなかった。

 それにしても、近畿では考えられぬ花々の種類。ランだけでもキンラン、コケイラン、
トケンラン、サルメンエビネ、ショウキラン。他にカタクリ、ニシノヤマタイミンガサ、
ヤシャビシャク、バイカウツギ、そしてオオヤマレンゲ。ウド、コシアブラ、フキなど山
菜も多種多様。レッドデータブックの絶滅危惧種も数多い。花々のおかげで久々に足の進
まない山歩きで、下山は5時前。秋ならばとっくに暗くなっているところ。研さん、とと
ろさんにはさぞやご迷惑だったことだろう。(笑)

 下山後は風呂で汗を流すことになり、最寄の潮原温泉へ。さっぱりした後は、女鹿平山
の中腹にあるととろさんの山荘へ。標高700m位だろうか、流石に涼しい。コシアブラ、
コナラ、トチノキ、ホウノキなどの広葉樹の森の中に建つ瀟洒な山荘のデッキで、早速、
夕食の用意。水餃子に鰹のたたきを肴に、ビールで乾杯。次第に暮れていく夕闇。そして
ライトアップされた木々の緑に雰囲気満点。そこへ赤白のワイン、日本酒の古酒、焼酎な
どが次々と現れて、小生はあえなく早々に撃沈。今思い返せば、最後まで頑張れなかった
のは返す返すも残念でありました。(^^;;

ととろさんの山荘にて乾杯

 何時の間に、シュラフに入ったのか定かでない。午前1時過ぎだか、気がつけばシュラ
フの下に布団、枕もあてがってあって、皆さんにはご迷惑をかけたかも。申し訳ありませ
ん。m(_ _)m  明日も、否、今日もいい天気でありますように。そしてウトウト。意識の
はっきりしない境目をゆらゆらとたゆたうのでありました。


■同行: 研さん、ととろさん、nanaさん、のりかさん、水谷さん、
     もぐさん(五十音順)


【第2日】「松の木峠〜冠山〜狗留孫仏岩〜潮谷」へ

■今回のコースで見られた花々を吉和冠山のニンフ達にまとめました。


【タイムチャート】
6:00千里中央ローソン前
11:50〜12:00小川谷コース登山口(駐車地)
12:03〜12:35シラグチ谷(昼食)
12:40広高山分岐(A)
13:30中津谷川源流標識
13:40冠山分岐
13:55太田川源流碑
14:05冠山分岐
14:25〜14:45松の木峠・寂地山分岐付近うろうろ
15:30広高山取付き(広高山分岐(A)への分岐)
15:58〜16:08広高山(1271m)
16:37広高山取付き(広高山分岐(A)への分岐)
16:48広高山分岐(A)
16:52小川谷コース登山口(駐車地)

広高山のデータ
【所在地】広島県廿日市市
【標高】1271m
【備考】 広島県と山口県の県境近く、冠山の西に派生する山です。
展望とてなく、地味な山ですが、その分、静かです。山
口県の最高峰寂地山と冠山の縦走のついでに登るといい
ようです。
【参考】
2.5万図『冠山』



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