梅雨に歩く山門水源の森
 
平成17年 7月 3日(日)
【天候】曇り
【同行】別掲
ミツガシワが群生する山門湿原全景。広いです


 先週も山歩きしなかったので、何かムズムズする感じ。だが雨に降り込まれそうなこの
週末。ならば、雨でも歩ける所。ネットで検索していると、湖北は西浅井町に『山門水源
の森』と呼ばれる湿原の森があるという。ゴルフ場として開発される寸前に自然保護に立
ち上がった有志がそれを防ぎ、今では滋賀県が買い取って保護しているという。話の種に
いっちょ行ってみるか。

 当日。梅雨前線の南下でどんよりと今にも泣き出しそう空模様。こんな時は幾ら事前に
計画していても、単独行ならえてしてテンションが下がろうというものだが、今日は呉春
さんにもぐさんと、同行していただける方が二人もいて心強い。7時半過ぎに桃山台駅西
に集まって、途中、コンビニに寄ったりなどして、5月の赤坂山以来のR161をひたす
ら北上し、R303を経由して永原で県道大浦沓掛線を沓掛方面へ左折する。

 湖西道路の志賀ランプ付近で本格的に降り出した雨もここでは降っておらず、路面も乾
いている。空はと見れば、晴れないまでも雲も切れて明るい。午前中はなんとかもってく
れよと祈りつつ二車線の立派な県道をひた走る。そしてもうそろそろだなと思う頃、左手
に西浅井町の斎場が見えてくる。左折して駐車場へ。ここまで、すれ違った車はたったの
1台だけである。
西浅井町の斎場の駐車場から入る

 斎場のがらんとした駐車場には、先着車が1台。その横に車を止めて準備する。今日は
湿地だというので長靴履き。駐車場の横に案内標識があって、小道を辿ると一車線ほどの
道に出る。右手にはせせらぎ。丁度熟れ頃のモミジイチゴの実を摘まんだり、ニガナ、オ
カトラノオ、咲き終わりのヤマツツジなぞを眺めながら進むと、まもなく真新しいログ風
の建物が見えてくる。

 「やまかど・森の楽舎」と書かれた建物には事務所と研修室。エコトイレ、東屋もあっ
て雨でも濡れずに食事するには丁度よい。真ん中にはビオトープ。ノハナショウブが紫の
花を咲かせている。
やまかど・森の楽舎と名づけられた管理棟

 ビオトープの端の鬱蒼とした辺りに一筋の道。流れを渡って進むと、小さな尾根筋に出
る。尾根筋には一筋の道があるが、尾根の向こう側、小さな沢沿いに林道があったのでそ
ちらを辿ることにする。でもこれは結局、砂防提の手前で沢を渡って再び尾根に登って、
さっきの道と合流することになる。

 尾根筋からは北東側が開け、山並みが見晴るかせるが、勿論、山の名は分からない。(
帰宅して調べたら行市山、三方ヶ岳など江若国境の山並みらしかった)やがて、アカガシ
の森と湿地への分岐。案内板があり、現在位置を確かめることが出来る。

 ササユリが多い。丈の高いのは勿論のこと、実生苗まで殆んど全ての固体に標識がつけ
てあり、保護されているようだ。ノギランの白い花もある。まもなく道は暗い下り基調に
なり、湿原らしい雰囲気になってくる。木柵が出てきた。説明には「牛の進入防止」とあ
る。南に牧場があるからその牛がここに入ってきたことがあるのだろうか。

 左に窪みがあるのは炭焼窯跡のようだ。そこを抜けると北部湿原で、更に中部湿原、南
部湿原と道は湿原の南側に沿って進んでいく。中部、南部の湿原には潅木も生え、それに
ぶら下がる白い塊はモリアオガエルの卵塊である。水底にはイモリの黒い姿。塊から落ち
てくるオタマジャクシを狙っているのに違いない。試しに卵塊に触れてみる。粘り気のあ
るマシュマロみたいであった。

粘るマシュマロのようなモリアオガエルの卵塊


 道標に従って、東の展望台へ上がってみる。素朴な物見台である。ここからみると、湿
原は山の中の盆地であることがわかる。素人目には排水すればすぐに水田になりそうで、
よくそうならずに残ったものだ。一息ついていると、モリアオガエルだろうか一斉に鳴き
だした。そういえば、やや冷たい風が吹き出して、空も心なしか暗くなったみたい。とう
とう雨かな?

 次は西側の展望台へ。取り付け道の柵から覗くと、朽ちた花穂をつけたミツガシワの群
生の下の水底に、イモリがうごめいていた。

 西側の展望台から小尾根に上がる。左下から沢音が聞こえてくる。木の隙間から緑の野
原のようなものが垣間見える。地形図にある山中牧場らしい。赤茶色の屋根の牧舎も見え
る。雑然と潅木が生える尾根だが、特徴ある三裂する葉に緑の実をつけた木が多い。シロ
モジ。葉を揉むとクスノキ科独特の香りがする。ムラサキシキブにも小さな実がついてい
る。この辺りの足元にもササユリが多い。

 散策コース分岐の手前だったろうか。前方から話し声。すると、木立の間から二人連れ
の小母さんハイカーが現れた。今日遭遇した唯一のグループ。こんな天候なのに、好き者
は私達だけでは無い様で...。(笑)

 散策コース分岐からはすぐに「ヒノキの森」。痩せたヒノキの植林帯だが、ヒノキ林特
有の香り。この付近から登りがやや険しくなり、雑木に変わってブナが現れ始める。但し
太い大物はなく、直径30cm程度のものが多い。ちょっとした頂に案内板があって、僅か
に広場になっている所があったから、ここで一息入れることにした。

 何時の間にやらクマザサが茂るようになり、西浅井町が設置した図根三角点と呼ばれる
基準点を越えると、注連縄が巻かれた一抱え位の岩。いわれも何も書かれていない。山の
神?

 さて、この注連縄の岩付近がコースの最高点らしく、以後、道はかなりの急傾斜を降り
て行く。所々は丸太で補強した階段で、枝道はロープで遮断してあるので迷う心配もない。
シャラの白い花弁が地面に散っている。やがて、やや暗い感じ照葉樹の林。そんな中に大
鮫が海原から頭を突き上げたような面白い形をした岩。ジョーズ岩とでもしておこう。

ジョーズ岩とでも名づけましょう

 散策コースとの出合いを過ぎるとまもなく「アカガシの森」。案内板の横には、なるほ
ど株立ちの大きな樫の木が2本。真ん中が大きな虚になった木などは直径1mはあろうか?
炭焼きの材料として伐採されて株立ちとなって大きくなったものという。能勢で言う台場
クヌギみたいなものだ。

 四等三角点『大池』を巻きながら進む辺りはほぼ平坦。イロハモミジ、コシアブラ、リ
ョウブ、ソヨゴ、ネジキと植生も多彩。植物名のプレートをかけられた木も多い。

里山の中、快適な道

 ポッカリという感じで往路のアカガシの森と湿地への分岐に飛び出した。今回はガイド
とは逆周りに歩いたことになる。後はのんびり楽舎へ戻るのみ。林道へは出ずに尾根筋を
選ぶ。
 
 雨も降らないので、食事はビオトープにかかる木橋の上で。呉春さん手製の栗入り水羊
羹なんぞを頂く。

 食後。木橋からヒツジグサの花を眺めていた時である。ふと、カヤツリグサの仲間の葉
の先端に赤いものがあるのに気づく。ハッチョウトンボである。見れば他にもいて都合3
匹。以前にもデジカメに収めようと何度かトライした覚えがあるのだが、焦点が合った試
しがない。今回はどうだろうと帰宅して確認してみたら、案の定、やっぱり大ピンボケで
ありました。(^^;

 何があるわけでもない。どこにでもありそうな里山。だが、なんとなく落ち着く感じの
山でもある。湿原も里山も人の手を入れるのは最小限に留め、このまま自然のままに残し
たいものだ。

 さて、まだ時間が早いので、温泉(あど川宝船温泉)に寄ろうかと衆議一決。下山し、
永原でR303に合流した途端、雨でした。


■同行: 呉春さん、もぐさん(五十音順)


【タイムチャート】
7:40桃山台駅西ロータリー(集合地)
9:40〜9:45西浅井町斎場駐車場(駐車地)
10:10湿原コース・健脚コース分岐
10:15南部湿原
10:35〜10:40東の展望台
11:00健脚コース・散策コース分岐
11:02ヒノキの森
11:15〜11:20ブナの森
11:28注連縄の岩のピーク(最高点515m)
11:32エゴノキの広場
11:47健脚コース・散策コース分岐
11:52アカガシの森
12:06湿原コース・健脚コース分岐
12:10〜12:45やまかど・森の楽舎(まなびや)横(昼食)
13:00西浅井町斎場駐車場(駐車地)


山門水源の森のデータ
【所在地】滋賀県伊香郡西浅井町
【標高】210m〜510m
【備考】 福井県との県境近くにあって、ゴルフ場に造成される所
を、有志の運動によって開発を免れた森です。63.5
haという広大な森は、アカガシの林や、標高260mの
低さにあるブナの林など日本海と太平洋の接点をなす森
でもあります。その中にある約3万年の歴史を積み重ね
る湿原には、生きた化石ともいわれるミツガシワの群生
やモリアオガエル、ハッチョウトンボなど、湿原の多様
な生物が観察できます。
【参考】
2.5万図『駄口』



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