鳥見山〜干支オフは雪景色
 
平成17年 1月 2日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲
鳥見山公園から雪の鳥見山


 台高や大峰に向かう時に通過する大宇陀町や菟田野町から北を眺めると、一際目立つの
が大和富士とも呼ばれる額井岳。その西、大きく切れ込んだ香酔峠を隔てて、香酔山、貝
ヶ平山の左にたおやかな高まりを見せているのが鳥見山。神武天皇の大和平定に因む神代
の伝説の山であるが、今では山腹の鳥見山公園がツツジの名所として親しまれている山で
もある。昨年同様、初山は干支の山と決めていたのだが、今年はこの鳥見山から東海自然
歩道を西にまほろば湖、長谷寺へ降りてくるというコースを歩いてみた。昨年の六甲キム
チ鍋オフ同様、またまた黒一点のミニオフ。はてさてどんなことになりますやら。(^_^ゝ

 真っ白に一面に降りた霜が絶好の晴天を約束している。桜井を過ぎ、誠に”隠口”と呼
ぶに相応しい初瀬川沿いを遡るにつれて、大晦日に降った雪の名残と、霜の白さが相まっ
て、雲一つない青空を更に際立たせる。しかし、朝の冷気は厳しく、下車した途端、吐く
息は真っ白だ。午前9時過ぎ、近鉄榛原駅南のコンビニ前という取決めに従って集合した
メンバ5名。挨拶を交わして早速出発。電車道沿いに旧道を東へ向かう。

 「やまと座」と染め抜かれた幟が道の両脇に。何ぞ町おこしのアンテナショップでもあ
るのかと思えば、なんと大衆演劇場があるのだった。出演中の一座のポスター等がなけれ
ば、ごく一般のしもたや風の外見である。こんな所に演劇場があるのも榛原が伊勢街道の
要地で、昔から種々の物産の集散地で人も沢山集まったからであろう。そして新しい国道
の一つ手前で北に折れ近鉄のガードをくぐれば、旧伊勢街道の面影を残す上町商店街の町
並みがある。白い漆喰に黒瓦、連子窓。新建材の家にはない落ち着きがあり、何かほっと
するのはなぜなのだろう。本居宣長も宿泊したという旅籠「あぶらや」は見落としたが、
石灯籠や札の辻の「右いせ本かい道、左あをこえ道」と刻まれた大きな石の道しるべは印
象的だ。
本伊勢街道の立派な道標

 近鉄のてくてくマップを参考にしながら街中を抜けていく。前方になだらかな鳥見山が
うっすら雪を被って蟠るのを眺めつつ、R367を横切り、左に保育園を見て広域農道に
出る。車ではよく利用する道だが、歩行者の視点だと全く印象が異なるから不思議だ。

 左手にガソリンスタンド。その50m程向こうに宇陀警察署が見える。鳥見山へは宇陀
警察署付近から鳥見山公園に登る車道があるのだが、それを使うのでは面白くない。ここ
は警察署方向へは曲がらずに、今立つ十字路を横切り、立派な門松が立つ民家を左手にし
て、鳥見山の麓の小鹿野の集落を目指す。

 今思えば、この小鹿野集落への道と、更に集落の中の道が最もややこしかった。(笑) 
Y字路に道標があるわけでなく、マップの目印を探しながら、後はカン。そして最終的に
は出会ったジモティに聞くのが一番だ。車で降りてきた小父さんや、蝋燭立てを持った若
奥さん、散歩中の小父さんにその都度尋ねながら、細い村道を何とか山に近づいていく。
その内、右手に小鹿野弁財天と書かれた小社が現れる。そして要所のY字路の傍の細木に、
古びて茶色く変色してはいるが、赤テープが巻かれているのに気づく。これでたぶん間違
いないと意を強くする一行である。

 家並みが途切れると道は軽四輪がやっと通れる位の幅のコンクリート農道となり、緩や
かに高度を上げていけば、雪の残る畑に視界が開けて、東にはピラミダルな額井岳が姿を
見せる。やがて左は桧林。するとその左手に一筋の踏み跡。木には赤テープが巻かれてあ
る。これか?と見当をつけつつ、更に数m、農道を辿るとより明瞭な半間幅の作業道が現
れ、「鳥見山公園」と記されたプレートと「ハイキング」と印刷されたシールが巻かれて
あるのに気づく。これで間違いない!(笑) 一段落とここで小休止。暑いので上着を脱ぐ
人、水分補給の人。その間にも桧の梢からは積もった雪がバサバサ音を立てながら落ちる。

 若木主体の桧林。歩く前後左右へ、容赦なく雪の塊が落ちてくる。その音以外聞こえな
い静かな道である。山腹を斜めに上がる感じで傾斜はそれほどきつくないが、エンジンが
まだかからないのか体が重い。所々で立ち止まりながら桧林を抜けると伐採地のような斜
面に出た。左手(南)眼下に榛原の街並みが一気に開けてくる。尾根の肩を越えると丈の
低い雑木林の向こうにロッジ風の建物。鳥見山公園に到着したらしい。意外にあっけなか
った。右手のロッジ風のトイレの前は分岐になっていて、右手に展望台への階段道がある。
それを登りきった所には道標。ガイドなどにある東海自然歩道との合流点の四辻らしい。
右に折れてまずは展望台へ向かう。

展望台から南西方向。大和三山の向こうに
雪を戴いた金剛、葛城の山並みが見える

 青空の下、南西面が遮るもの無くグーンとワイドに広がっている。まず目立つのが音羽
三山に龍門岳、烏ノ塒屋山。伊那佐山は存外鋭い形をしている。遠くは雪を被った大峰、
台高の山並みで大日山と稲村ヶ岳が認められる。西に目を向ければ、大和盆地に畝傍山、
耳成山が浮かび、これも雪化粧の金剛、葛城、二上が居並び、二上の右には大阪市街が霞
んでいるという豪華さ。幾ら眺めても見飽きない景色だ。これらの山並みをバックに記念
撮影の後、Aさん差し入れの草餅で小腹をなだめつつ一息入れる。テーブルの上を見ると
積雪は約15p。圧雪が凍結している箇所もあったから、Aさん、Tさん、Nさんは念の
為ここでアイゼン装着だ。(展望台には山名の同定図が設置されているが、烏ノ塒屋山が
龍門岳と誤記されている)
鳥見山へ。一見雪山のようです

 展望台から四辻へ戻り、今度は右に折れて鳥見山山頂を目指す。雪の斜面の切開きのよ
うな部分を登りきると、丈の低い笹と痩せた桧が植わる台地状のコブ。シャーベット状の
雪に注意しながら、一旦鞍部に下って、更に小さなコブを越えた先が鳥見山の三角点であ
った。といっても桧の植林で全く展望は聞かず、露岩がパラパラ、「葛城の雀」なるプレ
ート等が幾つかあるくらいで、目印が無ければ見過ごすようなところ。干支の山登頂記念
ということで、ここでも記念撮影をして、先程の四辻へと取って返す。尚、三角点の凡そ
20m先の小さな鞍部で右に折れれば貝ヶ平山。直進は私製標識に従えば白木へ出るよう
であった。
山頂にて干支オフの記念撮影。”1+1わぁ〜”

 そろそろお昼時も近づいてきた。どこか風の無い、地面の乾いた所で昼食にしたいなと
適当な場所を物色。結局、公園内の勾玉池のほとりの東屋が良かろうと、降りていけば折
りよく無人である。
凍った勾玉池。鳥居の横に見える東屋で昼食

 例によって小生は代わり映えしないカップ麺と助六だけれど、今日は一味違います。N
さん提供の冷酒で新年を寿ぎ乾杯。Aさんからは黒豆、栗きんとん。正月だァー。(^^)/

 後半戦は長谷寺に向かって東海自然歩道を歩くコース。てくてくマップに従って、公園
の広場の南から車道を下ると直ぐにT字路。これを右にとって降りていく。雪が凍ってア
イスバーン状態の部分もあり、油断すると危ない。右から東海自然歩道が合流し、右にカ
ーブして林道西崎鳥見山線へ出る頃にようやくほぼ安心して歩けるようになった。バラの
植わったビニールハウスを過ぎ、暫くすると宮垣内の集落。数件の民家があるが、廃屋に
なっている建物もある。ここで林道と分かれてUターンするように左へ折れると、自然歩
道の標識が見つかる。用水池のような小さな池を左に、竹の生えたやや荒涼とした原の向
こうには高束城址らしい台形状の山。雪で倒れた竹をすり抜けて、ほの暗さを感ずる下ば
えの無い植林下から抜け出すと、少々登り返す雑木の道となる。528m峰の山腹を巻い
た後は尾根道と合流して、左に折れた突き当りが高束城址であった。

 高束城は1564年(永禄7年)松永弾正久秀によって滅ぼされた城だという。説明板
の後ろの台地に立てば、まほろば湖方面が眺められる。説明板の向かって左に踏み跡があ
り、これが地形図の東海自然歩道と記述されている点線路らしいが、今は関電の巡視路の
他には使われておらず、口倉へ下る道が本道となっているようだ。ゴツゴツとした露岩を
過ぎると道は忽然と石畳となる。なんでこんな所にと思えるが、まさか城へ登る正面道で
あったわけでも無かろう。高圧鉄塔を左に見て、徐々に高度を下げれば口倉集落の小さな
簡易浄水場の建物の前に出る。ここからは浄水場の管理道でもあるのか舗装路である。や
がて民家の軒先ともいえるような狭い広場に出て、すぐに村道に飛び出した。

高束山からの下りにある石畳の道

 口倉は高所にある集落で眼下に初瀬ダムで堰き止められたまほろば湖を見晴るかすこと
が出来る。公民館の建物を右に車道を降りていくと、コンクリート壁に東海自然歩道の案
内図が設置してある辻に出る。この付近は少々ややこしいが、更に下り方向に進んで曲が
りこんだ辺りに自然歩道の道標があり、その指示に従うと、こじんまりとした神社に出会
うことができる。マップにある高■神社(たかおかみ神社。■は雨かんむりに龍)である。
字面からこれは水の神だろうと思ったが、由緒書きを見ると果たして祭神は九頭龍神とあ
った。岸和田や枚方に意賀美(おがみ)神社という社があるが、同じ流れだろう。

 ジグザグに下ってR165との接続道路からまほろば湖の左岸を歩く。右岸と違ってこ
ちらはほとんど車が通らない。四方山話に花を咲かせてのんびりポクポクと。湖水はあま
り綺麗とはいえないが、鴨の群れが水面を泳ぐ姿が見られる。振り返れば、山の中腹に口
倉の集落が眺められ、鳥見山らしき緩やかな高まりがその奥にある。

 初瀬ダムの堰堤上を歩いて、向こう岸に渡る。トイレのある駐車場で一休みして県道3
8号線へ。こちらからはダムの正面が見えるが、その放水路は巨大なウォータースライダ
ーのようである。

 概して車道歩きは面白くないが、この辺りは長谷寺の奥で歴史も古く、未だ奈良の山村
の面影も残していて見飽きない。弘法大師所縁の見廻(みかえり)不動尊を見物したりし
ているうちに初瀬川上町。その先に与喜浦天満宮の朱塗りの橋が見えてくれば、右に折れ
た所が長谷寺の山門前である。

 混んでいるのではと思っていたけれども、初詣には神社へ行く人が多いのであろう、参
道の石段にはパラパラ程度の人の出だ。土産物屋が並ぶ門前町へ足を向けると、名物の草
餅が湯気を上げる姿が目に入る。山歩きをすると甘いものを口にしたくなるもの。Tさん
の「ほっこりしましょ」の一声に、熱いお茶と草餅のセットについフラフラと目の前の店
に立ち寄る。この店、奈良漬も売っていた。三年物とかで、酒のアテにとこれもついつい。
この後、酒好きのNさんは甘いものだけでは満足せず、地酒の店を物色である。ところが
執念とは恐ろしいもの。正月で閉まっている酒屋が多い中、唯一軒、Nさんの為に開けて
いたのではないかという店が見つかった。「あな恐ろしや..。女性の執念」(笑)

 そしてその地酒、帰りの電車の中で栓を開けられてしまったのでした。これを読んだよ
い子は決して真似をしてはなりませぬ。むむむ...。ういっ。

 桜井で乗り換えて、なんやかやとワイワイ言ってる内に早や電車は鶴橋駅。JRで帰る
皆さんとはここでお別れ、大団円。皆さん、お疲れ様でした。今年もよろしく。そして元
気で羽ばたくいい年になりますように。と結んで、思わぬ雪景色を愉しんだ干支オフ顛末
記の筆を置くことにする。


■同行  あかげらさん、たらちゃん、知さん、のりかさん

【タイムチャート】
7:00自宅発
8:45〜 9:10近鉄榛原駅前(集合地)
9:52〜 9:54鳥見山登山口
10:10〜10:15鳥見山公園トイレ横
10:20十字路
10:21〜10:40展望台
11:02〜11:15鳥見山(732.4m 四等三角点)
11:32十字路
11:38〜12:25公園の東屋
12:55宮垣内集落
13:12高束城址
13:30口ノ倉集落浄水場
13:48高おかみ神社
14:10〜14:20初瀬ダム
14:45長谷寺
15:27近鉄長谷寺駅


鳥見山のデータ
【所在地】奈良県宇陀郡榛原町
【標高】732.4m(四等三角点)
【備考】 榛原の北、戒場山、額井岳、貝ヶ平山、香酔山と並ぶ大
和高原に属する山で、鳥が大きく翼を広げた様な大らか
な山容をしています。南の山腹に鳥見山公園があり、神
武天皇ゆかりの伝説の山でもあります。
【参考】
2.5万図『初瀬』
近鉄てくてくマップ『鳥見山公園・長谷寺コース』



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