白髪岳、松尾山〜丹波の春はうらうらと
 
平成17年 3月21日(月)
【天候】晴れ
【同行】単独
白髪岳と松尾山を結ぶ稜線上から白髪岳(左)と
689m峰


 舞鶴道を北に向かって走ると、藍本のトンネルを抜けた辺りから北方に鋭鋒が二座、仲
良く並んでいるのに気がつく。左が白髪岳で、右が松尾山。山を歩き始めた頃、秋に登っ
た山である。なかなかいい山だった印象があるけれど、あれから7年。また登りたくなっ
て、やっと春本番の気配が濃厚となった春分の日の振替休日、登山口の住山へ向かった。
7年前と同じルート。どれだけ変わったのだろうか。興味津々。その結果、登山路の変貌
にはちょっと驚いたが、山頂の展望は相変わらず素晴らしいものでした。

 高速代をケチって、なるだけ地道で行こうと思ったが、何せ9時と遅い出発だからそう
も行かぬ。西宮北から三田西まで舞鶴道を使い、10時半に住山集落の駐車地。白髪岳の
山頂で昼食にするには丁度いい時間だ。

 今日は暖かくなるとの予報だが、山に囲まれた住山の空気はまだひんやり。歩くにはこ
のくらいの頃加減が丁度いい。車を置いた所からほんの5分で白髪岳と松尾山の分岐。左
に折れて、しばらくすると舗装は途切れて地道となる。茶畑が途切れると、右手は杉の植
林、下生えは茶の木という変な取り合わせだ。やまぼうし自然学習林の建物を右に見て徐
々に高度を上げていく。やっぱり大分変わったなぁ。道の両脇のヤブが刈られている所為
だろう。7年前はもっと鬱蒼とした感じがしたような。その思いは登山口に到着すると更
に強くなる。東屋が建てられていて、大きな案内板でも設置するのか、祝日返上で工事し
ている。山からは盛んにチェーンソーの音が降ってくる。林道と別れて左手のオロ谷の沢
沿いに登れば、小父さんたちが雑木の刈り払いの真っ最中である。

オロ谷上流の銀鉱跡

 古市小学校の記念植樹の苗が植わる斜面を抜けると、沢沿いに進む踏み跡と山腹を上が
る道との分岐。直進でも上で合流するのだろうが、ここは素直に右手をとる。丸太階段と
ロープで整備されているが、なかなかの急斜面である。一汗掻いてオロ谷の源頭部の沢を
渉って向いの斜面に取り付いた時である。左手を何気なく振り返ると、白い標識が目に入
った。近づいてみれば、それが7年前は見落とした銀鉱跡の廃坑であった。明治初期に3
年程度掘られ、時の兵庫県知事の伊藤博文に献納されたというが、僅か3年しか掘られな
かったところをみれば、大した鉱脈もなかったのだろう。

 登山道にとって返す。ここもきつい登りで、7年前は確か木の幹を掴んで登る直登道に
近かったように思うが、今はジグザグに道が付けられていてよほど歩きやすい。去年の台
風にでもやられたのか、根こそぎ倒れた大木を横目に、やがて感じのよい明るい稜線に出
る。ワン谷林道400mのオフィシャルの標識があるが道は不分明のようだ。

 アセビの白い花が咲きこぼれる中に、いよいよ白髪岳名物の岩が現れる。が、道は岩に
は直接登らずそれを巻くように付けられているではないか。
「あれ?」
確か、以前は直接登ったような...。とりあえず道なりに歩いて、岩の上に出たところ
で岩上を引き返してみる。すると、途中、下からロープが設置してある箇所が目に入った。
やはり、岩を直登していたらしい。振り返れば白髪岳の山頂が望め、山頂の岩場に立つ人
が豆粒のように見える。足元に注意して岩の先端に立つと、南方向が大パノラマで、西光
寺山や虚空蔵山の姿が鮮やかである。しばし目の保養をさせて頂く。

展望岩から南の立杭方面。尖峰は虚空蔵山

 次の岩場にはロープが設置され、これは乗り越えていかねばならない。ロープに頼るほ
どでもなく、ごつごつした岩には、手がかり足がかりが幾つもある。それでも三点確保を
怠らず乗り越えると、山頂は直ぐ近くで、雑木のトンネルを抜けると360度の大展望が
待っている。東西南北さえぎるものはなく、東には、この間、雪景色の中を登った三岳か

白髪岳山頂

ら三尾山、黒頭峰、夏栗山へと連なる多紀アルプス。遠くに北摂の深山、剣尾山。三田の
大船山はここから見ても、"山"の形だ。南はさっきの展望岩と同じ眺めがここでも。西に
は七種山か明神山らしい尖った山。北方には粟鹿山が望めたが、残念ながら白い氷ノ山は
望めず。手前の松尾山との稜線には太い切り開きがつながっているのがわかる。まるで新
御堂筋だぁ。(笑)

 風もほとんどなく暖かい。山頂西側の岩陰に座って食事。7年前も同じ所で食べたのじ
ゃなかったかな。(笑)

 流石、近百の山。コーヒーを沸かして飲んでいる内にも、ちらほらと登ってくる人がい
る。三田から来られたご夫婦と相前後して松尾山に向かう。なお、山頂の東にもテープが
あって、どこに達するのか割にはっきりした道が下っていた。

白髪岳から東に多紀アルプスの主峰の三岳

 白髪岳からの下りは激下り。立ち木は皆が体を支える為に持つのであろう、幹はツルツ
ル。あっという間に下って686mピークの横腹をトラバースした後、白髪岳と松尾山を
結ぶ尾根道になる。ところがこれが四斗谷分岐を過ぎた頃から、白髪岳から眺めた通り、
またとんでもない広さの道になる。これはもうほとんど林道だ。以前あった山道の下に新
たに道をつけたらしい。新しい道標が立てられ、道の両サイドの雑木は刈られ、なんとコ
ブシの植樹まで。ヤブっぽかった道も単なるピクニック道。茂りがなくなったお蔭で虚空
蔵山や白髪岳の姿がはっきりと眺められるようにはなったが、なにもここまですることは
ないと思うがなぁ...。

 あっという間に文保寺分岐。ここは鞍部になっていて十字路になっている。左に折れる
と文保寺方面でピクニック道が続いている。直進すると松尾山。ここもテープが頼りだっ
たと思うが、今は綺麗な道が。それを使うとそれほど息を切らすこともなく、クマザサ茂
る山頂に着く。
松尾山山頂。伐採されて明るい

 ここは酒井氏の城跡。7年前はもっと茂っていたけれど、木々が伐採され、北東の多紀
ニュータウンの町並みや豆粒のような車が見えるまでになっている。しかし静かだ。目の
前を暖かさに目覚めたタテハチョウが舞う。シジュウカラが「ツツピー」と囀る以外は物
音がしない。小憩を摂って南へ下ることにする。

 直ぐに二股の千年杉。といってもそれほど太い木でもない。更に南へ進むと急降下の道
となるが、
「...?」
やっと、普通の山道に戻ったみたい。(笑) ということは整備状況から見ると篠山市は
文保寺−松尾山−白髪岳−住山をメインルートに考えているらしい。白髪岳の稜線上に道
がないのに「ワン谷林道まで400m」の立派な標識があったが、そちらに道を付替える
のかも。

 テープを目印に下って、傾斜が落ち着いたら高仙寺跡の歴代住職の卵塔群だ。ポッカリ
空いた空間に、綺麗に一列に並んだ墓標が南を向いている。地蔵の石仏の目鼻は摩滅して
定かでないのが時代を感じさせる。

高仙寺歴代住職の卵塔群

卵塔の台地から元に戻る感じで、植林帯に覆われた山腹をトラバース気味に進む。まもな
くほの暗い中に愛宕堂の祠と大きな地蔵の石仏が立つ場所に出る。秋にツリフネソウが咲
いていた所だ。でも何となく陰気な感じがして長居したくない思いがする。更に5分。竹
が茂る阿弥陀堂跡に着く。跡地を横切って向こう側にも踏み跡があるが、念の為、苔が付
いた古い案内板の近くに戻ってみると、谷筋へ降りる踏み跡の傍に朽ちたプレートがあっ
て住山とある。正規ルートはこちららしい。ここら辺り、7年前の記憶は皆無である。(^^;
(横切って進んでも、首なし地蔵付近で合流するらしい)

 プレートに従って谷筋へ降りる。竹が被さってやや荒れた印象。それを抜けると何とな
く思い出してきた。鬱蒼とした植林の中をまだかまだかと歩き続けたっけ。後から考えれ
ばそれほどの時間でもなかったのだが、長く感じた記憶が蘇ってきた。首無地蔵を過ぎた
頃、下に木橋が見える。不動の滝への道だが、これをパスしてなおも直進。穴地蔵への道
もパスして水平道をなおも進むと、ようやく植林から抜け出し、雑木の中のえぐれた道と
なる。どんどん下れば見覚えある茶畑に飛び出し、小川沿いの林道が見えた。

茶畑横の下山口。テープ類はない

 新しい民家(無住の様だ)と住山貯水池と書かれた施設が建てられている。その横から
林道に降り立つ。松尾山から登る場合、勝手知ったる人以外はここには気づかず、林道を
遡った不動の滝コースを採るに違いない。畑も荒されるしというわけだろう、テープもな
い。まぁ積極的に知らせることもないか。(笑)

 後はブラブラ林道を歩くだけ。民家が現れて白髪岳、松尾山の分岐はほんのすぐそこで
ある。と、
「あれ?」
ペンキのはげた案内板の先に三田のご夫婦。確か稜線で抜いたはずだが...。お聞きす
ると卵塔群の所から間違って南へ降りたそうだ。薄い踏み跡があって、さっきの白髪岳、
松尾山の分岐道標近くに出てきたのだとか。地形図で確かめると、南へ尾根が下っていて
それに乗って降りてこられたとわかる。それで納得。(^^;

 駐車地。買い置きしておいたみたらし団子を頬張って、これも目的の一つ、地酒秀月を
近くの酒造直販店で求めて帰途に着く。ルートはかなり変わっていたけれど、展望に満足
の、うらうら丹波でした。

【タイムチャート】
9:00自宅発
10:35〜10:40住山集落(駐車地)
10:45白髪岳・松尾山分岐
11:05登山口広場
11:50〜11:52尾根の岩
12:00〜13:00白髪岳(721.8m 二等三角点)
13:35文保寺分岐
13:42〜13:46松尾山(687m)
14:00〜14:03卵塔群
14:06愛宕堂
14:10阿弥陀堂跡
14:30住山配水池横の茶畑(登山口)
14:50住山集落(駐車地)

白髪岳のデータ
【所在地】兵庫県篠山市
【標高】721.8m(二等三角点)
【備考】
丹波篠山町の西、三田市の北に位置する丹南町にそびえ
る名山で、丹波富士とも呼ばれます。その荒々しい風貌
で、東の三岳を主峰とする東多紀アルプスと人気を二分
します。南の住山からの他、北の文保寺からも登路があ
ります。
■近畿百名山■関西百名山
松尾山のデータ
【所在地】兵庫県篠山市
【標高】687m
【備考】
白髪岳の東に位置します。高仙寺山の別称がある通り、
中腹に法道仙人開基の高仙寺の跡があり、また、山頂に
は明智光秀の丹波攻めに破れた酒井氏治の城跡があり、
この二山を巡るルートは歴史に彩られた山行が楽しめ、
周回が可能なので、マイカー登山にもうってつけです。
最寄り駅はJR福知山線古市駅です。
【参考】
2.5万図『篠山』



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