修験業山・栗ノ木岳は ほんに修験の山だった |
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栗ノ木岳への尾根から修験業山 |
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以前、局ヶ岳に登った際に登山道から眺めたピラミッド。たまたま一緒になった地元の ご夫婦ハイカーからそれが栗ノ木岳で、その西の修験業山とセットで歩けると教えてもら って以来、気になっていた山。春はカタクリ、シャクナゲ、シロヤシオ。秋はトリカブト と花に恵まれた山だそうで、今回はヤマトブシといわれるトリカブトが花盛り。懸念され た雨にも降られず、大峰奥駈に似たやせ尾根道に、胸突き八丁の急登、転げ落ちるほどの 急降下、滑る沢の渡渉など、古い修験の道を髣髴とさせる上に、道がなくなるなど、変化 に富んで且つ、人っ子一人会わない静かな山行となりました。 実はてっきり忘れていたのである。それが、今年の「山と渓谷」三月号の「ハイグレー ドハイキング」特集で紹介されているのに気づいて思い出した次第。そして、あらためて 膨らんだ、いずれはとの思いが、幸い今日実現の運びに。 桃山台駅西に集合したのは6時半。2台に分乗、8時前には名阪道は針の道の駅でたら ちゃんをピックアップして、一路、R369をひた走る。つい2週間前にも走った道だ。 (^^; あの時は目立たなかったヒガンバナが畦に赤い帯を形作っている。 順調に若宮八幡宮への県道へ折れ南下する。のどかな川上の集落を抜けると、雲出川に 架かる赤い橋が目に入る。てっきり神社の参道の橋かと思ったら大間違いだったのはご愛 嬌。赤い橋まで戻ったら、直進道に参道という大きな石柱があるではないか。(苦笑)
徳天皇。日本最古の若宮八幡社という。伊勢国司の北畠氏や後の藤堂藩の尊崇が篤かった と由緒書きにある。創建年代が書かれていないのは、戦国時代の戦火で資料が失われたか らかもしれない。 水洗の綺麗なトイレ付きの、これも存外広い駐車場に車を止める。我々以外に車はない。 ということは今回も他に誰も登山者はいないということだ。(^^; 少しお湿りがあったらしく、気温は程よいが湿度が高い。山の高みは白い靄の向こうだ。 川に沿って社務所手前に来ると、白装束の禰宜らしき人が建物から現れた。気さくな方で、 「登らしてもらいます」と云うと「ごゆっくりどうぞ」の返事。トリカブトが満開だと教 えてくれる。 その社務所の横が登山口。湿った道は神社の建物を抜けると、右に白山谷の流れを見る 林道に変わる。両脇には何の木だか、幼木の並木。道は緩やかに右に湾曲しながらやがて 左に小祠を見ると滝が現れる。落差は5m位か?禊の滝らしい。その前に架かった橋を渡 って白山谷の左岸へ移る。更に緩やかに登れば「左へ」と書かれた看板。それに従って林 道に別れを告げれば、左の沢を横断して山肌に取り付くこととなる。これがまあ、湿って よく滑る。これで雨にでも遭っていたら「えらいこっちゃ」と思う程。しかも道は細い。 左手は飛沫を上げる幾つも小瀑がかかる修験谷の崖っぷち。その中には立派な釜を持つ滝 もある。道では時々、カエルがピョンピョン飛び跳ねる。それを狙う蛇が出るのではと少 々びくつきながらも慎重に歩いていると、なんと大きなガマが現れた。 湿度が非常に高く、もう汗びっしょり。折りよく苔むした砂防堰堤が現れ、向かって右 を巻きながら越えた辺りで小休止。呉春さんからお彼岸ということでぼた餅の差し入れ。 朝食がトースト1枚だったから助かった。(笑)
ゴロした山腹を登り始める。最初は直登、まもなくややジグザグを切る道となるが、地形 図を見ても分かる通り、頗るつきの厳しい道である。 砂防堰堤から休まること無き登りを約30分。やっとのことで支尾根に乗る。微風が頬 を撫でる。少しクールダウンできるな、と思いきや、急登はまだまだ続くのである。木の 葉に溜まった雫に濡れつつ、ホンシャクナゲのやせ尾根を歩く。参道を示す注連縄を潜っ て、木の根が階段か梯子の桁のような、先行者の靴を目の先に眺めながらの登り。そんな 登りが二度ほどあったろうか。だが、思いの外、疲れはない。短時間で一気に高度を稼い で、却ってだらだら坂より効率がいいからだろうか。
になっており、休むにはいい所。私製の道標のポールがある。ここにも注連縄が架けられ てあった。
西へ。今はミヤマママコナ、トリカブトが揺れるが、春先はカタクリが可憐に咲き、晩春 にはシャクナゲ、サラサドウダン、シロヤシオが咲き乱れるという。神社の神域の為に植 林を免れたのが幸いしたのかもしれない。神の山は花の山でもある。そして緩やかな尾根 を辿り、最後に右手から巻くように登りつめれば立派な鳥居がある高宮に着く。シャクナ ゲに囲まれた神域はあるが、肝腎の祠がない。つまり修験業山自体が御神体なのだろう。 そのシャクナゲは種子を多くつけていて、シーズンにはさぞや華やかだったに違いない。
ートがあるが、本峰はここではなく、更に西に500m辿った1094mの三角点峰であ る。三角点峰にピストンするというと、女性陣はここで待つという。早々とザックを開け だした人も居ることだし、ここから大した標高差もないので、往復30分くらいと踏んで、 先にここで食事にした後、食後の腹ごなしに有志のみでピストンすることに予定変更であ る。そして、出ました!またまたレオさんから山上のアイスコーヒー。因みに小生の昼食 は相変わらず助六寿司。寿司にコーヒーって変な取り合わせと思うけれど、美味ければこ の際、構うものか。(爆) 四方山話で盛り上がる昼食も30分程で切り上げて、さて腹ごなしに出かけよう。一旦、 下って、二つ程、小さなコブを越せば修験業山の三角点峰である。そこまでがまた、トリ カブトが咲き乱れる何ともいえない良い稜線道。ガスが流れて墨絵の風情。ドドッと響く は鹿の足音。続いて時ならぬ闖入者に対する甲高い警戒音。やぁ、最高だ。
る道もあるらしく、小さな私製プレート。他に山名板が2つ3つ。台高や大峰でよく見か ける紀州わらじ会の立て札もある。いつものように三角点にタッチして引き返す。
ガスが徐々に晴れてきたようだ。青い空から日差しが落ちてくると、気分まで明るくな
るから不思議だ。流れるガスの合間に大洞山や学能堂山、そして川上の集落が見下ろせる。 デポしておいたザックを担いで後半戦の開始だ。清々しい尾根道を栗ノ木分岐まで戻り、 今度は東へ。尾根道はヒメシャラの柔かな林があると思えば、幅1mもない岩場のやせ尾 根ありと、色々な素顔を見せるてくれる。途中のCa990mピーク辺りから振り返れば、 修験業山の正三角形、前方には栗ノ木岳の正三角形が端正である。
カブトの花を愉しみながら歩ける。そんな尾根歩きが約40分。栗ノ木岳に近づくに従 って現れたシャクナゲの林は山頂に近づくほど濃密になって、鬱蒼とした感じになり、 その後、トンネルの様な茂みを抜け出た山頂は4畳半程度の広さで、僅かに北方が覗い ており、その先に学能洞山、大洞山がわだかまっている。三角点に良く似た石柱が埋ま っているが、林業用の境界標で勿論、三角点ではない。因みに山名由来の「栗の木」は なかった。もっとも、途中に芝栗のイガは転がっていたけれど。(笑) シャクナゲに囲まれた栗ノ木岳を後にして東の稜線を伝う。倒れたシャラの木をくぐ ると、雑木の中から張り出した展望岩があって、局ヶ岳へとつながる尾根が一望できる。 しかし、若宮峠と思しき鞍部はさながら擂り鉢の底、樹海の遥かに下ではないか。それ もそのはず峠はCa860mだから標高差は約200m。直線距離が約400mだからほ ぼ平均30度の斜度。そして実際に歩いて見ると、想像以上の劇下り斜面である。滑る 滑る。幸い立ち木が要所にあって、掴めるから助かる。それがなければ大変だ。(笑)
すれば局ヶ岳方面への縦走路。南は松阪市飯高町へ。北の八幡へ戻るよりもこちらの方が いい道に思える。(笑) 水を補給して、みんなが来るのを待つ。しばらくすると、賑や かな声が降ってきた。
は薄い。無数の石がゴロゴロ転がる歩きにくい山腹を巻いていく。すると山抜けか土石流 の跡が踏み跡を寸断している。深さは2mはありそうで、とても直進は出来ない。下流へ 50mばかり迂回して向こう岸に。ゴロゴロ石の斜面を登り返してやっと元の道へ復帰。 薄い踏み跡はジグザグに斜面を下るようになり、やがて左に湾曲すると明快になった。 ふと眺めた50m位前方に鹿の姿。暫く目を見合わせていたが、身を翻すと林に消えてい き、尻の白さのみが網膜に焼きつく。 その鹿の居た場所からは尾根道。ところが、今まで所々あった薄いグリーンのナイロン 紐がいつの間にか見当たらなくなった。後から思えば、ガイド本にある大宮谷の源頭への 下り口を見落としたのか。しかし、「山と渓谷」の記事には廃道とあったのが嘘の様に、 明瞭な尾根につけられた道は下草もなく、快適ではっきりとした踏み跡である。境界標石 が埋まり、古いが赤いテープも疎らにある。GPSで現在地を確認すると、地形図の点線 路を忠実に辿っているようだ。高度も下山口の駐車場への距離も、共に着実に減っている し、大筋、間違いあるまいとこのまま今しばらく進むことにする。
に巻いたらしいナイロンテープが右に折れていくものとの分岐。しかし、更に尾根を忠実 に辿る。 下山口までの直線距離が700mを切った辺りだったろう。左手の雑木に門柱の様に4 つ巻かれた赤テープを発見。尾根から外れてそちらへ降りろという指示らしい。ところが 指示に従うものの、先に道がない。耳を澄ますと下から大宮谷のものらしい沢音が微かに 響いてくる。そこでもぐさんと相談。谷へ降りれば道があろうということで強引に下るこ とに。崩れやすい土の斜面を嫌い、杉の枯れ枝が積もる部分を滑るように降りる。すると すぐ直下に小さく、岩走る白い水と岸に小道らしい細長い土の露出部分が見えてくる。こ れに気を良くして100mを一気下り。降りた先にはやはり思惑通り岸に道。「ベル山○ ○」と書かれた赤テープが石の上にあったから、この斜面、道?として使われているのか も知れない。(笑) そういえば、斜面には靴が掘り返したと思える比較的新しい跡があっ た。
女性陣には少し迷惑をかけてしまったが、点線路と合流して一安心。でもまだ安心は禁 物だった。滑る谷の渡渉が数度。崩壊部分もあり予想外に時間を食う。それも簡易水道の 黒いホースが現れる頃になると、やや落ち着いた道になってくる。苔むした砂防堰堤を過 ぎれば左に作業小屋。沢をまたまた渡って100mも行けば、やっと対岸にコンクリート 階段と神社の白い幟が目に入ってきた。川から上がった先は丁度、トイレの横、なんと、 車が目の前であった。 フーッと大きな溜息をついて、残ったお茶を飲み干す。たらちゃん提供でコーヒーブレ ーク。見上げると山々を覆っていたガスもすっかり晴れて修験業山の稜線がくっきりと。 さっきまであんな所に居てたんやぁ。一寸信じられない感じがする。途中で雨にでも降ら れていたら、もっと大変だったであろう。修験の道で久しぶりのアドベンチャー山行。皆 さんも少しハラハラドキドキしたかも。(^_-) これに懲りず、またご同行を。(笑) 今度 はカタクリの春に行きたいものだ。 帰りも大して混むこともなく、針ICでたらちゃんを下ろして、無事7時過ぎ帰宅。ビ ール片手にゆっくりK−1を愉しんだのでありました。 ■同行 呉春さん、たらちゃん、のりかさん、もぐさん、レオさん(五十音順)
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■修験業山・栗ノ木岳周回ルートGPS軌跡 (罫線は10秒=約300m 国土地理院、カシミールを利用しました) |