三津河落山〜シャクナゲ咲く新緑の別天地 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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大和岳から西方向。シャクナゲ林の向こうは 経ヶ峰。うっすらと大峰の山並みが見える |
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一昨年は初秋に訪れた三津河落山。緑輝く時期に行ってみたいものだとかねがね思って いたことだったが、この週末、そのことをふと思い出し、天気も良いことだしとドライブ がてら歩きにでかけた。結果は予想に違わぬシャクナゲの乱れ咲く、新緑の別天地であり ました。 6時半、出発。大台行きにしてはいつもより遅い出発だったけれど、道路改良のおかげ で、9時前には現地に到着。五月晴れの絶好の日和なのに、止まっている車も意外に少な い。出発地点に決めていた川上辻付近にも、先行車は三重県とロゴの入ったワンボックス が1台のみである。
旧予定とあったが、依然として通行止で、大きな看板がある。その筏場道と分かれて、ヒ メザサにつけられた踏み跡を登り始める。この辺りにはシロヤシオの大木があったはずだ けれど、まだ時期が早いらしく、目立たない。ツツドリの「ポポッ、ポポッ」と鼓を打つ ような鳴き声に混じって、カッコウの声が聞こえてくる。流石、大台だ。
いくと、早速ツクシシャクナゲのお出迎え。日本産のシャクナゲは蕾の時は濃いピンクで も、開花すると白くなるものが多いが、ここ大台のシャクナゲは咲いても、薄赤といって も良い位のピンク色で美しい。そんなシャクナゲの上へも、ウラジロモミだかトウヒだか 、針葉樹が根こそぎ倒れこんでいる。そんな斜面の最高地点が名古屋岳。踏み跡から30 mばかりピストンしなければならない。砕けた岩が転がり、針葉樹が茂って展望は思うに 任せないが、それでも西に遠く青く大峰の山々、東に如来月の高みを望める。それにして も三津河落山一帯の高みには石標が置かれ、「名古屋岳」、「如来月」、「日本鼻」、「 大和岳」などと、なかなか趣のある名が付けられているのが面白い。聞くところによれば 明治初期、開いた道に松浦武四郎が私費を投じて石標を立て、開拓に尽力した人たちの名 を刻んだとのことである。
ブナ、イタヤメイゲツは芽吹いたばかり。根元や朽ちた木株にはコミヤマカタバミが散り ばめた様に咲き、古い倒木や岩は苔むしている。その中に花束と見まごうばかりのシャク ナゲの花。バイケイソウの鮮やかな緑。時折、聞こえるのは鹿の警戒音か。徐々に傾斜を 増す斜面。振り返ると名古屋岳。石灰岩っぽい白い岩が増えてくると如来月の頂は近い。 大きな岩を巻いて6畳敷き程度の細長い頂に出る。岩の配置、樹木の配置、枝ぶり。まる で日本庭園。否、絶妙の配置は人智を凌ぐだろう。その内の一つの岩に腰掛けて一服。あ る意味では何とも贅沢だ。 如来月からは今度は北に県境尾根を歩く。入る人も増えてきたのだろう。なんだか一昨 年より歩き易くなっている。ここもシャクナゲ林だ。しかしここも倒木で下敷きになって いるシャクナゲが多い。しかも高さ1m位の葉は、悉く食われて葉柄のみ。鹿の仕業に違 いない。シャクナゲは毒性があると聞いたが、どんななのであろ? 鹿の足跡が残るヌタ場もあるシャクナゲ林を抜けると、そこは遮るものの無い大展望が 眼前に広がる。白骨木とイトザサの茂る文字通り「三津河落」の分水嶺の台地だ。東の大 台辻方面へ向かう県境尾根、西の大和岳に向かう尾根もイトザサの原で高い樹木が無い。 明神平の桧塚付近と風景が似通った感じだ。眼下は釜の公谷の源頭、即ち吉野川の源流で ある。左に見える大和岳から北東へ延びる尾根の、釜の公谷へ落ち込む山脚は「ー」と呼 んでもいい位の岩壁だ。その向こうには台高の主だった山々が一望なのだが、如何せん土 地勘が無く分からない。一昨年、教えてもらったのになぁ。(^_^; 景色を眺めながらしば らく、ボケーッとする。 「ア〜。帰りたくないなぁ」
足を進めることにしよう。左(西)に折れて大和岳へ。イトザサの中に一本の踏み跡。サ サに埋もれて小さな白い花が咲いている。ヒメイチゲだったが、撮った写真はピンぼけで あった。 見覚えある農水省の無人雨量観測所。そこを抜けて、踏み跡を少しそれて南に向かうと、 今度は国交省の雨量観測所だが、こちらは少々荒れている。その先が日本鼻。ここに置か れた石標には「岩本秀三」の銘がある。やや盛りを過ぎて萎れ加減のミツバツツジの赤紫 の花が斜面のそこここに。ブナやミズナラの林を透かして、ドライブウェイの路面が小さ く垣間見える。
にはイタヤメイゲツの疎林があり、黄緑の若葉がなんともいえない。 崩壊したザレた斜面を見ながら、標高差50mばかりを登り返す。何か肉食獣らしい糞 が転がっている。狐だろうか。その一つには獣毛が多く混じっていた。 白骨木と、磐座みたいな大きな岩が鎮座する大和岳の頂上は直ぐ先だ。ここも大展望で、 振り返れば日本鼻から三津河落山にかけてのたおやかな笹の稜線。西は遮るものが無いの で大峰の展望が素晴らしい。やや霞んでいたけれども、北から山上ヶ岳、大普賢岳、行者 還岳の傾いだ姿、弥山、八経ヶ岳、孔雀岳、釈迦ヶ岳、大日岳と続く主稜が一望である。 その刻限に加茂ちゃんは観音峰、二輪草さん夫妻は稲村ヶ岳だったらしいと後で知る。今 日も、皆さん、あちらこちらへと出没したらしい。(笑)
る。微風だが時折陽射しが翳るとやや寒いくらいで、長袖のニットシャツを着てきてよか った。ラジオを聴きながら、コーヒーの入ったマグカップ片手に双眼鏡を覗く。土鳩より 少し大きくて、腰の辺りが白い鳥が、潅木を掠めて飛んでいくのが見えた。カッコウ科の 鳥らしいが「何かしらん?」。
尾根にシャクナゲのピンクが目立っていたこともあって、一昨年はピストンしたけれど、 今日はそのまま西へ進むことにする。 七面山の槍の尾ほど大規模ではないけれど、シャクナゲのブッシュである。その南側の 日当たりの良さそうな部分が満開になっている。裏へ廻ってピンクの中に立ってみた。少 々獣臭い。シャクナゲを風除けにして鹿が寝ているのかもしれない。
踏み跡は尾根上から徐々に山腹の左側に巻くようになる。そして次第に怪しくなるが、直 ぐ上にある尾根に登ると明快な踏み跡が見つかる。後は次第に北に向いた斜面を下るのみ。 イタヤメイゲツ、桧などの混生林を降りて行くと右側に大きなザレ場が出てきて、すぐに 車数台がおける空き地が現れ、その先がドライブウェイ。丁度、4.3qの距離標識の辺 りである。 ドライブウェイを戻る。車を置いた川上辻まで結構長かったけれども、(実は駐車地ま で3.3qあった。)あれこれ見ていると飽きない。マムシグサ、コミヤマカタバミ、ト リカブト、バイケイソウ、キランソウ。森ではムシカリの白が遠目に目立っている。それ らに見とれていると足元が危ない。登山道でも倒木が多かったが、道路も至る所で路肩が すごいものがある。 ブラブラと45分位で駐車地。この頃、おやつの定番にしているみたらし団子を頬張っ て一息つく。さて、明日は早い。道が混まない内に帰るとしようか。シャクナゲのピンク と新緑とに洗われた別天地での半日は、こうして名残惜しいがフィナーレを迎えたのだっ た。
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