大江山〜爽秋のたおやか稜線を歩く
 
平成17年10月30日(日)
【天候】晴れたり曇ったり
【同行】のりかさん
鍋塚から大江山(千丈ヶ嶽)と鳩ヶ峰(右)


 酒呑童子で有名な大江山。近畿でも指折りのメジャーな山にもかかわらず、小生にとっ
ては未踏の山であったが、この休日、ようやく歩く機会を得ることができた。よく整備さ
れた登山道に、登り始めでもう700m近い高度。手抜き山行の謗りは免れぬが、それも
また良し。たおやかな峰を気持ちよく散策してきました。

 弱い冬型の気圧配置で、北へ行くほど降水確率は高い。それかあらぬか朝の丹波は濃い
霧で、視界は100mもない。車のフォグランプを点灯。霧が出れば天気がいい証拠とは
いうものの、空が暗いのはやはり気が滅入るもの。それが霧が薄れて青い空が見えると途
端に気分も好転するから不思議だ。

 ETCの通勤割引を使おうと福知山で降りる。宝塚から1300円。おかげで900円
の節約。(舞鶴大江迄だと100kmを越えてしまうのだ。すると何と3千円! (^^; )

 R9、R175と乗り継いで、由良川に沿う北近畿タンゴ鉄道の線路を右に見ながら、
更に北上する。鬼の交流博物館の案内標識で左折すると、もうそこは鬼の里。ユーモラス
な鬼のモニュメントがそこここに置かれている。佛性寺集落の散在する民家や博物館、キ
ャンプ場を過ぎると道は細まり、ログハウスが点在する辺りで分岐を右に折れると、林道
はジグザグを切りながら一気に高度を上げていく。と云っても非常に走りやすい道である。
最後のカーブを曲がると、前方に丸いドーム状の山とキャビン風の木造建物が姿を見せる。
出発地点の峠に着いたようだ。建物の前には2台の車。先行者の車かと思えば、無線愛好
家のもので、傍らには大きなアンテナ。避難小屋に泊まって運用していたらしい。という
ことは、今日ここから出発する登山者の一番乗りだ。(^_^)/ こちらも空いた路肩に車を
寄せて山行の準備を始める。

 寒くなると聞いていたのに拍子抜け。Tシャツでも大丈夫な程、空気は暖かい。今日は
北の鍋塚と南の千丈ヶ岳へダブルピストンの予定。でもハードじゃないのでそれほど汗も
掻かぬだろうと長袖シャツはそのままにしておく。「熊注意」の看板を横目に、まずは鍋塚
を目指し、北に向け出発。標識に従えば、鍋塚へは1.1km、鳩ヶ峰へは0.6kmだそう
だ。

 周囲はコナラやリョウブ等からなる雑木だが全く高い木が無い。濃密に繁っているが、
クマザサの繁みからせいぜい2、3m頭を出しているくらい。その間をまさにプロムナー
ドと呼ぶべき道が延びている。昨夜来の雨で粘土質の土壌が少し滑るのが唯一難と言えば
難か。足元では時折、ツリガネニンジンが風に揺れ、アキギリが特徴あるめしべを花弁か
ら突き出した姿を見せる。
南の鞍部からたおやかな鍋塚

 まことに名は体を現すとはこのことか。711mの標高点を過ぎると、鍋塚のモッコリ
としたドーム状の姿が前方やや左に現れる。笹原の中、山体を半分に割る如くに白い道が
ほぼ一直線に山頂へ伸びているのが分かる。急登かなと覚悟したけれど、一旦、下った鞍
部から登り返してみれば存外なだらか。スッ、スッと登れてしまう。少し汗を掻いた程度
で遮る物の無い山頂に出る。誰もいない。中央に三等三角点。ベンチが置かれているので、
ザックを置いて一休み。お茶を飲みながらしばし景色を愛でる。北は細長く加悦町から野
田川町の町並み。ただ残念ながら海ははっきりしない。東の大きな山は普甲峠を隔てた大
笠で、山頂に航空管制施設が見える。山腹途中に小さな展望台があるのは、登山道が続い
ているからに違いない。(鬼の岩屋にある展望台だそうだ)西には北半分が紅葉に染まり
始めている711m峰の奥に、これから向かう鳩ヶ峰と雄大な千丈ヶ嶽。赤石ヶ岳が千丈
ヶ嶽の陰に隠れて肩だけをチョコッと見せている。北西にこれまたドーム状の山があるが、
以前登った磯砂山らしい。その外にも周囲は山だらけだが、何せ土地勘が無いものだから
よく分からない。(^^;

鍋塚より紅葉が始まった711m峰。奥に鳩ヶ峰

 山頂でゆっくりしていたら、チワワを連れた熟年夫婦ハイカーが上がって来られた。大
阪の八尾からだという。午前7時に鬼嶽稲荷から登り始めたそうだが、雲海が凄かったと
いう。その頃、我々は残念ながらまだ集合地点だったなぁ。(^^;

 ご夫婦に挨拶して下山。峠に戻ってくると、車の数が増えている。時刻は10時半過ぎ。
今から準備を始めている男女ハイカーに、ピクニックに来たような家族もいて賑やかだ。

 さて、次は鳩ヶ峰へ。峠から少し登ってCa660m峰。登山道から少し外れて展望岩が
ある。背の高いクマザサを掻き分けると、岩に上がってジモティーらしい若い家族連れが
景色を楽しんでいる。我々も岩に登る。うーん。なかなかの景観。711m峰と鍋塚の北
面が茶系統の渋い色だ。直下に加悦の方から登ってくるらしいダート林道が垣間見えたが、
これもなかなかいい雰囲気である。

 登山道に戻ろう。少し下って、ゆっくり登り返す。加悦町に向かうササの切り開きがあ
る。さっきの林道と接続しているのだろうか?

 シラヤマギクが群れ咲いている中、岩の陰にリンドウが花を咲かせているのを見つける。
リンドウを見かけたのは結局これのみ。大江山は花の百名山の一つだが、今から冬にかけ
ては流石に花は少ないようである。鳩ヶ峰までは約100mの標高差であるが、急坂もな
くゆったり登るので疲れない。ここも聞きしに勝る大展望である。

今度は峠の西のCa710m峰の展望岩から
鉢塚を見る。奥は大笠(標高700m)

 鳩ヶ峰と千丈ヶ嶽の鞍部は結構深い。稼いだ標高を50m程吐き出しての登り返しだ。
右(西)側は杉の植林、左(東)側は雑木林で、鍋塚とは異なる雰囲気。ウリハダカエデ
が多く、葉は早、うっすら紅葉を始めている。赤い実をつけているのはソヨゴだろうか?
植林を抜けると周囲は明るい雑木林。千丈ヶ嶽への最後の登りは今日一番の急登となって、
丸木の階段が整備された道は林道並みの幅がある。オオイワカガミの群落を足元に見なが
ら進めば、まもなく傾斜は緩み、こちらも高い木のほとんど無い山頂である。

 千丈ヶ嶽は大江山の主峰。二等三角点が埋まる山頂は広い。そこに居るのは数人のグル
ープと夫婦ハイカーの二組のみで、なんだか拍子抜けな感じである。北に向いたベンチが
一つ空いていたので腰掛けてランチの用意。ベストと長袖シャツを脱いでシャツ1枚。
「おおっ。結構汗掻いてたんやぁ」

 おにぎりを頬張りながら雄大な景色を眺める。その中ではとりわけ三岳山のピラミダル
な姿が印象的。山頂の関電の反射板もよく見える。あの下でラーメン食ったっけ。その左
手前は天ヶ峰。赤石ヶ岳へは尾根が続いているのではなくて一旦グーンと下らねばならな
い。その赤石ヶ岳との鞍部にある建物は「大江山憩いの広場」だそうだ。西にはトンネル
を出たR176がループを描いているのが望まれ、疾走する車の音が山の斜面を這い登っ
てくるのが微かに聞こえる。

千丈ヶ嶽より西、雲間から射す西日を
アクセントに左は三岳山、右手前に赤石ヶ岳

 こうして、全くルートファインディングに気をとられることも無く、のんびり尾根歩き
をするのもいいものだ。本当に柔らかい感じの女性的な山である。しかもピークはそれぞ
れ好展望。それらをゆっくり楽しみつつ、1時間足らずで峠に戻る。だが、山頂で飲んだ
缶ビールが効いてきて、鳩ヶ峰の登りが、ちと、しんどかった。これからは心せねば..。
と、この瞬間だけの反省。(^^; 途中で小雨がほんの数滴ぱらついたがすぐに止んだ。

 賑やかだった峠も、残された車は1、2台。ゆっくり後片付けをして、車もエンジンブ
レーキを効かせて黄葉、紅葉を惜しみながらゆっくり林道を下る。日本の秋はやはり何処
にもましていいものだ。

 帰りは折角なので、鉱山跡を利用した鬼の交流博物館にちょっと寄り道。鬼の角に似さ
せたのか、大きく張り出した屋根がユニークな建物である。ユーモラスで一寸奇怪な鬼が
見下ろす門を潜り、全国の鬼瓦や鬼にまつわる色々な展示物を見学する。やはりここにも
土蜘蛛伝説があった。大和葛城山麓にも土蜘蛛伝説があるが、鬼はやはり大和政権にまつ
ろわぬ土着勢力のことのようであった。

 爽秋の一日を愉しんだのんびりハイク。傾いた秋の陽も山に劣らずやわらかでした。

博物館の門にある鬼瓦の鬼

高さ5m、重さ10トンの日本一の大鬼瓦


【タイムチャート】
7:00江坂駅ローソン横(集合地)
9:00〜9:10鍋塚、鳩ヶ峰間の鞍部(駐車地)
9:45〜10:05鍋塚(763.0m 三等三角点)
10:40鍋塚、鳩ヶ峰間の鞍部(駐車地)
10:45〜10:50Ca660m峰付近の岩
11:10〜11:25鳩ヶ峰(746m)
11:58〜13:00千丈ヶ嶽(832.5m 二等三角点)
13:29〜13:33鳩ヶ峰(746m)
13:53鍋塚、鳩ヶ峰間の鞍部(駐車地)


大江山のデータ
【所在地】京都府加佐郡大江町・与謝郡加悦町
【標高】832.5m(二等三角点)
【備考】 京都府北部の大江町と加悦町にまたがる山並みの総称で
最高峰は千丈ヶ岳です。酒呑童子の伝説に彩られた山は
全体になだらかで、道標、登山道とも整備されており、
家族ハイクにうってつけです。
■近畿百名山■関西百名山
【参考】
2.5万図『大江山』




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