和佐又口から伯母ヶ峰
 
平成17年10月 2日(日)
【天候】曇り時々晴れ
【同行】のりかさん、もぐさん
Ca1260mとの鞍部付近から伯母ヶ峰


 土曜は子供の運動会。帰宅して昼寝やら、なんやかやでPCに電源を入れたのは既に夕
刻。それから明日の予定山域の地図の印刷等の準備をしたり、夕飯を食ったりしていると
もう7時。その頃、ようやく受信メールを確かめると、その中に、もぐさんからの「明日、
伯母ヶ峰は如何?」のお誘いメール。「うーん。どうするか...。」しばしハムレット
状態。が、結局、その企画に乗ることに。我ながら腰の据わらん奴っちゃ。(^^;

 伯母ヶ峰は修験業山と同様、「山と渓谷3月号」のハイグレードハイキング特集に紹介
されている山で、それも隣のページという偶然。しかし、修験業山ほどきつい山でもなく、
途中、峠で大台のドライブウェイと交錯し、車の音が気になることもあったが、それ以外
は訪れる人も少ないらしく全く静寂そのもの。快適な稜線歩きが楽しめる、拾いものの山
でありました。

 午前6時半。例の如く桃山台駅西で待ち合わせて出発。今日はいつもの西名阪を使わず
に、のりかさん推奨の南阪奈経由。こっちの方が安いのだ。(笑) 高田バイパスから藤原
京の前を通過し大宇陀町でR369へ。コンビニに寄って飲食物を仕入れて、後は一路南
下するのみだ。道はどこかで通行止めにでもなっているのかと思うほど空いていて、凡そ
2時間で和佐又山のロッジへ通ずる林道を少し入った所に建つトイレ前に到着、和佐又谷
に沿った空き地に車を置く。空き地には数台の車を置くスペースがあるが、勿論、他に車
はない。準備をする間にも国道のトンネルを抜ける車のエンジン音が聞こえてくるが、こ
ちらへ上がってくる気配もない。
和佐又口の登山口

 そのトイレの向かいが登山口である。丸木階段で整備されているのは和佐又山のハイキ
ングコースになっているからであろう。まずはジグザグに高度を稼いでから、山腹を縫う
道となる。やや薄暗い。途中、2、3の小沢を横切るが、内一つは小さな細い滝を懸けて
いる。そんな中、太い古木が根から倒れて谷底で折れている姿は壮絶である。

 山道の岩陰で綺麗な少しの欠けもないキノコを見つける。テングダケの一種だろうか。
傘の直径がゆうに10cmはあるものが3本。遠くから見ると宇宙人が3体並んでいるよう
に見え中々ユーモラスである。
大きなキノコ。手帳と較べて下さい

 小尾根に乗ったと思ったらまた山腹道になったりを幾度か繰り返す。風が欲しい。今日
も汗だくだ。(笑)

 山腹を巻く道ではあるけれど、西側が開けてきた。途中のザレ場からは和佐又山が三角
形に端正。中腹の高台にはロッジの建物が望見できる。そこへうねうねと延びる和佐又林
道。ただ主役の大普賢岳主峰や大峰の主脈は、生憎、雲の中である。そうして日本岳から
延びてくる七窪尾根がはじめて姿を現したが、まだ大分、登らねばならないようである。

登山道途中から和佐又山。中腹にロッジ
左下に林道が見える

大普賢岳は雲の中。七窪尾根の奥に日本岳が見える

 一箇所あった崩壊地は迂回の梯子があって、問題なく越すことができる。タケニグサが
目立つ小沢を横切って、しばらく行けば東屋に出た。

 和佐又山への道はここから山すその小尾根を直角に巻いて延びていくが、七窪尾根へは
この山裾から登るらしい。「山想遊行」の黒い木札が雑木に揺れているのが目印である。
桧の幼木の植わる斜面は南向きで明るく、徐々に傾斜を増して、やがて小さくジグザグを
切り出す。やや踏み跡が薄い部分は適宜、テープが導いてくれる。そんな登りも10分ほ
どで傾斜も緩み、雑木の合間から大台ヶ原方面が見渡せるようになる。痩せたササの繁み
を抜けると、植林の中に付けられた一筋の道に合した。和佐又口分岐で七窪尾根の道は思
った以上にしっかりした道である。

 帰りのことも考えて、合流点付近を注意深く見ておく。合流点付近には目印のナイロン
テープやスーパーのレジ袋が結び付けられているもののあまり目立たないのだ。伯母峰峠
から下ってくる場合、うっかり東屋への下降点を外さぬように少し注意が要りそうだ。

 概ね北側は桧の植林、南は雑木林。雑木の中ではヒメシャラが目立つ。ほとんど高低差
がない緩やかな起伏が1144m標高点ピークまで続く。遠くでキツツキのドラミング。

 標高点ピークを過ぎた辺りから、道は一転、伯母峰峠に向かって緩やかな下り基調を取
り始める。そして迂回路を30mばかり一気に下って、再び尾根道に復帰すると又緩やか
な下り。その先に関電のマイクロウェーブアンテナ施設が現れた。

 ここで一休み。バイクの排気音がすると思ったら、ドライブウェイの路面が垣間見える。
その先に伯母峰の休憩所の建物が見えた。

 水分を補給し、一息入れたところで関電のアンテナ施設を後にする。すぐに「カモシカ
生息地 紀伊半島」と表示された標識が現れ、右に折れる道があるが、構わず尾根に沿っ
て直進する。が、道はその先、峠の手前でスパッと切れ落ちる。左へ迂回すれば強引に行
けないこともなさそうだったが、ここは少し戻ってみる。なるほど先ほどの「カモシカ」
標識に「伯母ヶ峰」と書かれたマジックが消されているのはそういうことだったのか。と
なれば答えは一つ。標識の前にある道を下るしかない。

 笹を刈ってよく整備された道はジグザグを切って降りて行く。すぐに変則十字路。右に
降りて行くのは、例の関電のプラ階段が設置されているから、トンネル横から伯母ヶ峰に
登るショートカット道に違いない。直進するとブッシュに阻まれ道がなくなった。「あれ
?」正解は左斜めに進む階段道。よく見ればテープに小さくマジックで「伯母ヶ峰」と書
かれてある。すぐに木梯子が現れて、下れば関電の施設横の伯母峰峠の最低部にやっと行
き着いた。(^^; 

 峠の下は大台ドライブウェイのトンネル。時折、車の音や、バイクの音が聞こえる。テ
ープに導かれて進めば、やがてヒノキの植林下の一本調子の斜面となる。と、その時、前
からご夫婦らしいハイカーが降りてきた。トンネル横からピストンとのことであったが、
今日、出会った唯一のハイカーである。このところ、こんな山歩きばかりだ。(^^;

 ガイドにある屈曲点ピークは山頂を踏まず、右の裾を巻く。従来は山頂を踏んでいたら
しく、その痕跡がある。地形図を見ると、屈曲点ピークから北に稜線が続いていて、突端
に三角点ピークがある。これは伯母ヶ峰北峰というそうだ。巻き道は笹が生えていたりで
少々荒れ気味だが、テープが要所にあるから問題はない。尾根道に復帰した所はガイドに
あるように、なるほど直角に曲がるとはいうものの、あえて注意するほどでもなかった。

 潅木が疎らに生えた小さなピークを過ぎた少し先。下って笹の繁みを登り返しすともう
一つの高みがあって、1m位の高さの古い檻がササの茂みに隠れていた。檻には「田中式
熊捕獲器」とプレートがある。放置されて久しいようであったが、少なくとも以前はこの
付近に熊が出没していたということだ。少し背筋がむずがゆくなってくる。

 この熊の檻があるピークの直下は、大台ドライブウェイに沿って南下する尾根との分岐
点となっていて私製の道標がある。

 ところで、地形図の伯母ヶ峯と指定された1262mピークはどれだろう。よく似た小
ピークが隣接していて、この熊の檻のある高みが、それだという記述もあるが、小生はそ
の西の潅木の生える高みだと思うのだがどうであろう。

 それは兎も角として、そろそろいい時間。空腹を覚えたのでその先の尾根が狭まった辺
りでランチタイム。のりかさんはここで待機するとのことなので、コーヒーを飲み終わっ
た後は、もぐさんと共にザックを置いて空身で三角点ピークに往復してくることにする。
帰還時間は片道15分として、13時に設定した。

 すぐ東には1,267mの三角点ピークの西にあるCa1260mピークがわだかまってい
る。少し登り返せばその1260mピーク。この辺り、1.5m位の丈があるクマザサが
左右から踏み跡にかぶさる。女性など小柄な人には少々歩きづらいかもしれないが、距離
的には20m位であろう。ただ、木株がササに隠れているので注意が要る。

 1260mピークの先には農林水産省の伯母ヶ峰中継局がある。その先には大きな天然
桧が主の如く佇んでいる。樹齢200年はあろうか。長年の風雪に耐えてクネクネと曲が
っている。この付近はシロヤシオの古木も多く、5月には白一色に染まるに違いない。そ
んな林が途切れた所から大迫ダムと湖面が北側に眺められる。意外に近い。来る途中でチ
ラッと見えた集落は入之波だろうか。

大迫ダムが意外に近くに

 倒木を乗り越えて進んでいくと、前方にようやく三角点ピークが姿を現した。その手前
の鞍部にはブナの巨木やウリカエデ。枝先が早、黄色く色付き始めている。紅葉、黄葉は
さぞや見事であろう。一見美味そうにみえるツキヨタケも朽木に並ぶ。この付近からは南
方面の山並みも望める。大台ヶ原へ向かうドライブウェイが走っているのだろう、法面が
荒れて痛々しい感じだ。

 背の低い笹を掻き分けて登りきった三角点ピークはシャクナゲに取り囲まれてごつごつ
とした感じの頂で、その中央に三等三角点の標石が大きく飛び出している。伯母ヶ峰は妖
怪一本タタラの前身である背に笹が生えた猪笹王なるイノシシが棲む山だったと謂われに
あるそうだが、さもありなんと思わせる雰囲気がある。松浦武四郎が歩いた時は人跡未踏
の大藪で、当然、もっとおどろどろしかったに相違ない。
伯母ヶ峰山頂

 恒例、三角点にタッチして、往路を戻る。その間、2度ほど犬の遠吠えのような動物の
鳴き声らしき音を聞く。ひょっとして「一本タタラ」?果たして、のりかさんは大丈夫か
?(笑)

 予定の13時。昼食地点に帰着。三角点ピーク手前の大木に熊の爪痕と思しき引っかき
傷もあったから、もしや...。やっぱり変な声を聞いたそうだが、でも無事でした。(^^;

 天気は下り坂の予想通り、灰色の雲が空の過半を覆いだした。でも、もうしばらく泣き
出すのは待ってもらおう。それまでに登山口へ戻るべく、デポしたザックを担ぎあげる。

 わいわいだべりながら歩いていると、突然の人の声に驚いたのか、木の高みで小鳥がか
まびすしく鳴き交わす。何の鳥だか、相変わらず鳥の同定は不得手である。

 伯母峰峠からの登り返しは昼食の後には少しきつかったが、概ねなだらか。他愛も無い
話をあれこれ。するとあっという間に和佐又口の分岐。大台の大和岳からドライブウェイ
に降りるのと良く似た風景の幼木帯を降りて、東屋に到着。休憩はとらずに登山口へと戻
る。

 ザレ場。やっぱり大普賢岳は往路と一緒で、肩から上を見せてくれない。諦めて、樹林
の中に入る。キノコは朝と寸分違わぬ姿で3本がすっくと。

 15時半、トイレ横の登山口に帰着。相変わらず車は我々のもののみ。HPに紹介され
ることが少ない山だけれど、素朴さの残る山でありました。


【タイムチャート】
6:30桃山台駅西ロータリー(第1集合地)
8:40〜8:50和佐又口トイレ横(駐車地)
9:37〜9:42Ca1,050m尾根(小休止)
9:55あずまや
10:10七窪尾根出合(和佐又口分岐)
10:201,144mピーク
10:42〜10:51関電北山無線中継アンテナ
11:03伯母峰峠
11:32Ca1240mピーク直下の屈曲点
11:45地形図の伯母ヶ峯(1,262m)
11:46大台ヶ原ドライブウェイ分岐
11:47〜12:201,262mピーク東(昼食)
12:24Ca1,260mピーク
12:26農水省無線中継局
12:40〜12:43伯母ヶ峰(1,266.6m 三等三角点)
12:55Ca1,260mピーク
12:57〜13:001,262mピーク東
13:05地形図の伯母ヶ峯(1,262m)
13:18Ca1240mピーク直下の屈曲点
13:35〜13:38伯母峰峠
14:061,144mピーク
14:15〜14:22七窪尾根出合手前150m(小休止)
14:36あずまや
15:20和佐又口トイレ横(駐車地)


伯母ヶ峯(伯母ガ峰)のデータ
【所在地】奈良県吉野郡川上村
【標高】1,266.6m(三等三角点)
【備考】 大普賢岳から東に延びる七窪尾根と大台ヶ原の間に盛り
上がるピークで、地形図の伯母ヶ峯は1262mの標高
点ピークになっていますが、その東の三角点峰が主峰と
されています。尾根上はヒメシャラ、シロヤシオ、アケ
ボノツツジが多く、自然林の中の静かな山歩きが楽しめ
ます。和佐又山への林道途中から登るのが正規ですが、
大台ヶ原ドライブウェイ途中の売店付近から登ればショ
ートカットできます。アプローチは公共機関が不便な為、
マイカーが便利です。
【参考】
2.5万図『大台ヶ原山』、『弥山』
エアリアマップ『大台ヶ原』



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