初秋ひっそり三峰山
 
平成17年 9月11日(日)
【天候】曇り
【同行】のりかさん
神末上村付近から屏風の様な三峰山の山並み


 北ほど天気が悪いとの予報で、急遽、方向転換して行くことにした三峰山。ところが、
冬は霧氷、初夏はシロヤシオで大いに賑わうこの山に、この日、奈良県側から登ったのは
我々だけだったようで、嘘のようにひっそりしていたのにはびっくり。山頂と八丁平で、
三重側から登ってこられた都合2組のグループに遭った以外は、誰にも遭わず。気温はそ
れほど高くなかったが猛烈な湿気の所為で、汗だく登山と相成ったけれど、標高1000
mの稜線歩きは当初の目論見どおり涼しく、快適でありました。

 名阪国道の思わぬ事故渋滞。11kmの電光表示に、これはかなわぬと急遽、経路変更。
天理ICで降りて桜井からR165で榛原へ向かう。Nさんの的確なナビゲーションのお
蔭で大したロスもなくR369へ。今にも泣き出しそうな空も、東に向かうにつれて雲が
切れて明るくなってきた。これで天気も大丈夫。よしよし。(^o^)/

 牛峠で神末へ向かって折れる。神末川の清流を見ながら、時間が止まったように鄙びた
神末の集落を通過する。黄色く色づいた稲田の向こうに屏風を立てた如く三峰山塊が広が
っている。青少年旅行村の道標に導かれながら、川沿いに遡れば歓迎アーチがあって、そ
の先に不動滝コースの登山口標識が目に入る。そこから150mほど行き過ぎた所が旅行
村の集会棟で、横の駐車場をお借りすることにした。

 用意を整えて出発。神末川に沿って車道を戻る。ゲンノショウコが可憐な花をつけてい
る。北摂では赤紫が大半なのに、ここでは白花が多い。白い花火の様なのはシシウド。青
い風鈴はツリガネニンジンだ。
みつえ旅行村の手前で橋を渡る不動滝コース

 神末川に架かる橋を渡って、今度は北から合流する大台(大タイ)川に沿って林道を辿
る。ここではハガクレツリフネが目立つ。花の色がやや白っぽい。そしてキツリフネ。そ
れにもまして盛りだったのはヤマジノホトトギスで、この後、登山道の到る所で見られた
のである。

 植林下の薄暗い道になると間もなく、右手を流れる川に橋が架かっていて、これが登り
尾コース。このまま直進して不動滝コースを進んでも山頂間近で合流するので、今回は谷
底よりも少しは涼しそうな登り尾コースを選択。だがこれは意に反して全く裏目に終わる。

大タイ谷から分かれて登り尾コースへ

 山腹をジグザグに登って高度を上げるのはいいが、風はそよとも吹かない。杉、桧の植
林下の湿った地面から、なんだか、モワーッと水蒸気が上がってくる様な気がして、早く
も汗だく。手にしたこの時期の必需品、団扇も気休め以外の何物でもない。半時間も喘い
だ頃、ようやく前方に明るみが現れた。伐採地らしい。あそこまで行けばと気合を入れ直
す。そして飛び出した所は、トイレつきの立派な避難小屋の建つ林道出合である。

林道出合の立派な避難小屋

 その小屋を覗こうとしたら、中から小父さんがひょっこり。なんでも不動の滝を見物に
来たのだが、見つからないのだとか。「こっちじゃないですよ」と教えると、車に連れが
待っているとのことで林道を戻っていかれた。うまく滝見物はできたろうか?

 建物の前の芝生で初休憩。前日、酒の後の喉の乾きに古い麦茶。慌てて陀羅尼助を飲ん
だが、流石に体調今いちのところにもってきて、少々シャリバテ、水バテ。Nさんから頂
いた草餅を口に入れて一息つく。

 やおら腰を上げる。まだまだ先は長い。見れば林道と林道の間の小尾根に丸太の階段道
が付けられている。そこを登って振り返ると、神末の集落がマッチ細工の様で、旅行村の
ロッジも見える。彼方には倶留尊山や二本ボソの連なりも姿を現し、景色も雄大な広がり
を見せ始める。足元にはやや花が小さいママコナの群落。沢音が右下から上がってくるが
相変わらず風がほとんどない。

 植林帯から雑木林になったと思ったら又植林帯。総じて単調な登り。一箇所、左が開け
て丸太のベンチが置かれた場所がある。ここは若干の風が流れてくるので、また一息入れ
る。気づかぬ内に、大分、高度を稼いだらしく、神末の集落も余程小さくなり、曽爾高原
のススキの斜面や古光山方面まで展望が広がる。しばし暑さを忘れる瞬間だ。

展望地から神末。奥の山並みは左にから
二本ボソ、倶留尊山、高槻山
右は大洞山、尼ヶ岳方面

 更に登りは続き、ようやく尾根筋の勾配も収まってきた頃、道端にぽつんと地蔵菩薩の
石仏を見出す。光背に勢州川俣と彫られているから、伊勢街道沿いの飯高町川俣在の住人
が安置したらしい。この道ももとを質せば古道なのだろう。そこからしばらく歩けば、左
から不動滝コースが合流してくる1102mピークであった。ここにも立派な避難小屋、
そして古い作業小屋がある。

 いい加減あきてきた杉桧林から明るい雑木の林に代わると、分水嶺の稜線はもうすぐで
ある。「新道峠1600m」の標識が立つ三畝峠には1102mピークから凡そ15分。
どても峠という感じはせず、どこにでもある辻という感じであるが、ママコナの花の群れ
が最盛期を迎えている。マルハナバチらしい虫が盛んに蜜を集めていた。

 峠から山頂までは450m。もう小さなアップダウンのみ。シロヤシオ、ヒメシャラ、
リョウブ、ブナの山上のプロムナードだ。今日はこれを楽しみにやって来たようなもので
ある。八丁平への道と分かれてまずは山頂へ向かうことにする。

 「やや?」予想に反して誰もいない。展望説明板と一等三角点がポツンと。トリカブト
の花が微風に揺れているのみである。更に東へ踏み跡があるのは学能堂山への縦走路だろ
うか。
誰も居ない三峰山山頂

 一等三角点の山とはいうものの、360度の展望とはいかず北方向のみ。倶留尊山、二
本ボソの他に、古光山、住塚山、大洞山に尼ヶ岳と曽爾方面の山が居並んでいる。霞む市
街地は名張方面だろう。

 丁度、正午ジャスト。誰もいない山頂で食事としよう。Nさんから鯖寿司を頂く。発汗
でややばてて、今いち食欲が湧かなかったけれど、これは美味かった。小生にとっては、
山ではやっぱり寿司系の弁当が向いているみたい。(笑)

 コーヒーブレークの後は八丁平へ。潅木の間、深くえぐられた踏み跡を南に進むこと約
5分。広々した笹原の八丁平に出る。こちらからは台高山脈の主稜が見渡せるのだが、生
憎のガス。ほんのさっきまで覗いていた迷岳、白倉山、古ヶ丸山も次から次へと湧いてく
る白いカーテンに掻き消えた。

 しばらくガスの晴れるのを待っていたけれど、こっちもガスが湧き出した。あきらめて
新道峠へ向かうことにする。本当ならこの付近から高見山の鋭鋒が望めるのだが、今日は
ガスで無理。しかし、そのガスで八丁平の雑木林が明神平を髣髴とさせる幽玄の世界。い
いねえ。やがて、雑木のトンネル。山頂との分岐、三畝峠と過ぎて稜線プロムナードの始
まりである。
ガスが静かに覆い始めた八丁平

 時折、蜘蛛の糸が顔にへばりつくのが鬱陶しい。が、ということは即ち、この稜線を今
日歩いているのは我々だけなのか。
「うーん、バージンロードや」(^0^/

 ヒメシャラ、シロヤシオツツジ、ブナ、アセビなどからなる雑木林はやはりいい。大し
たアップダウンもなく、登尾峰、1102mピークなどを辿りながら、徐々に高度を下げ
ていく。やや尾根が広まって左に振るところがあって、ガスるとやや判り難い所がある位
で概して明瞭。地面のそこここにヤマボウシの赤い実がコロコロ転がっている。

 新道峠の先30m西がワサビ峠で大日如来の石仏が置かれている。南に下れば、4年前
に下った飯高町月出。西進すれば白髪峠から高見山へ続く。

 その新道峠から北へ。やや暗い雑木林。右に折れるとすぐに水音が聞こえだして少々面
食らう。沢の源頭にパイプがあって、そこから勢い良く水がほとばしり出ている。神出川
の源流、即ち名張川、淀川の源流でもあるのだ。手をつけると冷たく気持ちいい。でもこ
んな山の上にこれだけ水が出るとは不思議な気がする。

 さて、そんな沢の左岸に付けられた踏み跡の左からも小さな沢。二重山稜というものが
あるが、これはさしずめ二重沢だ。(笑) 

 鹿よけネットが現れた。「扉を開けたら閉めてくれ云々」の説明書きが立てられている
が、「ええ?どこが扉なの?」
結構頑丈で、潜ることも乗り越えることも出来ない。白いビニール被膜の針金を外すのか
なと、ガチガチに捻ってある針金を取り外す。おお、正解、正解。やっとのことで抜けら
れた。(^^;
頑丈に閉めてあった鹿除けネット
緑の棒に見える白い針金を外す

 ここから先は杉、桧の植林。左側の山肌を縫うように続く道は、作業道を兼ねているよ
うで、左手は延々と鹿よけネットが続く。そのネットの向こうは雑木林でブナやヒメシャ
ラの大木も見受けられる。時折、右手方向が開けると、足下の谷に沿った植林が緑豊かで、
はるかに遠く、倶留尊山方面が望めて気分がいい。右手の山並は学能堂山か。

植林下が多いが、コアジサイが群れる
清々しい雑木林もある

 コアジサイの群落のある雑木林を抜けると再び植林帯。遥か下に林道が見えてきて、道
はそれに向かってジグザグを繰り返して近づいていく。やがて、さび付いた古いトタン葺
きの作業小屋の前で林道に合流。とりあえず、やれやれ。(笑)

新道コース登山口に下りてきた

 後はテクテクと林道をのんびり下っていくのみ。それでも色々な植物があって飽きない。
実をつけたウバユリ、ゲンノショウコ、ヌスビトハギ、クサギ、オトコエシ。マメ科の花
の名は聞いたのだが忘れてしまった。(^^; それにしても三峰山は水の豊富な山だ。横を
流れる神末川は水量が豊富。途中、岩盤を舐めるような滝は「魚止の滝」と呼ぶらしい。
轟々となかなか豪快である。その頃だったか、サーッと小雨。
「もう、いくら降ってもええもんね」
などと冗談を言っていたら、すぐに止む。

 登り尾コースの途中、避難小屋が建っていた林道の分岐する地点を経てしばらく、今度
は木橋(ケヤキ谷橋)が現れた。これも登り尾コースと合流するようだ。

 まもなく右に砂防堤。そして前方にログハウスが見えてくると、みつえ青少年旅行村の
園内だ。大きな東屋の下にファミリーキャンパーが大勢。右手斜面のローラー滑り台から
は子供の声が聞こえてくる。売店も兼ねた管理棟の前を過ぎれば、駐車地まではすぐであ
った。

 民家の軒先の石垣の下では、早々と彼岸花。なんだかんだ言っても秋はもうすぐ。そう
して、そのあとはまた、賑わいの冬がやってくる。束の間の静けさ。そんな初秋の三峰山
でした。


【タイムチャート】
6:50自宅発
9:40〜9:50みつえ青少年旅行村駐車場(駐車地)
9:55不動滝コース登山口
10:00登り尾コース分岐
10:25〜10:35林道出合・避難小屋
11:00〜11:05展望のベンチ
11:30不動滝コース出合
11:45〜11:47三畝峠
12:00〜12:48三峰山(1235.4m 一等三角点)
12:53〜13:00八丁平
13:10三畝峠
13:20登尾峰(1156m)
13:401102m標高点ピーク
13:43〜13:45新道峠
14:18林道(新道支線)出合
14:58林道登尾線・新道支線分岐
15:10みつえ青少年旅行村
15:15みつえ青少年旅行村駐車場(駐車地)


三峰山のデータ
三峰山〜霧氷で巳年の山納め』をご覧ください
【参考】
2.5万図『菅野』
エアリアマップ『赤目・倶留尊高原』



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