迷おうにも道が無かった迷岳
 
平成17年11月 3日(木)
【天候】曇り一時雨
【同行】別掲
林道は寸断され惨憺たる有様


 これほどまでとは。想像を絶する崩壊であった。完全に林道は消え失せて、岩と流木と
瓦礫の世界。今更ながら、自然の猛威を思い知らされた感じだ。復旧には数年かかるかも
しれない。迷おうにも登山口に到るそもそもの道自体が無いという迷岳撤退の一日でした。

 尾根筋の自然林が素晴らしいと聞いていた台高の迷岳。晴れの特異日である文化の日に
しては生憎の空模様ではあるけれど、例によって水谷さんの音頭とりで総勢10名が集合。
1BOX2台に分乗してR166を東進。奥香肌峡を過ぎてしばらく進んだ交差点で、宮
川村へと右に折れてR422に入る。ここからが結構長い。クネクネとした羊腸の道は湯
谷トンネルで峠を越える。ここが櫛田川と宮川の分水嶺で、水の流れが逆になる。この辺
りではもう木々が色づき始め、殊にヤマザクラの赤、ケヤキの黄が鮮やかだ。しかし、そ
んな景色も宮川に沿う宮川村の中心に入ると一変する。至る所で復旧工事が行われている。
山の斜面のある部分だけには木が無く、新しいコンクリートの壁。明らかに山抜けした跡
だ。河川敷にも土砂が積まれブルドーザーが唸りをあげ、ダンプが頻繁に行きかう。去年
の台風21号では1000ミリになんなんとする未曾有の豪雨が降ったという。1時間雨
量は130mmを越えたという。これはもう雨というより、滝が天から流れ落ちる光景であ
ろう。その雨が全て宮川に流れ込んだわけである。
「林道は大丈夫か?」
ましてや小生の車は只のFRの2WD。不安が頭をもたげる。

 左に見えた橋に新領内橋の名が刻まれている。たまたま家の外に出ていた小父さんに問
いかけて領内総合センターの場所を教えてもらう。それはそこから200mも行った右手
の立派な建物であった。ここで再集合しトイレ休憩も兼ねて小休止をとる。

 天気雨。青空も覗く空からやや大粒の雨が降ってきたがすぐに止む。R422を大杉ダ
ム方向に更に進む。見えてくる小さなトンネルが八知山トンネルだが、崩落の危険がある
らしく通行止め。その右手がヤチ山谷林道の入り口である。

「?」
「これはいいじゃないか」
真新しいアスファルトが張られたいい道が続いているではないか。
「もう復旧終わってるんや」
しかしそれは単なる糠喜びでしかなかったのである。300mも進んだ頃だろうか。先行
する水谷車が停止。見れば、土砂が路面を覆ってとても進めない。やむを得ない。とりあ
えず、ここに車を置いて、尾根筋まででもいいから辿ってみようということになる。

土砂崩れで進めない

 右手のヤチ山谷は急流だが、結構広く水量も少ない。が大きな岩がゴロゴロと転がり、
多量の流木が思い思いの方向に散乱している。こんな静かな谷がと俄かには信じられない
くらい。車の進行を諦めさせた土砂は人間には大した事はなく、すぐに乗り越えられたの
だが、その先にはもっと凄いのが控えていた。数メートルだけれど、完全に道が落ちてい
る。仕様がないので下部を迂回し、川床に続く斜面を登り返して復帰する。「フーッ」

土石流で埋まる林道

 左に折れたところで林道の分岐。迷岳登山口と書かれた標識は右を指している。これが
Webにあった車道でのアプローチとは逆に付けられているという標識らしい。左へ行く
林道は地道だけれど、その先はどうなっているのか定かではないものの、少なくとも分岐
付近ではしっかりしている。右に進むと林道終点から山道になって、ショートカットで登
れるらしいとのことなので右の林道(ヤチ山谷林道支線)を進む。しかし、これが大誤算。
地形図上で右に大きくUターンする部分で道は完全に崩落し、跡形も無い。右手に続く林
道へは2、3m登らねばならず、誰が付けたのかトラロープがあるが、斜面は脆く危ない。
小生なぞ少々ずり落ちて、すねを少し擦りむく始末。女性陣にはこの先を危ぶみ、顔色を
やや青ざめさせている人も。この先にもこんな所が幾つもあるのだろう。もうこりゃとて
も...。少し悔しいけれど自然相手だからどうしようもない。撤退決意。(冒頭の画像)

 そういえば、この事態、思い当たる節が無いでもないのだ。
@ 昨年、今年とヤチ山谷林道から迷岳に登った山行記が見つからないこと。
A 昨年12月の時点で林道入り口が崩壊し、ユンボが谷に落ちていたという掲示板の記
  事があったこと。
ただ、林道の延伸工事が行われていると聞いていたので、工事の為に道が修理されている
かもしれないとの期待もあり、とりあえず現地に行かないとわからんだろうとやって来た
次第。が、復旧は生活道路優先であるし、この惨状では林道復旧まで本格的に手を入れる
には、少なくとも数年はかかりそうである。そんなわけでここしばらく、ここから登る人
はほとんど皆無に近いであろう。来て見てようやく上記の意味を納得したのである。
(後日、聞くところによると、今年度中には林道分岐までは復旧するという)

 でも、ただでは引き返さない面々だけにこのまま帰るのもねぇ、というわけで、昼から
でもお手軽に紅葉に出逢える所は何処だ?の声。で結局、大峠から高見山に落ち着く。

 大峠のあずまやで昼食。生憎、登り始めて雨が降り出したのだが、山頂ではそれも止み、
時折切れるガスから覗く鎧岳、兜岳をはじめとする曽爾の山々、おぼろにけぶる紅葉など
を楽しむことで、少しばかり溜飲を下げたのである。

黄葉、紅葉に彩られる高見山の南斜面

■同行 幸さん、たらちゃん、なかいさん、のりかさん、水谷さんと会社の仲間3名、
    もぐさん(五十音順)

【タイムチャート】
6:30千里中央ローソン横(集合地)
9:25〜9:35領内総合センター前
9:45〜9:55 林道の土砂崩れ地点
(N34°20′12″E136°14′43″付近)
10:30 林道崩壊地点(断念)
(N34°20′32″E136°14′38″付近)


迷岳のデータ
【所在地】三重県松坂市飯高町・多気郡宮川村
【標高】1309.1m(二等三角点)
【備考】 台高山脈主脈の池小屋山から東に派生する尾根上の
峰です。秘峰と呼ばれ登山ルートは何れも険しいも
のでしたが、最近、林道が直下まで延びてきており
アプローチも楽になりました。北麓に香肌峡温泉が
あります。
■近畿百名山■関西百名山
【参考】
2.5万図『七日市』




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