銃声に追われて黒岩から布見竜王山 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
保与谷池から黒岩(左奥)、布見竜王山(中央奥) |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「おお、寒っ!」年が明けてやっと冬らしい寒さがやってきた。冴え冴えとした空気の 中の山歩きはキリッとして本当に気持ちがいいけれども、その寒さに比例して遠出も億劫 になるなぁ(笑)。となると必然的に行き先は近場。そこで近頃整備されたという宝塚北部 の西谷にある黒岩近辺で遊ぶことにした。山歩自体は寒さの為か誰にも会わない静かなも のだったが、遠くから聞こえる「ホーイ、ホーイ」の声と、突然の大きな銃声に、肝を抜 かれ、一時はこれはやばいと慌てる始末。冬の季節のマイナーな山域はこれがあるから嫌 なんだよなぁ。(T_T) いつもの様にR176から長尾山トンネルを抜けて三田方面へ向かう。古宝山の北麓を 縫って玉瀬で右折、阪急田園バスの境野切畑口バス停手前から酪農センター方向へ折れる。 するとまもなく、工場のような建物の向かいにフェンスで囲った広場が目に入る。フェン スには「ハイキングコース入口」と書かれた案内。取付きはここらしい。 広場への進入路にはロープが張られ、先着車もない。車の外に出ると流石に寒い。持参 のヤッケを着込んで、そそくさと準備、ロープの横から歩き出す。 保与谷広場と名づけられた広場は結構大きなもので、丸太のベンチも備えられている。 その向こうに堰堤が見え、登ると白っぽい緑というのか、少し複雑な色を帯びた保与谷池 が広がっていて、これから行く黒岩や布見竜王山と思しき高みを水面に映している。(冒 頭の写真) 池は南北に長く、その東岸に沿って道がつけられている。直ぐ側が池面だが、ロープが 添えられていて危険はない。北岸に出た所に丸太の橋があったが、付近は湿地状で「まむ し注意」の看板。夏はちょっと気持ち悪いかもなぁ。(^^; 小さな沢に沿って遡って行く。沢筋はアセビ、ヒサカキ、ソヨゴなど常緑の雑木が多く、 消え残った雪の塊を乗せた痩せた笹の中に、これも痩せた松の倒木が多いが、片付けられ ていて歩くのに支障はない。ジュクジュクとした泥道を過ぎると、水枯れた沢筋が道とな って、沢の源頭を少し登ると中央尾根と東尾根の分岐である。 中央尾根コースを選択して左に折れる。来た方向へ折り返すように今度は南向きに、山 腹を巻きながら、ほぼ水平の道がつけられている。少々張り出した枝がうるさいがいい道 だ。歩く内に右手の斜面がどんどん低くなってきて、ちょっとした鞍部に出た所で、道は 切返して一転、尾根道となる。コシダが茂り、背の低い杜松が生える摂丹地方に多い清潔 な尾根だ。ゆっくりと高度を上げていくと前方にいよいよ赤っぽい岩が現れた。「馬の背」 とプレートがかけられている。風化した部分は黒、その内部はピンク。大野アルプスの紅 岩や播磨の明神山にある「マンモスの背」に似た岩質である。
の大野山の電波施設もよく見え、寺山から昼ヶ岳に続く山並みも指呼。東南にはおっぱい 山の古宝山に大峰山、六甲山塊。西南には丸山に大岩ヶ岳。 「うーん、ええなぁ。」 と眺め入っていると、さっき尾根に取り付いた時から遠くで聞こえていた声が徐々に大き くなってきたような。誰かを呼んでいるのであろうと思うが耳を澄ませばそうでもない。 「ホーイ、ホーイ、ホイホイホイ」というふうに聞こえる。その内、熊鈴みたいな音も聞 こえ出して、布見ヶ岳方面に登山者でも入っているのかとも思いつつ、少し怪訝な感じが したけれど、それほど気にも留めず、馬の背を後にする。
のピークであった。 北側に布見竜王山らしき杉の木の生えた山が見える。さて、そちらに向かう尾根道を探 ろうと山頂西側を確かめていた最中である。突然、「バーン!」という吃驚するほどの爆 発音。 「ワッ!銃声やぁ。こら、あかん!」 「やっぱり、さっきの声はイノシシを追い立てる声やったんか。」 急いで山頂を後にして、逃げるように東尾根に向かう。まるでイノシシになった気分。 K66と標識のある小さなピーク。ここでコースは直角に折れて、黒岩のある中央尾根 と並行する尾根上をたどる。北へ向かう踏み跡には「コース外」なる標識があるが、これ が布見竜王山への道に違いない。でも今はその気も起きず、東尾根を下る。そして黒岩が 展望できる箇所(K74標識あり)に出て暫く様子を伺う。と、何の物音も聞こえない。 こうなると、今までのてんやわんやは何処へやら。少しばかり落ち着きも出てきた。途端 に腹の虫がキューッと。おお、忘れていた空腹感。ザックを下ろし、持参のトランジスタ ラジオをつけて、湯を沸かす。飛雪をもたらした灰色雲も南へ抜けて、青空から明るい陽 射し。こうなると気分も明るくなってくるから不思議だ。
してくる。というわけで、K66ピークへ取って返し、そのまま北に続く尾根に進む。 明瞭な踏み跡が続く。竜王山南のCa340mピーク。地蔵山岳とも言うらしいが、ここ にも基準点がある。一旦下って、現れたテープに沿って登り返せば、すぐに布見竜王山の 山頂である。
これは大原野の西部竜王山とも呼ばれる。更に布見ヶ岳の北の波豆竜王山。そして地形図 に唯一記述があり三角点のある大原野の東部竜王山。いずれも山頂に祠があるが、西谷地 区には大きな川が無いことから、それだけ水が大切だったのだろう。ここには文化13年 の銘のある、八大竜王、善女竜王と彫られた石灯籠とプラスチックの波板で保護された祠 がある。 展望も無いし、猟も気になるので、長居はせずにもと来た道を引き返すことにする。K 66標識のある分岐のピークへ戻り、立ち止まって再び少し様子を伺う。空耳かな?何か 先程と同じ声がしたような。とりあえず先を急ぐ。 昼食をしたためた所へ戻ってきた。黒岩の尾根を確かめるが、人の姿は見えない。少し 安心して再び尾根を伝うと、直ぐにコースは右に折れ、思いのほかあっけなく、中央尾根 と東尾根の分岐に戻る。 「フーッ」 ここまで来れば一安心。急に緊張が解けたのか、ちょっぴり頭の芯に残る疲労感。のんび り歩いて保与谷池の堤防へ。ここで豆大福を一つ。ついでに地形図では点線路が池の西側 についているので確かめてみると、薄い踏み跡がある。が、使われなくなったのか倒木も 多く歩き難そうであった。取って返して堤防から北を眺めれば、歩いてきた竜王山方面に 陽が射し綺麗である。と、その瞬間。 「ダーン!」 再び銃声。 「ヒエッ。早く戻って良かったぁ!」 いつの間にやら陽が翳る。見上げれば灰色の雲が北から足早に近づいて来て空を覆いだ したと思ったら、何かチラチラするものが..。雪だ。北から飛ばされてきたのだろう。 しかし、それっきりで、すぐに青空が戻る。 さて、駐車場所。6年前に歩いた大岩ヶ岳の登山口がここから近かったことを思い出す。 そこで今はどうなっているのか確かめようと西へ車を向かわせた時である。当時、車を置 いた車道沿いの空き地に軽四輪が止まっていて、その荷台にブチと茶色の二頭の犬。怪訝 そうにこちらを見ている。これは一目見て猟犬と分かる。やっぱり、イノシシ狩りをやっ ていたのだ。山に入る前にこの犬どもを目にしていたら、小心者の小生、間違いなく山は 諦めていたろう。熊より何よりも武器を持った人間が最も剣呑だから...。(笑) 知ら ぬが仏。今思えば何とか無事に戻れて安堵。久しぶりにスリルを味わった?北摂の山でし た。
|