鏡山〜里山で思わぬバリハイ
 
平成17年 7月10日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】もぐさん
山面コースから正面に鏡山


 またこの週末も梅雨前線が居座って芳しからざる空模様。南に行く予定を、北はまだし
も大丈夫だろうと今回も滋賀県。それも雨が降っても大丈夫なように400m足らずの里
山、鏡山が舞台。ところが青空も顔を出す中、軽〜く歩く積りが、ひょんなことで思わぬ
バリエーションハイクとなりました。(笑)

 目指す鏡山は名神竜王ICのすぐ隣。ICを出てR477を北に向かうと、左手に奈良
の矢田丘陵にも似たなだらかな山並みが見えてくるのがそれ。奈良時代より数々の歌に詠
まれた名山だ。

 「鏡山 君に心や うつるらむ いそぎたゝれぬ 旅衣かな」 藤原定家

 「吾妹子(わぎもこ)が 鏡(かがみ)の山の もみぢ葉の
              うつるときにぞ 物はかなしき」 大伴家持

 R477沿いのコンビニで食料を調達して、その先の石部神社の参道手前の空き地に車
を止める。9:35。豊中からほんの1時間だ。

 空は水蒸気で白っぽいが青い部分も顔を出し、雨の心配はなさそうだけれど、一応、傘
の用意。まずは善光寺川に架かる石部橋を渡って石部神社へ。村社風のこじんまりした神
社だが、よく手入れが行き届いている。実は驚いたことに竜王町唯一の式内社で、1月の
弓始め式は事の外、有名なのだそうだ。

 神社の前から『義経ロマンと自然浴コース』と名づけられた舗装路を北へ向かう。桜並
木のサイクリングロードだ。今はコマツナギの赤紫の花がそこここで揺れている。やがて
野球練習の掛け声が響く竜王西小学校の横を抜けると、美松台の新興住宅地への取り付け
車道に出る。左に折れ、幼稚園の前を通って、再び北にカーブすると山面(やまづら)の
集落が見えてくる。まっすぐ進めば8号線に合流するが、その手前にイセキ農機の建物と
食品会社の敷地の間に『竜王町ふるさと歴史の森散策道 山面ルート入口』と書かれた標
識がある。正面に小高い鏡山(冒頭画像)。

秦食品とイセキの販売センターの間から入る

 林道風の道は左にため池を見る頃、思い思いに枝を伸ばした雑木の林となる。ピンクの
小花の集まりが意外に可憐なネジバナや黄色のブタナが目立つ中、木橋を渡れば、竜王ス
ケートリンク前からの林道と合流する。流石に里山、あちこちに枝道があるが、直進して
いく。緩い勾配を10分も歩いた頃、林道終点になったが、意外や沢山の車が置かれてい
る。すべてジモティーの車である。日役でもあって山道の手入れでもしているのであろう
か?

 ようやく山道らしくなった。すると上から話し声が降ってくる。と見る間に数人の地元
の小父さんのグループ。なんでも今日は山頂の竜王社の祭なのだという。鏡山は別名竜王
山ともいい、摩耶斯竜神(まなしりゅうじん)を祀り、毎年7月10日には雨乞い踊りを
奉納するのだとか。道理で車が多いのだった。が、我々が社に着いた時には惜しいかな後
片付けの最中であった。

 『あえんぼ広場』の「あえんぼ」とは地元ではコバノミツバツツジのこと。広場という
ほどの広さもなく、道の両側に植わっているのはミツバツツジならぬサツキ。名前と現実
と少しギャップがあるようだけれど(笑)、休憩に頃合いの東屋がある。コンビニで買っ
た草餅で虫押さえ。そして水分の補給。

こんめ岩

 いくら低いといっても山は山。次第に傾斜がきつくなってくる。えっちらおっちら登っ
ていく最中にも、次々と降りてくる地元の方々。中には子供のグループもある。『こんめ
岩』なる大きな岩を経て、常緑照葉樹林の湿ったやや暗い山道は『木の実のなる広場』を
過ぎると緩やかな落ち着いた尾根道になる。『みたらしの池』分岐で左にカーブして、し
ばらくすると右手に鳥居が現れた。額には貴船神社とある。ここで直進すれば展望台経由
で山頂。神社経由でも山頂へいけるというので鳥居を潜ることにする。

注連縄が巻かれた竜王社の御神体の大岩

 50m程先の一間半四方くらいの神社の建物の周りに20人位の人が居て、祭の後片付
けの最中。あれがご神体だという方向に顔を上げると、重ね餅みたいな大きな岩が目に入
る。高さ10mはありそうな竜王社のご神体である。階段を登り、注連縄が巻かれた岩の
前に出る。古い小さな祠がある。岩の周りも巡れそうだが、濡れて危なそうで遠慮してお
く。そこから少し登れば『竜神の杜』と名づけられた竜王山の山頂で、展望台からの道、
雲冠寺跡への下山道、三角点への道がクロスしている。木製の展望台が30m程先のやや
低い所に見えたが、木々が成長して展望も思うに任せないようなのでカット。ここは右に
折れて三角点へ。

 やや岩がちの水平の道を西へ進む。左から希望が丘文化公園・城山方向からの道が上っ
てきている。そして凡そ150m進んだ辺り、繁みの中の裸地にひっそりと二等三角点。
三角点があるから展望がいいかというとなぜかそうでもなく、もう少し進んだ露岩がいい
展望だとMさん。北東の篠原方面へ下るらしい道から外れて、左手になるほど大きな岩が
あって、その上に乗れば、
「おお!最高の眺めや!」
西方向が開けて、真正面に近江富士と呼ばれる三上山の端正な姿。白く霞んでいるが、近
江平野の向こうに、うっすらかすかに琵琶湖。それにしてもなかなか山深い。あんまり湿
気を感じない涼しい風が吹いてくる。昼食はこの岩の上で摂ることにした。

三角点近くの露岩から南西

 
 食後は先程の『竜王の杜』に戻って、雲冠寺跡方面へ下山する。ニイニイゼミが鳴く中、
丸太の階段が整備された道。マムシがとぐろを巻いていた他は誰にも会わない。所々には
ベンチが置かれ、展望広場の標識もあるが、今は木々が成長してほとんど何も見えない。

 なるほど、聖徳太子開基で僧坊300を数えたという雲冠寺の跡はあちらこちらに石垣
や礎石を残している。そこから少しばかり下った先に、正確な名称は忘れたが、「○○谷
磨崖仏」のオフィシャル標識。時間もあることだし、話のタネにちょっと寄って行こうと
いうことになる。明快な尾根に付いた踏み跡だ。ところが100mも行けば見つかるだろ
うと軽く見ていたが、いっかなその磨崖仏が現れない。途中に2度ほどオフィシャル標識
があったきり。気が付いた時には、カシの枯葉が積もった斜面をもうかなり下った後であ
った。こうなれば「もう戻るのもしんどいわい」そのまま下ることにした。

磨崖仏を探して...。
初めはいい尾根道だったのですが...

 幸いなことに、昔、営林署が設置したらしい漢数字が刻まれた境界標石が置かれている。
しかもご丁寧にも標石の頭は赤くペンキが塗られ、近くの木にはピンクのテープが結ばれ
ている。それを辿っていくのも良かろうとズンズン進む。途中、尾根が分岐し、やや不明
瞭な箇所もあるが、より明快に見える方に行けばよい。若干ヤブった所もよく見れば鉈目
が入っている。こんな踏み跡がついているのはマツタケ山だからに違いない。しかし、閉
口したのはクモの巣。下れば下る程、雑木の枝が張り出して、そこにクモが巣を張ってい
るのだ。初めは律儀に小枝で払いつつ歩いていたけれども、払い忘れて、メガネのレンズ
にヒビ状に纏わりついてからは、滴る汗と相まって、
「ええい、ままよ」
というわけで、適当に払うだけでなる。(^^;

 手元のコンパスで確認すると、尾根は次第に北に振りだす。何処へ降りるのだろうと興
味深々。(笑)
「今日は里山やからなぁ」
こういう時に限って、電子地図をコピーした紙のみ持参で、緯経線を入れたカシミールの
地図は持ってきていないのだ。手を抜いては駄目の見本であります。願わくば駐車位置か
ら離れてくれないように。(笑)

 その内、木々の間から明るく白い部分が見え出し、空耳かもしれないが人の声らしきも
のが聞こえてきた。更に山腹をトラバースしていくと、木々が途切れた部分が現れて、明
るい白いものは、ブドウ園の温室のビニールであることがわかった。がそこへ出るまでが
皮肉なことに一番の藪であった。最後は小さな谷筋横の笹を掻き分けて草っ原に出る。
「フーッ!」
期せずしてお互いの口から溜息。山水を貯めた貯水塔のような物があったので、顔を洗い
クモの巣を流す。シャツといいズボンといい、腕といい、クモの巣だらけ。まぁ、長い物
が出てこなかっただけでも了とするかぁ。でも、肝腎の磨崖仏は...?(笑)

こんな所へ出てきてしまった

 ブドウ園の外周をぐるりと廻ったがゲートが閉じられ行き止まり。しゃーない。失礼し
て有刺鉄線の柵をくぐって、ブドウ園の敷地にお邪魔して、取り付け道路を歩かせてもら
う。果たしてここはどの辺なのか?それは歩くに従って判明。左に新興住宅地。車道に出
たら、見覚えある看板が見えてきて、右に幼稚園があった。
「あらぁ。かなり北へ戻ったみたい...。」
そう、美松台への取付け道路に出くわしたのだった。

 それから竜王西小学校の東を通るサイクリングロードを南へ、ゆっくり歩いて石部神社
へ戻る。思わぬバリエーションルートに少々汗をかいたけれど、梅雨の晴れ間に恵まれた
里山めぐりでありました。Mさん、お付き合い有難うございました。

【タイムチャート】
8:20自宅発
9:35〜9:45石部神社前(駐車地)
10:42竜王町ふるさと歴史の森散策道 山面ルート入口
10:48ため池
11:10林道合流
11:20林道終点
11:22〜11:30あえんぼ広場
11:36こんめ岩
11:45みたらしの池分岐
11:50貴船神社鳥居
11:55竜神の杜(鏡山最高点)
12:00鏡山(二等三角点(点名『鏡山』384.6m))
12:00〜12:20三角点南の露岩(昼食)
12:26竜神の杜(鏡山最高点)
12:37雲冠寺跡分岐
12:40磨崖仏コースへ
13:10ぶどう園横
13:35幼稚園横
14:00石部神社前(駐車地)



鏡山のデータ
【所在地】滋賀県蒲生郡竜王町
【標高】384.6m(二等三角点)
【備考】 旧東山道の鏡の宿の南にわだかまる里山です。東にある
雪野山を東の竜王山と呼ぶのに対して、西の竜王山とも
呼ばれ、雨乞岳の別名もあり、山頂近くに竜王社が祀ら
れています。また、古来より歌に詠まれた名山で、北麓
の鏡の里は源義経元服の地の伝承もあります。
【参考】
2.5万図『近江八幡』




■鏡山バリハイルートGPS軌跡
(罫線は10秒=約300m 国土地理院、カシミールを利用しました)

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